好きな幼馴染に「お前にラブレター渡すから手伝って」と言ってみた。
猫丸
第1話
俺は
「なあ、好きな人にさ手紙書こうと思ってるんだけど、手伝ってくれね?」
静かな図書室。
隣に座って本を読む腰まで黒髪ロングヘアの美少女。俺の自慢の幼馴染、
彼女が今回のミッションのターゲット。
「……誰に書くのよ?」
楓が少し顔をしかめて尋ねる。
よし、食らいついた。
「お前」
「…………………………は?」
楓が大きく口を開く。
俺をまるで猿でも見てるかのような目で。
「変な顔するなよ」
まあ、そんな顔も可愛いんだけど。
「あ、あなたね?!」
楓が立ち上がる。
楓の大きな声は静かな図書室の隅々にまで行き渡る。
「図書室だぞ?静かにしろよ」
昼休みとはいえ、利用している生徒は少なくない。
利用している生徒が楓の方に視線を向けていた。
楓はそれに気づくと、恥ずかしそうに頬を赤く染めてゆっくりと座る。
「で、お前がドキッとするような単語を教えてくれ。それをぶち込めば行けるだろ。あ、拒否権ねえから」
「……それを本人に聞いてどうすんのよ」
「ネットで書いてたんだよ。本人に好きだってバレたら、その人は自分のことを気にしていつの間にか好きになるって」
好きバレ。
それから手紙、いわゆるラブレターだな。女子ならば一度は貰いたがるだろう。
この2つが合わさることで相乗効果となり、楓は俺に惚れる。
楓の顔が赤くなっていることから、効果はあるようだ。
ちなみに俺が今回この作戦を実行したのには理由がある。
俺たちが高校に入学して半年。楓はすでに10人を超える男たちに告白されている。
学校一の美少女と呼ばれているくらいだ。
そう。俺は焦っているんだ。
俺はイケメンでも運動ができるわけでもない。それにバカだ。
幼馴染は負けヒロインって言うしな。
でもどうしても諦めたくなかった。
こうした思いを胸に、今に至る。
「……バカね」
「いいから教えろ」
「……あなたって昔からバカよね」
「おい、誰が俺の悪口を言えって言ったんだ」
ツッコむが、楓はこちらを見向きもしない。
待て。何かがおかしい。
楓のやつ、冷静すぎないか?
本来なら今ドキドキして、俺の方をチラチラ見てるものだろ?
さっきまで赤かった顔も、もとに戻っている。
「ッ?!」
まさか、遅効性だったのか?!
クソッ、しくじった!
ここは立て直すしか。
いやだが、もう賽は投げられた。自分で投げたんだけど。
「……私、いつもあなたを起こしに行ってるよね」
楓が動き出した。
逃げ場はないってことか。
「……おう。その面倒見がいいところに惚れた」
楓とは、小中高と同じで昔から楓は毎朝俺を起こしに来てくれるんだ。
俺は朝が弱いから感謝してもしきれない。
「……私、いつもあなたにお弁当作ってるよね」
「おう。料理がめっちゃ美味しいところに惚れた」
高校生になりお弁当や学食になってから楓は毎日お弁当を作ってくれるんだ。
楓は俺の好物のハンバーグを入れてくれる。
それに健康にも気遣ってくれるから感謝してもしきれない。
「……私、休日あなたの家で一緒にゲームしてるよね」
「おう。趣味が会うところに惚れた」
一人っ子の俺は気軽に遊ぶ人がいなかったから、楓がいてくれて助かった。
楓はゲームだけじゃなくてアニメや漫画の話にも乗ってくれる。
そう、これらの理由で俺は楓のことが好きなのだ。
いや、他にもたくさんあるけど。
うん。俺、やっぱり楓のこと好きだわ。
……ん?あ、
「お前、しれっと話題そらすなよ。今はお前の好きな単語知る時間だったろ」
あぶねー。
……待てよ。話題をそらされたってことは、俺に教えたくなかったってことか?
つまり、俺は脈なs
「私、朝弱いの」
楓が正面を向いて淡々と語りだす。
ん?今なんて?
楓が朝弱い?
いやいや、だっていつも髪とか綺麗にセットして完璧な状態で起こしに来てくれるじゃん。
「私、料理苦手なの」
え?
いや、いつも栄養や配色にも気遣って、その上で美味しいお弁当作ってくれるじゃん。
「私、ゲーム苦手なの」
……いつも楽しそうにゲームしてくれるじゃん。
嘘だろ……。なら、楓は今まで嫌々やっていたのか?
今までの思い出が否定されたような気がして心が折れそうになる。
「……ずっと迷惑だったのか?」
楓の顔が見れない。
おのずと俯いてしまう。
怖い。
嫌々だと知ったらこれまでの関係が崩れてしまう。
「そんなわけないじゃない。確かに苦手だよ?でも、裕二のためにすることは好き」
楓の明るい声が耳に届く。
「……え?」
「どんだけ苦手なことでも裕二のためだって考えたら苦じゃなくなるの。むしろ、楽しいの」
楓が誰もが惚れ惚れするような満面の笑みを浮かべる。
「……よかった。嫌われてなかったんだなぁ」
めっちゃ怖かったぁ。
もう立ち直れないところだった。
それにしても俺のためなら頑張れるって。
感謝の言葉しか出ないわ。俺にはもったいないほど良い幼馴染だ。
「これだけ言っても気づかないわけ……?そうよね。裕二だもん」
「ん?」
楓が何か呟いてる。
あ、
「っと、またそらされるところだったぜ。ほら、さっさと吐けよ。お前の好きな単語」
楓め、なかなかの策士だな。
「……じ」
楓が俺に身体を向ける。
「何だって?ほら、もっと大きな声で」
「裕二」
楓が俺の目を見てそう言う。
「どうした?」
そんな真面目な顔で名前呼ぶなよ。
惚れるぞ。もっと深く。
これ以上深くなったら抜け出せないね。
「裕二」
「うん。だからどうし……た?」
いやいや、まさか……
「裕二」
「……え?それって」
楓の好きな単語……
嘘だろ?
「裕二」
「……か、楓、そういうことでいいのか?」
ヤバい。
胸が破裂しそう。呼吸ができない。顔が熱い
「……うん」
楓がこくこくと頭を縦に振る。
顔を真っ赤に茹でながら。
「……い、いつから?」
「ずっと前。小学生の頃から」
「ッ!!」
そういうことかよ。
どうりでよく告られているのに浮ついた話を聞かないわけだ。
それにしても、小学生の頃からか。
ははっ、俺もなんだよな。
なんだ。好きバレも手紙もいらなかったのかよ。
「ずっと前から好きでした。付き合って下さい」
たったこれだけ。
これだけでよかったのかよ。
正面から楓と向かい合って伝える。
「はい」
―――――――――――――
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好きな幼馴染に「お前にラブレター渡すから手伝って」と言ってみた。 猫丸 @reosyu12
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