日記

ひぐらし ちまよったか

胃袋日記

 〇月✕日


「お!? しゃけだね? うすじおだぁ! 有難いねえ? 朝から炊き立ての、あっついご飯! それと御御御付おみおつけだぁ! ほんと、いい奥さんに来てもらったねぇ、旦那? 一人もんのときゃぁ、朝ご飯なんか、食っちゃいなかったからねぇ! おや? 今度は、ぬか漬けかい? うん! よく漬かってらぁ! 奥さん若ぇのに、てえしたもんだ! なに?『朝からしっかり食べれて幸せだよ、ありがとう』だって? やだねぇ旦那! 朝からのろけちゃって。はい! ごちそうさま!!」



 〇月✕日


「へぇ? これが世に言う『愛妻弁当』ってやつかい? ありゃりゃ、卵焼きがハートになってやがる……うん! 上品な甘さだねぇ! ウインナーもタコさんか? 胡麻でメンタマまで付いてらぁ! 奥さん芸が細かいねぇ? お? 同期の『ヒグラシ』の野郎が羨ましそうに覗いてやがら! へっへっへ! 見せびらかしてやんなよ! 旦那! それにしても、奥さん本当に料理が上手だねぇ? あっしも嬉しいよ! はい! ごちそうさま!!」



 〇月✕日


「ありゃま! ビーフストロガノフ!? 奥さん洋食もいけるのかい!? サワークリームの本格派だぁ!! いやいや、てえしたもんだ! あっしも長いこと胃袋やってるが、初めてじゃないか? 愛されてんねぇ! 旦那? はい! ごちそうさま!!」



 〇月✕日


「おや? 旦那? 今晩は外食かい? 焼き鳥かぁ……それとビール……ははぁ……『ヒグラシ』の野郎だな? ま、あっしも、たまには好いけどね? それにしても『ヒグラシ』の野郎、新婚の旦那を誘うたぁ、ふてぇヤツだぜ! 奥さんのために早く帰ってあげなよ! 旦那!?」



 〇月✕日


「……今日も外で飲むのかい? ここんとこ毎晩じゃねえか? 奥さんに連絡入れたのかい? あっしが気をもむ事じゃ、ねえかもしんねえが……奥さんが可哀そうだよ? 昨夜だって晩御飯作って、待っててくれてたみてぇじゃねえか……テーブルで寝ちゃっててさ……? いい加減にしなさいよ? 旦那。仕事の付き合いも大切かも知れねえが、あんたにゃもっと大事なもんが有るだろう? あんな好い奥さん、旦那にゃ勿体ないんだからね?」



 〇月✕日


「……ほらね? 奥さん、実家に帰っちゃったじゃないの……どうしょもないねぇ、うちの旦那は……そりゃそうだよ? 毎晩遅くまで連絡も入れねえで、飲んだくれて帰って来られちゃね? いくら、できた奥さんだって、堪忍袋の緒が切れるってもんさ! あっしは奥さんの味方だからね? 早く迎えに行って、頭下げて帰って来てもらいな! 旦那!!」



 〇月✕日


「今日もコンビニ弁当かい? 奥さんに帰って来てもらわないの? それにしても味気ないねぇ、この幕の内……いやね? 悪かぁねえんだよ? でもねぇ……。あ~あ、奥さんの卵焼きが恋しいねぇ……」



 〇月✕日


「……今夜も飲みに来ちゃったよ? この人。およしなさいよ、旦那。そんなに連日連夜飲みまくってちゃ、体に毒ってもんだ。お隣の『肝臓』さんもアルコールの分解が追っつかねえってさ! そんなに強くねぇんだから! おい!? 聞いてんのかい!? 旦那ってば!!」



 〇月✕日


「ほらね? 言わんこっちゃない……お粥かい? それと梅干し……入院食ってやつだね? 奥さん心配して駆け付けてくれちゃったじゃないさ! 可哀そうに泣いちゃってるよ? ほんと馬鹿だね? うちの旦那……チャンと謝りなさいよ! 頭下げて!! こんな人、あんたにゃ勿体ないんだからね!!」



 〇月✕日


「やっと退院か……長かったねぇ? 毎日病院に来てくれた奥さん……喜んでくれてらぁ……ぐすっ……ありがたいねぇ……おお!? 『きりたんぽ鍋』! 『胃袋』に優しそうじゃねえか!? 奥さんの手料理、久しぶりだよ! 嬉しいよぉ!! うん? 旦那、気が付いたかい? この『きりたんぽ』手作りだよ!! わざわざご飯炊いて、『半殺し』に潰して、串に巻いて焼き上げてるよ!? 味のしみ方と香りがスーパーで売ってるヤツと全然違うね!! 美味しいねぇ!! 旦那? 二度とこんないい奥さん、泣かせるような事しちゃダメだよ! きっとだよ!?」



 〇月✕日


「うひゃ!? ひっどい形の『餃子』が落ちて来たよ!? 何だいこりゃあ? 『包む』ってより『詰め込む』って感じだね? 不格好だねぇ……おや? 今度は可愛らしいのが落ちてきやがった? あ、こりゃキレイだわ! 上手に包んであるねぇ? ヒダが、ひの、ふの、みの……八つもついてらぁ……奥さんだね? 一緒に作ったのかい? 楽しそうだねぇ? え? なになに? 『綺麗に包んである方が味が良いね!』だって!? なに言ってんだい旦那! 旦那が握りつぶした餃子より、奥さんの愛情たっぷりに包まれた餃子の方が、美味しいのは当たり前の事さぁ!! まったく、どうしょもないねぇ? うちの旦那ときたら……でも、よかったね? 旦那……奥さんと仲直りできてさ……あ、やだねぇ! デレッとしちゃってさ!! はいはい! ごちそうさま!!」




―――― おまけ ――――




「――終わっちゃうみたいですよ? お武家様」


「うむ……終わるようだのう、村長……」


「あ、まずは一杯! お疲れさまでしたぁ」


「おお! すまぬの村長よ……お、と、と」


「えへへ……う……ううう、グシュ……」


「おお!? どうしたんじゃい!? 村長!」


「うう、ぐしゅ……いえね……この流れも……これが最後かと思うと……グシュ」


「こ、これ! そ、そのように申すな……わ、ワシまで……ズコッ! か、悲く……ブヒィ!」


「た、楽しかったですねぇ……え~ん! お武家さま~ぁっ!!」


「ズビッ……と、とにかくじゃ……最後は明るく終わらそうではないか? それ……村長も盃をこちらへおよこし?」


「は、はい……ありがとうございます! おっとっ、と……」


「うむ! では、『KAC』の終了を祝して! 乾杯じゃ!!」


「……かんぱ~い!!」


「――それで? どうじゃったかのう村長? 初めての『KAC』は」


「はい! どの作家さんも力作ぞろいで!」


「そうじゃのう……『ちまよったか』なんぞが、しゃしゃり出る場所では無かったのかも知れぬのう?」


「でも! 色んな方々に出会えましたねぇ?」


「おお! そうじゃった! こんなワシらでも多くの方が応援してくれたのう! それについては大いに感謝せねばの?」


「はい! 可愛らしい女性作家さんも覗きに来てくれちゃって……照れちゃいましたよ!! わたし、えへへ……」


「むふ! そういえば村長、独身だったっけ? 婚活パーティーより、『KAC』の方が出会いが多かったのでは?」


「そうかも知れませんねぇ……あれ? そういうお武家様も確か……」


「うむ! 花の独身である!!」


「そうですよねぇ、武者修行の途中でしたもんねぇ……」


「そうなのよ……修行の途中なのよ、ワシ……あ~メンドくさ……設定を変えてくれないかのう?」


「まあまあ……そのうち『ちまよったか』の野郎も、私たちの働きに免じて、いい事、書いてくれるかもしれませんよ……?」


「そうかのう……? 『ヒーロー』のお題の時、ワシ『ぼいん』のお姫様を助ける役、やりたかったのう……」


「お武家様? 『ぼいん」て……死語ですよぉ……。最近じゃ『ばるん』とか『たゆん』とからしいですよ?」


「え!? そうなの!? い、淫猥な響きじゃのう……ごくり」


「WEB小説は日々進化していってるって事ですねぇ……?」


「うむ! これからも『カクヨム』から目が離せぬのう!!」


「自然な『ゴマすり』ができましたね! さすが『勇者』さま!!」


「にょほ! くるしゅうないぞ!!」


「ははぁ!! ありがたきおことば!」


「では、村長? 最後に締めてもらおうかのう?」


「はい! では『KAC終了』と掛けまして」


「うむ! かけまして!?」


「『書生さんに恋してしまった若い芸妓さん』と解きます」


「ふふ……甘酸っぱいのう? そのこころは!?」


「兄さん(23)が待ち遠しい……」


「見事! あっぱれじゃ!!」


「えへへ……」


「それでは皆さん! また、来年じゃ!!」


「えへへ……おあとがよろしいようで……」




―――― 了。




 初めて参加させて頂いた『KAC2022』を、無事に完走する事が出来ました!

 多くの応援下さった方々、評価下さった皆様! 本当にうれしかったです!!

 心からお礼を申し上げます! お付き合いいただきましてありがとうございました!!


        ―― ひぐらし ちまよったか ――

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