とある勇者の日記 【KAC2022】

水乃流

第1日目~?

1日目

 センセイが、日記をつけた方が良いというので、今日から日記をつけることにした。人生初めての日記。でも、何を書いたらいいのか分からない。センセイに聞いたら、「その日あったことを書きなさい」という。今日は、呼び出しもなかったので、何も書くことがない。


2日目

 薬は苦いので嫌いだ。

 今日は、久しぶりに呼び出しがあって、クエストが始まった。一度、装備を失っているので、簡単なクエストだ。聖剣が手元に残っていれば、1分もかからないのに、仕方がないから手元にあったショートソードを使った。ステータスが低く抑えられているからなのか、時間が掛かった。


3日目

 今日は、昨日のクエストの続き。ようやくクエストをクリアする。時間がかかったのは、勇者としては不甲斐ないけれどそれは仕方ない。


5日目

 センセイに『クエストとは、なにか』と聞かれたけれど、クエストの内容は他人に話せない、と言ったら『日記に書いておくのはどうか』と言われた。そうか。書いておけばいいのか……本当に?


10日目

 やはり薬は嫌いだ。頭がぼんやりするから。


11日目

 今日、クエストが来た。戦いに備えて、槍を作れというものだ。手持ちのものでなんとかするしかない。


16日目

 もしかしたら、この日記は他人に読まれているのか?

 槍は私の空間収納にいれてあるから、他人に見つけることはできない。残念だったな。


20日目

 やはり、この日記は誰かに読まれているようだ。今日は、部屋の中を徹底的に探した様だ。ベッドまで動かした形跡がある。残念ながら、見つかるわけがない。この日記も今日から空間収納にしまっておくことにする。


21日目

 日記が見つからなくて焦っている連中を見るのは、気分がすっとする。少し意地悪な気もするが。


25日目

 頭がはっきりしてきた。


26日目

 薬を飲んでいないことがばれた。無理矢理飲まされた。くそ。このままじゃ――。


27日目

 特別クエスト。

 センセイと呼んでいた奴は、魔物だった。当然、その手下どもも魔物。それに気が付いた時、特別クエストが発動した。


『魔物の領域から脱出せよ』


私は、自分で作った槍で、何匹もの魔物を倒した。少しずつステータスも元に戻りつつある。いつのまにか、魔物に捕らえられて精神支配を受けていたのだ。勇者失格だ。恥ずかしい。


30日目

魔物の領域からは脱出したものの、追っ手がひっきりなしにやってくる。槍も壊れてしまった。やはり武器が必要と考え、街の武器屋で調達しようとしたのだが。まさか、武器屋の店主までも魔物だったとは。危うく殺されそうになったが、なんとか返り討ちにして、武器も手に入れた。


?日目

 日記を書くのも久しぶりだ。

 もう何日目なのか、日付も分からない。早く人間の領域へ戻らなければ。こうして山の中に隠れていては、体力が削られていくばかりだ。しかも、魔物たちがひっきりなしに追ってくる。

 いや、いっそこちらから打って出てやるか。勇者らしく、魔王と対決し倒すのだ。人類の平和のために。


※※※


 次のニュースです。

 精神疾患が認められて減刑され、措置入院していたにも関わらず、病院関係者を殺害して逃亡していた17歳の少年を、本日午後5時に逮捕したと、警視庁が発表しました。少年は、病院を抜け出した後、都内の刀剣販売店に押し入り、店から数点の日本刀を持ちだし逃走していましたが……

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