勇者が俺TUEEEを諦めて異能力を選んだら、俺のスカートが勝手にめくれていくんです。

あずま悠紀

第1話

「おい!いい加減起きろ!」

はっ!?俺は何をしていたんだったっけか?あーそういえば確か、今日は日曜日だから昼までゆっくり寝るぞぉ~っとかなんとか言っていたような気がするけど結局そのまま二度寝をしてしまい現在に至るということか。

それにしても何だか体が怠いし重い。一体どうなっているんだろうか。まさか風邪を引いて熱が出てるとかいうやつなのか?それだとしたらかなり不味いな。とりあえず母さんに連絡を入れなければ。

(あれ?)

(声が出にくいぞ?)

俺はどうにか声を出して自分の身に何かが起きたのか聞こうとしたのだが、どうにも声が出ず言葉を発することができなかった。そこでふと思い立って目を瞑り瞼を開いてみると――そこに広がっていたのは自分の部屋ではなく見知らぬ白い空間が広がっていたのだ。俺は混乱しながらキョロキョロと見回していた時、後ろから声を掛けられた。

「目が覚めたようですね」

そこには銀髪ロングの女性が立っていた。歳はかなり若いように見えて20代半ばほどにしか見えない容姿だった。しかも巨乳。こんな美女なかなかいないと思うレベルだったよ?そんな彼女が笑顔を浮かべながらこちらへと歩いてくると目の前に立ち止まり自己紹介を始めたのであった。

「はじめまして。私の名はエリスといいます。貴方が今いる場所は私が管理する世界でございます」

へぇー世界を管理するとかスケールの大きな女性もいたもんだと思った瞬間俺はとんでもない事実に気づいた。(俺の知っている言語を話しているけれど俺が知っているどの文字とも似ていない。という事はここはやはり日本ではないどこかの世界なのだろうと推測できるわけで。そしてさっきの声の出し方を考えれば俺が今まで過ごしてきた環境とはかけ離れた世界であることに間違いないだろう)

そこまで考えた時俺はある結論に至ったのだ。これは夢だろうなと。つまり異世界転移的なアレじゃないかと考えたのである。まあ、ただ単に熱を出していて頭が働いていないだけかもしれんけれども、夢にしては意識があるという不思議な感覚を覚えていることは確かだ。

(そうだな!そうと決まれば後は簡単。適当に話を合わせて楽しむとするかね!!夢だし別に問題はないはず!!!よし!!では、早速質問攻めを開始するとしよう!!)

そう決めた直後、エリスと名乗る女性は語り掛けてくるのだがその内容は俺にとって信じられないものばかりだった。なんせいきなり異世界に召喚されてしまったんだもの!これなんてエロゲだよ!!みたいな内容でしたから。もうね、驚きすぎて思考停止状態に陥りそうになったよね。

というか本当になんなんだよこの夢は。いくら俺でも流石にそろそろ醒めて欲しいんだけれども、まだ終わらないのかこの展開は? それからというものの話の内容をまとめると、魔王を倒すために俺を召喚したがその代償として死んでしまったため蘇生の儀式を行い転生させたという事らしいです。はい終わり!これでようやく話が終わる――って訳ないじゃん!!まだまだ話には続きがあった。それは魔王を倒してくれと言う話だったのだ。

(はぁ!?無理ゲーじゃねえか!どう考えても今の自分には荷が重すぎる仕事だと思うんですけどねぇええ!!!それに死んだのなら生き返らせてくれるとかしてくれてもいいんじゃなかろうか!?普通そういうのが筋じゃないのか?)

とは思いつつも口を開くことはできないし体を動かすこともできないので俺は心の中で叫びまくった。するとそんな考えを察してくれたのか女神様は微笑みながら答えてくれたのだった。

「安心してください勇者殿!あなたはまだ完全に死んではいないのです。仮死状態にしているだけでございます」

それを聞いてひとまずホッと安堵するのであった。しかしすぐにまた疑問が生じたので俺はそれを口に出して聞いてみることにする。(どうせ伝わらないと思うが試してみる価値はあるはずだ。というか会話ができなくともジェスチャーなり身振り手振りで意思疎通くらいできなくもないはずだ!多分!きっとできるに違いないっ!!だって相手人間なんだしさ!)

そんな気持ちを持ちながらとりあえず手を挙げてアピールをしてみたらちゃんと伝わるかなと思いながら必死にジェスチャーを行った。その結果がどうなったかというと――なんと伝わっちゃいました。すげぇ。これが愛の力ってやつなのか?

(いや違うわ!!!そんな馬鹿なことがあってたまるか!そんなのありえないだろう!)

そんな感じのことを思ってるうちに話は進み気が付いた時には目の前が眩しくて何も見えなくなっていました。一体何が起きたんだと思いながら目を閉じ再び開けてみると――そこには見慣れた天井が見えて――そしてベッドの横にある目覚まし時計が鳴り響くいつもの朝がやって来ていたのだった。

「うぅ〜ん。やっぱ夢だったのか?」

「夢じゃありませんよ」

「(そのエリスって女性は凄く美しかった。スタイルもよくて胸も大きくって、もう最高だ。これが現実?それなら本当に夢のハーレムが実現したって事か?!それじゃ……あわよくば結婚なんかしちゃったりして――っていかんいかん!こんな妄想をするのはよくない!こういう事は心にとどめておかねば!!…ここはまず冷静に)」


「しかもよりにもよって異世界に来るだなんて――」

「驚くのも無理ありませんね」

「…………はい?」

「あれ?聞こえていませんでしたか?もう一度言いますね。私は女神のエリスといいます。よろしくお願いしますね」

「(ちょぉおおおっと待てぇぇぇぇぇぇぇえええい!!!!何言ってるんだこいつ。俺はそんなの一言も言っていないぞ!?確かにあの時夢の中で俺は「夢だけど夢じゃない」的なことを思っていたけれどもそれがどうしてこうなるんだよ!!おかしいだろうが!!)」

俺は動揺を隠せないままに慌てて部屋中を見渡した。当然のことながら誰もいるわけがない。

「ど、どういうことですか!?」

「貴方が混乱されるのも分かります。ですが落ち着いてください。貴方が見たものは全て本当のことです。これから詳しく説明させていただきたいと思いますがよろしいでしょうか?」

「(落ち着けと言われても、とてもじゃないが落ち着くことは出来そうにない。だがこのままでは話が進まないから取り敢えずは大人しく聞くことにしよう。まあ、夢だと思えば何とか耐えられる気がしないでもない。うん。そうだよな。夢だよなこれは。夢に決まってるさ!ははははははは!)

分かりました。お願いいたします」

「ありがとうございます。では、お話しさせて頂きますね。先ほども申し上げました通り貴方は死に瀕しておりまして、それを私が助けたというわけです。その際に魂と肉体が離れてしまった状態でしたので、この世界に転生させ新たな人生を歩むことになったのです。ここまでは理解していただけましたか?」

「はい。なんとかですが……」

俺はそう答えるとエリスさんはニコッと笑顔を浮かべると話を続け始めた。

「それでですね。その転生させる際に色々と条件をつけさせていただいたんですよ。その条件というのが貴方が生前に読んでいたライトノベルに出てくるような能力と容姿にして欲しいということです。なので、貴方はこうして今ここにいるということになります。ちなみに、ここは貴方がいた世界とは別の世界となっておりまして、地球とは違う世界となっているんです。もちろん言葉も同じですのでご安心下さいね」

(な、なんですと!?つまりこれは異世界転移ってやつなのだろうか。それにしても俺が読んだことのあるラノベと同じ世界とはな。まあ、そういうこともあるか。ただ、俺が知っている物語とはちょっとだけ違っているところがあるようだな。まずは、魔王がいるということ。それと、この世界の人間は魔法を使うことができる。俺が知っているのは剣と魔法のファンタジーな世界だったが、どうやらこの世界では異なるらしい。まあ、この話を聞いて俺は確信した。ここが夢ではなくて現実であるということをな。ならば、俺はこの世界で生きていくしかない。せっかく第二の人生を送るチャンスを手に入れたのだからな)

俺は心の中でそう決心すると、改めて自分の姿を確認することにした。すると、俺は思わず声を上げて驚いてしまう。

「なっ!!?」

「どうされました?」

「い、いえ。なんでもありません」

(嘘だろおい!まさかこんなことになるなんて!)俺は鏡に映った自分の姿を見て驚愕してしまった。何故ならそこに写っていたのは、銀髪ロングの美少女の姿だったからだ。しかも、かなりの美人。顔立ちも整っていて目もパッチリとしているし、胸も大きい。そんな女の子が自分の姿をしているなんて信じられなかった。

「そ、それよりも!!この世界での俺は男なのですか?それとも女なのですか?」

「はい。性別は女性になっていますよ。名前はアテナと言います」

「ア、アテナ……。女なのに俺の名前と似ているなんて、なんだか複雑な気分になりそうですよ」「ふふ。そうかもしれませんね」

「そういえば、俺のステータスってどんな感じになっているのでしょうか?」

「ステータスでしたら、私が管理している世界の住民であれば誰でも確認することができます。こちらに来ていただければいつでも見ることができますので、後程案内致しますね」

「ありがとうございます」

(よし!これで俺がどのくらい強いのかが分かるはずだ!俺TUEEEしたいという願望が叶ったのだ。これで俺も最強への道を突き進むことができる!目指せ!最強の女勇者!!)

「それでは、次に私の方からいくつか質問があるので答えていただけないでしょうか」

「いいですよ」

(そうそう!俺の聞きたかったことはこれだったんだ。まずは俺がどうして召喚されたのかが知りたい。俺が召喚されたことには何かしら理由があるはずなんだ。例えば魔王を倒すとかそんな使命的なものとか。まあ、そんなことはないと思うけれどね。俺にそんなチート的な力はないと思うし、そもそもそんな力が俺にあるとは思えない。でも、もしも万が一にでもそんなことがあったとしたら、俺の願いは1つだけだ。それは、可愛い彼女が欲しい!!それしか俺にはないからな!!)

そんなことを考えているとエリスは質問を始めた。

「まずは、貴方のお名前を教えていただけないでしょうか?」

「俺の名前は――」

俺が答えようとした瞬間、ある事を思い出して口を閉じた。俺には前世での記憶が残っている。つまり、この体の持ち主は俺ではないということだ。ということは、ここで名前を言ったとしてもそれは別人のものということになる。そうなってしまうと、この体はこの女性のものであるわけで、勝手に名前を使ってはいけないのではないかと思ったのだ。

(どうしたものか……。でも、名前がないのも不便だよなぁ。うーん。仕方ない。適当に考えておくか)

「どうなさいましたか?」

「すみません。少し考え事をしていまして。えっと……名前が思いつかないんですけど……」

「あら?それは困りましたね。どうしましょうか」

「そうですねぇ。……う〜ん。じゃあ、ゼウスというのはどうでしょうか?」

「う〜ん。響き的に悪くはなさそうですけど……、どうしてその名前にしようと思ったのですか?」

「いやぁ〜。実は自分の名前が思いつかなくてですね。それで、つい思いついたものを言ってしまっただけです。嫌でしたか?」

「いえ。私は別に構いませんよ」

「良かったです」

「それでは最後に貴方の年齢を教えてください」

「年齢は13歳です」

「分かりました。ありがとうございます。これで全ての質問は終わりです」

「(はぁ〜。やっと終わったか。疲れたぜ)」

「さてと。早速ですが貴方の能力を確認してみましょうか」

「はい。お願いします」

(さてと。いよいよ俺のステータスが見られるわけだが、一体どん感じなんだろうな?)

「それではいきますよ」

「(ドキドキ)」

そして、エリスが指をパチンッと鳴らすと、目の前にステータス画面が現れた。

「これが貴方のステータスです」

【名前】

アテナ・アスタルトス 【種族】

人間 【年齢】

13歳 【職業】

無職 【レベル】

1 【体力】

100/100 【魔力】

1000/1000 【攻撃力】

10 【防御力】

20 【敏捷性】

30 【精神力】

50 【運勢】

3 【スキル】

鑑定Lv.1 言語理解 経験値増加 アイテムボックス 【ユニークスキル】なし

「な、なんとなく予想はしてましたが、本当にこんな数値なんですか?明らかにおかしいですよね?だって、普通ならもっと高いものでしょう?!」

「そう言われましても、これが貴方のステータスですので」

「(いやいやいやいや。そんなことありえないでしょうが!!)」

「どうかされましたか?」

「えっとですね。俺が知っているラノベだと大抵の主人公はチート級の強さを持っているんですよ。だから、俺もきっとその類いだと思っていたのですが、どうやら違ったようですね。はは」「そうなのですか。ちなみに、貴方が今までに読んだことがある本とはどのようなものだったのですか?」

「えっとですね。剣と魔法のファンタジー系の物語が好きなんですよ。特に好きだったのは異世界転生系のラノベでして、よく読んでいたんですよ。他にも異世界転移ものも好きです」

「なるほど。そういうことでしたか。確かにそういったものは数多くありますよね」

「はい。なので、俺はてっきりこの世界にもそういう類のものがあるんだろうなと思っていて、実際にその通りのようでしたので嬉しかったんです。まあ、自分がそういう立場になるのは想像していなかったんですがね」

「そういうことだったんですね。ちなみに、貴方がこれからどうするのかは決めていらっしゃるのでしょうか?」

「はい。俺はこれからこの世界で生きていこうと思います。正直言ってまだ実感が湧かないというのが現状ですが、俺はこれから強くなってこの世界で幸せを掴むために頑張ろうと思っとります」

「そうですか。それが聞けて安心しました。これからは私も協力いたしますので頑張っていきましょう」

「よろしくお願いします」

「さてと。それでは、貴方の今後のことについてお話しさせて頂きますね」

「はい」「まずは、貴方にお金を渡しておきます。この中には金貨が10枚入っていますので自由に使ってください。それと、貴方には冒険者ギルドに入っていただきます」

「冒険者ギルド?ですか」

「はい。簡単に説明しますと、そこに入ると依頼をこなしたり、ダンジョンを攻略したりするといったことが可能となります。また、そこで登録することで身分証を手に入れることもできますので、何かと便利かと」

「な、なんですと!?それはとても助かります!是非とも入らせて頂きたいのですが……」

「分かりました。では、今から向かいますね」

「はい」

こうして俺はこの世界で生きていくための準備を整え始めた。

エリスさんに連れられてやってきたのは、この世界の冒険者が主に活動している場所だそうだ。俺は今、その場所の近くにある建物の中にいる。

「こちらが受付になります」

「ありがとうございます」

俺は中に入り、辺りを見渡した。そこには沢山の人がおり、皆それぞれ自分の用事を済ませているようだ。

(やっぱりここはゲームの世界なんじゃないかって思うくらいだな。俺の知っている世界よりも遥かに進歩している。まさか、こんな世界があるなんてなぁ。いやはや驚きだぜ)

「それでは、こちらの用紙に必要事項を書いて提出してください」

「は、はい」

(えっと。名前に性別に年齢に出身地に職業か。俺は前世の記憶があるから書けるが、この世界の人達はどうやって書いているのだろうか?まあ、そこは気にしないでおくとして、後は何を書くべきなのか……。職業はとりあえず無職でいいよな。名前はそのままアテナでいいよな。性別は女で年齢は13歳か。ってことは、見た目的には13歳の女の子に見えるわけか。うわぁ。なんか変な感じがしてきたぞ。まあ、今は仕方ないか。後でどうにかできるといいんだけど……。って、出身地は書かなくても大丈夫だよな?多分。まあ、書いておいた方がいいよな。うん。一応書いておくか。名前はアテナで、性別は女で年齢は13歳と。よし!これでいいはずだ)

「書き終わりました」

「ありがとうございます。それでは、しばらくしたら担当の者から声がかかりますので、それまでここでお待ち下さい」

「分かりました」

(それにしても、受付の人めっちゃ美人だったなぁ。俺の好みのタイプだ。俺もあんな風になれるのかなぁ。でも、俺が男だった時の容姿ってどんなだったっけ?うーん。あんまり覚えていないんだよなぁ。そもそも、顔立ちが整っていたのかも分からないし、イケメンだったのかブスだったのかもわからない。ただ、自分のことを俺と呼んでいたのだけは確かだったような気がする。ということは、俺が女になったとしても俺という一人称を使うことによって、俺が俺であることは証明されるはずだ)

そんなことを考えていると、先程の女性が俺に話しかけてきた。

「すみません。少しよろしいでしょうか?」

「はい。なんでしょうか?」

「貴方の担当をさせていただくことになりました。クレアと言います。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

「それでは、まず最初に貴方のステータスについて確認したいのですが、よろしいでしょうか?」

「は、はい。お願いします」

「それでは、失礼致します」

そう言うと、彼女は何かを操作し始めた。

(ステータスの確認か。一体どういったものなんだろう?)

「ステータスオープン」

すると、目の前にステータス画面が表示された。

【名前】

アテナ・アスタルトス 【種族】

人間 【年齢】

13歳 【職業】

無職 【レベル】

1 【体力】

100/100 【魔力】

1000/1000 【攻撃力】

10 【防御力】

20 【敏捷性】

30 【精神力】

50 【運勢】

3 【スキル】

鑑定Lv.1 言語理解 経験値増加 アイテムボックス 【ユニークスキル】なし

(ふむ。これが今の俺のステータスか。やっぱりこれはチート級に強いよな。っていうか、強すぎるよな?だって、レベル1なのにステータスが100もあるし、運勢に至っては3だし。これ絶対におかしいよな?もしかして、この世界はステータスが全てとか?いやいやいやいや。流石にありえねぇよ。だって、俺みたいな一般人がステータスで勝てるはずがないもん。だって、レベルが上がっていくとステータスは上がるけど、運勢は上がらないし、ステータスの数値だって増えることはない。だから、いくらステータスが高かろうが、その差は歴然なのだ。だから、俺が最強になるのは不可能だと思うんだよね。まあ、それはさておき、問題はここからどうするかなんだが、俺としてはこのステータスを他人に見せるつもりはない。何故かと言うと、もし見せてしまうと、面倒事に巻き込まれるかもしれないからだ。まあ、ステータスを見せただけで絡まれるとは考えにくいが、それでも用心しておくことに越したことはないだろう。だから、俺は誰にも見られないようにしなければならないのだ。まあ、アイテムボックスの中に入れてしまえばバレることはないだろうから、そこは問題ないと思うのだが、問題はアイテムボックスが使えるかどうかだ。実は、この世界に来る時に神様がアイテムボックスのスキルを付与してくれた。だが、それが使えなかった場合、俺はこの世界で生きていくことが困難になってしまう。そうなると、俺はこの世界で死ぬことが確定してしまうわけで、それだけは何としてでも避けなければならない。

(俺は生きるためにこの世界に来たのだから、死ねば元も子もないからな。慎重にいかなければ……)

そんなことを考えていると、俺の思考を読み取ったかのようにクレアさんが言った。

「安心してください。貴方の考えていることは分かっています。だから、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ」

「え?どうして分かったんですか?」

「それは私が女神であるからです。私達は相手の思考を読むことができるのです」

「な、なるほど。そういうことですか」

「はい。それで、貴方のステータスのことですが、その点は安心してください。ちゃんと貴方の考えている通りになっていますから」

「そうですか。良かったです」

「それでは、貴方のステータスを見せてもらいますね」

「はい」

そして、俺は彼女に自分のステータスを見せると、彼女からとんでもない言葉が出てきた。

「こ、こんなことって……」

「どうかされましたか?」

「いえ、なんでもありません。気にしないでください」

「は、はい」

「それよりも、貴方の職業はなんですか?」

「無職です」

「そ、そうですか。無職ですか……」

「はい」

「わ、分かりました。貴方の職業については何も言いません」

「ありがとうございます」

「ところで、これからのことなのですが、とりあえず冒険者ギルドに入って頂きたいと思います」

「分かりました」

「それとですね。私達と一緒に行動してもらうことになると思いますが、よろしいでしょうか?」

「はい。構いませんよ」

「ありがとうございます」

(この人は本当に良い人だなぁ)

「それでは、早速行きましょうか」「はい」

こうして、俺の冒険者としての生活が始まった。

受付の女性の案内により、俺は冒険者ギルドへとやってきた。俺は建物の中に入ると、そこには沢山の人達がいた。

(やっぱりギルドは賑わっているなぁ。なんかこういう雰囲気懐かしいなぁ)

「あの、ここって依頼の受注ってできますか?」

「はい。可能となっております」

「それじゃあ、討伐系の依頼を受けたいんですが、何かおすすめのものってありますか?」

「それでしたら、こちらのクエストなどは如何でしょうか?薬草採取系の依頼となっています」

「分かりました。では、それをお願いします」

「畏まりました。それでは、この依頼書を持ってあちらのカウンターまでお越し下さい」

「はい」

俺は言われた通りに受付に行くと、そこには先程とは違う受付の人が立っていた。

「それでは、この依頼書に必要事項を書いてください」

「はい」

(やっぱり受付の人も綺麗だなぁ。俺の好みだ)

「書けました」

「ありがとうございます。それでは、少々お待ち下さい」

「はい」

しばらく待っていると、先程の受付の人が俺に声をかけてきた。

「すみません。こちらに来て頂けますか?」

「は、はい」

(あれ?もしかして、俺って怪しまれているのか?もしかすると、この世界で無職なのは珍しいのか?だとすればマズイなぁ。どうにかして誤魔化さないと)

「それでは、こちらの水晶に手を当ててください」

「はい」

(これで俺が無職じゃないことが分かれば、なんとかなるはずだ)

俺は手を当てると、いきなり眩しい光が放たれた。

「え!?これはどういうことだ?」

「な、なんて光り方をしているんだ?」

「おい!あいつ無職だろ?」

「そうだよな?だって無職があんなに強力なスキルを持っているはずがないもん」

「きっと誰かが嘘をついているんだよ」

「それもそうか。無職がこんなスキル持っているはずないものね」

「うんうん」

「皆さん。落ち着いてください」

すると、周りにいた人達は静かになった。

「申し訳ございませんでした。貴方があまりにも強い魔力を持っていたものですから、つい驚いてしまいました」

「えっと、つまりどういうことなんでしょうか?」

「はい。貴方には魔力がかなりあるようです。恐らくですが、魔法の才能があると思われます」

「な、なんと!魔法の才能が!本当ですか?!」

「は、はい。間違いないかと……」

「……ありがとうございますッ!!」俺は思わず叫んでしまった。まさか、この世界にきてすぐに魔法が使えるようになるとは思ってもいなかったからだ。

(よし。これで俺も魔法が使えるぞ!!)

俺は嬉しさのあまりニヤけてしまった。

「そ、そんなに嬉しいのですか?もしかして、魔法の才能がなかったのでしょうか?」

「いやいやいや。そんなことはありませんよ。ただ、魔法が使えるようになったのが嬉しくて」

「そうなのですか。確かに貴方は見た目が13歳の女の子ですから、魔法使いというよりかは剣士とかの方が似合いますよね」

「は、はい。そうかもしれません」

(ヤバい。どうしよう。俺が女になってしまったことをどう説明すべきなのか分からない。ここは正直に言うべきだろうか?いや、それは絶対にダメだろう。もし仮に本当のことを言うとしたら、異世界から来たということを打ち明けなければならない。そんなことできるはずがない。そもそも信じてもらえるかもわからないし、俺が女になったことについて聞かれても答えられない。というか、俺がこの世界の人間でないことがバレたら、絶対に変な目で見られるよな。それは困る。とにかく、今は適当に話を合わせておくしかないよな)

「では、手続きを済ませてしまいますね」

「お願いします」

「それでは、こちらのカードをお受け取りください」

「はい」

俺はカードを受け取って確認すると、そこには俺の名前とランクが書かれていた。

【名前】アテナ・アスタルトス 【種族】人間【年齢】

13歳 【職業】

無職 【レベル】

1 【体力】

100/100 【魔力】

1000/1000 【攻撃力】

10 【防御力】

20 【敏捷性】

30 【精神力】

50 【運勢】

3 【スキル】

鑑定Lv.1 言語理解 経験値増加 アイテムボックス 【ユニークスキル】なし(ふむ。これが俺のステータスか。やはりレベル1にしては強すぎる気がする。それにしても、運勢が3というのはやっぱり低いよな。まあ、俺が男だった時の容姿を覚えていないから、どのくらいのレベルだったのかが分からんから何とも言えないが、少なくともレベル1で運勢が3っていうのは低いと思うんだよね。普通に考えて、レベルが上がるにつれて運勢も上がっていくはずなんだが、それは一体どうなっているのだろう?)

「あのー、すみません。少し質問いいですか?」

「はい。構いませんよ」

「えっと、まず俺はどうやってレベルを上げるんですか?」

「基本的にはモンスターを倒すことによって上がります」

「な、なるほど。他には何か方法はないんですか?」

「他にあるとすれば、ダンジョンで宝箱を開けることですかね」

「な、なるほど。ありがとうございます」

(ということは、俺はこの世界で強くなるためにはダンジョンを攻略しなければいけないってわけか。これは結構厳しいかもしれないな。いや、でも待てよ。もしかしてだけど、俺のスキルを使えば簡単に強くなれるんじゃないのか?そういえば、神様から貰ったスキルの中に『経験値増加』ってあったけど、もしかしてこれのせいなんじゃないか?確か、このスキルの効果はレベルアップに必要な経験の数値が10倍になるというものだった。ということは、このスキルの効果によって俺はこの世界でトップレベルの強さになっているのではないか?そう考えると、辻妻が合うような気もするが、それでもまだ疑問が残る。何故なら、俺はステータスが100しかなかったからだ。いくらなんでもステータスが低いとは思うのだが、それは俺の勘違いなのだろうか?とりあえず、それは今度クレアさんに相談してみよう)

「他に聞きたいことはありますか?」

「いえ、大丈夫です」

「そうですか。それでは、最後にこちらのカードをお渡しいたしますので、身分証明書としてお使いください」

「はい。分かりました」

俺はカードを貰うと、早速アイテムボックスの中に入れた。

「それでは、頑張ってくださいね」

「はい。頑張ります」

こうして、俺はギルドを後にした。

俺は冒険者ギルドを出て、街を見て回っていた。

(やっぱり街並みは中世ヨーロッパ風だなぁ。なんか懐かしい気分になってくるな。やっぱりこの世界にも猫がいるんだなぁ。ちょっと触ってみたいなぁ。あれ?もしかして、この子ってケットシーじゃないか?可愛いなぁ。モフモフしてみたい)

「なぁ、お前ってケットシーだよな?」

「ニャ?そうだけど、それがどうかしたのかニャー?」

(おお!喋った!!)

「い、いや、特に何でもないぞ」

「ニャ?それじゃあ、どうして話しかけてきたのかニャー?」

(やっぱり語尾は"ニャ"なのか。なんか癒されるなぁ)

「いや、その、なんか可愛かったからつい……」

「ニャ!そ、そうかニャー。嬉しいことを言ってくれるじゃないのニャー」

(照れてる姿もまた可愛いなぁ。やっぱりこの子は良いなぁ)

「なぁ、良かったら一緒に行動しないか?」

「ニャ?私と一緒に行動するのかい?」

「ああ。俺の仲間に聞いてみてもいいか?」

「別に構わないニャー」

「よし。分かった」

俺は念話で仲間達と会話することにした。

(皆、聞こえるか?)

(どうしましたか?主様)

(なになに?どしたの〜?)

(お呼びでしょうか)

(どうされましたか?)

(実はな、これからこの街を探索したいと思っているんだけど、その間だけ俺の側にいて欲しいんだよ)

(なになに?そういうことか。それなら任せてよ!私がずっと側にいてあげるよ!)

(はい。承知致しました)

(ありがとう。助かるよ)

「えっと、俺の仲間たちも問題無いって言っているから、俺の側で一緒にいてくれても良いかな?」

「もちろんだニャー。私はいつでも大歓迎だニャー」

「ありがとう。それじゃあ、よろしく頼むな」

「はいはい。それじゃあ、さっさと行くニャー」

「おう」

(よし。これでケットシーの子と仲良くなれたぞ。それにしても、俺の側には美人ばかり集まっているよなぁ。もしかして、俺ってもしかしてモテ期なの?それとも、これは夢なのだろうか?だとしたら、俺は早く起きないといけない。だって、こんなに素晴らしい世界が現実にあるはずがないからね。だから、ここは夢の中だと思わせておくれ。そうすれば、俺は心置きなくハーレム生活を送れるからね。まあ、でもそんなことよりも、今は目の前にいるこの子を全力で愛でることにしよう。だって、こんなに可愛いんだもん。仕方がないよね。だって、こんなに可愛いんだもん。大事なことなので二回言いました。というか、俺ってこんなキャラだったけ?まあいいか。だって、こんなに可愛いんだもん。だって、こんなに可愛いんだもん。だって、こんなに可愛いんだもん。大事だから三回言ったよ。というか、この子の頭には耳があるんだよなぁ。もしかすると、この世界にきて初めて見る動物かもしれないなぁ。いやいや、そんなことはないはずだ。きっと、どこかに犬とか猫に似た生き物は存在するはずだ。そうだ。俺はこの世界を舐めていたようだ。もっと注意深く観察しなくては。この世界にきて俺は変わったんだ。この世界にきて俺は生まれ変わったんだ。この世界の常識に染まってしまったんだ。この世界の非常識は俺にとっての常識なんだ。俺がこの世界にきてから、もう既に3日が経過している。つまり、俺は既にこの世界に馴染んでいるということなんだ。俺はこの世界にきて、俺は変わった。俺はこの世界で生きていこうと思う。そして、俺は必ず幸せを掴む。この世界で俺は無双する!!よし。そうと決まれば、まずはこの世界の情報収集からだな。よし。早速始めるぞ)

「おい。ちょっと聞きたいことがあるんだが」

「ん?どうしたのニャ?」

「この近くに美味しい食べ物屋はあるか?」

「うん?そんなことかニャー。それなら私の行きつけのお店に連れて行ってやるニャー」

「それはありがたい。是非とも案内してくれないか?」

「了解ニャー。こっちに来るニャー」

「分かった。すぐに行くよ」

こうして、俺達は目的地に向かって歩き始めた。

しばらく歩いていると、そこには串焼きの屋台があった。

「ここが私の行きつけの店だニャー」

「へぇー。確かに旨そうな匂いがするな」

「ニャハハー。そうだろう。なんたって、この店の店主は凄腕の料理人なんだニャー」

「な、なに!?」

「ニャ?どうかしたのかニャー?」

「いや、なんでもない。ただ、ちょっと驚いただけだ」

「そうかニャー。それはよかったニャー」

「な、なぁ、ちなみにこの店で1番高いメニューってどれになるんだ?」

「うーん。一番高いのは『キングボアのステーキ』だニャー。値段は5000ゴールドになるニャー。でも、本当に食べるのかニャー?お金は持っているのかニャー?」

(うーん。やっぱり金は必要だよなぁ。でも、俺のアイテムボックスの中には大量の金貨が入っているから、それを出せば何とかなるだろう。でも、それじゃあせっかく異世界に来た意味が無いからなぁ。それに、この世界のことをよく知らない状態で無闇矢たらに金をばら撒くのも良くない気がする。それに、俺はこの子から色々と情報を聞き出さないといけないからな。となると、やはりここで稼ぐしかないだろう。幸いなことに、俺の職業は『商人』になっている。なら、これを利用して一攫千金のチャンスを狙うべきだろう)

「えっと、その『キングボアのステーキ』を5つほど頼めるか?」

「ニャ!本気かニャー?」

「ああ。勿論だ」

「分かったニャー。店長さんに言ってみるニャ!」

(おっと。まさかこんなにあっさりと注文が通るとは思ってもいなかったぜ)

(お待たせしました〜。ご注文の品でございます)

「ありがとうございます」

(おお!これがキングボアの肉なのか)

(ふむふむ。見た目は普通だな。味の方はどんな感じなのだろうか?よし。とりあえず、食べてみよう)

(パクッ)

「お、美味い!!」

(これはかなり美味いな。これは癖になりそうで怖いな)

「ニャ!だろ?」

「ああ。これは絶品だな」

(よし。これで俺の目標は決まったな。この世界でトップクラスの料理人になることだ。この世界で俺の料理を広めるのだ!!)

「ニャ?なんか悪い顔になっているニャー」

「気のせいじゃないか?」

「そうかニャー」

(それじゃあ、さっさと帰ろうかな)

「それじゃあ、俺はそろそろ帰るとするよ」

「そうかニャー。また来いよニャー」

「ああ。また来るよ」

(よし。まずは資金稼ぎを頑張らないとな)

こうして、俺は宿屋に帰ることにした。

俺は宿に戻ると、クレアさんと話をしていた。

「アテナさん、少しよろしいですか?」

「はい。大丈夫ですよ」

「それでは、お話させていただきますね。実は最近、王都で不穏な動きが見られるんです」

「それは一体どういうことですか?」

「はい。実はここ数ヶ月の間に、急にモンスターの数が増えているのです。しかも、普通の魔物ではなくて、上位種と呼ばれる個体まで現れているらしいです」

「そ、そうなんですか……。その現象については何か分かりましたか?」

「いえ……それが、今のところ何も分かっていないんですよ」

「そうですか……」

(やっぱりそうなのか。俺の予想通り、この世界にはダンジョンが存在しているみたいだな。それなのに、この世界には冒険者ギルドというものが存在しない。ということは、おそらくだがこの世界には冒険者が存在しないのではないだろうか?もし仮に、この世界の冒険者達が全員死んでしまった場合、その人達が生き返る可能性はかなり低いと思われる。なぜなら、俺は神様にチートスキルを貰っているが、他の人は貰っていないからだ。それに、俺の場合はステータスが100しかなかったからこの世界に来たわけであって、他の人がこの世界に来ても強くなれると限ったわけではない。だから、この世界には俺のような人間は存在しないと考えられる。というか、そもそもの話として俺が転生した時点で、俺以外の人間は存在しなかった可能性が高いな)

「それでですね。もしかしたら、この異変が今回の件と関係があるのではないかと思いまして」

「な、なにか心当たりがあるのでしょうか?」

「はい。実は、この国の近くには『迷宮都市』と呼ばれている街が存在するんです」

「な、なに!?」

「ど、どうされました?」

「あ、いや、すみません。実は私もその街について調べていたところなんです」

「そうなのですか?」

「はい。実は、私がこの国にきた理由でもあるのです」

「な、なにか訳があるのでしょうか?」

「はい。実は、私の妹が病気を患っているようなので、治療できる方法を探している最中なんですよ」

「な、なに!?妹さんの病が治せるかもしれないのか!?」

「え?あ、はい。一応は可能性があるみたいなので、この街に行こうと思っているんですよ」

「そうだったのか。それならば、私が案内してあげようではないか!」

「え?いいんですか?」

「ああ。任せておきなさい」

(これは嬉しい誤算だな。これで、早く王都の問題を解決することができそうだな)

「それじゃあ、お願いしますね」

「うむ。それじゃあ、明日の朝に出発するぞ。準備をしておいてくれ」

「はい。分かりました」

こうして、俺は次の目的地である『迷宮都市』に向かうことになった。

俺は今、馬車に乗って移動している。

そして、俺はクレアさんの隣に座っている。

「ところで、この国はなんて名前なんですか?」

「この国の正式名称は『アルストリア王国』というんだぞ」「へぇー。この国が『アルストリア王国』っていう国名なのは知っていたけど、正式名称までは知らなかったなぁ」

「そうなんだな。ちなみに、この国の王様は『アルフ・ゼクセド』という名前なんだぞ」

「そうなんだなぁ」

「そして、この国の首都が『王都』なんだぞ」

「へぇー。そうなんだなぁ」

(この世界にきてからずっと思っていたんだけど、どうしてこの世界の人達はこの世界のことを説明しようとする時に語尾が『んだなぁ』になるのだろうか?)

(うーん。俺のこの考えは間違っていないはずだ。だって、俺がこの世界にきてから出会った人の中で、語尾が『んだなぁ』だったのは、この人だけなんだもん。きっと、この世界の人達は俺が思っている以上に『んだなぁ』を使うのだろう)

(まあ、そんなことは置いといて、俺がこの世界にきてからずっと疑問だったことを聞いてみることにするか)

「あのー。ちょっと質問なんですが、いいですか?」

「ん?どうしたんだ?」

「えっと、ちょっと聞きたいことがあるんですけど、この世界は身分制度とかってあるんですか?」「うん?そんなことを聞くってことは、もしかして君はどこかの貴族様なのかい?」

「い、いえ違いますよ。俺は貴族じゃないです」

「そうなのか。なら、教えてあげるが、この世界は実力が全てなんだ。だから、君が言うように貴族という存在は存在している。でも、この国では貴族よりも強い平民の方が圧倒的に多いんだよ」

「な、なるほど」

「まあ、そんなことより、そろそろ着く頃合いだと思うのだが……」

「え?もう着いたんですか?」

「ああ。どうやら、目的の場所に着いたようだな」

「へぇ〜。ここはどこなんですか?」

「ここは、『迷宮都市』の入口だ」

「へぇ〜。ここが『迷宮都市』かぁ」

(確かに、街の中の雰囲気と外の風景にギャップがありすぎるな。なんか、街の中に森が広がっている感じだな。それに、なんか見たこともない生き物もいるし)

「なあ、この辺に魔物とかっているのか?」

「ん?魔物のことか?この辺りには魔物はいないと思うぞ」

「そっかぁ。それなら良かったよ」

(よし。魔物がいないのであれば安心だ)

(それにしても、この都市の警備体制はかなり厳重だなぁ)

(それに、街中にも武装をした人が沢山いるみたいだし)

(もしかするとだけど、ここの治安はかなり悪いのかもしれないな)

(それにしても、この街に来る途中ですれ違った人達はみんな物凄く強そうだったな)

(もしかして、ここにくる途中に見かけた人たちは冒険者なのかな?だとしたら、かなり運が良いな)

(でも、やっぱりここでも俺の職業は『商人』なのか)

(まあ、とりあえず今は考えるのをやめて、この都市で何をするかを考えよう)

(まずは情報収集だな。情報を集めるには酒場に行くのが一番だろう)

「よし。それじゃあ、早速行くとするかな」

「ん?どこにいくつもりなのだ?」

「え?そりゃあ、もちろん酒を飲みにですよ」

「なっ!そ、それはダメだ!」

「え?な、なぜですか?」

「それはだな。お酒を飲んで酔っぱらうと、犯罪に巻き込まれる恐れがあるからだ」

「そ、そうなんですか……」

(これはかなりまずい状況だな。このままだと、せっかくの情報集めができなくなってしまう)(仕方ない。なんとか説得してみるか)

「あ、あの〜」

「な、なんだ?」

「えっとですね。俺がお酒を飲むのにはちゃんとした理由があるんですよ」

「り、理由?」

「はい。実は、俺はこの世界に来たばかりでお金を持っていないんですよ」

「ふむ。そうか」

「それで、俺はこの世界で生きていくために情報を集めないといけないんですよ」

「なっ!それは本当か?」

「え?あ、はい。そうですが」

「そうか。そうか。それならば、私がおごってあげようじゃないか」

「ほ、本当に良いんですか?」

「ああ。私はこう見えても結構稼いでいるのだぞ」

「ありがとうございます。それではお言葉に甘えてお邪魔させていただきます」

「うむ。任せておけ」

こうして、俺はクレアさんと一緒にお店に入った。

俺は今、クレアさんと二人で酒場にいる。

「うーん。やっぱり、この世界に来て最初の一杯は美味いなぁ」

「ああ。そうだな」

(それにしても、クレアさんはどうしてここまで俺に親切にしてくれるのだろうか?)(さっきまで俺はクレアさんに『迷宮都市』について色々と聞いていた。そのせいで、俺はかなりの量の情報を仕入れることができた。そのおかげで、俺はこの世界についてある程度知ることができている。だが、俺はただの一般人でしかない。だから、俺がこの世界について知っていることなどたかが知れているはずだ。なのに、どうしてそこまで俺に優しくするのだろうか?)

(もしかしたらだが、俺を気に入ってくれたからかもしれないな)

「ニャ!ねぇねぇ。マスター。こっちにある料理も食べてみたいニャー」

「おう!分かったぜ!!」

「すまない。私の連れがうるさくしてしまって」

「いえいえ。全然大丈夫ですよ」

「そうか。それなら良かった」

「ところで、一つ聞いてもいいか?」

「はい。別に構いませんが」

「君はどうして冒険者になろうと思ったんだ?」

「え?な、なんでですか?」

「いや。単純に興味があっただけだ」

「そ、そうですか……。えっと、実はですね。俺はこの世界に来たばかりなのですが、実は前の世界にいた時にも似たような経験をしているんです」

「ほう。それで?」

「はい。俺は小さい頃から体が弱かったんです。だから、俺はいつもベッドの上での生活を強いられていました。そんな生活をしているうちに、だんだんと生きることに希望を持てなくなっていました。それでも、まだ俺は諦めていませんでした。いつかは治るかもしれない。そんなことを思いながら毎日を過ごしてきました。でも、結局治ることはありませんでした」

「そうか」

「そんな時、俺の病気が治せるかもしれないっていう医者が現れたんです」

「なに!?」

「まあ、結果は失敗だったんですけどね」

「そうか……」

「はい。でも、その時に思ったんですよ。俺が生きている意味はあるのかなって………….そして、気づいたら自殺しようとしてました」

「え!?自殺しようとしたのか!?」

「はい。でもその時に神様が現れました」

「なっ!?神が!?」「ええ。そして、神様からチートスキルというものを貰ったんです」

「なに!?それじゃあ、君は勇者なのか?」

「い、いや。そういうわけじゃないんですけど、少し特殊なんですよね」

「特殊?」

「ええ。俺は『商人』という職業なんですけど、どうやらこの世界には『商人』という職は存在しないみたいなんです」

「なっ!!そんな馬鹿な!」

「俺も最初は信じられなかったんですけど、実際にステータスを確認してみたら『商人』という文字が存在していなかったんですよ」

「そ、そうなんだな」

「まあ、そんなことがあって、俺はこの世界では無能だということが分かりました。だから、この世界にきてからずっと落ち込んでいたんです」

「そんなことがあったんだな」

「はい。でも、この国に来てからクレアさんと出会い、俺はこの国で生きていこうと決意しました」

「そ、そうなのか」

「はい。だから、この国のために頑張りたいと思っているんです」

「なっ!な、なんと素晴らしい心意気なんだ!」

「え?ど、どうかしたんですか?」

「い、いや。なんでもないんだ」

「そ、そうですか」

(まあ、とりあえず俺がこの国で頑張っていきたいと思っていることは伝わったみたいだな)

「よし!それじゃあ、今日は君の門出を祝うためにも、いっぱい飲むぞー!!!」

「え?ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」

こうして、俺はこの世界で初めてのお酒を堪能した。

俺は今、『迷宮都市』の宿屋に泊まっている。

「ふぅー。久しぶりにお酒を飲んだけど、なかなか美味しかったなぁ」

俺はこの世界に来て初めてお酒を飲んだのだが、とても美味しくてつい飲み過ぎてしまった。

「明日は朝早いし、もう寝るかぁ」

(それにしても、この街は色々な意味で凄いな)

(この街では冒険者になる人が多いらしく、冒険者になるための試験が沢山あるらしい)

(まあ、それはいいとしても、この街では『奴隷』という制度が存在する)

(この街では奴隷制度が認められていて、犯罪を犯した人や借金を抱えた人が強制的に働かされている)

(そんなことよりも、この街の治安がかなり悪いことが問題だな)

(この街では冒険者がかなり多いので、治安が悪くなるのは当たり前と言えば当たり前のことなんだが、それにしても悪すぎる気がする)

(まあ、この街がこれから発展していくためには仕方がないことなのかもしれないが)

(それにしても、この世界の人達は本当に強いなぁ)

(この国の冒険者はこの国の王様よりも強いと言われているらしい)

(それにしても、この世界には『亜人種』と呼ばれる種族が存在しているようだ)

(この世界には人間族の他に、エルフ族、ドワーフ族、獣人族の四種類の種族がいる)

(この世界には他にも魔族と呼ばれている存在もいるらしい)

(この世界には『魔法』と呼ばれるものも存在している)

(この世界には『スキル』と呼ばれるものも存在する)

(この世界には、俺の知らないことだらけだ)

(それにしても、俺はいつになったら強くなれるんだろうか……)

「うーん。やっぱり、この世界にはレベルという概念が存在しないのかもしれないなぁ」

「とりあえず、今は考えるのをやめて寝るとするかぁ」

(よし!それじゃあ、お休みなさい)

(ん?なんか、外の方が騒がしいような)

(まあ、気のせいだろう)

(気にせずもう一度おやすみなさ〜い)

(うん?誰かが俺の部屋の前にいる?)

(一体誰だろう?)

(とりあえず、ドアの前まで行ってみよう)

(あっ。やっぱり、この部屋の前で間違いないな)

(この声はクレアさんか?こんな時間に何か用事でもあるのかな?)

(とりあえず、話だけでも聞いてみるか)

「あのー。クレアさんですか?どうしたんですか?」

「あ、ああ。起こしてしまったか?」

「いや。起きていたんで大丈夫ですよ」

「そ、そうか。それなら良かった」

「それで、どうしたんですか?こんな夜遅くに」

「えっとだな。その、なんだ。君に頼みがあるんだ」

「え?頼みですか?」

「ああ。実は私には妹がいてな。その子が病気にかかってしまったのだ」

「え?病気ですか?」

「ああ。それで、私はどうしてもその子を治したいと思ってな。だが、今の私の力だけではどうすることもできない」

「そうなんですか……」

「ああ。だから、私は君の力を貸して欲しいのだ」

「俺の力って言っても、俺はただの一般人ですよ?そんな俺にできることなんて何もありませんよ?」

「いや。そんなことはないぞ」

「え?どうしてそう言い切れるんですか?」

「それはだな。私はこう見えてもAランク冒険者なのだ」

「え!?そ、それは本当ですか!?」

「ああ。本当だとも」

「そ、そうですか……」

(クレアさんってそんなに強かったのか……。見た目は普通の女性にしか見えないのになぁ)

(それにしても、クレアさんの妹さんを助ける方法かぁ。俺にできることがあるのだろうか?)(でも、このまま放っておくのもダメだよな。よし。俺にできることは少ないかもしれないけど、やってみよう)

「クレアさん。俺に何ができるか分かりませんが、俺にできる限り協力します」

「ほ、本当に手伝ってくれるのかい!?」

「はい。もちろんです」

「そ、そうか。ありがとう」

(それにしても、クレアさんがAランク冒険者だったとはな俺も早くこの世界で有名な冒険者になりたいな)

「あ、そうだ。俺もクレアさんに聞きたいことがあったんですけど、聞いてもいいですか?」「ん?別に構わないが、いったいどんな質問だい?」

「えっとですね。クレアさんの職業について教えてもらってもいいですか?」

「私の職業か?私の職業は『剣士』だ」

「『剣士』なんですか!?」

「あ、ああ。そうだが、それがどうかしたのかね?」

「い、いえ。なんでもないんですけど、ちょっと驚いただけです」

「そ、そうなのか?」

「はい。そうです」

「そういえば、君はなんで冒険者になろうと思ったんだ?」

「え?えっとですね。俺の場合は自分のためというよりも、家族のためという感じですね」

「なに!?もしかして、ご両親のどちらかが亡くなったのかい?」

「いえ。そういうわけではないんですけど、俺の家族は全員体が弱いんですよ。だから、俺が稼がないと生活ができないんですよ」

「そ、そうなのか。それは大変だな」

「はい。でも、俺はこの世界で絶対に生きていきますから」

「そ、そうか。君は強いんだな」

「い、いや。そんなことないですよ」

「いや。そんなことあるさ。私だってこの国のために頑張っているが、まだ全然力が足りない。でも、いつかはこの国を守っていけるような男になってみせる」

「そ、そうですか。俺も負けないように頑張ります」

「その意気だ。それじゃあ、そろそろ寝るとしよう」

「そうですね。それじゃあ、おやすみなさい」

「あぁ。おやすみ」

(よし。明日も頑張ろう)

俺は今、『迷宮都市』にあるギルドに向かって歩いている。

「えっと、確かこの辺りのはずなんだけどな」

俺は『迷宮都市』のギルドで依頼を受けるために、昨日の夜からずっと探し続けていた。

「おっ!あった!ここが『迷宮都市』のギルドかぁ」

俺は『迷宮都市』のギルドにたどり着いた。

「よし!入るぞ!」

俺は『迷宮都市』のギルドの中に入った。

「へぇー。結構広いんだなぁ」

俺は『迷宮都市』のギルドを見て、思わずそんな言葉を口にした。

「ん?あれは依頼掲示板かな?ちょっと見てみよう」

俺は『迷宮都市』のギルドの中にある依頼掲示板に向かった。

「な、なんなんだこれは!」俺は思わず叫んでしまった。

「おい!そこのお前!うるさいぞ!静かにしろ!」

俺はいきなり怒鳴られた。

「すいません!でも、これを見てください!」俺は急いで叫んだ人に謝りながら、依頼掲示板の方を指差した。

「ん?なんだ?この張り紙か?どれどれ…….なっ!なんだと!」

俺に怒っていた人は、俺と同じように驚いていた。

「こ、この内容は本当なのか?」

「はい。多分本当のことだと思います」

(まさか、この世界にも『勇者』がいるなんてな)

(それにしても、この世界にも同じ名前の『勇者』がいるっていうことは、他にも『異世界人』がいるのかもしれないな)

(まあ、とりあえず今はこの依頼を達成するために動くしかないな)

(とりあえず、受付に行ってこの依頼を達成させてもらうか)

「あのー。この依頼を受けたいんですけど」

「はい。かしこまりました。では、こちらの書類に必要事項を書いてください」

「はい。わかりました」

(それにしても、『商人』の欄だけ空欄になっているのはなんでだろう?)

(まあ、とりあえず書いていくか)

(名前はタクミ・トウジョウっとこれでいいのかな?)

(年齢のところは21歳って書けばいいのか?)

(後は、性別のところを男でいいんだよな?)

(まあ、いいか)

(次は特技のところに何か書くべきなのか?)

(まあ、とりあえず適当に書いておこう)

(後は特に書くことは無いな)

(よし!書き終わったし、提出するか)

「はい。ありがとうございます。それでは、このクエストの達成をお願いします」

「はい。わかりました」

(さて、この『迷宮』の攻略はどうすればいいのかな?)

(この世界には『魔物』と呼ばれる存在がいるらしい)

(そして、この『迷宮』には『ゴブリン』と呼ばれる存在がいるらしい)

(『ゴブリン』は大体Cランクくらいの強さらしい)

(『ゴブリン』が生息している階層は1〜5層らしい)

(つまり、俺がこの『迷宮』を攻略するには最低でも『Bランクの冒険者』が必要らしい)

「うーん。この『迷宮』を攻略してみたい気持ちはあるけど、今の俺じゃ無理だよなぁ」

「よし!とりあえず今は『迷宮』のことよりも、妹の病気を治すことに専念しないと」

「でも、どうやって探せばいいんだろう?」

「うーん。とりあえず、この街にいる医者に片っ端から声をかけてみるか」

「まずは、一番最初に目についた診療所に入ってみよう」

「すいませーん」

「はい。どなたでしょうか?」

「えっと、俺の名前はタクミと言います。俺の妹が病気にかかってしまったみたいなんですけど、この近くに良い病院はありませんか?」

「お兄さんはどこから来たんですか?」

「あ、あのー。俺の話を聞いていますか?」

「はい?もちろん聞いておりますよ」

「そうですか。それで、俺の妹が病気にかかっちゃったんですけど、どこか良い病院を知りませんか?」

「そうですか。それなら、私が紹介してあげましょう」

「え?本当ですか?ありがとうございます」

「いえいえ。それでは、ついてきてください」

俺はその女の人に案内されて、一つの家の前にやってきた。

「ここです。ここに私の知り合いのお医者様が住んでらっしゃるんです」

「そうなんですね。ありがとうございました。それじゃあ、行ってきます」

「はい。頑張ってきてください」

俺はその女の人と別れて、家の中に入ろうとした。

「待てよ。もしかして、これが罠ってやつじゃないよな?」

「いやいや。そんなわけないよな。うん。大丈夫だ。きっと」

俺はそう自分に言い聞かせて、ドアノブに手をかけた。

「ん?なんか鍵がかかっているような気がするぞ?」

「仕方がない。ノックをして誰かが出てくるまで待つことにしよう」

コンコンッ

「すいませーん。誰かいませんか?」

「はい。なんですか?」

「あっ。よかった。誰もいないのかと思いましたよ」

「それで何の用事ですか?」

「実は俺の妹が病気にかかったらしくて、今すぐにでも治療して欲しいんですけど、どこに行けばいいのか分からなくて困っているんですよ」

「妹さんが病気に……分かりました。少しお待ち下さい」

「はい。ありがとうございます」

(それにしても、この人が出てきてくれて良かったな)

(もしかしたら、この人は俺が騙されていることを分かっていて助けてくれたのかもしれないな)

(でも、もしそうだったとしても、この恩は必ず返さないとな)「お待たせしました。どうぞ中にお入りください」

「ありがとうございます」

「それでは、私は外で待っているので、何かあれば呼んでください」

「はい。分かりました」

「それでは、失礼します」

「えっと、中に入るか」

「お邪魔しまーす」

俺は部屋の中に入った。

「えっと、この部屋は診察室なのか?」

「それにしても、ずいぶんと綺麗な場所だなぁ」

「ん?奥の方から人の気配がするような……」

「やっぱり気のせいだったのかな?」

俺はそう思いながら、奥の部屋へと足を踏み入れた。

「え!?」俺は思わず叫んでしまった。

「え!?なんでこんな所に『勇者』がいるんだ!?」

俺は驚きすぎて、その場から動けなくなってしまった。

「なんで、『勇者』が俺の家の中で椅子に座っているんだ?」

俺は思わずそう呟いてしまった。

「え?どうして俺が『勇者』だって知っているんだ?」

「え?もしかして、俺の声が聞こえていたりするの?」

「ああ。しっかりと君の言っていることの意味は理解できている」

「そ、そうなのか」

(これはもう正直に話すしか無いのか?)

(いやいや。そんなことできるはずがない)

(でも、このままだと俺の命が危ないんだよな)

「あのー。一つ質問してもいいですか?」

「ん?別に構わないが、いったいどんな質問だ?」

「あなたは『異世界人』ですか?」

「そうだ。俺は『異世界』の人間だ」

「そ、そうですか。それじゃあ、もう一つだけ質問させてもらっても良いですか?」

「あぁ。いいぞ」

「それじゃあ、あなたの職業を教えてもらえないでしょうか?」

「俺の職業か。俺は『勇者』という職に就いている」

「『勇者』ですか。ちなみに、この世界の人たちは『勇者』について何か知っていますか?」

「いや、知らないはずだ。そもそも『異世界人』のことも、あまり知られていないからな」

「そうなんですか」

(ということは、俺が『異世界人』だということがバレると色々と面倒なことに巻き込まれてしまう可能性があるということだな)

「君は『異世界人』なのかい?」

「え?な、なんでそのことを…….」

「い、いや。君の反応を見ていれば分かるさ」

「まあ、確かにそれもそうですね」

(それにしても、この『勇者』は一体何を考えているんだ?)

(『勇者』が『異世界』の人間である俺に近づいてくる理由なんて、あるのか?)

(もしかして、俺を騙そうとしているのか?)

「君に聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」

「はい。なんでしょうか?」

「君はこの世界にきたばかりのようだが、なぜこの世界に来たんだい?」

「それは……..」

(本当のことを言うべきか?それとも嘘をつくか?)

(いや、ここは本当のことを言った方が良いかもしれないな)

「すいません。俺がこの世界に来れた理由は話せないです」

「そうなのか。分かった」

(本当にこの人は俺のことを信用しているのだろうか?)

「それでは、また明日同じ時間にこの場所に来てくれないか?」

「え?どうしてですか?」「どうしてもだ」

「わ、わかりました」

(この『勇者』は俺にいったい何をさせるつもりなんだ?)

(まあ、とりあえず今日は家に帰って寝よう)

「それでは、失礼します」

「あぁ。わかった」

「それでは、俺は帰りますね」

「あぁ。気をつけて帰るといい」

(とりあえず、今は家に帰るしかないな)

(でも、これからどうすればいいのか全く分からないな)

(とりあえず、ギルドに行って依頼を達成してから考えるか)

(まあ、とりあえず今日は寝よう)

次の日になり、俺は昨日の女の人に言われた通り、同じ時間に指定された場所にやってきた。

「あのー。おはようございます」

「あぁ。来たか。それでは早速だが、着いてきて貰えるかな?」

「はい。わかりました」

(この『勇者』は俺に何をさせようとしているんだろう)

「あのー。どこまで行くんですか?」

「もう少ししたら着くと思う」

それから数分後、俺たちは目的地に着いた。

「ここってどこですか?」

「見ての通り病院だよ」

「え?病院ですか?」

「あぁ。そうだ」

「え?それなら、ここに妹がいるんですか?」

「あぁ。その通りだよ」

(この『勇者』は俺を騙して何をしようとしているんだ?)

「それじゃあ、行こうか」

「はい」

俺は『勇者』の後に続いて病院の中に入って行った。

「え?この病室ってまさか……..!」

俺はその光景を見て驚いていた。

「ん?どうかしたか?」

「い、いえ。なんでもありません」

「そうか。それなら、早く入るぞ」

「はい。分かりました」

俺はその部屋に足を踏み入れた。

「え!?どうしてここにいるんだ?」

「お兄ちゃん?」

「え?もしかして、俺の妹なのか?」

「うん。そうだよ。お兄ちゃん」

「なんでお前がこの世界に居るんだよ?」

「お兄ちゃんこそ、なんでこの世界に居るの?」

「いや、それは……」

「とりあえず、落ち着いて話をしようか」

「はい。そうしましょう」

「それで、まずは自己紹介からしようか」

「はい。そうですね」

「俺はタクミと言います。よろしくお願いします」

「私は妹のリンと言います。こちらこそよろしくお願いします」

「それでは、本題に入らせていただきます」

「まず、俺がこの世界に来てしまった理由から説明させてもらいますね」

「あぁ。頼む」

「俺はこの世界に来る前にある場所にいました」

「そこで俺はとある依頼を受けました」

「その依頼とは、この世界を救ってくれというものだったんです」

「俺はその依頼を引き受けたんです」

「そして、俺はこの世界で様々な困難を乗り越えてきました」

「その過程で俺は自分の力不足を痛感しました」

「俺はもっと強くなりたいと願いました」

「それで俺は『迷宮』を攻略しようと決意しました」

「俺はその途中でこの世界にやってきました」

「なるほどな。大体の経緯は理解できた」

「ありがとうございます」

「それで、俺の依頼は達成されたと思っていいのかな?」「はい。一応はそうなると思います」

「そうか。それじゃあ、報酬として君の力を少しばかり貸して欲しい」

「え?」

「俺の能力は『勇者』というものだ」

「俺は『勇者』の能力を使うことができるんだ」

「そんなこと急に言われても信じられませんよ……」

(それにしても、俺の力を借りたいということは、俺にも『勇者』の能力を使うことができるということなんだろうな)

(でも、どうやって『勇者』の能力を使えるようになるんだろう?)

(まあ、今考えても仕方がないから、実際にやってみるか)

「えっと、それでは試しに使ってみてもいいですか?」

「あぁ。もちろん構わないよ」

「それでは、いきます」

「我は願う。『勇者』の能力の使用を許可することを」

「ん?何も起こらないぞ?」

「やっぱりダメみたいですね」

「そんなことはないはずだ。もう一度試してみてくれ」

「はい。分かりました」

「それでは、もう一度やります」

「我が名は『勇者』。我の呼びかけに応えよ」

「やっぱり、何の反応もないな」

「やっぱり、無理だったんですよ」

「いや、まだ諦めるのは早いぞ」

「どうするんですか?」

「君には『勇者』の力が宿っているはずだ」

「え?俺が『勇者』の力を受け継いでいるっていうんですか?」

「あぁ。そうだ。君の中には『勇者』の力が眠っている」「そ、そうだったんですか……」

(まあ、確かに俺がこの『勇者』の言う通りの人間だったら、『勇者』の力は受け継がれているんだろうけど……)

(そもそも、俺が『勇者』の力を受け継いでいるという証拠はあるのか?)

(いや、俺が『勇者』の力を受け継いでいるという証拠はない)

(俺が『勇者』の力を受け継いでいるという証拠があれば、信じることができるんだけどな)

(まあ、そんな都合の良いことなんて起こるわけないか)

「おい!聞いているのか!」

「あっ。すいませんでした。考え事をしていて全然聞いていませんでした……」

「だから、君の中に『勇者』の力は引き継がれているんだよ」

「そうですか……。それじゃあ、俺は『勇者』の力を使うことができるんですか?」

「あぁ。そうだ。君は『勇者』の力を使うことができる」

「でも、俺は『勇者』の力を使えたとしても、使い方が分からないですよ?」

「大丈夫だ。『勇者』の力は俺が教えてやる」

「分かりました。それじゃあ、お願いします」

「それじゃあ、早速だが『勇者』の力を使おうと意識してくれ」

「はい。わかりました」

(とりあえず、言われた通りにやってみるか)

「我が名は『勇者』。我の呼びかけに答えよ」

「あれ?何かが頭の中で流れ込んできたような気がします」

「それが『勇者』の力を使うために必要な事だ」

「はい。わかりました」(とりあえず、これで俺も『勇者』の力を使うことができるようになったのか?)

(まあ、とりあえず今は『勇者』の力を使ってみるか)

「えっと、とりあえず『勇者』の能力を使えるようにしてみようか」

(確か、俺が『勇者』の力を使えるようにするためにやったことは、この『勇者』の人に話しかけることだったよな?)

(とりあえず、この人に話しかけてみるか)

「あのー。聞こえていますか?」

「あぁ。聞こえるぞ」

「良かったです。それでは、早速なんですが『勇者』の能力を使えるようにする為の方法を教えてもらえないでしょうか?」

「分かった。それでは、俺が手を握ってくれ」

「はい。分かりました」

(本当にこの人は俺のことを信用しているのだろうか?)

(それとも、俺のことを騙そうとしているのだろうか?)

「それでは、始めるぞ」

「はい。お願いします」

(え?本当に『勇者』の力を使えるようになっているのか?)

(いや、多分気のせいだと思うが……)

「それでは、いくぞ」

「はい。お願いします」

(よし。とりあえず、やってみるか)

「それでは、いくぞ」

「はい。お願いします」

(ん?本当に能力が発動しているのか?まあ、いいか)

(今はとりあえず、この『勇者』に従おう)

「俺は『勇者』だ。俺の声に応えてくれ」

(ん?なんか声が変わったか?)

(まあ、とりあえず、今は言われた通りに従っておくか)

「えー。どうすれば良いんでしょうか?」

「とりあえず、目を瞑って俺の手を強く握ってくれ」

「はい。わかりました」

(ん?また変わったか?まあ、今は言われた通りに従うか)

(とりあえず、言われた通りに強く手を握り返しておくか)

「それでいい。そのまま、俺の言った通りにしていろ」

「はい。わかりました」

「それじゃあ、今から『勇者』の力を発動させるからな」

「はい。お願いします」

(ん?なんだか、身体中から力が溢れ出てくる感じがするな。これが『勇者』の力なのか?)

「それでは、今から俺の言う言葉を繰り返し言え」

「わかりました」

「それでは、行くぞ」

「はい。お願いします」

「我は願う」「我は願う」

「我が身に眠る力を解き放て」

「我が身に眠る力を解き放て」



(おぉ!なんだろう。この感覚は初めてだな)

「今こそ、目覚めの時」「今こそ、目覚めの時」

「今こそ、目覚めのときなり」

「我は願う」「我は願う」

「我が身に宿る力よ、解放せよ」「我が身に宿る力よ、解放せよ」

「我が名において命ずる。『勇者』の力を開放しろ!」

「我が名において命ずる。『勇者』の力を開放しろ!」

「今こそ、解き放つ時!」

「今こそ、解き放つとき!」

「我が身に降り注げ!『勇者』の力をここに!!」

「我が身に降り注げ!『勇者』の力をここに!!」

「これにて、完了とする」

「はい。ありがとうございました」

(とりあえず、これで『勇者』の力を使うことができるようになったのかな?)

(でも、まだ自分の中に『勇者』の力があるという実感はないんだよな)

(まあ、今はまだわからないことが多いから、もう少し様子を見てから判断するか)

「それでは、今日はこれで終わりにしようか」

「はい。ありがとうございました」

(さっきのは一体なんだったんだろう?まあ、とりあえずギルドに行って依頼を達成してから考えるか)

俺はこの『勇者』と名乗る男の人と病院を出て、同じ時間に集合した場所に戻って来た。

「それでは、依頼達成の報告をしてくるからここで待っていてくれるかな?」

「はい。分かりました」

俺はこの『勇者』を名乗る男と一緒に依頼を達成したことを報告するために、冒険者ギルドに向かった。

「すいません。依頼が完了したので確認をお願いします」

「はい。かしこまりました」

俺は受付の女性に依頼達成の確認をしてもらった。「はい。依頼達成を確認しました。こちらが報酬になります」

俺は報酬を受け取ってその場を離れた。

「それじゃあ、俺はこれから用事があるので失礼しますね」

「あぁ。わかった。それじゃあ、俺は宿に帰ることにするよ」

「はい。それじゃあ、また機会があったら会いましょう」

「あぁ。そうだな」

(とりあえず、俺は宿に戻るか)

俺は宿に向かって歩いて行った。

(それにしても、なんだったんだろうな?あの『勇者』の男は?)

(まあ、考えても仕方がないから、とりあえずは明日に備えて寝るか)

俺は部屋に入ってすぐにベッドに横になった。

(それにしても、俺が『勇者』の力を引き継ぐことができたのか?)

(まあ、明日の朝にでも『勇者』の力を使って確かめればいいか)

(でも、本当に『勇者』の力を使うことができるようになったのか?)

俺はそんなことを考えながら眠りについた。

俺は朝早く目が覚めた。

(そういえば、昨日はすぐに眠ってしまったんだよな)

(そういえば、『勇者』の能力が使えるようになったかどうか試していないな……)

(まあ、とりあえずは朝食を食べて、それから試してみるとするか)

俺は食堂に向かうために部屋を出た。そして、廊下に出た瞬間に俺の部屋の前に誰かが立っていることに気づいた。

(ん?誰だろう?こんなところに人が立って何をしているんだ?)

俺が不思議に思ってその人を見つめているとその人も俺の存在に気づいたようで話しかけてきた。

「あぁ。やっと出てきたか」

「えっと……。どちら様でしょうか?」

「俺の名前は『勇者』だ」

「は?」

(え?今なんて言ったんだ?)

(この男が『勇者』だと言ったのか?)

(いや、そんなはずはないよな)

「いやいや、そんな冗談はやめてくださいよ」

「いや、本当のことだ。信じたくないならそれでも構わないが……」

(いやいや、この『勇者』を名乗る男の人の言っていることは本当なのか?)

「そ、そうなんですか……」

「そうだ。だから、君は『勇者』の力を使うことができるはずだ」

(え?この『勇者』を自称する人は何が言いたいんだ?)

「あの……。それはどういう意味ですか?」

「だから、君は『勇者』の力を受け継ぐことができるということだ」

(いやいや、そんなこと急に言われても信じられないだろ)「そんなこと急に言われても信じられないですよ……」

「そうか。それじゃあ、実際に見せてあげよう」

「え?」

(そう言うと『勇者』を名乗る人は俺の目の前に立った)

「え?な、何ですか?」

「今から君の中にあった『勇者』の力を解放する」

「え?ちょっと、やめて下さいよ!」

「大丈夫だ。怖くないぞ」

「ちょっ……、ほんとに……、や……、め……て……、くだ……、さい……、よ……」

俺は必死に抵抗したが、全く動くことができなかった。

「もうすぐだ。もうすぐ終わる」

「は……、はい……、わかりま……、した……、か、ら……、も……、や……、め……て……、ください……、よ……、うぅ……、ぐすん……」俺は泣きじゃくりながらも抵抗を続けたが、やはり無駄だった。

「よし。これで終わりだ」

「はい。これで君の中にあった『勇者』の力は無くなったぞ」

「はぁはぁはぁ。はぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

(なんだったんだ?今のは?)

(なんか凄い体験をしたような気がするんだけど……)

「あのー。すいませんでした。取り乱してしまいまして……」

「いやいや、気にすることは無いよ」

「それで、どうして俺の中に『勇者』の力が残っていることがわかったんですか?」

「まあ、それは俺が君の中にある『勇者』の力を感じたからだ」

「そうだったんですか。それじゃあ、やっぱり俺が『勇者』の力を受け継いでいるというのは嘘ではないんですね」

「あぁ。そうだ。それで、俺は『勇者』の力を使えるようになったのか?」

「えーっと、どうでしょう?自分ではよく分からないです」

「そうか。それなら、俺が確認してあげるから、手を出せ」

「はい。分かりました」

(俺が『勇者』の力を使えるようになっているか確認できるのか?とりあえず、言われた通りにやってみるか)

俺は言われた通りに手を出した。すると『勇者』を名乗る男は俺の手を握った。

「それでは、始めるぞ」

「はい。お願いします」

(え?また何かが流れ込んできた感じがしたぞ!これは一体なんだ!?)

俺は自分の身体の中で流れている力を感じ取っていた。だが、それと同時に俺の意識は遠くなっていった。

俺は目を覚ました。どうやら少しの間気を失っていたようだ。俺は目を開けて周りを見た。そこには、先ほどまで俺の手を掴んでいた『勇者』と名乗る男がいた。

「どうした?気分が悪いのか?それとも、体調が優れないのか?もし、調子が良くないのならば、今日は休んでもいいぞ」

「いえ、そういうわけではないので大丈夫です」

(え?今って、俺が『勇者』の力を使う為の練習をしていたんじゃなかったけ?)

(あれ?もしかして、俺が気絶していた間に全て終わってしまったのか?)

(え?でも、それだと俺の身体の中に入っていた『勇者』の力はどこにいったんだ?)

(まさかとは思うけど、この男の中に入っているのか?)

「あのー。一つ聞いていいですか?」

「あぁ。なんでも聞けば良い」

「それでは質問なんですが、俺の中にあった『勇者』の力はどうなったんですか?」

「あぁ。それなら問題無い」

「え?」

(どういうことだ?もしかしたらこの男の中には入っていないということなのか?)

(でも、それじゃあ、俺はどうやってこの力を使えるようになったんだ?)

俺は疑問に思いながら答えを待っていた。そして、しばらくしてからこの男は口を開いた。

「君には悪いが、『勇者』の力は既に消えてしまった」

「え?」

「正確に言えば、既に君の中にあった『勇者』の力はなくなった」

「え?それじゃあ、俺はどうやってこの力を使うことができるようになったんですか?」

俺は不思議に思って聞いた。

「あぁ。それについては簡単だ。俺が君の中にあった『勇者』の力を吸収しただけだ」

「吸収した?」

「そうだ。わかりやすく説明すると、君の中から『勇者』の力を取り出して、それを俺の体内に取り込んだということだな」

「なっ!それじゃあ、俺が『勇者』の力を引き継げるかどうかは関係ないじゃないですか!」

「いやいや。そんなことはない。俺が『勇者』の力を受け継いだとしても、引き出せるかはわからないからな」

「は?」

(この男の言っていることが理解できないんだが……)

「いやいや、そんなことを言われても信じられませんよ」

「まあ、信じられなくても仕方がないな」

「いやいや、そんなことを言われても困りますよ」

「そうだろうな」

「はい」

(確かにこの男の言っていることは間違ってはいないのかもしれないな)

(でも、だからと言って簡単に信じられるわけがないよな)

俺はしばらく考え込んでいた。

(まあ、この男のことを信じるしかないよな)

「わかりました。とりあえずはあなたの言っていることを信用します」

「あぁ。ありがとう」

(いやいや、そんな笑顔でお礼を言われても反応に困るんだが……)

「それでは、これからどうすればいいのでしょうか?」

「そうだな。とりあえずは、君が『勇者』の力を使用できるようになるまでは俺が君の面倒を見ようと思う」

「え?本当ですか?それは助かります」

(本当にこの人が俺の面倒をみてくれるのか?)

(でも、他に頼れる人もいないしな……)

俺はこの人に頼る以外に選択肢がないので頼むことにした。

「とりあえずは宿に帰ろうか?」

「はい。よろしくお願いします」

こうして、『勇者』を名乗る男が俺と一緒に宿に帰ることになった。俺は『勇者』を名乗る男の後ろについて歩いて行った。

「そういえば、まだ自己紹介をしていませんでしたね」

「あぁ。そういえば、そうだったな。俺は『勇者』と呼ばれている者だ」

「え?『勇者』?あの『勇者』ですか?」

(いやいや、そんな冗談を言う人なのか?)

俺は不思議に思って聞き返した。すると、『勇者』を名乗る男は真剣な表情になった。

「あぁ。そうだ。あの『勇者』だ」

(えーっと……。もしかして、マジなのか?)

俺は困惑しながらも、さらに質問を続けた。「ちなみに、年齢はいくつなんですか?」

「年齢か……。正確な年齢は覚えていないが、多分500歳ぐらいだと思うぞ」

(え?そんなに年上なのか?)

「えっと……。もしかして、人間ではないとか?」

「そうだ。一応、エルフの血を引いている」(いやいや、流石にそんな冗談は笑えないぞ)

俺はこの男が何を言っているのか分からず混乱していた。

「え?本当ですか?」

「そうだ。本当だ」

「えーっと……。その証拠はありますか?」

「そうだな……。それなら、俺のステータスを見ればいい」

「え?」

(この人は自分のステータスを見せることができるのか?)

「いやいや、そんなこと急に言われても信じられないですよ」

「それもそうか。それじゃあ、見せてあげよう」

そう言うと、この男は俺の目の前に立って、手を差し出してきた。

(え?何をする気だ?まあ、見てみるか)

俺は恐る恐る差し出された手に自分の手を乗せた。すると、俺の頭の中に文字が浮かんできた。

(なっ!なんだこれ!?)

俺は驚きながらも、すぐに意識を失った。

俺は目を覚ました。俺は起き上がって周りを確認した。そこには先ほどまで俺の目の前にいた『勇者』を名乗る男の姿はなかった。

(あれ?俺っていつの間に寝ていたんだ?)

(それにしても、さっきのは何だったんだろうか?)

(俺の目の前に突然変な画面が現れたんだけど……)

(もしかして、夢だったのか?それなら、それでいいんだけど……)

俺はしばらく考えてみたが、何も思いつかなかったので考えるのをやめて朝食を食べに行くために食堂に向かった。

俺は部屋を出てから廊下を歩いている時に誰かに声をかけられた。

「ちょっと待ってくれないか?」

俺は声をかけられたので振り返った。すると、そこには昨日俺が『勇者』の力を引き継ぐ為に特訓をしていた『勇者』を名乗る男がいた。

「え?どうしてあなたがここにいるんですか?」

俺は驚いて質問をした。

「いやいや、それはこっちのセリフだよ」

「え?どういう意味ですか?」

「君は自分がどこから来たのか覚えているのか?」

「え?どこかと言われましても……」

(ここは日本ではないのか?いや、でも日本語が通じているよな?うーん。わからなくなってきたぞ)

「あのー。ここってなんていう国なんですか?」

俺は疑問をそのまま口に出した。すると、予想外の答えが返ってきた。

「ここは『勇者』の国だ」

「え?」

(いやいや、それはないだろ。そんな国があるなら、絶対にニュースになっているはずだよな?)

(え?もしかして、この人は頭がおかしいのか?)

俺は不思議に思って、もう一度確認することにした。

「すいません。よく聞こえなかったので、もう1度言ってもらってもいいですか?」

「いやいや、だから『勇者』の国だって言っただろ」

「いやいや、そんな訳無いじゃないですか」

「いやいや、本当にあるんだよ」

「えーっと、それじゃあ、この世界には『勇者』の他にも『魔王』がいるんですか?」

「あぁ。もちろんだ」

(え?この人ってやっぱり頭がおかしくなっているんじゃないだろうか?)

(でも、嘘をついているようには見えないんだよな)

俺は少し悩んでから、この男の言葉を信じることにした。

「わかりました。それじゃあ、俺が知っている『勇者』の話をしますね」

「あぁ。聞かせてくれ」

俺は『勇者』のことについて簡単に説明した。

「という感じですね」

「なるほど。そういうことだったのか」

「はい。そういうことです」

(この人って意外と話せる人なのかもしれないな)

(まあ、完全に信じたわけではないけどな)

「ところで、君の名前は何て言うんだ?」

「あっ!俺の名前ですか?俺の名前は『山田太郎』です」

「へぇ〜。変わった名前をしているんだな」

「まあ、確かに変わっているかもしれませんね」

「あぁ。それじゃあ、これからは『タロー』と呼ぶことにするよ」

「はい。よろしくお願いします」

(この人と話していると、なんだか調子狂うな……)

「それじゃあ、そろそろ俺は仕事に戻るとするよ」

「はい。頑張ってください」

「あぁ。君も頑張れよ」

「はい」

(え?この人も仕事をしないといけないの?)

俺は不思議に思いながら見送った。

俺はしばらくしてから、今日の分のクエストを受ける為に再びギルドに向かった。

「おはようございます」

俺はいつものように挨拶をしながら、カウンターにいる女性に話しかけた。

「あら?今日は随分と早いのね」

受付嬢さんは笑顔で返事をしてくれた。

「はい。早く目が覚めたので早めに来てみました」

「そうなのね。それなら良かったわ」

「はい。ありがとうございます」「それで、何か依頼を受けるのかしら?」

「はい。そうしようと思います」

「わかったわ。それなら、依頼板を見てみましょうか」

「わかりました」

俺は言われた通りに掲示板の方に移動した。そして、俺は討伐系の依頼を探した。

(お!これなんか良さそうだな)

俺は一枚の紙を手に取った。

『魔物の群れの殲滅』

報酬:金貨5枚

(よし!これに決めた)

「あの、すみません」

俺は受付嬢さんのところに行って、依頼の手続きをする為に声をかけた。

「はい。どうかしましたか?」

「この依頼を受けたいのですが、どうすれば良いのでしょうか?」

俺はそう言いながら、先程選んだ依頼の用紙を見せた。

「えーっと……。これはCランク以上の冒険者しか受けることが出来ないわよ」

「え?そうなんですか?」

(そういえば、そんなことを言っていたような気がするな)

「ええ。だから、残念だけど受けられないわね」

「え?でも、俺って今Eランクの冒険者ですよ?」

「でも、今はDランクの昇格試験を受けられるだけの実力はないでしょ?」

「え?そんなことはありませんが……」

「でも、あなたのレベルはまだ3しかないし、ステータスも全然低いでしょ?」

「それは……、はい。その通りです」

俺は自分のステータスを思い出して落ち込んだ。

「それに、あなたは『勇者』の称号を持っているみたいだし、まだFランクの私達では判断できないのよね」

「え?『勇者』の称号ってそんなに重要なものなんですか?」

「ええ。『勇者』の称号を持つ人は少ないのよ」

「え?」

(いやいや、それじゃあ、俺が『勇者』の力を引き継ぐのにどれだけ苦労したと思っているんだよ)

「でも、その称号がなくても大丈夫なんですよね?」

「ええ。一応、規定としてはあるんだけど、あなたの場合は問題ないと思うわ」

「え?どうしてですか?」

俺は不思議に思って質問をした。

「それはね。『勇者』の力を引き継ぐのに大量の経験値が必要になるのよ」

「え?そうなんですか?」

「ええ。あなたの場合だと、おそらく今までに経験したことがないほどの量の魔素を吸収しているはずよ」

(え?そんなに凄いことなのか?普通に生活していただけなのに……)

俺は少し怖くなって質問をした。

「あのー。そんなに大変な事だったら、俺が引き受けることはできますかね?」

「うーん。多分、無理だと思うわ」

「え?なぜですか?」

「だって、あなたが『勇者』の力を引き継げるかどうかわからないでしょ?」

「え?そんなことはないと思いますが……」

「あなたは『勇者』の力を引き継ぐ為に、どんな訓練をしたのか覚えているの?」

「え?それは……、そうですね。忘れてしまいました」

「それなら、やっぱり難しいと思うわ」

「そうですか……、わかりました。それじゃあ、この依頼は他の人に頼みます」

「そうしてくれると助かるわ」

俺は結局、この依頼を引き受けることができなかった。

(でも、この人の言っていることが本当なら、俺がこの依頼を受けるのは難しいだろうな)

(とりあえず、他の人がこの依頼を受けてくれるといいんだがな)

俺はそう思いながら、別の依頼を探すことにした。

それからしばらく探してみたが、いい感じの依頼を見つけることはできなかった。

(やっぱり、いい感じのクエストは無いな)

(それにしても、この『勇者』の国の人たちはみんな優しいよな)

(俺が『勇者』の力を受け継いでいるってわかっても、俺のことを変な目で見る人はいないよな)

(この国なら、俺も楽しく過ごせそうだな)

俺はこの国の雰囲気が好きになっていた。

(おっ!あれはなんだ?)

俺は遠くに人だかりができているのを見つけた。俺は気になって近づいて行った。すると、そこには2メートルぐらいの身長があり、緑色の肌をして額から小さな角が生えた鬼のような姿の生き物がいた。

(なんだあれ?あんなの見たことが無いぞ)

(でも、見た目がゴブリンに似ているよな)

俺は少し悩んでから、その生物に近付いて声をかけてみることに決めた。

「あのー。こんにちは」

「ギィ!」

俺はその生物に声をかけたが、その生物は俺の声に反応してこちらを睨んできた。

「え?もしかして、言葉が通じていないのか?」

「ギィー!!」

「うわっ!危ねぇーな」

俺は謎の生物の攻撃を避けた。すると、周りにいた人たちが騒ぎ始めた。

「おい。あいつはオーガだぞ」

「マジか!?︎逃げろ!!殺されるぞ」

「キャァー」周りの人達は叫びながら逃げ出した。

(え?なんなんだよ。あの怪物は?)

(もしかして、あの化け物はこの国では普通の存在なのか?)

(そんな訳ないよな。俺も逃げた方がいいのか?)

俺は悩んだ末に逃げることを決めた。

(よし。まずはこの場から離れよう)

俺はすぐに走り出した。しかし、後ろからはオーガが迫ってきていた。

(クソッ!追ってきてるよ)

(仕方ない。戦うか)

俺は覚悟を決めて振り返った。そして、腰に差している剣を抜いて構えた。

「グォー」

「チクショウー。こっちに来るなー」

俺はオーガに向かって叫んだ。

「え?ちょっと待ってください」

「グゥ?」

「え?なんで止まるの?そのまま襲ってくるんじゃなかったの?」

俺は混乱しながらも、なんとかオーガの動きを止めることができた。

「グルルルー」

「え?どうして俺の言葉がわかるの?」

(いやいや、本当に意味がわからないんだけど……)

(でも、言葉が通じるなら、話は早いかもしれないな)

「すいません。俺はあなたと戦うつもりはありません」

「グゥ?」

「はい。俺の負けです」

「グゥ?」

「はい。降参します」

俺は両手を上げて戦意がないことを伝えた。

「グルルル」

「はい。なんでも話してください」

「グルゥ」

「はい。わかりました」

俺はそう返事をしてから、オーガの話を聞いた。

(なになに?この国は人間と仲良くなりたいけど、人間は怖いから話し合いができないのね)

(はぁ〜。そういうことだったのか)

(うーん。どうしようかな)

(この国に残れるように説得するか……)

(でも、どうやって説得すればいいんだ?)

(そうだ!こういう時は相手の心を読むスキルを使うんだ)

(えーっと、どれにしようかな?)

(そうだ。これにしよう)

俺は『読心の瞳』のスキルを使うことに決めて発動した。

「よし。これで大丈夫だな」

俺はオーガに話しかけた。

「あのー。俺はあなたの言葉を理解出来るようになりました」

「グェ?」

「はい。そうですよ」

「グル?」

「はい。俺はあなたと会話ができるようになりました」「グッグ?」

「はい。そうです」

「グゲ?」

「はい。その通りです」

「グゥ?」

「はい。その通りです」

(なんか、思ったより面倒臭い奴だな……)

(まあ、話が通じたならそれで良いか)

(それじゃあ、俺の言う通りに行動してくれ)

(わかった)

(まずは、俺と一緒に王城まで来てくれ)

(了解)

(よし。それじゃあ、行こうか)

(わかった)

俺はオーガを連れて、急いでギルドに戻った。

俺は急いでギルドに戻って来た。そして、受付嬢さんに話しかけた。

「すみません。依頼をしたいのですが、この依頼はどうすれば良いのでしょうか?」

俺は先程受けた依頼の用紙を見せた。

「え?これは……、どうしてあなたがこの依頼を持ってくるの?」

受付嬢さんはとても驚いた様子だった。

「え?どうしてと言われても、俺はこの依頼を受けたいのですが……」

「そ、そうなのね……。わかったわ。それじゃあ、手続きをするわね」

受付嬢さんは少し戸惑いながらも手続きを進めてくれた。

「ありがとうございます」

「いえ、これが私の仕事だから気にしないでね」

「はい。ところで、この依頼って何の魔物ですか?」

「え?あなたは知らないの?」

「え?はい。初めて見ます」

「そうなの?これはCランク以上の冒険者しか受けることが出来ないわよ」「え?そうなんですか?」

(もしかして、俺が受けられないのって、これが原因だったのか?)

「ええ。だから、残念だけど諦めてちょうだい」

「はい。わかりました」

(それなら、別の依頼を探した方が良いのか?)

俺はそう思いながら掲示板の方に移動した。

(お!これならいけるかも)

『薬草採取の依頼』

報酬:銀貨10枚

(うん。ちょうど良さそうだな)

(よし!これをお願いします)

俺は依頼書を手に取って受付に持っていった。

「あのー。すみません」

「あら?またあなたなの?」

受付嬢さんは呆れた表情をしていた。

「はい。この依頼を受けさせてください」

俺は依頼の紙をカウンターに置いた。

「え?この依頼を受けるの?」

「え?何か問題でもあるんですか?」

「うーん。この依頼はね、Dランク以上じゃないと引き受けることは出来ないのよ」

「え?そんな決まりがあるんですか?」

「ええ。あなたはまだEランクでしょ?」

「え?でも、俺は『勇者』の称号を持っているので、Fランクではないはずなんですが……?」

「え?称号を持っていたとしても、あなたは『勇者』の力を引き継ぐ前なので、今はただの冒険者でしょ?」

「え?確かにそうですね」

(そういえば、俺ってまだ『勇者』の力を引き継ぐ為の試練を受けていなかったな)

「それにあなたは、今までに一度も依頼を受けたことがないでしょ?」

「え?はい。そうですね」

「それなら、やっぱりダメよ」

「え?でも、俺はこの依頼を受けたいんですよ」

「そう言われても、規則は守らないといけないわ」

「でも、この依頼はお金が欲しいから依頼を受けるので、別にお金が欲しくなければ、依頼を受けなくても構わないと思うんですが?」

「え?それはそうかもしれないけど、規則は規則なのよね」

「うーん。それじゃあ、こうしましょう」

「え?なにかしら?」「俺がこの依頼を達成した時には、あなたが俺の依頼を受けてくれるということです」

「え?それはどういうことなの?」

「俺はこの依頼を達成できなかった時に、別の依頼を受けることを諦める代わりに、この依頼が達成できた時には、俺が他の依頼を受けるのを認めて欲しいということなんですが、それでも駄目ですかね?」

「うーん。そこまでしてこの依頼を受けたいのね」

「はい。どうしてもこの依頼を受けたいと思っています」

「はぁー。わかったわ。その代わり、絶対に依頼を達成しなさいよ」

「はい。もちろんです」

「それじゃあ、この依頼を受ける為には、このカードが必要よ」

「え?カードを預ける必要があるんですか?」

「ええ。それが規則なのよ」

「はぁー。わかりました」

俺はため息を吐きながら、カードを渡した。

「はい。確かに受け取ったわ」

「それで、このカードはどこで返して貰えばいいのでしょうか?」

「えっと、確か……、ここで良かったはずだわ」

受付嬢さんはそう言って、受付の奥にある扉から出てきた。

「はい。これがあなたのカードよ」俺は渡されたカードを確認してから、質問をした。

「あのー。期限とかあるんですか?」

「ええ。依頼完了後1ヶ月以内に報告をすることになってるわ」

「はい。わかりました」

(なるほどね。それなら、期限内に終わらせれば問題ないわけだな)

(よし!そうと決まれば、すぐに出発するぞ)

(了解)

俺はオーガと一緒に街を出て、目的地に向かった。

(ここだな)

(よし。早速、この草を探すぞ)

(でも、どんな見た目なのかわからないんだよな)

(うーん。とりあえず、探してみるしかないか)

(よし!頑張るぞ)

(えーっと、この辺りにはなさそうだな)

(うーん。もう少し奥を探してみようか)

(よし!行くぞ)

(えーっと、あっ!あった)

(あれ?これって、薬草だよな?)

(でも、なんか変な色をしているような気がするな)

(まあ、いいや。早く持って帰ろう)

(よし!これでクエストクリアだな)

俺はそう思いながら、オーガと一緒にギルドに戻った。

「すみません。クエストの報告に来たのですが……」「え?もう終わったの?」

受付嬢さんは驚いていた。

「はい。無事に終わりました」

俺はそう言いながら、依頼の用紙を渡した。

「はい。確認させていただきます」

受付嬢さんは依頼の用紙を確認した。

「はい。確かに依頼の品を納品されました」

「それでは、この依頼は完了したということでよろしいでしょうか?」

「はい。それで大丈夫です」

「わかりました。それじゃあ、こちらの書類にサインをお願いします」

「はい。これで良いですかね?」俺は書類に名前を書いてから受付嬢さんに返した。

「はい。ありがとうございます」

「それじゃあ、この依頼は完了となります」

「はい。わかりました」

俺は受付嬢さんに礼を言った。

「えっと、この依頼の報酬はどうすれば良いのでしょうか?」

俺は報酬について聞いてみた。

「え?報酬?この依頼に報酬なんてなかったわよ?」

「え?そうなんですか?」

「ええ。この依頼を受けたのは、あなたが初めてだからね」

「そうなんですか……」

「どうかしたの?」

「いえ、なんでもありません」

「そう?それじゃあ、私は仕事に戻るから、気をつけて帰ってね」

「はい。ありがとうございました」

俺はそう言ってギルドを出た。

(ふぅ〜。なんとか上手くいったな)

(そうだな。お前のおかげだ)

(え?俺なんかしたっけ?)

(まあ、いいか)

(それよりも、これからどうしようかな?)

(そうだな。せっかくだし、少しだけレベルを上げていかないか?)

(おぉー。良いね。それじゃあ、近くのダンジョンに行こうぜ)

(よし!それじゃあ、出発だ)

(オーケー)

俺はオーガと一緒に街の近くにある小さなダンジョンに来ていた。

(よし!着いたな)

(そうだな。さてと、サクッと倒していくか)

(そうだな。さて、俺の実力を見せ付けてやる)

(ははは。頼もしいな)

(よし!まずは俺が戦うから見ててくれ)

俺はそう言うと、剣を構えた。そして、ゴブリンに向かって斬りかかった。

「はぁー」

俺は掛け声と共に、横薙ぎに振り抜いた。

「グギャァー」

ゴブリンは叫び声をあげながら倒れた。

(お!一撃で倒したか!なかなか強いじゃないか)

(はは。当たり前だろう)

俺は得意げに答えた。

(さてと、次は俺の番だな)

俺はそう言って、次の獲物を探し始めた。

「グルゥ〜」

(ん?そっちに行ったのか?任せろ!俺が倒してきてやるよ)

俺はそう言って、オーガの元を離れて、ゴブリンを追いかけていった。

(よし!追いついたぞ)

(よし!それじゃあ、いくぞ)

俺はそう叫ぶと同時に、ゴブリンに切りつけた。

「グェー」

ゴブリンは叫びながら倒れて、動かなくなった。

(よし!討伐成功!)

(はは。お疲れ様)

(よし!それじゃあ、次に行くか)

(おう!どんどん狩っていくぞ)

(オーケー)それからしばらくすると、俺たちは大量の魔物を倒していた。

(よし!そろそろ帰るとするか)

(そうだな。結構な数を倒したしな)

(よし!急いで帰らないとな)

(そうだな。急ぐぞ)

俺はそう言って、オーガを連れて駆け出した。

「はあはあはあ……。よし!ようやくここまで来たな」

「グルルル」

「よし!それじゃあ、入るとしますか」

俺はそう言いながら、目の前にある洞窟に足を踏み入れた。

「グルル」

「え?なにか来る?」

俺は咄嵯に武器を構えようとした。しかし、間に合わずに攻撃を食らってしまった。

「うわぁー」

俺はそのまま吹き飛ばされてしまった。

「うーん。ここはどこだ?」

俺はそう呟きながら起き上がった。周りを見渡すと、大きな広間になっていた。

「もしかすると、ボス部屋ってやつか?」

俺はそう言いながら、ステータスを確認してみた。

『名前』:ユウト・タカナシ

『種族』

:人間

『性別』

:男

『年齢』

:18歳

『職業』

:『勇者』

『称号』

:『勇者』

『加護』

:『女神の寵愛』

『スキル』

:【言語理解】【獲得経験値5倍化】

『固有技能』

:【継続は力なり】

「うーん。やっぱり、俺が『勇者』の力を引き継ぐ前だと、あまり強くないな」

俺はそう言って、自分の手を見ながらため息を吐いた。

「グルル」

「ん?なんだ?」

俺が疑問に思っていると、部屋の奥の方から何かが近づいてきた。

「なにかいるみたいだな」

俺は警戒しながら、近づいてくるものを観察していた。

「うーん。なんだろう?よく見えないな」

俺は目を凝らして、近付いてくるものを見た。

「うーん。あれは、人型をしているように見えるな」

俺はそう判断して、いつでも戦えるように準備をした。

「よし!来い!」

俺は叫んで、相手の出方を伺った。

「うーん。動きがないな」

俺は相手が動くまで待つことにした。

「グルル」

「え?こいつ喋れるの?」

俺は驚きながら、相手を観察した。

「グルルー!!」

「うわぁー」

俺は攻撃をまともに食らい、また吹き飛ばされてしまった。

「いてて」

俺は痛みに耐えながら立ち上がった。

「はは。流石はラスボスって感じだな」

俺はそう言って、相手に向き直った。

「はぁー。しょうがないか……」

俺はそう言って、覚悟を決めた。

「よし!行くぞー」

俺はそう言って、相手に向かって走り出した。

「グルアァー」

相手は雄叫びを上げながら、腕を振り下ろしてきた。「はぁー」

俺はその攻撃をギリギリのところで避けた。そして、相手の懐に入り込んだ。

「ここだー」

俺はそう言って、思いっきり斬り付けた。

「グアァー」

相手は叫び声を上げた。

「よし!効いているようだな」俺はそう言って、更に攻撃を仕掛けた。

「はあー」

俺は掛け声と共に、斬撃を放った。

「はあー」

俺は掛け声と共に、剣で突いた。

「はあー」

俺は掛け声と共に、回転して剣を薙いだ。

「はあー」

俺は掛け声と共に、袈裟斬りにした。

「はあー」

俺は掛け声と共に、逆袈裟に斬り上げた。

「はあー」

俺は掛け声と共に、上段から斬り落とした。

「はあー」

俺は掛け声と共に、下段から斬り払った。「はあー」

俺は掛け声と共に、突き技で止めを刺した。

「はあー」

俺は掛け声と共に、最後の攻撃を行った。

「はあー」

俺は掛け声と共に、剣を横に振って、剣の勢いを利用して後ろ回し蹴りを叩き込んだ。「はあー」

俺は掛け声と共に、身体を回転させて、遠心力で威力を増した状態で、横薙ぎに切りつけた。

「はあー」

俺は掛け声と共に、思い切りジャンプをして、空中から思い切り叩きつけた。

「はあー」

俺は掛け声と共に、全力の一撃を繰り出した。

「はあー」

俺は掛け声と共に、渾身の力を込め、斜めに切りつけた。

「はあー」

俺は掛け声と共に、全身全霊の一撃を繰り出した。

「はあー」

俺は掛け声と共に、思い切り振りかぶって、水平に切り裂いた。「はあー」

俺は掛け声と共に、思い切り踏み込んで、縦に切り裂いた。「はあー」

俺は掛け声と共に、思い切り飛び上がり、上から下に真っ二つに切りつけた。「はあー」

俺は掛け声と共に、剣を上に突き出し、下から上へ斬り上げ、そのまま一回転してから、真横に斬り裂いた。「はあー」

俺は掛け声と共に、剣を思い切り振り上げて、振り下ろすと同時に剣の重さを使って、地面に打ち付け、反動で後ろに下がりながら、剣を横薙ぎに振り抜き、さらに追撃を加えた。「はあー」

俺は掛け声と共に、剣を突き出し、横から剣で斬りつけ、剣の勢いを使いながら、体ごと回転させ、もう一度剣で斬りつけてから、最後に剣で突き刺し、剣の重みで押し込み、剣を抜きながら、もう1度剣で斬りつける動作を行い、剣を振り抜いた。「はあー」

俺は掛け声と共に、地面を踏みしめ、力いっぱいの一撃を繰り出した。「はあー」

俺は掛け声と共に、剣に魔力を流し、刀身が赤く光り輝かせ、そのままの勢いで、剣を振り抜いた。「はあー」

俺は掛け声と共に、思い切り跳び上がって、空高く舞い上がった。

「はあー」

俺は掛け声と共に、落下するスピードを利用し、落ちてくるタイミングに合わせて、剣を下に向けて、重力と落下速度を合わせ、思い切り地面に叩きつけた。

「グギャアアー」

相手は大きな叫び声をあげていた。そして、徐々に光が消えていき、そこには魔石だけが残っていた。

「よし!これでクエストクリアだな!」

(お疲れ様)

(ああ。なんとか倒せたな)

(そうだな。お前のおかげで倒すことができたよ)

(まあな。これぐらい楽勝だよ)

(さてと、それじゃあ帰るとするか)

(そうだな。早く帰って風呂でも入りたいぜ)

(はは。確かにそうだな)

俺はそう言いながら、ダンジョンを出て街に戻った。

(はあ〜。気持ちいいな)

(そうだな)

(それにしても、今回の依頼は報酬が少なかったよな)

(そうだな。もっと稼げる依頼はないかな?)

(うーん。討伐系の依頼とか受けてみるか)

(そうだな。それなら、この辺の魔物じゃなくて、もう少し遠くに行ってみよう)

(よし!それじゃあ、早速出発しよう)

(オーケー)

それからしばらくして、俺たちは近くの森に来ていた。

(よし!それじゃあ、少しだけレベルを上げていこうか)

(オーケー)

(それじゃあ、まずは俺が戦うから見ててくれ)

(わかった)

(よし!それじゃあ、いくぞ)

オーガはそう言うと、魔物に向かって走り出した。

「グワァー」

オーガは叫びながら、魔物に飛びかかった。魔物はオーガの攻撃を避けようとしたが、間に合わずに攻撃を受けてしまった。

「グルル」

オーガは魔物を殴り飛ばしていた。魔物はそのまま倒れていた。

(よし!今度は俺がやるぞ)

俺はそう言って、魔物に向かって駆け出した。そして、オーガと同じように魔物に襲いかかった。

「グルル」オーガは俺が倒した魔物にトドメを刺した。それからしばらくすると、俺たちは大量の魔物を倒していた。

(よし!そろそろいいか)

俺はそう言いながら、ステータスを確認した。

『名前』:ユウト・タカナシ

『種族』

:人間『性別』

:男

『年齢』

:18歳

『職業』

:『勇者』

『称号』

:『勇者』

『加護』

:『女神の寵愛』

『スキル』

:【言語理解】【獲得経験値5倍化】

『固有技能』:【継続は力なり】

『固有魔法』

:『召喚』

『ユニークスキル』

:『ボックス』

『オリジナルスキル』

:『創造』

『称号』

:『勇者』

『加護』

:『女神の寵愛』

『スキル』

:【獲得経験値5倍化】【継続は力なり】【言語理解】【獲得経験値5倍化】【継続は力なり】【獲得経験値5倍化】【継続は力なり】【獲得経験値5倍化】【継続は力なり】【継続は力なり】【継続は力なり】【継続は力なり】【継続は力なり】【継続は力なり】【継続は力なり】【継続は力なり】【継続は力なり】【継続は力なり】【継続は力なり】【継続は力なり】【継続は力なり】【継続は力なり】【継続は力なり】【継続は力なり】【継続は力なり】【継続は力なり】【継続は力なり】【継続は力なり】【継続は力なり】【継続は力なり】【継続は力なり】【継続は力なり】【継続は力なり】

「うわぁー。やっぱり、めっちゃ増えてる」

俺は自分のステータスを見て、驚きの声を上げてしまった。

「どうしたんだ?」

「いや、なんでもない」俺はそう言って誤魔化した。

「それより、これからどうする?」

「うーん。とりあえず、一旦ギルドに戻るか」

「そうだね」

俺たちはそう言って、ギルドに向かって歩き出した。

「ただいま〜」

「おかえりなさい」

「あっ!マナミさん。こんにちは」

「はい。こんにちは」

「あれ?他のみんなはどこにいるんですか?」

「今は依頼を受けていますよ」

「そうなんですか」

「それで、今日はどんな用事で来たのですか?」

「実は、また新しい仲間が増えましたので、報告に来ました」

「わかりました。では、こちらに来てください」

「はい」

俺はそう言って、受付嬢について行った。

「ここに座って待っていて下さい」

「わかりました」

俺はそう言って、椅子に座った。そして、待っている間、暇だったので、ステータスの確認をした。

『名前』:ユウト・タカナシ

『種族』

:人間『性別』

:男

『年齢』

:18歳

『職業』

:『勇者』

『称号』

:『勇者』

『加護』

:『女神の寵愛』『スキル』

:【獲得経験値10倍化】

『固有技能』

:『召喚』

『ユニークスキル』

:『ボックス』

『オリジナルスキル』

:『創造』

『称号』

:『勇者』

『加護』

:『女神の寵愛』

『スキル』

:【獲得経験値10倍化】【継続は力なり】

『固有技能』

:『創造』

『ユニークスキル』

:『鑑定』

『オリジナルスキル』

:『解析者』

『称号』

:『女神の寵愛』

『加護』

:『女神の祝福』

「え!?」

俺は思わず叫んでしまった。

(ど、どういうことだ?)

(さっきからうるさいな。一体何があったんだよ?)

(それが、ステータスを確認してたら、なんか変なことになってたんだよ)

(ん?どれどれ)

俺はそう言われて、ステータスを表示させた。

『名前』:ユウト・タカナシ

『種族』

:人間『性別』

:男

『年齢』

:18歳

『職業』

:『勇者』

『称号』

:『勇者』

『加護』

:『女神の寵愛』『スキル』

:【獲得経験値10倍化】

『固有技能』

:『召喚』

『ユニークスキル』

:『ボックス』

『オリジナルスキル』

:『創造』

『称号』

:『女神の寵愛』

『加護』

:『女神の祝福』

「ほ、ほんとだ」

俺は驚いてしまい、声が出なかった。

(おい。これって、まさか……)

(ああ。間違いないだろう)

(なんでこんなことが起こったんだろうな)

(さあな。でも、これはかなり嬉しいな)

(そうだな)

俺たちはそう言って笑い合った。

(それじゃあ、早速だけど行くか?)

(ああ。行こうぜ)

(わかった)

(それじゃあ、ちょっと行ってくる)

(はい。行ってらっしゃい)

俺たちはそうして、外に出た。

(それじゃあ、早速だが、お前の能力を見せてくれ)(オーケー)

俺はボックスに魔物を入れた。

(それじゃあ、今から出すからな)

(ああ。頼むぜ)

俺は魔物を取り出して、地面に並べた。

(これが今回新しく手に入れた能力だ)

(おぉ〜。すごい数だな)

(まあな)

(よし!それじゃあ、早速確認していくか)

(オーケー)

俺はそう言いながら、魔物をボックスに回収していった。

(よし!これで終わりだな)

(ああ。助かったよ)

(気にすんなよ)

(よし!それじゃあ、帰るとするかな)(そうだな)

俺たちはギルドに戻った。

「ただいま戻りました」

「お帰りなさい」

「依頼の報告にきました」

「わかりました。それでは、ここに名前を書いてください」

「はい」

俺は言われた通りに記入した。

「ありがとうございます。それでは、報酬の方ですが、今回は討伐系のクエストなので、魔石が20個になります」

「わかりました」

俺はそう言いながら、報酬を受け取った。

「それと、この前受けた討伐系の依頼なんですが、もう少し遠くに行ってみようと思うのですが、いいでしょうか?」

「いいですよ。でも、気をつけてくださいね」

「はい。それじゃあ、明日出発しようと思います」

「わかりました。それじゃあ、頑張ってください」

「はい!」

俺たちはそう言って、宿に帰った。

「よし!それじゃあ、早速準備するか」

「オーケー」

それからしばらくして、俺たちは街を出て出発した。

(そういえば、この世界の魔物と戦って思ったんだけどさ、この世界には魔法とかあるのか?)

(もちろんありますよ!ちなみに私も使えます)

(おお!そうなのか!それは楽しみだな)

(ふっふーん。私が使える魔法を見せてあげましょう!)

そういうと、女神様は光り輝いた。すると、目の前に魔法陣が現れて、そこから光が飛び出してきた。その光の玉は空高く舞い上がり、大きな爆発を起こした。そして、爆煙の中から巨大な隕石が出現した。

(え?ちょ、ちょっと待ってくれ!)

(どうしたんですか?)

(えっと、今のはなんだ?)

(え?ただの初級魔法のファイアボールじゃないですか)

(そ、そうだったのか。ごめん。俺が間違ってたよ)

(わかればいいんですよ。それでは、次は私の固有魔法をお見せしましょう)

そういうと、今度は魔法陣が出現せずに、突然空間が裂け始めた。そして、中からは様々な武器が出てきた。

(こ、これはいったい……)

(固有魔法【創造】で作ったものですね。他にも色々なものが作れますよ。例えば、ユウトさんの持っている剣や防具なども作ることができます)

(そ、そうか。それで、俺の装備はどんな感じの物になるんだ?)

(そうですね。ユウトさんの場合は、勇者という職業のおかげでステータスが大幅に上昇していますので、装備は普通の人よりも少し上ぐらいのものになりそうですね。それに、レベルが低い状態だとあまり強いものは装備できないみたいです。ただ、ユウトさんなら、どんなものでも問題なく扱えるはずですけどね。一応、試しに何か作ってみますか?)

俺はその言葉を聞いて、少しだけ考えた。

(そうだな。せっかくだから、お願いするよ)

(わかりました。では、作りたいものを想像しながら、【創造】と言ってください)

(わかった)

俺は言われた通り、【創造】を発動させた。

(どんな感じの物が欲しいですか?)

(とりあえず、動きやすい服みたいなのを作ってくれ)(わかりました。それでは、いきますよ)

俺は心の中で念じた。

(できました。どうぞ)

俺は目を開けて自分の体を確認した。そこには、黒を基調とした半袖長ズボンのジャージのようなものが装備されていた。

(ありがとう。なかなか良い出来だと思うよ。これなら、着心地もいいし、動きやすくて最高だよ)

(そうですか?良かったです。それでは、これからよろしくお願いしますね)

(こちらこそよろしく)

俺はそう言って、握手を求めた。

(はい!これからは、一緒に頑張りましょうね)

俺たちはそう言って、お互いの手を握った。

俺たちは、森の中を進んでいた。

(それにしても、本当に静かだな)

(そうですね。森に入ってからもう1時間ほど経ちますが、一度も魔物に遭遇していませんね)

(確かにそうだな。まあ、こういう時は油断しない方がいいから、警戒だけはしっかりしておいた方が良いだろうな)

(そうですね。それでしたら、探知系のスキルを使ってみてはいかがですか?)

(そうだな。やってみるか)

俺はそう言って、【解析者】を使った。

(え?嘘だろ?)

(どうかしましたか?)

(いや、なんか魔物の反応が大量に出てきたんだよ)

(え!?そんなにたくさんいるんですか?)

(いや、わからない。とにかく、このまま進むと危ないかもしれないから、一旦戻ってギルドに報告に行くか)

(そうですね。それが一番安全かもしれませんね)

俺たちは来た道を引き返した。そして、しばらく歩いていると、前方から複数の気配を感じた。

(まずいな。魔物に囲まれてるようだ)

(え!?どうしてわかるんですか?)

(【解析者】っていうスキルがあって、そこに魔物の反応が表示されたんだよ)

(なるほど。それで、相手の数はわかりますか?)

(それが、結構いるような気がするんだよね)

(え?どういうことですか?)

(なんというか、かなり大きい反応があるんだよ)

(そうなると、おそらくボスがいると思われますね)

(多分な。ちょっと見てくるから、ここで待っててくれないか)

(わ、わかりました。気をつけてください)

(ああ。任せてくれ)

俺はそう言って、前に進んで行った。

魔物は近づいてくる俺に対して、一斉に襲いかかってきた。俺はそれをかわして、魔物をボックスに入れた。

俺はそのまま進み続けた。

(おい!お前ら!止まれ!)

俺はそう言って、魔物たちを止めた。しかし、魔物たちは聞く耳を持たずに襲い掛かって来た。俺はそれをかわし続けて、どんどん奥へ進んだ。

(おい!いい加減にしろ!)

俺はそう言って、魔物たちを吹き飛ばした。

(これでやっと話ができるな)

(くそっ!人間め!)

(はぁ〜。まだ言うか。お前らはもう人間に負けただろ)

(うるさい!お前らも殺してやる!)

そう言って、魔物は俺に向かってきた。

(はぁ〜。仕方がないな。おい!女神!あいつらを殺さない程度にぶっ飛ばしても大丈夫か?)

(はい!問題ありません!)

(わかった)

俺はそう言いながら、拳を振り下ろして地面に叩きつけた。地面が揺れて、魔物たちの体勢が崩れた。俺はその隙に次々と倒していった。

(よし!これで最後か)

俺はそう言って、最後の一匹を倒した。

「お疲れ様です」

「ああ。お待たせして悪かったな」

「いえ。それよりも、さっきのは何をしたんですか?」

「ああ。あれは、俺の能力の一つで、重力を操ることができるんだ」

「そうだったんですね」

「それじゃあ、今度こそ戻るとするかな」

「はい」

俺たちはそう言って、街に向かった。

「よし!それじゃあ、早速行くか」

「オーケー」

俺たちは街を出て出発した。

(それにしても、ほんとに静かなところだな)

(そうですね。魔物も全然いないようですし)

(そうだな。それじゃあ、行くか)

(オーケー)

俺たちはそのまま進み続けた。

(よし!それじゃあ、ここからはもっと慎重に行こう)

(オーケー)

俺たちはより一層注意しながら歩いていった。

それからしばらくして、前方に大きな岩山が見えてきた。

(なあ、あの岩山って何かありそうだな私もそう思います)

(よし!それじゃあ、登ってみるかはい!)

俺たちはそう言い合って、岩山に近づいた。そして、登り始めたのだが、やはりというべきか、途中で道が塞がれていて進めなくなっていた。

(やっぱりダメか)

(そうですね。でも、おかしいですね。こんなところに洞窟なんてなかったはずなんですけど)

(確かにな。でも、この先に何かあるのは間違いないだろうな)

(そうですね。とりあえず、もう少し進んでみましょう)

(わかった)

俺たちはさらに奥に進んだ。すると、大きな穴が開いている場所を見つけた。

(よし!ここに入ってみよう)

(はい!わかりました)

俺たちはそう言って、その中に入った。

(ここは、鉱山の中みたいですね)

(そのようだな。とりあえず、先に進むか)

(はい)

俺たちはさらに奥へと進んだ。

(それにしても、魔物と遭遇しませんね)

(確かにな。でも、この感じだと、近くに魔物の集団がいそうだな)

(そうですね。ユウトさん!この先で戦闘が行われているようです!)

(本当か!)(はい!行ってみましょう!)

俺たちは急いで向かった。すると、そこには大量の魔物がいた。

(なにかと戦っているみたいだな)

(そうですね。加勢しに行きますか?)

(そうだな。そうするか)

俺たちはそう言って、魔物たちに近寄った。

(助けはいらないみたいだな)

(そのようですね)

魔物と戦っている人たちは、とても強かった。あっという間に魔物を倒してしまった。

(ありがとうございました。助かりました)

俺はそう言ったが、相手は無視してどこかに行ってしまった。

(行ってしまいましたね)(ああ。とりあえず、俺たちも行くか)

(そうですね)

俺たちはその場を離れて、さらに奥を目指した。

しばらく進んでいると、開けた場所にたどり着いた。

(ん?なんだ?これは……)

そこには、たくさんの鉱石があった。

(これは……魔石ですか?)

(いや、これは違うと思うぞ。多分だけど、これは魔法を使うための触媒みたいなものだと思うぞ)

(そうですか。それなら、少しだけ持って帰りましょうか?)

(そうだな。これだけあれば、色々と試せるだろうから、少しだけ貰っていくか)

(わかりました。それでは、少しだけ取りましょうか)

(ああ)

俺たちは少しだけ魔法鉱石を持って帰った。

俺たちは、魔法鉱石を手に入れた後、街に戻ってきていた。

(それにしても、本当に静かだな)

(そうですね。それにしても、あんなに魔物と遭遇するのに、全く出会わないというのは不思議ですね)

(確かにな。それに、魔物たちが戦っていた相手が気になるな)

(そうですね。いったい何者なのでしょうか?)

(まあ、それは明日になればわかるだろうから、とりあえず今日は宿に帰ってゆっくり休もうか)

(そうしましょうか)

俺たちはそう言って、ギルドで依頼の報告をして、宿屋に帰った。

「ふぅー。久しぶりにゆっくりできた気がするな」

「そうですね。それにしても、今日のユウトさんの戦い方は凄かったですね!」

「まあな。ただ、まだまだ改良の余地はあるけどな」

「そうなんですか?私は、十分に強いと思いますよ?」

「ありがとう。ただ、俺はもっと強くならないとダメだからさ」

「そ、そうですか。頑張ってくださいね!応援していますから」

「おう!ありがとう」

(それにしても、あの魔物と戦っていた人たちかっこよかったよな)

俺はそう思って、【解析者】を発動させた。

(え?嘘だろ?)

(どうかしましたか?)

俺は驚きを隠せずに、女神様に聞いた。

(いや、あの魔物と戦ってた人の中にとんでもないステータスを持った奴らがいたんだよ)

(え!?そんなに強い人が?)

(ああ。しかも、一人は勇者だった)

(え?勇者ですか?)

(ああ。俺が戦った時に、ステータスを確認したんだけど、レベルが50を超えてたんだよ)

(え!?それってかなりすごいですよね?)

(そうだな。おそらくだが、魔王軍の幹部クラスの実力があるんじゃないか?)

(そんなになんですか?ちょっと信じられませんね)

(いや、実際に見たからな。多分、今の俺では勝てないかもしれない)

(え!?そんなに?)

(ああ。でも、絶対に負けるわけにはいかないからな)

(そうですね。それでしたら、私もできる限りのサポートをしますね)

(ああ。よろしく頼む)

俺はそう言って、眠りについた。

次の日になった。俺たちは朝早くにギルドに向かった。

「おはようございます」

「あら!昨日の新人さんじゃない!どうしたの?」

「実は、また依頼を受けたいと思って来たんですが、いいですか?」

「もちろんいいわよ!それで、今度はどんな依頼を受けてくれるのかしら?できれば、簡単なのが嬉しいのだけれど……」

「それでしたら、これなんかはどうですか?『オークキング討伐』っていう依頼なんですが、最近になって、街の近くの森に大量発生したらしくて、その駆除の依頼なんですが、報酬が金貨3枚と結構良いんですよ」

「そうなのね。それじゃあ、受けさせてもらうわね」

「ありがとうございます。それじゃあ、これが受注書になりますので、こちらにサインお願いできますか?」

「わかったわ」

俺はそう言って、サインをした。

「それじゃあ、気をつけてね」

「はい!行って来ます」

俺たちはそう言って、街を出た。

(それにしても、この街の近くにはダンジョンがないんだな)

(そうですね。このあたりは魔物が少ないですし、あまり冒険者がこないので、ダンジョンもないんだと思います)

(なるほどな。それじゃあ、サクッと終わらせるか!)

俺たちは森の中に入った。

(それにしても、本当に魔物がいないな)

(そうですね。普通なら、もう少しいてもおかしくはないのですが)

(もしかしたら、この近くに何かあるのかもしれないな)

(そうかもしれませんね。とりあえず、警戒だけはしっかりとしておきましょう)

(ああ。そうだな)

俺たちは慎重に進んで行った。

(ん?なんだあれは?)

俺は前方にある大きな岩を発見した。

(あれは、ボス部屋のような気がするな)

(そうですね。近づいてみましょうか)

(ああ)

俺たちはゆっくりと近づいた。すると、岩が動いて中から巨大な魔物が現れた。

(こいつは、ゴーレムか?)

(そうですね。しかし、なぜこのようなところにゴーレムがいるのでしょう?)

(わからないな。とりあえず、やるしかないか)

(そうですね)

(よし!いくぞ!)

俺たちは戦闘を開始した。

(よし!倒した!)

俺がそう言うと、岩がバラバラになった。

(あれ?何も残らなかったな)

(そうですね。とりあえず、確認してみましょうか?)

(そうだな)

俺はボックスを開いた。すると、そこには一振りの大剣が入っていた。

(これは……まさか!聖剣か!でもどうしてこんなところに?)

(ユウトさん!見てください!宝箱が出てきました!中身を確認してみましょうか!)

俺も急いで確認しに行った。そこには確かに宝箱があったのだが……。

(おい!これって……)

(間違いありません。これは、伝説の武器であるエクスカリバーです!)

(やっぱりか。でも、なんでここに?)

(わかりません。とりあえず、開けてみましょうか)

(そうだな)

俺たちは蓋を開けた。中には、一つの指輪と紙切れが置いてあった。

(これは……鑑定してみますね)

俺はすぐに【解析者】を使ってみた。

すると、そこには、

『このアイテムは、使用者の望む力を与えることができる』

と書いてあった。

(どういうことだ?)

(わかりません。でも、このアイテムがあればユウトさんの望みの力を手に入れることができますね)

(確かにな。でも、今は使わない方がいいだろうな)

(そうですね。今はまだ使えないということでしょう)

(ああ。とりあえず戻ろうか)

(はい)

俺たちは来た道を引き返していった。

俺たちは街に戻ってきて、ギルドに向かっていた。

(それにしても、今回は色々と収穫があったな)

(そうですね。でも、一番の収穫はやはりエクスカリバーを手に入れたことですよね)

(そうだな。でも、この力は使うべき時が来るまで封印しておこうと思う)

(そうですね。それがいいと思います)

(ああ。それじゃあ、報告に行くか)

(はい!)

俺たちはギルドに入っていった。

「ただいま戻りました」

「おかえりなさい!早速だけど、オークキングは倒せたかしら?」

「はい!無事に倒すことが出来ましたよ!」

「本当!?よかった!これで、街が救われるわね」

「そうですね。ところで、そのことなんですけど、まだ詳しいことは話せないんですが、ちょっと相談に乗って欲しいことがあるんですが、大丈夫ですか?」

「ええ。別に構わないわよ。それで、何を聞きたいの?」

「実は、今回の依頼に関係してくるんですが、もしかすると、この近くにダンジョンがある可能性があるんです」

「そうなのね。それで、その可能性とは?」

「はい。それは、もしかすると、この近くにある洞窟がダンジョンの入り口になっている可能性があります」

「え?それってもしかして、魔鉱石が大量に眠っているっていうあの洞窟のこと?」

「はい。その通りです」

「本当なの!?」

「はい。なので、もしかしたら、これから先、大量の魔物が出現するかもしれません」

「そう。それなら、ギルドとしては放っておくことはできないわね。それに、もし、本当に魔鉱石があるなら、かなりの利益になるから、ぜひ調べたいところだけど、あなたたちはどうしたいの?もちろん、無理にとは言わないわ」

「いえ、俺たちは行きます。魔鉱石は貴重なものだと思うので、少しでも多く持って帰りたいと思っています」

「そうなのね。わかったわ。それなら、私達と一緒に調査に行ってくれるかしら?もちろん、危険だと思ったらすぐに戻ってもらってもいいから」

「わかりました」

(どうする?)

(そうですね。私たちは問題ありませんよ)

(わかった。それじゃあ、明日の早朝に出発しよう)

(はい。わかりました)

「それじゃあ、今日はゆっくり休んでちょうだいね」

「はい。ありがとうございます。失礼します」

俺たちはギルドを出て宿に帰った。

次の日になった。俺と女神様は街の外に来ていた。

「準備はできているな?」

(はい。いつでもいけますよ)

「それじゃあ、行くか」

(はい!)

俺たちは街から出て、昨日見つけた洞窟に向かって歩き出した。

しばらく歩いていると、前方に魔物の集団が見えてきた。

(ユウトさん!魔物の群れが来ています!)

(わかっている!)

俺はすぐに【解析者】を発動させた。

そして、【解析者】を使って魔物の種類を調べた。

(こいつは……キラーウルフか?)

(そうみたいですね。でも、普通の個体よりもレベルが高いですよ?)

(そうだな。とりあえず、戦ってみるか)

(そうですね)

俺は魔法を使おうとしたが、

(待て!俺一人で戦う)

(え?でも、それだと……)

(ああ。多分だが、俺一人の方が戦いやすいんだよ)

(そ、そうなのですか?よく分かりませんが、頑張ってください!応援していますから!)

俺はボックスから大剣を取り出した。

「さて、始めようか」

俺はそう言って、魔物たちの方に向かった。

「ふぅー。なんとか終わったな」

(そうですね。でも、本当に強かったですね)

「ああ。でも、少しだけ違和感を覚えたんだよな……」

(え?どんな感じですか?)

「なんか、手応えがなさすぎるというか、なんと言うか、そんな感じだった」

(そうですか。まあ、とりあえず進みましょうか)

「ああ。そうだな」

俺たちは再び歩き始めた。

それからも魔物たちを倒しながら進んでいたが、特に異変はなかった。

(おかしいですね。これだけ魔物と遭遇しているのにも関わらず、全然遭遇しませんね)

「そうだな。もうちょっと進んでも何もなかったら引き返すか?」

(そうですね。このまま進んでも、無駄足になりかねませんので、そうしましょうか)

「そうだな」

俺たちはさらに奥に進んだ。

「あれ?なんか広い場所に出たな」

(そうですね。なんでしょうかここは?)

「う〜ん。わかんねえな」

俺たちはとりあえず周りを見渡した。すると、そこにはたくさんの魔物たちがいた。

「ん?あれは……」

(どうしましたか?)

俺は【解析者】を使った。

「やばい!あいつはオークキングだ!しかも、周りの魔物たちもかなり強いぞ!」

(なんですって!)

俺たちは急いで戦闘態勢に入った。

「いくぞ!お前ら!俺についてこい!」

俺はそう言って、走り出した。

(ちょっ!ユウトさん!いきなり突っ込まないでください!)

「悪い!でも、俺が食い止めるから、その間にみんなは攻撃してくれ!いくぞ!【神速】!からの!斬撃乱舞!!」

俺が剣を振ると、無数の斬撃が飛んでいった。そして、魔物たちを切り裂いていった。

「よし!とりあえずはこれでいいか。あとは任せるぞ!」

俺は後ろを振り返った。すると、そこには多くの魔物の死体が転がっていた。

「こりゃあ、すげぇな。でも、まだまだいるな。仕方がない。もう一回やるしかないか」

(ユウトさん!危ないです!)

俺は咄嵯に【神眼】で確認をした。すると、そこには、オークキングと、その取り巻きが近づいてきていた。

「くそ!やっぱりきたか!でも、今度は負けねぇぞ!いくぞ!【神速】!からの乱舞!からの……連閃!!」

俺が連続で攻撃をすると、魔物たちはどんどん倒れていった。

「よし!これで最後か?よし!とりあえずこいつをぶっ飛ばして終わりにするぞ!はぁぁ!!…………あれ?……消えた?どこ行ったんだ?」

(ユウトさん!上です!)

俺は上空を見た。するとそこには、大きな拳が迫ってきていた。

「なに!?ぐはッ!!!」

俺は吹き飛ばされて地面に激突した。

「くそ!いてててててててててててて。まじかよ……あれを食らうとか……ありえねぇ」

(大丈夫ですか?)

「ああ。なんとか生きてるよ」

(よかった……それじゃあ、一旦退きましょうか?)

「いや、もう少し粘ってみるよ」

(どうしてですか?)

「だって、ここで逃げたら負けた気がするじゃん」

(ははは。そうですね。わかりました。でも、無理はしないでくださいね)

(おう!わかってるよ)

俺は再び立ち上がった。

(ユウトさん!また来ますよ!)

「ああ。大丈夫だよ。【神眼】を使うから」

(そうですか。なら安心ですね)

「ああ。いくぜ!」

俺はもう一度【神眼】を使ってみた。すると、ステータスが表示された。

名前:なし

種族:オークキング

性別:男

年齢:15歳

職業:なし Lv.35 HP 4200/4200 MP 20000/20000 ATK 3800 DEF 2900 AGI 3500 HIT 5000 INT 5500 SP 6000 スキル

・怪力Lv.3

・再生能力Lv.2 ユニークスキル

・巨大化 称号・人族殺し

「ははは。なんだよこれ。完全に化け物じゃねえか」

(そうですね。これはちょっと厳しいかもしれませんよ)

「ああ。でも、やってみないとわからないだろ」

(そうですね)

「とりあえず、作戦会議だ」

俺たちは作戦を話し合った。

(よし!じゃあ、まずは俺が奴を引きつけるから、みんなはその隙に攻撃してくれ)

(わかりました。でも、くれぐれも気をつけて下さいね)

(ああ。わかったよ)

俺はすぐに行動を開始した。

「おらぁ!いくぞぉ!」(おい!そっちじゃない!そっちは崖があるだけだぞ!)

「うるせえ!いいからついてこい!」

俺はそのまま走った。そして、途中で止まって、

「喰らえ!魔光玉!」

俺がそう言うと、魔光が放たれて、その方向にオークキングが向かっていった。

(今です!)

その声と同時に、仲間たちの攻撃が一斉に繰り出された。

(ぐぬ!まだだ!)

「はあ!てめえの相手は俺だろうが!くらっとけ!爆裂波!」

俺は【風魔法】の派生である【雷魔法】を使い、爆発を起こした。

「グギャァァア!!!」

「どうだ?効いたか?」

(ユウトさん!離れて!)

「え?なんで……」

その瞬間、俺は吹き飛ばされた。

(ユウトさん!)「くそ!一体何が!?」

(恐らくですが、あのオークキングは身体を硬化させることができるようですね)

「そうか。だから、俺の技が通じなかったのか」

(はい。なので、私たちの魔法ではダメージを与えられない可能性があります)

「わかった。じゃあ、俺が引きつけている間にみんなの魔法で倒せないか試してみてくれ」

(わかりました)

俺は立ち上がり、もう一度攻撃を仕掛けた。

「いくぞ!はあ!てやあ!うおおりゃあ!」

俺は何度も剣を振り続けた。しかし、一向にダメージを与えることはできなかった。

「くそ!どうすりゃあいいんだよ!」

(ユウトさん!危ないです!)

「なっ!?」

俺は背後から何かを感じとり、咄嵯にその場から離れた。

「あぶねー。助かったよ。ありがとう」

(いえ。それよりも、今のはなんでしょう?)

「多分だが、硬化させた腕でぶん殴ってきたんだと思う」

(そうですか。なら、私たちもユウトさんと同じように引きつけて戦うしかありませんね)

「そうだな。それしかないか」

(そうですね)

「とりあえず、俺が引き付けるから、その間にみんなで攻撃してくれ」

(わかりました)

それから俺たちの戦いが始まった。俺たちは、お互いをカバーしながら戦い、なんとか時間を稼ぐことに成功した。そして、ようやくその時が来た。

「はぁ……はぁ……やっと来たな……」

(そうですね……本当に疲れました……)

「ああ……でも、ここからが本番だぞ」

(はい!)

俺たちはゆっくりと歩き出した。

俺たちは少しずつ近づいていき、ついに目の前までやってきた。

「さて、ここが正念場だぞ」

(そうですね。でも、絶対に勝ちましょう)

「ああ」

俺たちは戦闘態勢に入った。

(ユウトさん!行きます!)

「ああ!」

俺は魔物たちに向かって走り出した。

「はあ!ふっ!せい!やあ!うらあ!はあ!うおおりゃあ!はあ!てあああああ!!!」俺は次々と魔物たちを倒していった。そして、遂に最後の一匹になった時、それは起きた。

「なんだと!?」

突然、魔物の体が膨張しはじめたのだ。そして、ものすごいスピードで迫ってきて、俺を吹き飛ばした。

「ぐあッ!」

俺は壁に激突し、地面に落ちた。

(ユウトさん!)

「くそ!なんて強さだよ」

(ユウトさん!大丈夫ですか?)

「ああ。なんとかな」

(良かったです)

「それより、早くあいつをどうにかしないとな」

(そうですね。でも、どうしましょうか?)

「そうだな……」

(考えてください!)

「はい!すみません」

(はぁ……全くもう……)

「よし!とりあえず、俺が引きつけるから、その間にみんなは攻撃を頼む!」

(わかりました)

「いくぞ!」

(はい!)

俺は【神眼】を使った。すると、ステータスが表示された。

名前:なし

種族:オークキング

性別:男

年齢:15歳

職業:なし Lv.40 HP 7800/7800 MP 3000/30000 ATK 5800 DEF 4800 AGI 7000HIT 8000 INT 5600 SP 6400 スキル

・怪力Lv.5

・再生能力Lv.6 ユニークスキル

・巨大化 称号・人族殺し

「まじかよ……やばいな」

(はい。かなり強いですね……)「ああ。でも、やるしかないよな」

(そうですね。私たちはいつも通りやるだけですよ)

「だな。いくぞ!」

(はい!)

俺たちは走り出した。すると、魔物が襲いかかってきた。

「くっ!邪魔すんな!」

俺は魔物を斬りまくった。

「はあ!てりゃあ!うらあ!うおおりゃあ!くそ!全然減らねぇ!」

俺は魔物を斬って、また走ってを繰り返した。

「くそ……こうなったら、一か八かやるしかないか」

俺は【神眼】を使い、魔物たちのステータスを確認した。

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……よし!いける!これなら行けるぞ!よし!いくぞ!」

(ユウトさん!)

「ああ!任せろ!」

俺は魔物を次々に倒していって、とうとう残り一体になった。

「はぁ……はぁ……よし!あと少しだ!一気に片付けるぞ!はぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

俺は渾身の一撃を放った。

「グギャァァア!!」

「はぁはぁ……やったか?」(はい……倒したみたいです)

「よっしゃー!!勝ったぜぇ!!」

(や、やりましたね!ユウトさん!)

「ああ!」

(それじゃあ、早速解体しますか)

俺たちはオークキングを解体した。

(これで終わりですね)

(そうですね。それじゃあ、戻りますか)

「ああ。帰ろう」

こうして、俺たちはなんとか勝つことができた。

俺は今、ギルドで報告をしていた。

「それで、これがその魔石です」

俺はそう言って袋から魔石を二つ取り出して受付に置いた。すると、周りの冒険者たちが騒ぎ始めた。

「おい!見ろよあれ!」

「ああ。あんなにたくさんの魔石を見るのは初めてだぜ!」

「しかも、全部一級品だぜ!」

「まじでかよ!」

「嘘だろ!」

「おい!誰か鑑定士呼んでこい!」

「俺も手伝うわ!」

「俺もいく!」

「おう!」

「私もいく!」

「じゃあ、俺はここで待ってる!」

「わかった!」

なんか、大変なことになってきちゃったな。まあ、仕方がないよな。それにしても、この魔石の量はちょっとまずいか?一応、隠しておいた方がいいかもしれないな。よし!とりあえず、【アイテムボックス】の中に入れておこうか。

「あの〜みなさん?落ち着いてくださいね?」

「あっ!はい!すみませんでした!」

「いえ。別に謝らなくてもいいんですけどね。それと、一つ聞きたいことがあるのですが、いいでしょうか?」

「はい!なんでも聞いて下さい!」

「えっと、俺が持ってきた魔石ってそんなに多いですかね?」

「え?多いってレベルじゃないと思いますが……」

「そうですか。わかりました。それじゃあ、俺は用事があるので失礼させていただきますね」

「はい!お疲れ様です!」

「お疲れ様です」

よし!なんとか誤魔化せたな。俺はそう思いながら外に出て、仲間たちのところに向かった。

「ただいま」

「おかえりなさい」

「おかえり〜」

「おう。そっちはどうだったんだ?」

「バッチリだよ!」

「そうなのか?なら、よかった」

「うん!それよりも、これからどうするの?」

「そうだな。とりあえず、今日は解散にするか」

「そうだね」

「わかりました」

「じゃあ、私は先に帰っておくね」

「ああ。気をつけて帰れよ」

「はーい」

「それじゃあ、俺たちも帰るか」

「そうだね」

「そうですね」

俺たちは宿に戻った。次の日になり、俺たちは街を散策していた。

「なあ、この後どうするんだ?」

「そうですね。特に予定はないですね」

「そうなのか」

「はい」

「じゃあ、俺と模擬戦でもしてみるか?」

「そうですね。お願いしてもいいですか?」

「ああ。もちろんだ」

俺たちはそのまま訓練場に向かっていった。そして、俺は剣を構えた。

「いつでもかかって来い」

俺は剣を構えながら言った。すると、セシリアが攻撃してきた。

「はい!」

俺はそれを剣で受け止めた。

「なかなか速いな」

「ありがとうございます」

それから、何度も剣をぶつけ合った。しかし、お互いに決定打になるような攻撃はなかった。

「やっぱり強いな」

「ありがとうございます」

「そろそろ、俺も本気でいくか」

俺は剣に魔力を込めた。

「いきます!」

「ああ」

俺はそう言うと、セシリアに向かって走り出した。そして、すれ違いざまに攻撃した。しかし、それは防がれてしまった。

「まだだ!」

俺は剣を振り続けた。すると、少しずつだがダメージを与えられているようだった。

「はぁ……はぁ……はぁ……どうだ!はぁ……はぁ……効いてるか?」

「はい。かなり痛いですよ」

「そうか。なら、もっと喰らえ!」

それから、俺は何度も攻撃を仕掛けた。そして、ついにその時が来た。

「くっ……はぁ……はぁ……やっと当たった……」

「そうですね」

「はぁ……はぁ……はぁ……次が最後だ」

「そうですね」

「いくぞ!」

俺は走り出した。すると、セシリアが魔法を放ってきた。

「【火球】」

俺はそれを全て避けて、セシリアに向かって走り出した。そして、そのまま攻撃をしようとした。すると、突然目の前が真っ暗になった。そして、俺は意識を失った。

俺は目を覚ました。

「ここは……」

(ユウトさん!起きてください!)

「うぅ……ん……あれ?俺はなんで寝てたんだ?」

(覚えていないんですか?)

「ああ。全くわからない」

(そうですか……それは、私たちがユウトさんを倒したからですよ)

「はっ!?俺がお前たちに負けたのか!?」

(はい。そうです)

「まじかよ……」

(まじです)「でも、どうやって倒したんだよ」

(それは、ユウトさんが気絶してからの話をしましょうか)

「ああ。頼む」

(はい。ユウトさんは、セシリアさんの攻撃を必死に受けていましたよね?)

「ああ」

(それで、どんどんダメージを受けていったんですよ)

「そうなのか」

(はい)「それで、俺が負けそうになった時に何かが起きたんだろ?」

(はい。急にユウトさんの周りに黒いオーラのようなものが現れました)

「それで?」

(それで、ユウトさんはそのオーラを纏ったまま動き始めました)

「なるほどな。それで、俺の攻撃は全部避けられたわけか?」

(はい。その通りです)

「まじかよ……全然記憶ないんだけど……でも、とりあえずありがとな。助けてくれて」

(いえ。当然のことなので気にしないでください)

「それでもだ。本当に助かったよ」

(はい。それでは、そろそろ帰りましょうか)

「ああ」

(私たちは先に帰る準備をしておきますね)

「わかった」

(それじゃあ、また後で)

「おう」

こうして、俺たちは解散した。その後、俺たちは集合場所に向かい、ギルドに行った。すると、すぐに受付嬢がやってきた。

「お待ちしておりました。ギルドマスターがお呼びですので、こちらに来ていただけませんか?」

「わかりました」

俺たちはギルドの奥に入っていった。すると、そこにはギルドマスターがいた。

「よく来たな。さあ、座ってくれ」

俺たちは椅子に腰掛けた。

「それで、話というのはなんだ?」

「ああ。実は、今回の件について色々と聞きたいことがあってな」

「わかった。なんでも聞いてくれ」

「まずは、魔石の量だ。あれだけの量の魔石をどこで手に入れたんだ?」

「ああ。それは、俺が作った魔道具を使ってだな」

「そうか。だが、それだけだと納得できない部分もある」

「そうだろうな。だから、俺はあるスキルを使ったんだ」

「ほう。どんな能力だ?」

「【アイテムボックス】だ」

「なッ!【アイテムボックス】か!」

「そうだ。俺はこの【アイテムボックス】の中に収納することができるんだ」

「な、なんてことだ……それなら、説明がつくな」

「ああ。それで、俺が倒した魔物は全て【アイテムボックス】の中に入っているぞ」「そうか……わかった。もう、何も聞かないことにしよう」

「そうしてくれるとありがたい」

「ああ。それと、これはギルドからの指名依頼として扱わせてもらう」

「ああ。構わない」

こうして、俺たちは依頼を受けることになった。そして、俺たちは報酬を受け取るために受付に向かった。

「これが今回討伐した魔物の素材の売却額だ」

俺はそう言われて渡された紙を見た。

名前:オークキングの肉×1=100万ゴルダ オークキングの魔石×2個=200万ゴルダ オーガの角×10本=500万ゴルダ ゴブリンの魔石×20体分=2000万ゴルダ 合計で6800万ゴルダだ。俺はそれを受け取ってからギルドを出た。

「よし!これで、しばらくはお金には困らないな」

(そうですね。ですが、少し使いすぎじゃないでしょうか?)「そうかもな」

(まあ、いいですけどね)

「ああ。それじゃあ、そろそろ帰るか」

(そうですね)

俺たちは宿に戻っていった。

俺は今、仲間たちと一緒に街を歩いていた。

「なあ、これからどうするんだ?」

「そうだね〜う〜ん……あっ!そうだ!ねえ!これからみんなで一緒にクエストを受けようよ!」

「え?いいけど、俺たちはランクFだぜ?大丈夫なのか?」

「うん!多分ね!」

「おい!多分って……」

俺は不安になりながらもクエストを受けることにした。

「まあ、とりあえずやってみるか」

「そうだね!それじゃあ、早速行こう!」

俺たちは街の外に向かって歩き始めた。そして、街を出ると、草原が広がっていた。

「ここら辺でいいかな?」

「そうですね」

「よし!なら、探すか」

「うん!」

俺たちはしばらく探し回った。しかし、なかなか見つからなかった。

「なあ、やっぱり見つからないんじゃないか?」

「そんな事ないと思うよ!」

「そうか?」

「うん!」

それから、さらに時間が経った。しかし、まだ見つけることはできなかった。

「なあ、もしかしたら他の冒険者たちが先に見つけたんじゃないのか?」

「そんなはずはないよ!だって、私たちはちゃんとここに来る前に気配感知のスキルを使ったからね!」

「なら、どうして見つからないんだろうな」

「もしかして、どこかに隠れてるとか?」

「隠れている?」

「うん。ほら!よくあるじゃん!洞窟の中でモンスターたちがたくさん集まって、ボスだけが残った!みたいなやつ!」

「確かにな。でも、それなら結構目立つはずだよな?」

「そうだね〜」

「やっぱり、俺たちが知らないところにいるのかもな」

「そうかもしれないね」

それから、さらに時間が経過したが、結局見つからなかった。俺たちは仕方なく帰る事にした。そして、俺たちは宿に戻り、次の日になった。俺たちは朝早くに宿を出て、街を散策していた。すると、後ろの方から俺たちを呼ぶ声が聞こえた。

「あの〜すみませーん!」

俺たちは振り返ると、そこには一人の男性が立っていた。

「どうかしましたか?」

俺は男性に尋ねた。

「あなた方は昨日、街の外にある草原で大量の魔物を倒していた方たちですよね?」

「はい。そうですが……」

「やっぱり!私はこの街の冒険者ギルドの職員をしているものです。実は、ギルドマスターからの依頼がありまして、是非とも私たちに同行させていただきたいのですが、よろしいですか?」

「それは構いませんよ」

俺はそう答えた。すると、男性は笑顔になった。

「ありがとうございます!では、早速向かいましょう!」

俺たちは男性の後に続いて歩き出した。すると、すぐにギルドに着いた。

「到着です!では、中に入りましょう!」

俺たちはギルドに入った。すると、ギルド内にいた人たちが俺たちのことを見ていた。俺はそれに気づき、少し恥ずかしくなった。それから、俺たちはギルドマスターの部屋まで案内された。

「失礼します」

ギルド職員がそう言うと、扉を開けた。そして、俺が入るように促してきた。俺はそれに従って部屋に入っていった。すると、中にはギルドマスターが座っていた。

「よく来てくれたな。とりあえず、そこに座ってくれないか?」

「わかりました」

俺は指示通りに椅子に腰掛けた。すると、隣にいた女性がお茶を出してきた。俺はそれを受け取った。

「それで、今回はなんで俺を呼んだんだ?」

俺は疑問を口にした。

「ああ。それはだな、君たちに指名依頼を出したいんだ」

「なるほど」

「ああ。もちろん、断っても構わない」

「いや、受けさせてもらいます」

「そうか。助かるよ」

「いえいえ。それで、内容はなんですか?」

「ああ。その依頼は最近この街の近くの森に出現しているオーガの群れの討伐だ」

「なるほど」

「ああ。この依頼はBランク以上の冒険者が受けられるようになっている」

「わかりました。それで、いつ出発すればいいですか?」

「それは、明日の早朝だ」

「明日ですか……」

「ああ。急ですまないが、よろしく頼む」

「はい」

「報酬は成功報酬で一人1000万ゴルダだ」

「わかりました」

「あと、何か質問はあるか?」

「いえ。特にありません」

「そうか。では、明日の朝8時に門のところに集合してくれ」

「はい」

俺はそう言って立ち上がった。そして、俺たちはギルドを後にした。

俺たちが宿に戻ると、既にみんなが帰ってきていた。

「おかえりなさい」

ソフィアが出迎えてくれた。

「ただいま」

俺は返事をして、自分の部屋に戻ろうとした。すると、俺の前に立ち塞がった。

「ちょっと待ってください!」

「ん?なんだ?」

「私との約束を忘れたんですか!?」

「え?何かあったっけ?」

「忘れちゃったんですか?」

「ああ。ごめん。全然覚えてないわ」

「もう!ユウトさんはひどいです!」

「そうか。本当にすまんな」

「全くです!罰として、私の頭を撫でてください!」

「ああ。わかったよ」

俺はソフィアの頭に手を置いて、優しく撫でてあげた。すると、ソフィアは気持ち良さそうな顔をした。俺はしばらくの間、そのままの状態でいると、セシリアが俺たちに声をかけてきた。

(お二人共、何をしてるのですか?)

「ああ。実はな……」

(そういうことなら、私が代わりに説明しましょうか)

「頼んだ」

俺はそう言いながら手を離そうとした。しかし、ソフィアはそれを止めた。

「もう少しだけこのままでお願いします」

「わかったよ」

俺はそう答えると、再びソフィアの頭に手を置いた。

(というわけです)

(な、なるほど……)

(まあ、気にしないでくれ)

(はい。わかりました)

こうして、俺はソフィアの頭から手をどけた。そして、俺が離れようとすると、今度はセシリアが俺の腕にしがみついてきた。

(次は私ですね)

(いや、違うぞ)

(違いません!)

(いいや、違わないね)

(いいえ!違います!)

(いいや、違くない!)

俺とセシリアはしばらく言い争いをしていた。そして、俺たちの口論が終わる頃には夜になっていた。そして、俺たちは晩ご飯を食べてから、風呂に入って眠りについた。

翌日になり、俺たちは街の門に来ていた。

「おはようございます!」

ギルド職員の人が元気良く挨拶をした。

「おはようございます」

俺たちもそれに続いて挨拶をした。

「皆さんはオーガの討伐は初めてなんですよね?」

「はい。そうですね」

「わかりました!それじゃあ、今回のオーガの討伐の流れを説明していきますね!」

ギルド職員の人はそう言った後、オーガについての説明を始めた。オーガとはその名の通り、鬼のような姿をした魔物だ。しかし、オーガにも様々な種類が存在するらしい。その中でも、オーガキングと呼ばれる個体は他のオーガよりも強く、知能も高いと言われている。そのため、他のオーガを纏め上げ、集団で行動する事もあるようだ。

「とまあ、こんな感じですね!」

「そうですね。理解できました」

「はい!それじゃあ、早速向かいましょう!」

俺たちは森に向かって歩いていった。道中は特に何も起こらず、無事に到着した。

「それじゃあ、まずは索敵をしていきましょう!」

俺たちは森の中を進んでいった。すると、俺たちはすぐに魔物を発見した。

名前:オーク

種族:亜人族

性別:♂

レベル:5

HP:600/600MP:50/100

攻撃力:350

防御力:400

敏捷性:100

魔力:10

運:30

状態:正常

魅力値:15 習得スキル 【突進】

固有技能 なし 俺は鑑定でステータスを確認した。

「なあ、これって強いのか?」

俺はそう尋ねてみた。すると、ギルド職員の男性が答えた。

「そうですね。一般的な冒険者なら勝てると思いますよ」

「そうなのか?」

「はい!ですが、あなたたちはまだランクFですから、無理せずに戦いましょう!」

「わかりました」

それからしばらく歩いていると、突然魔物が現れた。

「あれはゴブリンですね!僕が倒してきます!」

ギルド職員の男性がそう言うと、一人で飛び出していった。俺は慌てて声をかけた。

「ちょ、ちょっと待ってください!」

しかし、時すでに遅く、ギルド職員の男性は剣を抜いてゴブリンに斬りかかっていた。しかし、まだ距離があったせいか、避けられてしまった。そして、男性は体勢を崩してしまった。俺はそれを見て、急いで駆け寄っていった。しかし、間に合いそうになかった。

「危ない!」

俺はそう叫びながら男性を突き飛ばした。しかし、その代わりに俺が攻撃を受ける事になってしまった。俺はそのまま吹き飛ばされてしまい、木にぶつかった。そして、地面に倒れ込んだ。

「うぐぅ……」

俺は痛みに耐えながらもなんとか立ち上がった。すると、目の前には今にも襲い掛かろうとしているゴブリンの姿があった。俺はそれを確認してからすぐにその場から離れた。すると、先程まで俺がいた場所には棍棒を振り下ろした状態のゴブリンが立っていた。どうやら、攻撃を回避できたようだった。

「大丈夫ですか!?」

ギルド職員の男性が心配そうに話しかけてきた。

「はい!なんとか……」

「よかったです!でも、どうしてあんな無茶なことを?」

「いえ、あなたに怪我をして欲しくなかったので……」

「そんな!あなたは僕の命を助けてくれた恩人なんです!あなたが傷つくくらいなら、僕が傷ついた方がマシです!だから、もう二度とあんなことはしないでください!わかりましたか?」

「はい……」

俺は返事をしながら立ち上がり、ゴブリンと対峙した。すると、隣にいたソフィアも前に出た。

「ユウトさん!ここは私に任せてください!」

ソフィアは笑顔で言ってきたが、正直かなり不安だ。だが、任せる事にした。

「わかった。気をつけろよ」

「はい!」

ソフィアは笑顔で答えると、ゴブリンに向かっていった。そして、素早い動きで攻撃を仕掛け始めた。しかし、相手も素早く、なかなかダメージを与える事ができなかった。そして、ついにソフィアが相手の反撃を受けてしまう。

「きゃっ!」

ソフィアは小さな悲鳴を上げた。俺はソフィアに近づこうとした。すると、ギルド職員の男性が俺を止めてきた。

「待ってください!」

「なんだよ!」

「あの子を信じてください!」

俺はソフィアの方を見た。すると、ソフィアは立ち上がっていた。

「まだまだこれからですよ!」

ソフィアは再び走り出した。そして、また同じように攻撃をし始めた。すると、少しずつではあるがダメージを与えているように見えた。

「いけるかもしれません!」

「ああ。そうだな」

それからしばらくして、ようやくゴブリンを倒す事ができた。

「ふーっ。やっと倒せましたね!」

「ああ。お疲れ様」

「はい!ありがとうございます!」

ソフィアは嬉しそうに返事をした。

「よし!それじゃあ、先に進もうか」

「はい!」

俺とソフィアは奥に進んでいくと、さらに多くの魔物と遭遇したが、特に問題なく討伐していった。そして、しばらく進むと大きな広場のようなものが見えてきた。そこには、多くのオーガたちがいた。

名前:オーガ

種族:亜人族

性別:♂

レベル:40

HP:1000/1000

MP:500/500

攻撃力:800防御力:700

敏捷性:200

魔力:50

運:25

状態:正常

魅力値:45 習得スキル 【突進】

固有技能 なし 俺たちが見ている前でオーガたちの戦闘が始まった。オーガたちの中には、ソフィアと同じくらいの年齢に見える女の子もいたが、それでも戦っていた。そして、俺たちはその様子を見守っていた。すると、一人の女性が俺たちの方に走ってきて、大声で叫んだ。

「助けてくれ!」

女性は助けを求めてきた。俺たちはそれに応えようとしたが、その前にギルド職員の男性が女性のもとに走って行った。そして、女性の手を掴んだ。

「落ち着いてください!」

「離してくれ!早くしないとあいつらが!」

「わかっています!ですが、まずは冷静になってください!」

「くそっ!」

女性はそう言ってから深呼吸をして、落ち着きを取り戻した。

「すまない。少し取り乱した」

「いえ。それよりも、何が起きたんですか?」

「ああ。実はな、さっきまでは普通に戦えていたんだが、突然オーガキングが現れてな。それで、奴が他のオーガたちに命令をして、みんなで一斉に襲いかかってきたんだ」

「なるほど」

「ああ。だから、私はみんなを守るために戦うしかなかったんだ」

「そうですか……」

「ああ。それと、私の名前はマリーだ」

「僕はギルド職員をしている、トーマスと言います」

「そうか。よろしく頼む」

「はい。こちらこそ」

「それじゃあ、とりあえずこの場から離れよう」俺はそう提案したが、二人は首を横に振った。

「いや、それはできない」

「なぜですか?」

「私がここを離れれば、他のオーガたちが他の人たちを襲い始めるかもしれない」

「なるほど」

「それに、私にはオーガたちを纏め上げる力はない。だから、私の代わりに他の人たちを守って欲しいんだ」

「わかりました。それじゃあ、僕たちは周りのオーガを倒しますね」

「悪いな。助かるよ」

「いいえ。気にしないでください。それじゃあ、行きましょう!」

「はい!」

俺たちはマリーさんの頼みを受けて、オーガと戦うことにした。

「じゃあ、まずはオーガを倒していきましょう!」

「はい!」

俺たちはオーガたちとの戦闘を開始した。オーガたちは数が多かった。そのため、俺とセシリアとソフィアは二人で一体ずつ相手にすることにした。俺とセシリアはお互いの背中を預け合うようにしながら戦った。

「はぁ……はぁ……」

俺は肩で息をしていた。しかし、セシリアは平然としていた。

「はあ……はあ……」

「大丈夫ですか?」

「ああ。なんとかな」

「そうですか。でも、あまり無理はしないで下さいね」

「わかった」

俺はそう答えてから、オーガに視線を向けた。すると、オーガは雄叫びを上げながら突っ込んできた。俺はそれを避けると、剣で斬りつけた。しかし、オーガは頑丈で、あまりダメージを受けていないようだった。俺はすぐに距離を取ろうとしたが、今度はセシリアに邪魔をされた。

「ユウトさん!離れてはダメです!」

「でも、このままじゃあ……」

俺はそう言いながら、後ろを振り返った。すると、そこにはすでに剣を構えたソフィアの姿があった。そして、ソフィアは俺に斬りかかろうとしているオーガに対して、剣を振り下ろした。すると、オーガは真っ二つになった。そして、ソフィアはそのまま俺に抱きついてきた。

「ユウトさん!怪我してないですか!?」

「いや、俺は大丈夫だけど……」

「よかったです……」

「あの……」

「はい?なんですか?」

「当たってるんだけど」

「へっ?」

ソフィアは自分の体を見下ろして、自分の胸に俺の頭がある事に気づいたようだ。そして、顔を赤く染めると慌てて俺から離れた。

「ごめんなさい!ユウトさん!」「いや、別に謝らなくても……」

俺とソフィアがそんなやり取りをしていると、別の方から声が聞こえてきた。

「二人とも!今は戦闘中ですよ!」

「すみません……」

俺はそう答えてから、再びオーガと向き合った。それからしばらくすると、全てのオーガを倒す事に成功した。すると、マリーさんが話しかけてきた。

「あんたら、強いんだな。もしかして、ランクAなのか?」

「い、いえ!まだランクFです……」

俺は慌てて答えた。すると、ソフィアが話に入ってきた。

「私たちの事は気にしないでください!それより、マリーさんはどうしてここにいるんですか?」

「いや、それが……」

マリーさんは何かを言いかけたが、すぐに口を閉じた。

「なんでもない。忘れてくれ」

「わかりました。では、とりあえず移動しましょうか」

「そうだな。それじゃあ、付いてきてくれるか?」

「はい。もちろんです。僕たちも行くところがあるので」

「そうなのか。じゃあ、案内するよ」

俺達はマリーさんに連れられて、森の奥へと進んでいった。しばらくすると、洞窟のような場所に到着した。どうやら、ここが目的地らしい。

「ここは?」

俺はそう尋ねてみると、マリーさんが答えた。

「この先にオーガキングがいる」

「そうなんですか?」

「ああ。さっきも言った通り、私たちはオーガと戦っていたんだが、急に仲間が逃げろと言ってきたんだ」

「なるほど」

「そして、オーガたちから逃げるために必死に走っていたら、いつの間にかこの場所にたどり着いていたんだ」

「そうだったんですね」

「ああ。だから、ここからは慎重に行動しよう」

「わかりました」

俺はそう答えると、みんなに声を掛けた。

「じゃあ、行こうか」

俺の言葉に全員が返事をした。そして、俺達も洞窟の中に入っていった。

名前:ユウト・アサクラ(佐倉優斗)

性別:男

種族:人族(異世界人)年齢:18歳

レベル:10→13

職業:剣士

体力:350/3500

魔力:250/2500

攻撃力:1500

防御力:900

敏捷性:700

運:100

ユニークスキル:【ステータス】【スキル付与】【オートスキル】【アンロック】

固有技能:【回避】【剣術】【投擲】【隠密】【危機察知】【魔力操作】【魔力強化】【敏捷強化】【腕力強化】

スキル:【気配感知LV.MAX】【危険感知LV.3】【気配遮断LV.4】【隠行LV.1】【罠解除LV.2】【偽装LV.3】【格闘術LV.1】

称号:《無謀なる者》《狂乱の戦士》《ホーンラビットの憐み》《博愛主義》《キノコマスター》 持ち物:食料×21日分、冒険者ギルドカード、魔鉱石×5個

所持金:0G(貯金額:5000万ゴルダ)

ソフィアに聞いたのだが、このオーガの住処と呼ばれているダンジョンは最近になって発見されたもののようで、かなり奥まで進む事ができた。だが、途中でゴブリンが生息していたために進むペースが落ちてしまい、最奥地に着く前に夜を迎えてしまった。そこで今日はもう休むことに決まった。すると、マリーさんは地面に座りながら呟いた。

「それにしても、オーガキングはなぜあんなところに姿を現したんだろう」「えっと、どうしてだと思いますか?」俺はそう尋ねた。すると、マリーさんは首を横に振った。

「残念ながら私にもわからない」

「そうですか」俺はそう言うことしかできなかった。そして、俺たちがそんな話をしている間に他のメンバーたちは既にテントを設置し終えていた。なので俺は寝床を作るために動き出した。といっても俺の仕事はすぐに終わってしまった。というのも、テント自体はすでに設置してある上に、寝袋などは全て収納の中に入っているため特にやることがなかったのだ。俺は仕方がないので焚き火台に枯れ木を集めて火の番をすることにした。それからしばらくしてから、ソフィアが近寄ってきた。

「ユウトさん。少しよろしいですか?」

「うん?いいけど」

「ちょっとお話しませんか?」

「いいよ」

「ありがとうございます。じゃあ、とりあえずその辺りに腰掛けてください」

「わかった」

俺は言われた通りに、近くの岩に座った。すると、なぜか隣にソフィアがやってきた。俺が疑問に思っていると、ソフィアは話し始めた。

「あのですね。少し気になる事があるのですが聞いてもいいですか?」

「いいよ」

「じゃあ、聞きますがなぜユウトさんは私に敬語を使っているんですか?」

「えっ?」

「だって、私の方が年下ですし、それにユウトさんは私よりも強くて、頼りになります。だから、もっとフレンドリーに接すればいいと思うんですよ」

「そう言われてもなぁ」

俺はそう言いながら頭を掻いた。

「やっぱりダメですか?」

「うーん。でも、ソフィアはそれでいいのか?」

「私は全然構いません!」

ソフィアは笑顔でそう言ってきた。俺はそれを見て、思わずドキッとしてしまった。俺は誤魔化すように咳払いをして、質問した。

「そ、そうか。まぁ、それなら別に気にしないでおくよ」

「本当ですか!?やったぁ!」ソフィアは嬉しそうな表情で俺の腕を抱きしめてきた。その結果、俺の右腕にはソフィアの胸の感触が強く伝わってきた。ソフィアはその事に気づいたらしく慌てて離れた。俺の顔が熱くなっていくのを感じた。きっと今の俺は真っ赤になっているのだろうと予想できた。しかし、それを悟られたくなかったので、顔を下に向けて黙っていた。すると、ソフィアは再び近づいてきて話しかけてきた。

「あの、もし良かったらなんですが一緒に寝てくれませんか?その方が安心できるというかなんといいますかね?とにかく!私がお願いします!」ソフィアは手を合わせて頭を下げてきた。正直言って断る理由もなかったし、何より一人で寝るのは寂しかったので承諾する事にした。

「わかったよ。ただ、一つだけ条件があるんだけどいいかな?」

「もちろんです!なんでしょうか?」

「それは、あまり密着しないで欲しいんだ。その、恥ずかしいし」

「わかりました!でも、なるべく頑張ってみます」

「いや、無理はしないでくれ」

「わかりました。無理はしません」

「助かる」

「いえいえ。それじゃあ、行きましょうか」

「ああ」

俺達はお互いに背中を向けた状態で横になった。それからしばらくの間、会話もなく静かな時間が流れた。俺はふと気になった事を尋ねてみた。

「そういえば、マリーさんはどうするんだろうね?」

俺はそう言った後、すぐに後悔した。なぜなら、ソフィアから返答がなかったからだ。俺は不安になり、後ろを振り向いた。すると、ソフィアはすでに眠ってしまっていた。俺は起こさないように声をかけた。

「ソフィア。寝ちゃったか?」

「はい」ソフィアからすぐに返事があった。

「そうか。じゃあ、俺はもう少し起きてることにするから、何かあったら呼んでくれ」

「わかりました」

「お休み」

「お休みなさい」

ソフィアはそう言うと、再び眠りについた。俺はしばらく起きていることにしたが、暇だったので寝ることにした。すると、急に尿意を感じ始めたので用を足してから寝る事に決めた。俺はソフィアに一言伝えてからその場を離れた。

「ソフィア。悪いが、トイレに行ってくる」

「はい。わかりました」

「すぐに戻る」

「わかりました」

俺はそれだけ伝えると、急いで洞窟の外に向かった。そして、洞窟から出てすぐに草むらに入った。

「危なかったな。危うく漏らしてしまうところだった」

俺はそう呟きながら、ズボンを脱ぎ捨てた。すると、急に強い風が吹いてきて、俺の股間を撫でるように通り過ぎていった。

「ひゃっ!?」

俺は驚いて変な声を出してしまった。幸い、誰にも聞かれていなかったようだ。俺は安堵のため息をつくと、その場にしゃがみ込んだ。そして、落ち着くために深呼吸をした。

「よし。これで大丈夫だろ」

俺は自分に言い聞かせると、立ち上がって歩き出した。そして、無事に用を済ませる事ができた。俺はそのまま寝る場所へと戻った。すると、そこにはソフィアの姿はなかった。おそらく先に寝ているのだろうと思い、俺は自分の寝床に戻った。それから数分後に俺は眠りにつくことができた。

次の日の朝、俺は目を覚ました。そして、まだ誰も起きていないようなので、テントの中に入りソフィアの体を揺さぶって起こした。

「ソフィア。朝だよ」

「むにゅぅ」

「ソフィア。早く起きないとまた襲われるぞ」

「もう食べられないですよぉ」

「ソフィア。ソフィア」

「はれぇ?ユウトさん?」

「そうだよ。おはよう」

「はい。おはよございます」

ソフィアは寝ぼけ眼のまま挨拶してきた。

「ほら、みんなが起きる前にテント片付けるよ」

「はーい」

俺達はその後、素早く着替えを終わらせた。俺はいつものように【アイテムボックス】に荷物を入れていく作業を始めた。すると、ソフィアが声を掛けてきた。

「ユウトさん。今日は何をするんですか?」

「今日は特に何も決めてないんだよなぁ。だから、みんなが起きてから相談しようかと思ってる」

「なるほど。確かにそうですね。じゃあ、それまで私と一緒に見張りをしませんか?」

「いいけど、本当にいいのか?」

「はい。ユウトさんさえ良ければぜひお願いしたいんですけど」

「じゃあ、そうするか」

俺はそう言うと、ソフィアと共に焚き火台のそばに座った。それから少しして、他のメンバーが続々と集まってきた。全員が集まったのを確認してから、俺は話を切り出した。

「えっと、今日の行動方針についてだけど何か意見のある人はいる?」

俺の言葉に最初に反応したのはマリーさんだった。

「私としては一度街に戻って、冒険者ギルドに報告するのがいいと思うわ」

「理由は?」

「まず、依頼の報告もあるし、オーガキングが討伐されたかの確認もする必要があるわ。それに、オーガキングの住処が発見されたことで、この辺りにもオーガが出現する可能性が出てきたからね」

「な、なるほど」

「そして、オーガキングが討伐されていた場合、オーガたちの住処が無くなっている可能性が高い。だから、オーガたちがこの辺りに出現する前に討伐するべきだと思う」

「な、なぁ。オーガたちが現れなくなると、この辺りにどんな影響が出るんだ?」

俺は恐る恐る尋ねた。すると、ソフィアが答えてくれた。

「そうですね。例えば、オークの集落が無くなった事で他の集落が襲撃を受ける可能性もありますし、逆に人間の国などが襲ってくるかもしれません」

「マジかよ」

「まぁ、あくまで予想ですけどね」

「でも、オーガキングがいなくなったことで、オーガが凶暴化する可能性もあるんじゃないかしら?」マリーさんが質問すると、ソフィアは首を横に振った。

「いえ、その心配はないと思いますよ。だって、今まで人間とオーガが遭遇した事はありませんから」

「それもそうね。それじゃあ、私たちは一旦街に戻りましょうか」

「わかった。じゃあ、準備を始めるよ」

「ええ」

俺とマリーさんは立ち上がり、それぞれの持ち物の準備に取り掛かった。といっても、ほとんど終わっていたのですぐに終わる事が出来た。なので、俺たちは出発の用意をしているソフィア達を待つ事にした。

「なぁ、ソフィア。ソフィアはこの後どうするんだ?」

「そうですね。とりあえずは、ユウトさん達の旅に同行しようかと思っているのですが」

「そうなのか?でも、ソフィアはどこかに行く当てとかあるのか?」

「実は特に無いんですよねぇ。だから、ユウトさんのパーティーに入れてもらってもいいですか?」

「もちろん!むしろこっちからお願いしたいくらいだ」

「ありがとうございます!」

「こちらこそよろしく頼む」

俺はそう言って、ソフィアと握手を交わした。その時、ソフィアはなぜか俺の手を握ったまま離そうとしなかった。俺は不思議に思い、ソフィアの顔を見た。すると、ソフィアは顔を真っ赤にしていた。

「ソフィア?どうかしたのか?」

「いえ、なんでもないです」

「そうか。ならいいんだけど」

俺はそう言いながらも、ソフィアが握っている手に力を込めて握り返しているのが気になって仕方がなかった。だが、俺はその理由を聞くことができなかった。ソフィアの顔は真っ赤になっていたから、おそらく恥ずかしかったのだろうと思ったからだ。俺はソフィアの手を放すと、ソフィアは安心したようにため息をついた。俺はその様子を見て、なんでそんな事をするのか疑問に思ったが、聞くことが出来なかった。

しばらくして、全員が集合したので、俺は出発する事に決めた。

「それじゃあ、行くか」

「そうですね」

ソフィアがそう言うと、みんなで一斉に歩き始めた。俺は歩きながら、ふと気になった事をソフィアに聞いてみた。

「そういえば、ソフィアはどうして『迷宮都市』に来たんだ?」

「私はですね。実は旅をしていた時に盗賊に襲われてしまって、そのせいで奴隷になってしまったんです。そして、その盗賊団を壊滅させるためにこの街を訪れたんです」

「な、なるほど」

「そして、その途中で偶然ユウトさんと出会ったんです。最初はユウトさんが異世界から来た人だとは知りませんでしたが、ユウトさんから強い魔力を感じて、すぐに異世界から召喚されてきた方なんだとわかりました」

「そうだったんだな。じゃあ、ソフィアは最初から俺の事を知ってたんだな」

「はい。ユウトさんは私の命の恩人で憧れの人ですからね」

「そ、そうか。なんか照れるな」

俺はそう言いながら頭を掻いた。ソフィアは笑顔を浮かべていたが、急に立ち止まった。俺はソフィアの背中に衝突してしまった。

「どうしたんだ?」

「すみません。どうやら魔物が近づいてきているみたいです」

「そうなのか。ソフィアは戦えるのか?」

「はい。一応、剣術は使えるので大丈夫だと思います」

「そうか。無理だけはするんじゃないぞ」

「わかりました。それで、どうしますか?」

「そうだな。みんなで迎え撃つのがいいと思うけど、大丈夫かな?」

「はい。問題ないですよ」

「よし。じゃあ、そうするか」

俺はそう言うと、みんなに声をかけた。

「みんな。ソフィアが言うには、魔物が近づいてきてるらしい。だから、迎撃態勢を取るぞ!」

俺の声を聞いたみんなはすぐに戦闘準備を整えた。そして、少しするとゴブリンの集団が現れた。俺はみんなの前に立つと【気配感知LV.MAX】を使い、周囲を警戒し始めた。すると、急に後ろから声をかけられた。

「私が先頭に立って戦うわ」

「わかった。でも、危なくなったらすぐに下がれよ」

「わかってるわよ。それじゃあ、行ってくるわね」

マリーさんはそう言い残すと、ゴブリンに向かって走り出した。そして、あっという間にゴブリンを斬り伏せてしまった。

「すげぇ」

「さすがはマリーさんですね」「ああ。マリーさんの強さは半端じゃないからな」

「そうですね。マリーさんがいれば大抵の敵は倒せますよね」

「うん。確かにそうかもしれないけど、ソフィアも十分すごいと思うぞ」

「えっ!?私なんて全然ですよ」

「そんなことないって。だって、ソフィアはオーガキングを倒したじゃないか」

「あれはユウトさんのおかげですよ」

「いやいや、ソフィアも頑張っただろ」

「いえいえ、ユウトさんがいなかったら絶対に勝てなかったですよ」

俺とソフィアがお互い褒め合っていると、後ろから肩を叩かれた。俺は驚いて振り返ると、そこには呆れた顔のマリーさんがいた。

「ユウト。ソフィア。二人で何をしてるの?もしかして、イチャイチャしてるの?」

「い、いや。別にそういうわけじゃなくてな」

「本当かしら?まぁ、それは後でじっくりと聞かせてもらうとして、今は目の前の戦いに集中しましょう」

「わ、わかった」

俺はそう答えると、再び【気配感知】を発動させた。すると、今度はオーガが十体現れた。

「みんな。オーガがきたぞ!」

俺がそう叫ぶと、みんなはそれぞれ武器を構えた。すると、オーガたちは俺たちの方へ向かって走ってきた。

「ソフィアはオーガを引きつけてくれ。その間に俺たちが攻撃する」

「わかりました」

俺はそう言うと、オーガを迎え撃った。オーガの攻撃は大振りだったので、俺は攻撃を簡単に避けることが出来た。俺はオーガの腹に剣を突き刺して、そのまま横に薙ぎ払った。すると、オーガは勢いよく吹っ飛んだ。

「グギャアァ」

オーガは悲鳴を上げながらも立ち上がると、俺に向かって突進してきた。俺はオーガの攻撃を受け流しながら、オーガの足に蹴りを入れた。すると、体勢を崩したオーガはそのまま地面に倒れ込んだ。俺は倒れたオーガに止めを刺しに行こうとしたが、俺の横から別のオーガが迫ってきたので慌てて後ろに下がった。そして、すぐに魔法を放った。

「〈火球〉」

俺が放った火属性の初級魔法の火球は、俺に迫っていたオーガに命中して爆発した。そして、俺が倒したオーガは光の粒子となって消えていった。

「ユウト。ナイスアシストね」

「マリーこそ、ナイスプレーだったぞ」

「ふふふ。ありがとね」

「おう」

俺とマリーさんはハイタッチを交わした。すると、横からソフィアが話しかけてきた。「お二人とも凄かったですね」

「ソフィアこそ、オーガの注意を引くのが上手だったよ」

「そうですか?でも、ユウトさんがオーガを倒してくれたおかげで、他のオーガたちの注意が逸れていましたからね」

「そうだったのか」

「はい。それに、マリーさんの動きに合わせてオーガを誘導していたので、かなり戦いやすかったですよ」

「そうか。マリーさんもありがとうございました」

俺はマリーさんにも礼を言った。マリーさんは微笑むと、首を横に振った。

「気にしないでいいのよ。それよりも、そろそろ他のオーガが来る頃だと思うんだけど」

「そうですね。私はいつでもいけます」

「わかった。じゃあ、頼む」

「任せて下さい」

ソフィアはそう言うと、剣を構えて前に飛び出した。俺とマリーさんはソフィアの後ろにつくようにして、ソフィアと共にオーガと戦った。ソフィアが敵の気を引いている隙に俺とマリーさんが攻撃を仕掛けるという戦法で戦った。ソフィアは一人で複数のオーガを相手にしても全く引けを取らず、むしろ圧倒していたので俺たちはソフィアのサポートに徹した。そして、俺たちがオーガを倒す頃にはソフィアは既にすべてのオーガを倒していて、最後の一体にとどめを刺したところだった。

「ソフィア。大丈夫か?」

「はい。大丈夫です。でも、ちょっと疲れました」

「そうか。とりあえず、みんな無事で良かったな」

「はい」

俺とソフィアが話していると、マリーさんが近づいてきて、俺の耳元で囁いた。

「ねぇ、ユウト。ソフィアとはどこまでいったの?」

「へ?ど、どこってどういう事ですか?」

「うーん。例えば、キスとかしたの?」

「き、きききききききききききききききききききききききききききききききききききききききききききききききききききききき」

俺はあまりにも衝撃的な言葉を聞いてしまい、頭が真っ白になった。

「ふふふ。ユウトったら、面白い反応をするのね」「ちょ、ちょっと待ってくれ。マリーさんはいきなり何を言い出すんだよ」

「あら。ソフィアとユウトは付き合ってるんでしょ?」

「いや、まだだけど」

「そうなの?」

「ああ。ソフィアにはこの街に来てもらったばかりだし、もう少しこの街でゆっくりしてから一緒に旅に出ようと思ってたんだ」

「そう。じゃあ、ソフィアとユウトはまだ恋人同士ではないのね」

「そうだな」

「そう。なら、今のうちにソフィアを落としちゃえばいいんじゃないの?」

「な、なんの話だよ」

「ソフィアの事が好きなんでしょう?」

「いや、好きっていうかなんというか」

俺はマリーさんの質問攻めに答えているうちにだんだん恥ずかしくなってきた。俺はどうにか話題を変えようと、周りを見渡した。すると、俺の視線の先にはオーガの死体があった。

「そ、それよりさ。この死体はどうするんだ?このままだと腐っちゃうし、かといって放置するのは良くないだろ」

「そうね。確かにその通りね」

「どうしようか?」

「そうね。燃やすのが一番良いんじゃないかしら」

「わかった。それじゃあ、俺がやるよ」

「お願いするわ」

俺はそう言うと、アイテムボックスから薪を取り出した。それから、【火魔法LV.MAX】を使って火を起こした。そして、その炎でオーガを燃やして灰にした。

「これでいいかな?」

「ええ。いいと思うわ」

「じゃあ、次はソフィアの番かな」

「わ、私ですか?」

「ああ。ソフィアのスキルを使えば、オーガの素材を集めることができると思うぞ」

「な、なるほど。わかりました。やってみます」

ソフィアはそう言うと、オーガの所に行って、【解体】を使った。すると、ソフィアの手元には魔石と牙と爪が現れた。「これって、全部使えるんですかね?」

「そうだな。たぶん使えると思うぞ」

「わかりました。じゃあ、早速やりましょう」

ソフィアはそう言いながら、次々と素材を回収していった。

「よし。それじゃあ、街に戻るか」

「そうね」

「わかりました」

俺たちはそう言い合うと、来た道を戻って『迷宮都市』の街へと向かった。

俺はみんなと一緒に街に戻ると、冒険者ギルドに向かって歩いて行った。そして、中に入ると、そこには沢山の冒険者たちが居て、クエストボードの前で依頼を探したり、併設されている酒場で仲間と話をしたりしていた。俺はみんなで受付に向かうと、そこには昨日と同じように、綺麗なお姉さんがいた。

「すみません。今日は依頼を受けに来たんじゃないんですよ」

「あっ!ユウト様ですね。お待ちしておりました。本日の用件はなんでしょうか?」

「えっと、まずは討伐証明部位と買い取りたい魔物の素材を持ってきました」

俺はそう言うと、アイテムボックスからオーガの素材とゴブリンの素材を出した。

「え!?こんなに持ってこられたんですか?」

「ええ。少し多かったかもしれませんが、問題なかったですか?」

「はい。全然大丈夫ですよ。むしろ、多すぎるくらいなので、こちらで買い取らせて頂いてもよろしいですか?」

「もちろんですよ」「ありがとうございます。では、確認させていただきますね」

「はい」

俺はそう返事をすると、お姉さんが数え終わるまでじっと待っていた。そして、全ての素材を確認するとお姉さんは笑顔で俺を見た。

「はい。全部で三千八百ゴールドになります。ご確認ください」

「はい。ちゃんとあります」

「ありがとうございます。それで、今回も討伐報酬をお渡ししてもいいのでけど、何か欲しいものはありませんか?」

「特にはないですね」

「わかりました。では、明日も来て頂ければ、その時にまたお聞きしますね」

「はい。わかりました」

俺はそう答えると、お金を受け取った。そして、みんなで一緒に酒場に向かった。

(そういえば、この街に着てから何も食べてないし、腹が減ってきたな)

俺はそう思いながら歩いていると、後ろから声を掛けられた。

「ねぇ、そこの君たち」

俺は振り返ると、そこには金髪のイケメンの男が立っていた。見た目は二十代前半といった感じで、腰に剣を下げていた。

「はい。なんでしょう?」

俺はそう言って男に近づいた。すると、男は俺の手を取って、俺の目を見ながら話しかけてきた。

「君は強いね。僕と戦ってくれないかい?」

「はぁ」

「ダメかな?」

「別に構いま――」

「ちょっと待って下さい!」

俺が返事をしようとした瞬間、隣にいたソフィアが俺の前に出て、男の手を払った。

「あなたは誰ですか?」

ソフィアは男を睨みつけながら尋ねた。すると、男は爽やかな笑みを浮かべた。

「僕は『勇者』だよ。よろしくね」

「私はソフィアと言います。ユウトさんとはどういう関係ですか?」

「ユウト?それは僕のことかな?残念だけど、彼はユウトという名前じゃないよ」

「嘘です。ユウトさんはユウトさんです。ユウトさんのことを名前で呼ぶ人はユウトさんだけですから」

「そう言われても困るなぁ。僕は本当にユウトじゃないからねぇ」

男はそう言うと、ソフィアに手を差し伸べた。すると、ソフィアはその手を振り払おうとした。しかし、次の瞬間、ソフィアの動きに合わせて、男の手がソフィアの腕を掴んだ。

「痛っ」

「ソフィア。大丈夫か?」

俺は慌てて駆け寄った。俺は男の手首を掴むと、捻り上げた。

「いてて。ちょっと待ってくれ。暴力はいけないだろう」

「うるさい。お前はソフィアに何をしたんだ?」

俺は殺気を放ちながら男を威圧した。

「いや、だから、僕はユウトって奴じゃなくて、ただの一般人なんだって」

「そんな訳あるはずがないだろ。ソフィアに触った時点で有罪確定なんだよ」

「えぇ。酷いなぁ。じゃあ、こうしよう。今度こそ、君の質問になんでも答えよう。それならいいかな?」

「わかった。とりあえず、ソフィアから離れろ」

「はいはい」

男はそう言いながら、俺の指示に従って離れた。

「ソフィア。大丈夫か?」

「はい。私は大丈夫です」

「そうか。とりあえず、こいつは俺が拘束しておくから、ソフィアたちは宿に戻っててくれ」

「いえ。私も一緒に戦いますよ」

「でもさ——」

俺はそう言いかけて止めた。なぜなら、俺はさっきからずっと【神眼】を使っているのだが、目の前の男のレベルが30を超えていることがわかっていたからだ。俺は【神眼】を解除してみんなに伝えた。

「悪いんだけどさ。この人かなり強いみたいだからさ、みんなは先に帰っててくれるかな?」

「でも——」

マリーさんの言葉の途中で俺はマリーさんの肩に手を置いた。マリーさんはそれを見て口を閉じた。

「マリーさん。ここはユウトに任せましょう」

「うん。そうだね。ユウトを信じよう」

「ありがとう。ソフィアもマリーさんと一緒に先に宿に帰っていてくれ」

「はい。わかりました」

「じゃあ、行ってくるね」

俺はそう言うと、男の方を向いて話しかけた。

「おい。いつまで待たせるつもりだ?」

「ん?ああ、すまなかったね。じゃあ、早速始めようか」

「ああ」

俺はそう言うと、【神速】を使って一瞬で間合いに入り、そのまま拳を放った。すると、男は剣を抜き放ち、俺の攻撃を受け流した。俺はその勢いのまま蹴りを放つと、男は俺の足に自分の足を絡めた。俺はそれを力任せに引き剥がすと、今度は回し蹴りを繰り出した。すると、男は俺の足首を掴み、背負い投げの要領で地面に叩きつけた。俺はすぐに起き上がると、再び攻撃を仕掛けたが、男は俺の攻撃をことごとく防いだ。

「なかなかやるじゃないか」

「そちらこそ。じゃあ、そろそろ終わりにするよ」

「はっ。やってみろよ」

俺は挑発するように言った。それからしばらく打ち合った後、お互い決め手に欠けて膠着状態になった。そして、お互いに一旦距離を取ると、俺は【魔力視】で男の状態を確認した。

「ははは。すごいな。この状態になってから結構経つけど、まだ余裕がありそうじゃん」

「まあな。お前はもう限界っぽいな」

「どうかな。試してみるかい?」

「ああ。いいぜ」

俺はそう言うと、【瞬雷】を発動して一気に加速し、男の懐に入った。そして、右手に握っている剣に【魔纏】を使って【魔爪】で【黒閃】を付与させた。俺はその状態で男の脇腹を切りつけると、男はバックステップで避けた。俺は追撃を加えようとしたが、その前に男が魔法を放ってきた。俺はそれを避けると、男との距離を取った。

「今のは危なかったな」

「そうだな。今のはかなりギリギリだったぞ」

「そうか?俺はまだまだ余力が残ってるぞ」

「それは良かった。じゃあ、次はもう少しギアを上げてもいいかな?」

「はは。いいぞ。来い」

俺はそう言いながら、男に向かって走り出した。そして、男が魔法を撃とうとした瞬間、その隙を突いて斬りかかった。しかし、男は咄嵯に反応して俺の攻撃を防いだ。俺は続けて攻撃を加えると、男もそれに対応し始めた。そして、次第に俺と男の戦いは激しさを増していった。

俺は【魔力操作】を使い、体中に流れる魔力を操作して身体能力を上げていった。そして、更にスピードを上げると、男は反応が遅れ始めて、少しずつダメージを受けるようになった。しかし、それでも致命傷には至っておらず、このままだと決着がつかないと判断した俺は、勝負に出ることにした。

俺は男に急接近すると、連続で突きを放った。すると、男は俺の連撃を防ぎきれず、遂には俺の剣が男の胸元に刺さった。

「はは。僕の負けだね」

「はぁはぁ。俺の勝ちで良いのか?」「ああ。構わないよ」

「そうか。じゃあ、俺の勝ちだ」

俺はそう言うと、剣を抜いた。すると、男の胸に空いた穴から血が噴き出し、辺り一面を赤く染めた。俺はその光景を目にすると、吐き気が込み上げてきた。そして、その場に膝をつくと、胃の中のものを吐き出した。

「うっ。おえぇぇぇぇ」

「大丈夫か?」

「はぁはぁ。大丈夫じゃないけど、なんとか大丈夫だ」

「そうか。少し休むといい」

「ああ。そうさせてもらうよ」

俺はそう答えると、地面に座って目を瞑った。そして、深呼吸をして心を落ち着かせるようにしていると、段々と気持ち悪さが治まっていき、やがて完全に落ち着いた。

(ふぅ。危なかったな。あんなものを見せられたら、気分が悪くなるに決まってるだろう)

俺はそう思いながら立ち上がり、口の周りを拭いた。

「もう大丈夫なのか?」

「ああ。大丈夫だ。それより、さっきのあれは何をしたんだ?」

「ん?ああ、あれか。僕が『勇者』だってことは話したよね?」

「ああ」

「実は僕は『勇者』の中でも特別な存在でね。固有スキルを持っているんだ」

「へー。どんな能力なんだ?」

「僕が持っているのは、簡単に言えば時間を巻き戻す力だよ」

「時間を?」

「ああ。といっても、僕が巻き戻せるのは自分の記憶だけなんだけどね」

「なんだよ。チートじゃねえか」

「はは。そうかもね。それで、僕が君と戦った時に使った技は、僕と君が初めて会った時まで遡ることで、君の記憶を上書きしたんだよ」

「つまり、俺と出会った時の状態にしたということか?」

「そういうことだね。ちなみに、僕のステータスを見たりした?」

「いや、見てないな」

「そうか。それはよかったよ」

「なんでだ?」

「いや、だってさ。レベル1の相手に負けたなんて知られたら恥ずかしいしね」

「確かにそうだな」

俺はそう言って笑うと、男も笑った。

「ところでさっきの話だけどさ。君はどうしてこの街に来たんだい?」

「ああ。妹が病気にかかってしまったみたいなんだけど、この近くに良い病院はないかなと思ってさ」

「そうなんだ。僕はこの国の人間ではないからわからないけどさ、この国で妹さんの病気が治らないなら、他の国に行けばいいんじゃないかな」

「やっぱりそれが一番早いよな」

俺はそう言うとため息をついた。

「ごめんね。力になれなくて」

「いや、気にしないでくれ。元々ダメもとだったんだから」

「そう言ってくれると助かるよ」

「なあ、一つ聞いていいか?」

「ん?なにかな?」

「お前は本当にあの『勇者』なのか?」

「はは。どうやらバレてしまったみたいだね。そうだよ。僕は正真正銘の『勇者』だよ」

「そうか。じゃあ、最後に名前を教えてくれないか?」

「僕の名前かい?」

「ああ」

「僕の名前は——」

「——そこまでよ」

俺が男の言葉を遮ろうとした瞬間、突然横から声が聞こえた。俺は慌てて振り向くと、そこには金髪の女性が立っていた。

「誰だ!?︎」

俺はそう叫ぶと同時に【神眼】を発動して女性の状態を確認した。

名前:ソフィア

種族:人族(ヒューマン)

Lv.40

DEF:50

AGI:100

VIT:25

MND:15

CRI:45

INT:75

SPD:120

魔法属性:火

魔法系統:精霊魔法/炎 スキル一覧 剣術Lv.1/100 身体強化Lv.2/100 気配察知Lv.3/100 危険感知Lv.4/100 魔力操作Lv.5/100 魔力探知Lv.6/100 詠唱省略Lv.7/100 無詠唱Lv.8/100 魔法耐性上昇LV.1/100 物理障壁Lv.1/100魔力障壁Lv.10/100 称号 聖女

「おい。お前たち何をする気だ!」

「何って、そいつを殺すのよ」

「はぁ。そうですか」

俺はそう言いながら剣を構えた。すると、男は驚いたような表情を浮かべた。

「君が戦うつもりかい?悪いことは言わないから、すぐに逃げた方がいいと思うよ」

「忠告ありがとう。でも、お前にだけは言われたくないセリフだな」

「はは。それもそうだね」

「まあ、そんなことよりも早く終わらせようぜ」

「わかったよ」

男はそう言うと、剣を鞘に納めた。

「行くよ」「おう」

俺はそう言うと、【瞬雷】を発動して一気に間合いを詰めると、【魔爪】で【黒閃】を付与させた斬撃を放った。しかし、男はそれを難なく防ぐと、カウンターで俺に向かって剣を振り下ろしてきた。俺はそれをバックステップで避けると、今度は【瞬雷】を使って再び間合いを詰めた。そして、再び【魔爪】で【黒閃】を付与させた斬撃を放ったが、男はまたも防いだ。それからしばらく打ち合っていると、男は俺の攻撃を防いでばかりいることに気づいたようで、今度は自分から攻撃を仕掛けてきた。俺はそれを防ぐと、一度距離を取った。そして、再び打ち合った後、俺の攻撃が男に当たるようになった。そして、次第に男の体力は削られていき、とうとう限界を迎えたのか膝をついてしまった。

「はぁはぁ。僕の負けだね」

「はぁはぁ。これで終わりだな」

「そうだね」

「じゃあな」

「待ってくれ」

「なんだ?」

「僕はここで死ぬわけにはいかない」

「そうか」

「だからさ、君のその力を僕のために使ってくれないか?」

「は?」「いやさ、僕の目的を果たすために力が必要なんだよ」

「それで?」

「頼むよ。君にとっても悪い話じゃないはずだよ」

俺は男のその言葉を聞いて少し考えた。

(正直あまり乗り気じゃないけど、俺に選択肢があるようには思えないんだよな)

「なぁ、もし断ったら俺はどうなるんだ?」

「さっき見たと思うけど、あれと同じことをしてもらうことになるだろうね」

男はそう言って、俺の背後を指差した。俺が振り返るとそこには、さっき殺された男が地面に倒れているのが見えた。

「そうか。じゃあ、仕方がないな」

俺はそう言うと、男の方に向き直った。

「じゃあさ、早速で申し訳ないが僕の目的を話すね」

「ああ」

「僕の目的はね——魔王を倒すことだ」

俺の言葉に、目の前の男以外の人物が反応した。それは当然、後ろにいたはずのソフィアだった。そして、男はそんなソフィアを見て笑みを浮かべていた。

「あなた、自分が何を言っているのか分かっているの?」

「ああ。もちろんだよ」

「なら、私と殺し合わなければいけないこともわかっているのかしら?」

「ああ。覚悟はできているよ」

「はぁ。じゃあ、死になさい」

ソフィアはそう言うと、右手を男に向けた。そして、魔法を放とうとしたその時、男の左手が伸びてソフィアの手を掴んだ。

「えっ?」

ソフィアは驚いて動きを止めると、そのまま男の方向に引っ張られた。男は体勢を崩しかけたソフィアを優しく抱きしめるようにして支えた。

「ちょっちょっと!何をしているのよ!」

ソフィアはすぐに離れようとしたが、男の力が想像以上に強くてビクともしなかったようだ。

「ごめん。もう少しだけこのままでいさせてもらってもいいかな?」

(こいつ、なんでこの状況で俺に質問をしてくるんだ?)「いいから早く離せ!」

俺は怒鳴ったが、それでも男は動かなかった。俺も男の腕の中で暴れたが、無駄に体力を消費するだけで意味がなかった。

「分かった。ごめんね」

「まったくよ」

そう言うと、ソフィアは俺を睨んできた。

(いやいや、俺のせいじゃないでしょうが。むしろ被害者ですよね?なにも悪いことはしていないはずなんですが)

俺は心の中では文句を言いながらも、顔では愛想笑いをしていた。そんな俺たちの様子を見た男は微笑んでいた。

「ねえねえ。自己紹介まだだったよね?」

「は?そんなの必要な——」

俺がそこまで言いかけると、突然視界が変わった。それはまるで早送りの映像を見ているかのようだった。

名前:コウキ

種族:人族

Lv.1 職業:なし Lv.1→1/100 HP 100/100 → 10/1000 MP 200/200 → 0/2000 ATK 1/100 → 100/100 DEF 1/25 → 5/25 AGI 1/32 ⇒ 42/360 HIT 20/100 INT 1/10 ⇒ 3/100 CRI 2/100 ⇒ 3/100 MND0/500 ⇒ 5000/10000

「なんなのよ。これは?」

俺は混乱して頭が回らなかったが、ソフィアが何かをしたらしいということはわかった。俺は、すぐに自分のステータスを確認した。するとそこには信じられない数字が表示されていた。

(な、なんじゃこれ!?)俺は驚きすぎて何も喋ることができなかった。

名前:ユウト

種族:ヒューマン

性別:男

Lv.1 職業:旅人

種族固有スキル 《竜血》 称号:異界の転移者/神に認められた者/龍の天敵/

レベル上限値上昇(小)/限界突破(小)/進化する者 固有スキル:〈超絶成長〉/〈スキル重複化III〉)

俺は自分のステータスを確認すると、そこに表示されていた数字は『1』になっていた。

「どう?驚いたかな?」

男はそう言った。俺はそれに素直にうなずいて答えるしかなかった。すると、男は笑みを浮かべた。俺はそれに対して恐怖を感じてしまった。俺はこの男のことが怖いと感じてしまっている。俺はそれがなぜなのか自分でも理解できなかった。おそらく俺の本能的な部分に訴えかけてくるのかもしれない。だが、それ以上に俺自身が変わりつつあるということに俺は気づいた。俺の体から漏れ出しているオーラは間違いなく俺のものではなかった。そして俺は、それが自分のものではないと自覚していた。俺は、無意識のうちに【解析】で自分自身を鑑定していた。するとそこには、先程とは全く異なるステータスと称号が映し出されていた。

名前:コウガ

種族:ヒューマン

Lv.1 職業:旅人

Lv.1 状態:健康

年齢:19歳

身長:175cm/体重:70kg/髪色:黒/瞳の色:黒/肌の色:黄色人種

属性:火

魔力属性:全属性

加護:全属性神の寵愛

呪い:【進化する絶対者】【龍血の覚醒】

称号:【勇者(異世界人)→魔族の王(魔人族)」【魔獣の王者(魔獣種)→魔族の王(魔人族)」【魔を統べるモノ(魔人族)→魔王】

能力値 HP(体力)98000000/980000000(+10000010/100000010×10)

=10兆 MP(魔法使用回数)89009000/10090900×10=189009000 物理攻撃力103007000 DEF66005500 AGI103000100 HIT54000400 INT560004500 SPD8406250 耐性 全属性100%耐性 特殊スキル 経験値増加LV.2 アイテムボックス×2 全言語完全翻訳可能

(なんだこれ!?俺じゃない。俺は俺だ。なのに、これは俺なのか?いや、違うはずだ。俺は人間でいたい)

俺はそんなことを考えていたが、その考えはすぐに消えていった。そして、俺は目の前にいる男を見てこう思った。

(こいつはヤバすぎる)

「さっきの質問だけどね。実は僕の本当の名前はコウガっていうんだ」

俺は男の話を聞くと、その名前を聞いた途端、俺の体が震えはじめた。

「ま、まさかお前の名前はコウタロウってことないよな」

「うん。正解だよ。君は察しがいいね」

俺が質問を終えると男は俺のことを誉めてきた。

(嘘だろ?マジかよ。冗談だろ?)

俺が絶望したような顔をしていると、それを見ていた男が笑い始めた。

「あっはっはっは。ごめんね。君の気持ちを逆撫でるようなことして。でもね、君にはどうしても僕のことを認めてほしかったから」

俺は男の発言の意味が分からずに困惑してしまった。そして、それを察した男は理由を説明してくれた。

「僕はね。君と同じようにこの世界にやってきたんだよ。それもついさっき。そして、僕はこの世界にきて初めて自分と同じ日本人に会った。それでね、僕は君に興味を持ったんだ。そして僕は君と一緒にいたいと思って声をかけたんだよ」

(なんだ。そういうことだったのか。びっくりさせないでくれよ。というか、なんで同じ境遇なのにこいつの方が強くなっているんだよ。おかしくないか?神様とやらは俺だけに特典を与えなかったのか?)

俺がそのことを考えていると、男は俺の考えていることを読み取ったようで説明をしてくれた。

「いやいや、僕にももちろん君のように特殊な能力は与えられていないよ。単純に鍛え方の問題じゃないかな?それと僕の称号にあるように、元々の素質や身体能力の差もあると思う」

(なるほど。それは一理あるな。ということは俺は努力しなければいけないのか。そうしないと強くなれない。強くなるために頑張らなければいけないのか)

「じゃあな。もう会うこともないだろ。それじゃあな」

俺はそう言って立ち去ろうとした。

「ちょっと待ってくれよ」

「嫌だ」

「頼むよ。お願いします。もう少しだけ話をさせてくれよ」

「はぁ。面倒くさいやつだな。話なら聞いてやるから早く要件を伝えろ。俺は忙しいんだからな」

俺はそう言うと男の方に振り向いた。そして男は少し考える仕草をしてから言葉を発した。

「そうか。わかったよ。ありがとう。まずは、改めて自己紹介をするね。名前は前と変わらないけど、今はコウガという名前にしているよ。年齢は十九歳で、高校生をやっていたよ。好きなことは料理と筋トレとスポーツ観戦で、苦手なことはあまり得意じゃないことだよ。これからよろしく。えっと、なんて呼べば良いかな?」

「コウガでいいよ。呼び方はコウで構わないよ。俺は年上だし敬語も不要だから好きにしろよ。ただし、お前を俺が呼び捨てにしていいと判断した時にだけだからな」

「わかったよ。じゃあその条件を飲むよ」

俺と男はそれからしばらく話をしていた。そしてお互いに情報を交換していた。俺は自分の生い立ちや今の世界に来てから今までの経緯を説明した。男はそれを聞いてかなり驚いていたが、なぜか途中から機嫌が良くなっていった。そして、男も自身の身の回りで起きたことやこの世界に来たときのことを俺に伝えてくれた。俺にとって有益なものはなに一つなかったが、男にとっても有用な情報があるとは思えない内容ばかりだった。

俺は、男の話を聞いた上で自分が得た情報が間違っていないかを尋ねたが、特に問題はないという答えが返ってきただけだった。しかし、俺はそこで確信したことがあった。それは、目の前のこいつ——コウ——が、少なくとも表面上は信用しても良いかもしれないと俺は感じていたのだ。それは直感的なものであった。だが、俺は自分のその勘に従ってみることに決めた。俺にはこの選択が最善だということがわかっている気がしていた。そして、それと同時に、もしここでの選択ミスで取り返しのつかないことになる可能性を感じていた。俺はそんなことを思いながら話を続けた。すると、コウは自分のことについて話を始めた。

俺はコウの話を聞きながらも、自分の中での優先順位を決めて整理していた。その結果、俺が今最も気にしていることといえば、この世界の常識と生活環境についてだと判断した。そして、そこから先に進めれば問題はないと思った。そのためには目の前の男との会話が必要だったため俺は仕方なく話を聞いていた。

「わかったよ。わかったからもういいだろう」

「いやまだ聞きたいことがあるからね。まだ終わりにするわけにはいかないんだよね」

俺はコウに言われて心底うんざりした表情を浮かべたが、コウはそれを無視して話しを続けていた。

「それでね、僕がこの世界にきてからずっと探し求めていたものがあるんだ」

俺はその発言に首を傾げたが、続きを話すまで何も聞かないことにしたようだ。

「そのあるものっていうのが、僕の力になるかもしれないんだ。だから、できれば手伝わせてほしいんだけどダメかな?」

俺はそれに何も言わずただジッと黙ってみていた。

「お願いだよ!何でもするから、助けてくれよ。このままじゃ僕は死んじゃうんだよ。君の力が必要なんだ!」

「どうしてお前に俺が必要としているものを渡さないとならない?そもそも俺はお前に何かを与えた覚えがないぞ。俺だってこの世界には困っているんだよ。自分の命もかかっていることなんだよ。他人の心配をしていて、自分の状況が悪化したら元も子もない。そんなこともわからないお前に貸せるものは俺にはないね」

俺の言葉を聞いたコウはひどく動揺しているようだった。だが俺は、それでもなおコウを冷たく突き放した。すると今度は、突然泣き出しそうな顔をしていたので、流石に言い過ぎたと思い俺の方から謝ることにした。

「ごめんなさい。そこまで言うつもりはなかったです。俺の力になりたいのはわかりましたので、俺があなたの助けを必要としているときに、あなたが自分の身を守れるくらいの強さを手に入れた時で構いません。なので俺のところへいつでも来ていいので修行をしてください」

「いやいやいや、なんですか?それ、全然話が変わってるじゃん」

「いや、だから俺はあなたの力を頼ろうと思っているだけです。あなたが勝手に言っているだけで、別にあなたが俺の役に立つという保証がどこにあるんですか?それにさっきなんでもするって言ったじゃないですか」

俺がそう指摘し終わると、急に恥ずかしくなったのか、コウは顔を赤くしていた。

「まぁそんな感じで、俺はあなたが強くなる手伝いをするんで、その代わりに、俺はあなたの目的を手伝うということで良いんですよね?」

「えっ!?ああそうだね。うん。まあそれで構わないよ」

「よし。ではこれから俺と一緒に頑張っていきましょう。とりあえず今日は解散ということにしましょ」

俺達はそう決めると話し合った内容をメモに残して、解散した。

俺はコウと別れてから街に出るために、一度森の外を目指して歩いた。

歩きはじめてすぐに【索敵】を発動させた。そして周囲に誰もいないことを確認すると【隠密】を解除した。すると、遠くの方で誰かの視線を感じたのでそちらを振り向いた。するとそこには、俺達の様子を伺っていたであろう二人の人物がいて、その人物のうちの一人が近づいてきていた。そしてその人物は俺に向かって話しかけてきた。

「ねぇ君」

俺はその呼びかけに反応することにした。そして声が聞こえた方を見てみると、そこには、綺麗な金色の髪をした美しい少女が立っていた。その姿を見て俺は目を奪われてしまっていた。

(えーめっちゃ可愛いんだけど。俺のタイプど真ん中なんですけど)

俺は自分の顔が赤くなっていることに気がついたが、俺は冷静に、そのことには触れないようにしようと思って平然を装いながら、話しかけられたことに対して質問をした。

「どうした?」

「あのね。君は何者なのかな?」

俺は彼女の質問を聞いて少し悩んだ後、正直に答えることを決めた。俺は彼女に、自分が人間だということを証明するために、魔法を実演してみせた。俺は、無属性の魔力を使って、風属性の魔法の応用技である【ウィンドボール】を使い、それを空高くに放り投げた。すると、【ウインドボール】は空中で消えてしまった。

「こんな感じでできるけど、君はこれをどう思う?ちなみに俺のことはユウトと呼んでくれ」

俺は自分の名前を伝えると彼女の名前を聞いた。彼女は、自分から名乗り始めた。

「そう。わかったわ。私はアリナ。この辺りを縄張りにしている獣人でエルフよ。年齢は十三歳。好きなことは読書と睡眠よ。よろしくね」

俺も自己紹介をしてから彼女と話をしたが、俺と同じような状況のようで、お互いの情報を共有した。

「そういえば俺がこの世界にきて初めてあった人がさっき話に出た男なんだよ」

「そうなの?その人は今どこにいるの?」

「ん〜それがさぁ俺もよくわからん。多分だけどどっかの街に行ったんじゃないのかな」

「えっ、もしかしてあなた一人だけ?」

「うん」

俺が短くそう返事を返すとその瞬間、俺は腕を引かれ、いつの間にか森の中にいた。俺が後ろを見るとさっきまで一緒にいたはずの彼女がそこに立っていた。

「ちょちょっと何だよ」

「あなたが危険な人かどうかを確認しようとしただけよ」

「俺の事を心配してくれているのはわかったよ。ありがとう」

「べ、別にそういうわけではないから」そう言うと彼女、改めアリナは少し頬を染めてそっぽを向いてしまった。

「ところでここは何処なんだ?」

「ここ?ここは私たちのアジトの一つよ」

俺は周りをぐるっと見渡してみたところ確かに人の住処らしきものが見えたが、俺が思っているものよりも数倍大きく見えてとてもびっくりしていた。そしてその建物には看板のようなものが付いており、『フェアリー』と書かれていた。俺はそれを確認してから、アリナの方に向き直った。すると彼女は少し不安げな表情をしていた。俺はそのことに気づいて、安心させるような言葉を掛けた。

「大丈夫だから心配するな」

俺は彼女を元気づけるためにも優しく接しながら、これからのことについて話した。そして今後のことについて話を進めていくうちに段々と話が盛り上がり最後には二人で盛り上がって話していたが俺は途中で話をやめるとアリナと距離を取って話を聞く姿勢を取った。俺はそれを見たアリナに不思議そうな表情を浮かべながら理由を聞いてきたためそれに応えることにした。すると俺はその言葉を聞き終えるなり、先程までの楽しい気分が一瞬にして消え失せていた。理由は単純明快でアリナの発言が原因だった。その内容は俺がこの世界で初めて出会った人間がコウであるということだ。それを聞いて俺の心の中はざわついていた。その理由として一つに挙げられていることが、まず最初に、コウが俺より年上であったと言うことが一番の原因になっていた。二つ目に挙げられる理由としては、俺と全く同じ世界から来たと思われること。そして最後に俺と同じ境遇だというところだろう。この三つの理由から俺は心の中にモヤがかかる感覚を覚えたのだ。だが、そのことについて考える前に俺は気持ちを切り替えて行動を起こす必要があった。そのため俺は自分の中に生まれた違和感を無理矢理心の奥へと追いやり目の前の問題に目を向けることにした。俺は今起きている問題を解消するために考えをまとめるとすぐに行動に移した。そして結論を出した。それは、今俺が一番欲しいと思っている情報を持っている可能性のあるこの人を仲間に引き入れるというものだった。

そのため俺は早速交渉に入ろうとしたのだが、その時、急に視界がぼやけてしまいその場に倒れ込んでしまった。俺が意識を失っていく間際に、俺はアリナの声を聞き、俺はそこで力尽きてしまうこととなった。

目を覚ますとそこは薄暗い空間が広がっていた。その部屋には、机や椅子などが所狭しと置かれていた。俺は、体を起こして現状を把握しようと試みた。

(俺は、確かあの後、力尽きて気を失ったはずだ。それでこの場所に運ばれたということだろうな。それにしてもなんであんなことになったんだ?俺にはまったく理解できないぞ)

「やっとお目覚めのようね」

俺の頭は未だこの状況について整理ができず混乱していたため俺の体がピクッとしただけで反応することができなかった。そんな俺に気づいたのか、俺に声をかけてきた相手から俺に近づいてきてくれたおかげで、ようやく相手の顔を確認することができた。俺は、その人物のことをよく知っていたが、その姿を改めてみて思わず声を上げそうになった。なぜならそこには、俺が異世界で最初に出会うことになろうとは夢にも思っていなかった、あの綺麗な女の子がいたからだ。

「どうしたの?私の姿に驚いて固まっているみたいだけど」

「あぁごめんな、少し考え事をしていてね」

「あらそうだったの。でも、もう体は起こしていいのよ。あと一応伝えておくと、私は別に変な薬とか飲ませたりとかしてはいないから安心してね。まぁ、あなたの場合、普通なら死んでいたかもしれない状況から命からがら助かったって言うところなのかしら」

「え?どうして君は俺が死ぬかもしれないと思っていたのに、俺を助けてくれたりしたんだ?」

「まぁなんていうのか、私の勝手な勘っていうところなのかな?ただなんとなくなんだけどあなたには他の人にはない強い力を感じたってところかなって思ってる」

俺は、そんなことを言われたものの、自分が普通の人間だということを疑わずにいた。だから俺にはその言葉の意味を理解することができなかった。俺は自分の能力や称号などについて思い返してみたが何も思い当たる節はなかったのだ。だが、彼女の目は俺の瞳を捉えていて、嘘をついているようには感じられなかった。それに彼女の目からはどこか不思議な感じを受けるものがあった。

俺と彼女のやり取りをしている最中に、俺は、今までの状況を思い返した。俺の記憶が間違っていないとすれば、俺は森の中で何者かに攻撃されて倒れたはずだった。それからのことを考えてみると、俺が次に意識を取り戻した時には、すでにここに連れてこられていたことになるわけだ。つまりは俺は彼女に何かされる前に、ここに連れてきてもらったということなのだが、どうやって俺を連れてきたのかということがどうしても疑問に残るのだ。しかしいくら考えたところでわかるはずもなく、またこれ以上考えていても無駄だということを察すると、今はこの少女を信じて行動するしかないと思ったので、俺はこのことについては一旦忘れることにし、少女の話に集中した。そして俺と少女との話は続いていった。そして話しているうちに少しずつではあるが俺が気絶する直前の出来事について把握することができていた。まず初めに少女が俺のことを助けたという部分だが、どうやらこの子はとても正義感が強いようだ。俺がコウの名前を呟く度に顔を青ざめさせていく姿を見たときには、流石に悪いと思って謝罪をした。少女はそのことに対して気にしていないと言い張っていたがやはり申し訳なかった。しかしそれ以上に気になったのは俺の知らない知識があったことだろう。例えば、魔道具についてであったりだとか魔物についての事など色々なことについて教えてもらえてとても参考になったのだ。

俺はそれらのことから総合的に判断した上で、目の前にいる人物はかなり有能であると確信したので俺は彼女を利用することに決めた。もちろんこのことは、誰にも悟られてはいけない。そうでなければ、彼女は間違いなく利用されるだろう。それだけの力を俺は、目の前の少女の内に秘められた強大なオーラから感じ取っていた。俺はそのことを伝えると彼女も、それに同意した。俺は、まずはお互いに信頼関係を築き上げたいと言ったのだが、どうも俺の提案に少し不信感を抱いていそうだったので少し話を逸らすために質問をしてみることにした。

「なあそういえば名前を教えてくれないか?いつまでも君呼びというのはなんか少し違うかなと思うからさ」

俺がそう聞くと彼女は少し考えてから答えをくれた。そして名前を聞いてから少し話をしてみると思いの外面白い話が聞けたのであった。彼女はこの世界についてあまり詳しくはないようなので簡単に説明をしてから、俺と同じような存在がいないかを探そうと提案した。彼女は俺の予想通り少し悩んでいたが最終的には同意をしてくれていたので俺の意見に賛成してくれることが決まったのであった。

俺はこの部屋から出ていく前に、今着ている服のサイズを合わせてくれるということで彼女の提案に乗ることにした。俺は彼女の後について行き部屋の外にある廊下に出ると彼女はいきなり立ち止まった。

俺は突然彼女が動きを止めたことに驚きながらも前を見るとそこに立っていた女性を見て驚いた。

「あっ姉さん!」アリナはそう言って走り出した。するとその女性はこちらに向かって駆け寄ってきた。その速さといったらまるで弾丸のように早かったために俺が目視することはほとんどできなかったが、アリナの姉だということがわかった。その女性の顔つきがあまりにもそっくりであったためだ。アリナとその女性の見た目の違いは、髪型と耳の形と目の色が違うだけだと言ってもいいほど似ていた。アリナもなかなかの美人だったがそれよりも数段レベルの高い容姿だった。

「ねぇーちゃん助けに来てくれてありがとう。この人がいなかったら私きっと危なかった」

「そうよね。でもあなたが無事に見つかって良かったわ」

アリナが嬉しそうにはしゃぐ一方で俺は二人を見ながら呆然としていた。

(これは姉妹?にしても似過ぎだろう!この二人が並んでたら絶対見間違えないくらいに似ているな。ん?この世界ではこれが当たり前の感覚なのか?)俺はそんなことを思いつつも目の前の姉妹のような雰囲気を持つ二人のやりとりを見ていたが俺の中で新たな発見をしてしまったのでそれを検証するために行動を起こした。俺はこの世界で初めてできた仲間に内緒で試すようなことになってしまったので少し心苦しくなったがここは我慢してもらうことにしよう。そして、俺はその行為を実行に移した。

「アリナ、君は本当に綺麗だな。俺は一目見たときから好きになっちゃったよ」

俺はその言葉を聞いたアリナの反応が気になり、チラッとアリナの方を見るがその表情に特に変わったところは見られなかったのでそのまま続けることにした。そしてアリナの横に立って姉の方を向いていたアリナの手を軽く握るとこう囁いた。

「俺と二人で話せないか?俺ももっと君のことが知りたい」すると俺の手の中から温もりが失われていった。俺が不思議に思って後ろを振り向くとそこには鬼のような形相をしたアリナがいた。

「へぇ、お楽しみ中悪いんだけどさ、ちょっとこっちにきてもらっても良いかしら?お姉さまは、先に外に出ていてくださいね。この男には、私がきつくお灸を据えてやりますので」

俺はその瞬間、体中の血の気が一気に引いていく感覚に襲われた。俺は、何とか弁解をしようと必死になったがそんなことでは許しをもらえるはずもなく結局この世のものとは思えないほどの痛みとともに地面に突っ伏して動けなくなってしまったのであった。俺はこの世界にきてからまだそれほど時間が経っていないにも関わらず二度も同じ目に合う羽目になるとは思ってもおらずに絶望に打ちひしがれながら意識を失ってしまった。そして意識を失った時に見た夢の内容があまりに現実味を帯びていたため、目覚めた時の俺は、夢の内容をすぐには思い出せなかったのだが、夢の中に出てきた俺のことを覗き込んで笑っている美少女の姿を思い出すとすぐに、あの時の夢かと思い出しそれと同時に冷や汗が大量に流れ出たのだった。

(はぁ夢に出てきたのはいいんだけど何あの女の子の笑い顔怖すぎじゃないですか?それにしてもよくこんなにはっきりと鮮明に覚えていられるものだなぁ。俺の記憶力恐るべしってやつですね。まぁ夢でよかったってことで。)

俺が起きた場所はベッドの上で、そこにはなぜか知らない女の子が横で寝ていた。その子は起きる気配がなかったが俺はとりあえずこの部屋を出ることにする。

「あのー」

「え?あぁ起きたのね。えっと名前は?」

「あぁ俺はコウだよ」

「そうなんだね、じゃああの子を起こしてくるから待っててね」

そう言い残すと俺に背中を見せてどこかへ歩いて行った。どうもかなり面倒くさがりのようで、俺が何かをする前に全てやってしまおうと考えているみたいだった。俺はそんな彼女の後姿を眺めていると不意に声をかけられて少し驚いてしまった。声をかけてきた人はどうやらソフィアと俺のやり取りをずっと見ていたようだった。

そしてしばらく俺のことについて話し合っていたのだがそこで俺はようやく俺がなんでこの場に運ばれてきたのかということを聞き出すことに成功した。しかし俺をここへ連れてきた張本人は俺に何も話してはくれなかったのだ。その理由は単純にめんどくさかったということらしいのだが、それならなぜ俺を助けてくれたのかという話にもなる。しかしそこはどうやら、なんとなくとのことだったが俺には到底理解することはできなかった。ただ言えることがあるとすれば、そのめんどくさいことが好きなのだということだった。そしてこの子は俺を助けてくれただけでなく、その後の生活まで保証してくれると言ってくれた。しかも、お金についても工面してくれるという太っ腹っぷりを見せてもらった。さらに俺が何か困っていたときにはすぐに駆けつけてくれるとさえ言ってくれてとても感謝しているのだが一つ問題があった。

それはこの子の年齢である。俺は目の前の彼女が俺より年上なのは間違いがないと思うのだが見た目から判断した限りの推測だと十歳ぐらいにしか見えなかった。だが俺はあえて年齢は聞いていないのだが。

そして彼女の性格は結構適当な感じであり、俺が何か頼み事をしたときには必ずといっていいほど、めんどくさがる傾向があった。そのことからも彼女が年上には見えないのだがやはり年上である可能性は十分にあった。しかし彼女は俺に何かを教えるときには、しっかりと丁寧に分かりやすく教えてくれていたので俺としては非常に分かりやすい講師であると感じていて俺の中では先生のような存在であると思っている。しかしやはり見た目が幼いせいか俺はつい、からかいたくなってしまうのでそこが唯一の悩みの種であった。俺も子供なのでそんなことはいけないと分かっているがそれでもやらずにはいられない。そんな俺の行動を見ても怒ることなく笑顔を絶やさないところがこの子の良いところだと思うが、俺の悪癖が直らないといつか痛い目に遭うのだろう。俺は、この子とこれからどうやって付き合っていくべきなのかを考えていた。だが、結論を出すのは少し早計だと考えたので今は考えることをやめた。そして俺が目を覚ました時、アリナがいなかったので俺は少し心配になった。だが、その気持ちは次の一瞬にして消し飛ぶことになった。なぜならば目の前にアリナの姉であるラファエラさんが現れ、彼女の後ろに隠れるようにしていたからだ。

そして俺はその光景を見た途端に、自分がどんな行動をとったかというと、もちろん逃げ出した。そしてアリナから逃げ切ったあと俺はまた気絶してしまった。

目が覚めると目の前にアリナとアリナの姉が立っていた。

「うおっ!び、びっくりさせるなよ」

「別にそんなことしなくても私はここにいるのにな」

「ん?どういうことだ?」

「どうもこうもあなたの目から私の姉を勝手に奪い取ったから仕返しに来たんでしょ?全くもう私だって姉を盗られたら悔しいに決まってるじゃん」

そう言って頬を少し膨らませて不機嫌になっているアリナはやっぱりかわいかった。俺はその姿を見て癒されていたがここで本題に戻ることにする。俺は目の前のこの二人にこのギルドの中で一体何が起こったのかを尋ねてみた。すると、俺がアリナの胸倉を掴んでいる男を見下ろした。

(なるほど、こいつがオーガキングだったのか。確かに強いオーラを感じ取ることができたけどまさか本当にこんなところに居座ってるとは思わなかったな。それにしてもアリナと随分親しげに喋っているように見えるが一体どうなっているんだ?)

「おい、アリナ、その男の人と知り合いなのか?」

「そうだよ、この人が姉さんを助けてくれたんだよ」

「助けたのはアリナの姉であって俺は何もしてないよ」

「姉さんがこの人に助けてもらえなかったらきっと死んでいたよ」

「でも、この男がこの部屋にいなかったらきっと姉さんはこの部屋には帰ってこれなかったよ」

アリナの言葉を聞く限りでは何がなんだか分からない。

(つまりアリナとその姉の二人はその姉を助けた男に対しての恩でここまで一緒にいたってわけなのか?でも、それじゃあアリナはその姉を助けることができなかった男に対して、どうしてそこまでこだわる必要があるんだ?)俺は疑問でいっぱいだったが、それを聞くにはまだもう少し情報が必要だと思った。

(よしまずは情報収集だな。それから、少しの間だけ俺と一緒に暮らしてもらおうと思っていたけどそれじゃあつまらないからもっと長くいてもらわないとな)

俺はそう思うとその男を連れて外に出て行き受付に向かった。俺はそいつの腕を無理矢理引っ張って外に出ようとしたのだが抵抗してきたので俺はそいつもの頭に軽くゲンコツをしてやると黙ってしまった。

「すみません」俺はそう言って受付にいたおねえさんのところに行くと、この人をしばらく貸してもらいたいとお願いするとすぐに了承してくれたので、アリナの方に戻って事情を説明することにした。俺としては、アリナの方は問題ないだろうと思っていたのだが、そのアリナの姉の方に確認をしておく必要があった。

俺はとりあえずアリナの肩を叩いてこちらを向かせるとアリナが振り返ったタイミングでアリナのお姉さんに俺の家で一緒に暮らすようにと提案することにした。

「あの、アリナに俺の住んでいる家に住んでもらいたいんだけど、どうかな?」

「うん、分かったよ。コウの住んでる家に姉さんと一緒に移るよ。だからコウ、早く連れて行こ」

アリナはすぐに了承し、俺のことを急かしてきた。俺はこのアリナの姉のことを考えてもう少し考えてもらうために時間をあげようかとも思ったのだが、アリナのその態度を見ると今すぐ連れて帰らなければならないと感じた。俺がそんなことを考えているとなぜか俺が睨まれていたのには意味が分からなかったが、俺はこの場を後にした。

(はぁやっと終わったぁ。なんか色々と疲れる展開ばかりだったなぁ。それにしてもこの男って俺が想像してたような悪人とは少し違うのかもしれない。俺を襲ってきた時に少しだけ見えた感情の中には俺のことを恨むようなものは見当たらなかったしな。俺が気を失っていたからよくは見えていないのだが。それにしてもこの男の体中に穴が空いた時はマジでビビったぞ。まぁ俺が原因なのだけれどね。そして俺は自分のことを自分で責め続けた結果ついに自殺を決意したんだけど、なんとそこには俺を助けようと手を伸ばしてくれていた女性の姿があって俺はその時初めて命ってのは簡単に失われるものじゃないと理解できた。それにこの世界にも救いがあるってのは心の底から感じれた。だからこそ俺はこの世界では誰も死なせずに守り抜くって心に誓った。まぁこの誓いは絶対に守るってわけでもないんだけどね)

俺は、俺とアリナが寝ていた部屋の中に入るとなぜか知らない間に俺の横に来ていたアリナの姉にアリナを渡してから、この家の中の探索を始めたのだった。

アリナが俺の家に住み始めてから数日が経過していた。

俺は相変わらず毎日ダンジョンへと潜っていて日々を過ごしていたのだがある日突然に俺はある一つの事実を知ってしまったのだ。そうそれはアリナたちが俺が知らないうちに引っ越しを済ませて俺の家で俺の部屋を覗いているという事実だった。その証拠となる写真がしっかりと残されてあった。俺は、そのことについて問い詰めると、アリナがあっさりと俺に告白をしたのだった。

その内容は俺にとって衝撃的なものだった。それは、俺の過去を知りたいということらしい。俺の過去に何があったのか知りたいらしくそのために、俺は、その質問をしてくるということだ。しかし、そんなことを教えてしまうことは俺としてはかなり躊躇してしまうことだった。なぜならば、俺は俺の本当の両親を知らないからだ。そしてそのことが関係していることなのかどうかは分からないが、どうやら、俺が孤児院に預けられることになった理由はその両親が関係しているみたいだった。

俺の記憶の中に両親の顔は全くと言っていいほど覚えてなどいなかった。なぜなら俺は生まれた時からずっと一人で生きていかなければならなかったのだ。だから俺は自分の出生を知る機会が今までなかったのだ。俺はそのことを思い出してしまい気分が悪くなってしまい、そのせいで体調を崩してしまった。そのことを知ったアリナが俺を慰めるように背中をさすってくれたが、正直あまり効果がなかった。そして俺は体調を悪くしてしまったが、そんな俺に対してアリナは優しくしてくれたのだった。だがそんなアリナの姉もそんな俺に対して何かしら思うところがあったようだ。しかし、俺はもう既に立ち直っておりこれ以上気にしていてもしょうがないと思い何も聞かないことに決めてその日を終えた。

(しかし一体どういうことなんだ?なぜこの姉はこんなにも俺たちに構ってくるのだろうか?全く理由が見えてこない。ただこの姉と過ごしてみるとアリナとの仲が非常に良いことが分かった。やはりこの姉はどこかアリナと似通っている部分が見受けられるな。それに、この人の作る料理の美味さといったら半端なものではなかった。俺もこの世界でそれなりに色々なものを食べてきたが、それでもかなり上位の美味しさであると言えるほどに素晴らしいもので俺の舌が狂ってしまうほどに。いや、この姉がおかしいだけでこの世界に普通にあるレベルのものならそこまで感動するほどのものではないと思うがな。でも俺はこの味を体験したら二度とこの世界に戻ることはないのだろうな)

俺がそんなことを考えているとふいに横腹が痛くなったのだった。そのせいか俺は思わず変な声を出してしまい俺はそれをごまかすために近くにあった布切れを口に含んで必死に咳を止めようとした。だが、アリナの姉がそんな俺の様子を見かねたようですぐさま駆けつけてくれたのでなんとか助かったのであった。そしてそんな時アリナもこちらにやって来て一緒にその痛みを我慢しながら何とか耐えきった。

「大丈夫?」そう言ったアリナの言葉を聞いた俺は、心配させてはいけないと思い俺はアリナに笑顔を見せて心配をなくそうと頑張ってみたものの、結局俺はその後再び意識を失うことになり、アリナの心配そうな顔を見つめることしかできなかったのだった。

(はっ!また俺は意識を失ってしまった。今回は結構長い時間気を失ったままになってしまったな。これは本当にやばいかもしれないな。もしこのまま目が覚めなくなるとかそういう展開だったらマジで洒落にならないな。俺は今、どうすればいいんだ?)俺は俺の頭の上でなにかを囁いていたその声が俺の耳に届くことは無かった。

(一体どうしたんだろう。俺は今何をされていたんだ?俺が目を開けるとそこに広がっていた光景は明らかに異常だといえるものであった。なぜか俺は地面に仰向けで倒れており、なぜか俺の顔を覗き込むようにして見下ろしている女性が三人ほどいた。その女性は俺から見て右から順に金髪の綺麗な人、茶髪の優しそうな感じの女性、青紫色の長い髪の毛で少し目付きが鋭い感じがする美人だった。俺はこの女性たちは誰だ?と思ってしまったのだが、そんなことを考えていたのはほんの僅かな時間で、そのあとすぐに俺が意識を取り戻したことに気が付いたアリナの姉に起こされ俺はようやく目を覚ますことができたのだった。そして俺はまず最初に俺のことを覗き込んでいた彼女たちに対して自己紹介をしてみた。すると俺の挨拶を受けた彼女達は順番に、アリナの姉、アリナ、俺の順に名前を言ってくれたのだったが俺はまだこの状況が飲み込めてはおらず混乱したままであったので、その言葉を聞き取ることもできず俺はとりあえずその場の空気を読んで、俺は今アリナたちと一緒に暮らしているということを理解した上で、俺はアリナたちの会話を聞くことに集中し始めたのだった。

(えーっと確かこの人たちが俺の家に引っ越して来たってことをアリナが説明してくれていたんだったよな。それに、俺に話しかけていた人が、アリナとこの前戦っていた相手だってのも聞いているし、あの後俺が意識を失くしていたから、その間に引っ越しが終わったって話も聞いたからな。ってことは俺はこの三人のことを知らなかったのか?)

「あなたが私たちのことを認識できていないということは分かりました」アリナの姉は少し笑みを浮かべながらそう言ってから話を続けた。

「ではもう一度自己紹介をさせていただきます。私は、あなたの姉のアメリダといいます」

「はぁ」俺はアリナの姉の発言の意味がよく分からなかったので曖昧な返事をするだけに止まった。するとアリナの横に立っていたアリナの母親がアリナの発言を訂正するように喋り出した。

「ちょっと待ってくださいね。私が言うよりも本人に直接伝えた方がわかりやすいと思いますので」

「あっははは、確かにそのほうが手っとり早いね。僕もコウが僕のことをきちんと理解できるか不安になってきたから、今から君が理解してくれるまで僕は頑張るよ!」アリナもそんな発言をしながら俺のことを見てきたのだった。

俺は一体何が起きるのだろうと身構えていると、そのアリナの表情からはこれから楽しいことがおきるのだということが伝わってきてしまって少し期待してしまっている俺がいたのだった。そして、その瞬間俺はなぜか目の前にいる二人に向かって飛びつかれてしまってしまっていた。アリナが俺に飛びついてきているというのにもかかわらず俺は何故か全く抵抗することができなかった。というよりもそもそもこの女性達の動きを捉えることができなかったのだ。しかしなぜなのかを考える前に体が動き始めてしまった。俺の腕に絡みついて来た二人の感触が心地よかったが、それと同時に自分の意思に反して俺がこの行動を無意識のうちに取ってしまったのはなぜなのだろうかと気になってしまっていて俺には冷静になる余裕がなくそのまま俺はこの二人の勢いに流されるように俺とアリナは倒れていってしまい、そして気がついた時には俺は地面の上でアリナに押し倒されているかのような体制で密着して寝そべっているような状況になっていた。そして俺と視線があった二人は、急に頬を染めたかと思ったら俺から離れていったのだった。

俺はアリナに助けてもらおうかなと一瞬考えたがなぜか俺はそれが嫌だったので俺の体を使ってアリナを無理矢理押しのけて起き上がるとアリナの姉と母親に視線を向けた。俺が視線を向けるとその二人がこちらに向けて歩いてくる様子が目に入ってきた。そして俺の前に来るとその二人はそれぞれ自己紹介をしたのだった。まずはアリナの姉から名乗ってきたのだ。

「私のことはアメリーと呼んでください。そして私もあなたと同じです」と意味深にアリナの母親は告げた。

それに対して俺はどういう反応を示していいのかが分からずに黙ってしまうことしかできなかった。そしてそのあとアリナの母の順番が来たのだがそこで彼女は俺に対してある事実を告げた。それは、俺と彼女の関係は実は血族ではないという事実であるということなのだがそんな話をされたところで俺には全くピンとくるものはなかったのだが、その話を聞いて俺の顔つきが変わったのを見た彼女は俺が何かを感じ取ったということに気づいたらしく俺の耳元に近寄ってくるとこう囁いてきた。

「どうやらコウさんは、私たちの血の繋がりについてなにかを感じたみたいですね。ふむ。もしかして、アリナと私が血縁関係じゃないことに驚いているんですかね?」

そう言われてしまうと俺は自分の気持ちを伝えることができずに固まってしまった。その態度を見て何かしら確信を得たのかアリナの母は満足げな顔をしてから次の発言に移っていった。

「でもね。この話はここで終わらせておくことは決して良いことだとは言えないわ。コウくんなら分かってくれるはずよ」とそんな風に言われた。しかし俺がなんの話のことなのだろうかと考えているとアリナのほうから補足が入った。そして、俺はその内容を詳しく聞こうとするために口を開こうとしたのだがアリナの母親はそれを手で制止して話を続けた。

「でもね、そのことに関してはあまり大きな声を出して追求してはいけないことなの。これはね、アリナのためにもなることでもあるし。それに何よりアリナに余計なことを吹き込んだのはこの国そのものなんだ。だから私たちはこれ以上この事について詮索することを止めたのよ。それでいいかしら?」そう言いながら微笑みかけてきた彼女に俺はもちろん肯定する以外なかった。だが俺がその言葉を返すとその瞬間に俺とアリナの母親は同時にお互いの手を掴みあって笑顔を浮かべ合ったのだった。その行動を見た俺は思わず引いてしまい何も言えなかったが。アリナの母親は俺のその様子を見ると嬉しそうに笑った。

(一体俺は今なにを見せられようとしているんだ?正直今の俺は理解力が低下中でありこの状況を完全に理解することはできてはいなかったが、おそらくこの親子が俺たちの仲を親密にさせようとしていることは分かるが、でもそんなに仲良くなりたいなら直接俺のところに来ればいいだけなのではないのかという疑問は残ったままだった)

そして最後にアリナが自己紹介をしてきてくれた。

「僕のことはアリナーシャと呼んでね。よろしく。それじゃあコウが混乱しているようだからもうさっさと本題に入るね。まずはコウ、僕たちがここにやってきた理由についての説明をするけど聞いておいて損は絶対にないからしっかりと聞いておいてほしいんだけど、その理由というのは、今コウは魔力操作というものを身につけなければならないと思っているんだよね?」そうアリナが俺に尋ねてくると俺はすぐにその質問に答えた。俺としてはそのことについての理由が全く分からない状態だったからだ。するとアリナは説明を続け始めた。どうやら、俺が孤児院から追い出されたこととその原因を作った人物にアリナとアリナの母親が復讐するためにその人物が暮らしている王城を襲撃して王様を殺そうと計画をしていたらしい。その計画については途中で中止にすることを余儀なくされたのだとか。そして俺はアリナたちの話を聞いて俺の中で一つ疑問が生じていた。俺はアリナにどうしてそんな計画をすることになったのか尋ねた。するとその答えはとても簡単なものだった。その人は俺がこの世界で生きるための手段をまったく持っていないことが問題だと感じ、そのために、アリナが魔法を使えるようになったことで、その方法を模索している最中に思いついた作戦だったとアリナの母親は教えてくれていた。

そのアリナのお母さんがいうには、この世界の人々は魔法を使うことができる人とそうでない人の割合で言った場合ほとんど後者の人が占めていて、その中でもごくたまに存在する例外の人間こそが勇者召喚をすることによって呼び出された存在の人達であるという話を聞いたのであった。俺はそのことを聞きながら思った。

もしそんな世界に飛ばされたとして、普通に生きていくことができたとしたら、俺は果たしてどんな生活を送ることができたのだろう?と考えるがやはり想像することは不可能であった。そんな俺の思いを見透かしたかのように、アリナが俺のことを心配そうな顔をしながら見つめてきていたので、俺が大丈夫だということを伝えたくてアリナに笑いかけたが、それでもなお、アリナは心配してくれていたようで、俺はとりあえず、その日は早めに寝ることにすると、アリナに伝えてその場を去った。

そして翌日俺は、朝起きてからまず最初に俺はギルドに行くことにしてみた。理由は、昨日の夜から考えていたのだが、結局のところ、俺には冒険者として依頼を受ける以外にできることがほとんど無いように思えたのだ。それに、このまま無一文でこの家に居候し続けるのも心苦しいし、なんとかこの家の人たちの役に立てるようになればと思いこうして早朝から俺は動き出したのだった。ちなみに今は朝の6時前といった時間なのだが、すでに俺は動き始めているのは俺の意識がまだ覚醒しきっていない状態なのに体が動いてしまったからである。俺はそのことに気づいていなかったのでいつも通りに家を出て、そのままギルドに向かって歩き出していた。しかし俺にはそんな自分の行動を客観的に見ることのできる精神がなかったので、当然のごとく、俺が道のど真ん中を歩くことになるため多くの通行人にぶつかられてしまって何度も謝罪をするはめになっていた。

(俺がなぜこんな目に合わなければならないのかわからなかったがとにかく、俺は早くこの道を通れるようになればもっと簡単に外に出ることができるはずだと思って、少し強めの決意を込めつつ歩いて行った)

そして俺はついにギルドに到着することができた。そしてそのギルドの中に入るとそこには多くの人が依頼を探している姿があり俺もその人の波に飲まれそうになるが、どうにか俺はこの人の数の中に入りながらも自分がどこに行けばいいのかを把握することに成功した。俺の目から見て一番左端が受付のようである。その方向に向かっていくとそこにたどり着くことができた。

俺は早速その場所にいたお姉さんに話しかけた。

「おはようございます。俺は冒険者になりたいんですが登録できるでしょうか?」俺はその女性に問いかけると、女性はにっこりと微笑み返してきた。その女性の雰囲気がとても柔らかく俺はその女性を見ていた。

その女性はなぜか驚いたような顔をしていたが、俺に話しかけてきた。俺は女性に返事をしようとして自分のことを話そうとしたがなぜか俺が話そうとすると言葉が出てこなかったのだ。俺が困っている様子に気づいたのか、その女性は慌て始めてしまったので、俺は申し訳なくなり頭を下げようとしたのだが体がなぜか動かなかった。しかし、なぜなのかを考えようとしていて俺はすぐにその理由を理解した。それは俺自身が無意識のうちに目の前にいる女性が誰なのかを確認してしまっていたせいだった。そのことに関して俺は自分の無意識のうちに体が勝手に動いてしまうのには慣れつつあった。

しかし今回はなぜかそれが特にひどかったのである。そのため俺は自分の意思とは関係なく動く自分の体を抑えつけるために必死になっていた。しかしその努力の甲斐もあり徐々に俺の意思に体を従わせることができるようになっていった。俺は改めて目の前にいる女性の顔をよく見た。

(そういえば初めてこの体になってアリナの顔を見た時は驚きの連続だったが、目の前の女性の顔も俺にとってはかなり驚くものであったのだ。なぜならこの人もかなりの美人であるのだから。しかし、俺は、俺の心の中には、そのことには驚かずむしろ納得するような感じを覚えていた。それはきっと俺がそういう風に感じてしまう何かがあったのだろうと推測できた)

その女性が自己紹介をしてくれた。そして俺も一応挨拶だけはしておいた。そしてその女性の名前はミリアというそうだ。

それから彼女は何かを思いついたのか俺に一枚のカードのようなものを俺に手渡して、そして俺の体に何が起きたのかを俺に丁寧に教えてくれた。そして、彼女が教えてくれたのは以下の通りであった。そのカードは俺のステータスを確認するために必要なものであり、それを使えば俺自身の能力を確認できるとのことだった。

そのカードを受け取ると俺はそれを見て、驚愕してしまうのだった。

(俺が持っていた能力値は、俺が想像していたものとはだいぶ違ったものになっており、数値的には普通の一般人程度なのだとわかったが、そのかわりにレベルというものが存在していなかった)

そのあと俺は、彼女から冒険者に必要とされる基本的なルールや注意点についての説明を受けると、それをしっかりと聞いてから俺は、彼女に渡されたカードを右手に持ち左手にギルドの会員証を持つ形で俺がここに来た目的のために動き始めた。その行動というのが依頼を受けるということだ。

その目的は単純にお金を手に入れることにあった。というのもアリナの家で暮らすのにも金がかかるため俺は少しでも稼ぎたいと常々思っていた。そして俺には、この世界の通貨の価値がよくわかっていなかったのでどれくらいの依頼をこなしたら良いかわからないが、まずは自分の実力を測るのと同時にどの程度までなら依頼を受けてもいいかを調べる必要があったので俺は手頃な討伐系の依頼を受注しようと思い受付嬢にそのことについて尋ねることにした。その前に確認しなければならないことがあり、俺はそのことを彼女に尋ねてみた。

するとその質問の内容に対して、答えてくれてそのことについて詳しく聞くとどうやら依頼の種類によって受けて良い難易度が変わってくるらしいと俺は理解した。俺がそのことについて彼女に尋ねてみたところ彼女は親切に俺の疑問について詳しく答えてくれた。その結果わかったのだが、どうやら俺はF級と呼ばれる一番下ランクに位置する依頼しか受けることができないということだった。そのことに落胆しながらも、それでもまだこの世界について全く知らない俺としては仕方ないと思いながら、それならということで俺に合うと思われるF級の依頼が貼ってある場所を俺は探した。そして俺は、そこであることに気づいた。

(なんとなくだが俺の目がおかしいような気がするんだが?)

そんなことを思う俺だったが、その考えは正しいらしく受付のお姉さんの視線を感じるようになっていたのだ。そしてそれだけではなく俺の周りにいる人々の態度もなんだがおかしなことになっていることに気づき始めていたのだ。

(俺としてはただ普通に移動しただけのつもりなのになぜこうなっているんだろう? 不思議だな)

俺はそんなことを考えながらF級の依頼が貼りつけてあった掲示板の前に移動していた。そしてその中から適当に選び出したものを眺めてみるとどれも報酬額が低く設定されているようであった。しかしそんなことを俺は特に気にせず、その中でも、比較的報酬が高いもので尚且つ、今の俺のレベルでは無理そうなものに狙いを定めていった。その中でも、一番最初に目についたのはこの国の城下町からほど近くにある洞窟に住み着いているゴブリン達を排除するという内容のものを選び取ったのだがそこで俺は問題が発生することに気がついて愕然としてしまった。どうやら俺は今の自分では何もできないことに気づいてしまったのである。しかも最悪なことに、その事実を認識した直後に依頼書を取ろうと手を伸ばした状態で俺の動きが完全に止まってしまったのだった。

そして俺はこの事態からどうにかして脱出しなければと考えるのだが俺が固まったまま何も行動を起こさないとさらに面倒なことになるのは確実でありそんなことをしたくないという思いで必死になり、どうにか動けないかと考えるのだが、まったく動かせるような気配はなかった。しかし、俺が諦めかけていた時だった。

俺の手の指先をかすめ取るようにして何者かが依頼を受け取っていったのであった。俺の意識は完全にそっちの方にいってしまい、そちらの方を見ることができなかった。そのため俺は自分の体の状態を知ろうとすることもできない。すると俺の耳に誰かの声が聞こえた。俺は、俺がどうにかできる範囲内であれば助けてくれる人は誰でも大歓迎だったのですぐに助けを求めて声がした方向を見るとそこにいたのはアリナとその母親であった。

(どうしてこんなところにいたのだろう?まさか俺が依頼を取れなくて困っているところを助けようとしてくれていたのだろうか? だとしたらかなり恥ずかしいな。でも、本当に感謝しないと!俺のこの世界での初クエストを一緒に達成してもらいたかったところではあるがこれはこれで仕方ないだろう。だって俺はこの世界に召喚されたばかりの初心者なのだから、最初からうまくはいかないのだから!! それに、今俺が置かれている状況は結構ギリギリの状況だったはずだから、あまり時間がないはずなので俺には急いで次の行動をする必要があると思った。そのために、今はとりあえず俺は二人に感謝することだけに意識を向けるとしよう。)

俺とコウが依頼を受けるために動き出していたところ、そこにいきなり現れて俺たちの邪魔をした女はいったい何を考えているのかわからなかった。その女の年齢は、見た限り15歳ぐらいに見えるが、おそらく実際はもう少し若いのかもしれない。なぜならば顔つきがどこか幼く見えるからだ。そんな見た目でその若さにもかかわらず、その女はなぜかギルドの制服を着ていて受付嬢の格好をしていたのだ。

「あなたがこの人のお友達のようだから一応忠告しといてあげるね。私は、この人から依頼を受けるつもりはないよ」

俺には、彼女がいったいどういうつもりで言っているのかがわからなかったので、俺にはまったく関係のないことだと俺は考えていた。しかし彼女の方からは、俺に対する警戒心のようなモノが見え隠れしていて、どうも俺がこのギルドにいること自体に嫌悪感を持っているように見えた。しかし俺にとってはそんなことは些細な問題でしかなかった。そのため俺はすぐに自分の目的を達成するために行動を開始した。しかし俺はここで一つの問題点に気づくことになった。それはどうやって依頼を達成させるのかという問題が浮上して来たのである。それは当然のことであるが俺はまだ冒険者として正式に依頼を受けることができるわけじゃないので勝手に依頼を受けたりすることはできないのだ。つまり、この問題を解決しないことには俺は依頼を受けることができずに無駄足になる可能性が高いということである。その問題を解決する方法が思い浮かんだ時に俺はその方法が使えなくなることを避けるためにこの場で何かをするつもりはなく俺はギルドを出ることに決めた。俺が立ち去る前に俺はこの受付の人にお礼を言うべきなのかと考えたが、お世話になった人がいたとしてもこの場には俺のことを見捨ててくれたあの親子以外には知り合いがいなかった。しかしそれはあくまでも現時点での話でありこれからはそうではないということを俺自身が証明するのだった。

それから俺は、俺のことを助けた二人の冒険者と共に俺が新しく手に入れたスキル【隠密】を使いその場から立ち去ろうとしたのだが、その時に俺の体に異変が生じたのである。俺は、自分の体に何が起きたのかを理解することはできなかったが、その現象によって、俺は体が軽くなりまるで自分の体が自分の物ではないかと思うような感覚を覚えたのである。そのせいで俺は、少し気持ち悪さを感じたので、俺の状態を確かめるためにも一度この体で動き回ることにしてみた。しかし俺の体は俺の思うようには動いてはくれなかったのである。俺は、そのことで、自分が持っているスキルの効果だということはすぐに気づいた。しかしその時には、俺はすでに、その効果の発動をやめており再び俺は俺の身体に自由を取り戻すことに成功したのだった。俺は、それからもう一度だけ俺に起きかけた出来事を思い出しながら今度は気をつけながら動くようにすると俺が望んでいたとおりの結果を得られた。

(よし、それじゃあそろそろ俺の目的のために本格的に活動を開始するとしますかね。まず俺はこの国から近い位置にあるという、ダンジョンに行くことにするか。その方が、この国の近くにある他の国へ行くための道中に寄ったりできる場所でもあるので都合が良い。それじゃあ、早速出発するとするかな)俺は、目的のための行動に移るべく歩き始めた。

(まぁ俺の目的はあくまでもこの世界のことを知るということだけだから、無理に危険を犯してまで依頼をこなす必要性があるわけではない。だから今回は、依頼を受注するのはあきらめるとしよう)

俺は依頼書が貼ってあるボードの前に立つとそこから一枚の依頼書をはがした。そして俺は、その受付へと向かって行った。俺は依頼を受けるための行動を起こすことにした。俺は、この受付に立っている女性に声をかけることにした。そして、その女性はどうやら俺よりも二つか三つ年上くらいの見た目をしているようで大人の雰囲気を持っていた。俺はこの女性の容姿が整っていてなおかつ、俺が話しかけた瞬間に見せたその表情がとても魅力的なものであり俺にとってはかなり魅力的に映っていた。

俺がその受付のお姉さんに対して依頼を受けたいと話すとお姉さんの態度が明らかに変化して、俺はそのことを疑問に感じながらもその受付の人の対応にしたがって依頼の詳しい内容を聞いてみたところ依頼内容は洞窟内に潜んでいるゴブリン達を倒して欲しいというものであった。俺はそれについての説明を聞いたあとにゴブリン達が生息している洞窟についての説明を受けて俺はそこに向かうことにした。

そして俺がその洞窟に向かおうとした時に後ろから突然俺を呼び止めるようにして誰かの声が聞こえたので振り返ってみると、そこにいたのはアリナとコウの姿であった。俺は、二人がどうしてこのような場所にいるのかという疑問を抱きながら俺は彼女たちから話を聞くとどうやらこの近くに住んでいるコウの家の近くでモンスターに襲われたためこの二人とコウは一緒に逃げるようにしてこの街に来ていたのだということがわかった。

そしてそのことを知った俺の感想としてこの世界は思っていたより危険な場所であるのかもしれないと思った。なぜならばその襲われた場所というのが俺が最初に目覚めた場所でもあったのだ。そして、その事実を知って俺も早くこの場所を離れなければならないと考え始めると、それと同時に、俺はアリナに対して俺に何か頼みたいことがあるという話をしてきて俺はそれについて聞いてみることにすると、なんとその願いは、俺の予想をはるかに超えるものでありその内容というのは、もし俺がアリナの依頼を受けるのであれば俺の家で一緒に暮らさないか?というものだった。

そんなアリナの申し出に対して俺は正直なところ迷ったが、最終的には俺の答えは決まっておりそれを告げて、俺とアリナはそこで別れた。俺は、その日は依頼を遂行することをせずに俺は一旦家に帰るのであった。

(いやまぁ、本当は依頼を受けなくてもゴブリンの集団を倒す方法なんていくらでもあるんだけど、でも、もしも本当に俺が依頼を達成した時の報酬額が低い場合は、結局お金を稼ぐ手段がなくなってしまうからやっぱり依頼を受けるのは必要だと思うんだよ。だから俺は依頼をこなさなければいけないんだ。それに、この依頼を成功させればもしかしたら俺は冒険者として正式に認められることになるかもしれないから頑張らなければいけなくはないんだ。ただ俺としては、依頼を達成しても俺の冒険者としての評価を上げてしまうと今後面倒なことに巻き込まれる危険性もあると思うからできれば俺としては避けたかったところだが。しかしそれでも俺が冒険者として活動して行くためにはある程度の資金は必要なのだ。

その点を踏まえて考えて見るとやはりここは無理をしても依頼を受けてその報酬を手に入れておいた方が良いのかもしれない。まぁそんなことを考えても、俺が受けることのできる依頼がそもそもF級のものしか無いので俺はとりあえず今はF級のものをいくつかこなすとしますかね。そして俺がこの依頼を受けたのはいいのだがその前に一つ確認しなければいけないことがあるのを忘れていたのだ。そのことを確認した後に俺は、依頼を受けるために動き出したのであった。

それから俺は依頼をこなしていくために動き出していた。そしてその途中で俺のスキルの一つ【商人】の力を使っていく。このスキルを使うにあたって俺のアイテムボックスの中に入れていたモノを外に出しておく必要がある。そのため俺はアイテムボックスの中に入っていたモノをすべて出し終えた時にアリナとその母親の二人は俺が今現在受けようとしている依頼を横から奪うようにして俺に頼んできた。

そのため俺は仕方なく二人の頼みを聞き入れたのである。

(まぁ俺が今受けたいと思っていたのはあくまでもF級の中では比較的に簡単な部類に入る依頼なので別に依頼を取り合う必要はないといえばそうなんだがしかしそれはそれだ。俺が欲しいのはあくまでもこの世界での生活費なので依頼をこなせばその分お金も稼げる。そのためにこの二人の要求をのむ必要があったのだよ)

(それにしてもあの二人には驚いたな、あんなところで俺のことを待ってたなんて)

「よし、着いた」俺は目的地に着くとすぐに洞窟の中に入り込み進んでいった。そして奥まで進んでいくうちにだんだんゴブリン達が集まってくるようになっていた。しかしゴブリン達はそこまで数は多くなかったため俺はこの場にいるすべての敵を俺の敵ではなかった。俺が剣を振るえば簡単に敵の命を奪って行く。それからしばらく時間が経過した後俺はようやく目的としている階層に到達したのだった。俺の目的は最下層に存在すると言われている、ダンジョンボスと呼ばれる存在にたどり着くことであるがその前にこの洞窟の周辺に生息する魔物たちがどれだけの強さなのかを確認することも目的としていたためまずはこの付近の調査を先に終わらせようと決める。俺はそのままこの付近に存在する魔物を倒し続けながら進み続けてついに目的の魔物を発見した。その魔物とは、オーガでありこの付近で確認されている中でもかなり上位の存在だったのだ。しかし俺はそのことを知っていたため慌てることもなくすぐに倒すことにした。俺はまず相手の出方を観察することにした。相手は自分の強さに絶対の自信があるようだったが俺にとってはそれは好都合でしかなかった。こちらの作戦を実行するうえで邪魔される可能性が低くなるからだ。

(よしそれじゃあやるとするか)

それから俺と戦闘がはじまったが相手もそれなりに強かったらしく、なかなか倒せないという状況が続いたので俺は一度撤退することにした。そして再び洞窟の外に出た時に、俺はこの周辺での自分の強さの確認を終えたのでいよいよ本題に入ることにしましょうかね。まず俺は、自分の周囲に結界を張り巡らせてその中で戦おうと考えた。そして、この洞窟周辺の空間には人がいなかったため俺の行動に気づく者は一人としていなかった。俺はそうしてから、俺はこの場での戦闘を始めることにしてまずはゴブリンから相手にしてみたのである。俺は、自分の力を過信することなく確実に自分の力を把握しながら戦うために最初は、あまり大きな魔法は使用しないように気をつけていたが俺はここで一つ問題が発生したのだった。

(あれ?そういえば俺のステータスはどこまで上がったんだろうか?)そう思った俺は自分のスキルの【鑑定】を使って自分のステータスを見てみた。すると俺は驚愕すると同時に自分の力が急激に上昇していることが分かりさらに驚きの感情を覚えることになったのである。しかしこれはあくまでも一時的なものにすぎないだろうと考えていた。なぜなら俺はまだこのスキルを完全に使いこなしているわけではないのだからこれからもスキルの熟練度が上がればどんどん強くなることができると考えているからである。そして、この世界に来たばかりと比べて俺はスキルの威力も格段に上がっていることが自分でもわかった。しかしそれと同時に自分の身体も強化されていたのでこれからの課題が明確になったといえた。俺はそれからゴブリンを何体も倒し続けることにして、その結果ゴブリンだけではなくこのダンジョンに生息しているであろう他のモンスターも俺の前に現れるようになっていったので俺は、それらを相手にすることになっていったのである。そして俺はそれからゴブリンとそれ以外の雑魚モンスターを交互に相手をしていきその繰り返しによって俺が強くなっているということを実感できるくらいにまで俺は自分自身を成長させていた。俺はそのようにして戦い続けるなかでゴブリン達を次々に倒し続けていた結果とうとう目的のゴブリン達が現れる場所まで到達したのであった。

そのゴブリン達が姿を現すなり襲いかかってきたが、そんなことは想定済みだったため俺はすぐさま対応することができた。その証拠に、俺が攻撃を仕掛けるまでもなくすでに決着がついたからなのだ。俺に襲ってくるゴブリン達に向かって炎の玉をぶつけてやっただけで終わってしまったのだ。それからしばらくして全ての敵を倒すことに成功した後は、先ほどまで俺たちがいたこの洞窟の奥地を目指して進んでいくとついに俺が求めてやまない存在と遭遇することになる。それが一体どんな奴なのかとワクワクしながら進んでいると突然俺の視界に入って来た。そこには今までに俺が出会った中で最強のゴブリン達が現れたのである。しかしそのゴブリン達が俺を見かけた際に襲いかかって来ることはなく俺がこのゴブリン達を見ていると、なぜかこの場にいたすべての種類のモンスター達が俺の前に整列するように並び始めていき、最後にはこの場にいる全ての魔物が一斉に頭を地面につけて俺に忠誠を誓うかのような態度をとった。そんな状況を見た俺は少し驚いていたもののとりあえずこのモンスター達に指示を出し始める。

俺の指示に従いモンスター達は次々と行動に移していったので、それが終わった頃にはもう夕方になっており俺の周囲には大量のモンスターの亡骸が存在していた。その数はおよそ三万を超えるほどの量が存在していて俺はそれらを全部アイテムボックスの中に入れておくことにする。

「よしこれでこの近辺にある依頼は完了かな?」そう言いながら俺は街に戻ることにした。そして俺はアリナとその母親がいると思われる家に向かいその家に入る前に一応ノックをしておくと中からアリナの声が聞こえたのでアリナの返事を聞いてから部屋に入り込んで行った。その部屋の中に入るとそこには、ベッドの上で横になっている一人の女性とその看病をしているアリナの姿が目に入った。どうやらその女性は俺が想像している以上に重病のようで俺はその女性の様子を見ると、まだ助かる可能性が残されているような状態だったので、回復薬をその女性の口元に持ってきて飲ませようとしたところ突然、その女性が意識を取り戻して俺の手を掴むとその瞬間にその女性が何か言おうとしたが、俺のことを認識したのかその口を閉じてしまいそれから俺が持っている薬を強引に奪い取り飲み込んだ。そしてその女性が回復したところで俺に対して何かお礼を言いたいと言っていたので、とりあえず俺はその言葉を受け入れることに決めてから、その女性に名前を聞くとその女性も俺の名前を聞いていたのである。そのことから俺はその女性のことについてある程度察することができるようになっていた。

(なるほどな。俺にこの世界の言語が分かるようにしてくれているのは恐らくこの人なんだろうな。しかしそれにしても俺をここに連れてきてくれたことと言いこの人の俺に対する感謝の仕方は異常だな?いやまぁ理由は分かっているんだが。おそらくだが俺をここに連れてきたのもこの人からのお願いだったんだろうな。そして俺がここまで来られるのはこの場所のことを知っている者かもしくは相当な実力を持っている者でないと不可能だから、その二つに該当して尚且つ俺とこの世界の言葉が通じる人間となると必然的にこの人ということになるよな)

(ただ俺がこうしてここにいるのはあくまでも成り行きに過ぎないんだよ。そして俺は今、依頼をこなしている途中で偶然ここを通りかかっただけなんだ。そしてその依頼の内容というのがこのダンジョンの中を探検することでね、その依頼を俺一人で達成しようとしたんだけど、この付近のモンスター達は俺よりも強く俺一人だと到底歯が立たなかったわけさ。それで結局俺は、たまたま通りかかって助けてくれた君たち親子に助けられたということなわけだよ。まぁそういう事情があって俺をこんなところに呼び出したんだろうけどそれは勘違いだってことにしておくぜ。だから俺はこの人に俺の本当のことを言っておいた方が良さそうだな。俺は別にあんたらの恩返しのために依頼を受けていたわけではないんだし)

それから俺はこの人たちが俺に依頼を出した経緯を説明したのだった。

(しかし、改めて考えても信じられねぇな。異世界の神様からスキルという恩恵を受け取っているからとはいえまさか本当にあのゴブリン達の長と話ができるなんて)俺はそう考えながらそのゴブリンが持っていた剣を受け取り眺めてみると、それは明らかに普通の武器ではなく特殊な能力を宿したものだということが分かってしまったのだ。

その刀身を見ているだけで、俺はまるで剣自体に自分の存在を認められてしまったかのような錯覚を感じ取ることができてしまった。そしてこの剣を俺が受け取った途端に、俺の体に変化が訪れた。

俺は、剣を手に持った直後に全身に電気が走った感覚を覚えたのだ。俺は、この剣の能力を理解することができたのだがそれと同時に剣の所有者となってしまったために俺はこの剣の力に呑み込まれないように必死に自我を保っていた。俺はそれからしばらくの間、剣の力を自分のものにしようとして訓練を繰り返し続けていくのだった。

しかしそれでも俺の努力では、完全に剣の力が抑え込むことはできず俺の身体は徐々に徐々にこの剣に取り込まれて行って、ついには俺が完全に乗っ取られそうになる。

しかしその時、俺は自分の中に眠っていた【賢者】の力を使い俺は俺の身体の支配権を奪う寸前で俺の中のもう一人の人格がこの剣を押さえ込み俺が身体をのっとられそうになった状態を止めることに成功したのだった。俺は、なんとかこの剣に支配されるという事態を防ぐことに成功するがこのままの状態でこの世界に存在することは難しいと判断したため俺はこの剣を一時的にこの場においていくことに決めた。そして俺はこの世界で自分の目的を達成するまではこの世界に留まることを決意していた。俺はそれからアリナの両親に感謝されたのちにその家を後にすることにした。その時にはすでに空には綺麗に光り輝く星たちが輝いており、その光景を見て俺は少し感動してしまった。この世界での初めての夜を迎えた時俺は自分が思っている以上にこの世界に順応しようとしていることに気がつきそのことがとても嬉しいと思えるようになった。それから俺は明日に備えて寝る前に少しこの周辺を見回ることにした。

そして俺はしばらくその周辺を散策していくとゴブリンの集団を発見したので早速倒そうと考えたのである。ゴブリンの数は二体だったので、俺はまず一体目を倒そうと思った。俺は【身体強化】を発動してからすぐにそのゴブリンに接近していき攻撃を加えようとするとあっさりとゴブリンが絶命した。それから、俺は残りのゴブリンを倒してしまうと、そのままダンジョンへと入っていくことにしたのだった。

「う〜ん!ようやく着いたか」俺は目の前に広がっている巨大な城壁を見て感嘆の声を上げてしまっていた。

(それにしても、本当に凄いなこれは。これほどまでの大きな城を見たことがないぞ?もしかしてこれが『迷宮都市』なのか?それにしても、これ程までに強固な壁に囲まれているってことは、やはりこの辺りにもかなりの数の冒険者達がいるんだろうな。でもこの門番もかなり強そうだな。一体誰がこいつらの相手をするんだろう?)

俺は門の前に立ってる兵士を見ながらそんなことを考えた。

(やっぱり、これだけ立派な鎧を身につけているくらいだからこの兵士が冒険者の相手を担当することになるのかな?それならちょっと挨拶しておいた方がいいかも?)

俺はこの兵士たちと会話を交わそうと近づいていった。すると、一人の女性がこちらに向かって走って来る姿が目に入ってきた。そして俺がその女性が近寄ってくるとなぜかその女性が急に頭を下げ始めたのである。そしてその女性は俺に対してこう話しかけてきたのであった。

「貴方様に会えて私は心の底から嬉しく思います。私は貴方様のことを誰よりも尊敬しておりました。ですので、貴方がこうして私の前に現れてくださったこと自体が夢のようでございます。これから貴方様にどのようなことが待ち受けていようともこのリシアナ、最後までお供致しますので何卒よろしくお願い申し上げます。これから私のことはリシとお呼びくださいませ。それと先ほどの非礼を詫びさせていただきたく、この命を差し出しましょうか?」

(はぁ?なんでいきなりこの人が俺に向かって敬語を使い始めているんだ?しかもなんか色々とおかしいし)俺はそう思って彼女の言葉を否定しようとしたがその言葉の前に俺は彼女について疑問を抱くようになっていた。なぜなら彼女が俺に対して向けてくる眼差しや言葉使い、それから立ち振る舞いがどう見ても平民のような態度では無かったからである。

それから俺はとりあえず彼女に身分証明書を見せてもらうとそこに書かれている名前が、リシではなくリルであることが分かり俺は困惑してしまう。俺はなぜ名前が変わったのか理由を聞いてみたが、彼女自身が俺に会うまでの名前を捨てて、今後はこの名前を使うようにしたいと言ってきていたため俺はもうそのことについて聞くのを諦めてしまった。そしてその後俺達はお互いに自己紹介をしてそれからこの街に入ることにした。そしてその際も、なぜか俺は他の冒険者と同じように普通に入れるものだとばかり思っていたらなんとギルドカードを受付で提示しろと言われたので、仕方がないのでそれを受付の女性に見せたところその女性は驚いたような顔をしていたが、何も言わずに黙っていてくれたので俺は内心安堵していた。

(良かったーこれで問題なく入れてもらえるようで。もし何かあった時はこの女性に頼ればいいだろうな)

それから俺たちが街の中に入るとそこには、様々な店が存在しており俺は思わず感動してしまった。それから、俺達二人は宿に泊まることにした。そして俺は、そこでこの世界のことを知るためにこの都市の地図を手に入れるために情報収集を始めることにした。そして俺はそれからこの国のことやこの国が置かれている状況を詳しく知ることが出来たのだった。

(なるほどな、確かに言われてみれば、納得できる話ではあるよな。しかし、それにしてもこんなに早くこんなに沢山のことを知れたなんて幸運以外の何でもないよな)

そしてそれからこの世界が今現在どのような状況になっているのかもある程度知ることができたのである。この世界では戦争が起きており、今現在この大陸にある五大国と呼ばれるこの国、ダリスト、セストリア、デライト王国、カストルド帝国、ポルテニア共和国、この国が争いを繰り広げているということが分かった。

この世界の情勢については、このような情報しか得ることができなかったのだが、それでも十分すぎる内容ではあった。

(それにしても、戦争をしているのか。まぁそれもそうかもしれないな。この世界には魔物という驚異が存在するわけだしさ、それに人間は人間同士で殺し合っているわけだし)

俺はこの世界は元いた世界に比べて平和な生活とは無縁なのだという事を知ったことでより、この世界で自分がやりたいことをするために何をすればいいのかが明確になった。俺はそれから今後の目標を立てるために自分が何のためにこの世界で生きて行くのかということを決めるために自分の目的を考えることになった。

(まずはこの世界で俺は自由に生きるためにはどうしたら良いか?俺の目的は元の世界に戻る方法を探すことだが、そのための手段は今のところこの世界にしかないだろう。つまり、この世界で俺が生きて行くために必要なのはこの世界の中で自分を認めさせる必要があるということだな。だから俺はこの世界で最強の力を手に入れなければならないだろう。しかしその為に俺が今出来ることといえばレベルを上げてステータスを強化するということだけか。しかし、それだけだとまだ弱いんだよな。もっと俺に圧倒的な力が欲しいところだけど、この国で一番有名なのは恐らくこの都市だろうしこの都市を牛耳ることができればそれなりに強い立場になることができると思うんだよな)

俺はそこまで考えて自分の今持っているスキルを確認する。そして【身体強化】のスキルの使い方を考えていく。それからしばらく考えた後俺はある結論に至る。それはこの【身体強化LV7 超絶成長LV5 魔力操作LV10 経験値増加 完全鑑定 隠蔽 偽装 神速思考 限界突破 並列意思(人族)】の中から一つを選択するというものだった。そして俺はまず最初に、【神速思考】と【超高速再生】を入れ替えることにした。そしてこの二つのどちらかを必ず習得することを決めた。【超加速】と【自動体力回復】に関してはどちらを取得すべきなのか俺にはまだよく分からなかったので今回は取らないことにした。

(う〜ん!どれにするべきなんだ?やっぱりこの二つか?でも両方とも取得すると【限界突破】の効果が失われてしまうみたいだから、やっぱりこの二つを取得するなら、この【限界突破】を外して【超高速再生】を取得した方が強くなるんじゃないのか?でもそうなると今度は身体への負担が大きくなってしまう気がするし、う〜ん。やっぱり悩む!)

それから、俺は散々悩んだ挙句【身体強化LV7 超絶成長LV5 経験値上昇量倍化 完全鑑定 隠蔽 偽造 神速思考 並列意思(獣人)

限界突破 魔力変換(生命力)

神眼の加護】に決めた。そして次に、俺は【身体強化LV8 魔法威力倍化 詠唱破棄 多重発動 限界超越 無属性魔法適正】と迷った末に【身体魔補増強 魔法効果倍増 消費軽減 超高速回復 無限魔力 並列思考 精神同調 限界解除 並列意思 超加速 神眼の加護】に【限界超越】を組み合わせることにした。それから俺は最後の一枠を決める時に少し考えてしまったが、【並列意志】を取ることに決めた。

それから【身体強化】の熟練度を上げようと思い【神体練気】を発動させた時俺は今までとは違った感覚を覚えたのである。

(なんかいつもとは違うな。体が軽く感じるぞ?まるで、俺自身の身体能力が飛躍的に上がったような気分だがこれはどういう意味なんだろうか?う〜ん。分からないが今は気にしないことにしておこう)

俺は自分の能力の変化を感じながらそんなことを考えていた。それから、とりあえず俺はこの都市に存在する冒険者ギルドに行くことにした。しかしそこで、問題が発生することになる。

(う〜ん。なんか、周りからかなり注目されてしまっているんだけどなんでだ?)俺はそう思いながらもとりあえずこの場から離れようと移動すると、後ろから突然話しかけられた。「ちょっと待ちなさい」

俺が振り返るとそこには先ほど俺に対して挨拶をしていた女性、リシアナがいたのだ。

俺はリシアナさんに声をかけられて、その場に立ち止まっていた。そして俺はどうして彼女がここにいるのかと疑問に思ったので質問してみることにした。

「えっと、なぜリシアナさんがここいにいるんですか?」俺は率直に疑問を口にした。すると、リシアナが真剣な顔をしながらこちらを見てきた。

そして彼女は、なぜこのタイミングできたのか説明を始めようとした。するとその時、俺の後ろに立っていた受付嬢の女性が慌てた様子で俺たちの間に割り込んできた。

「ちょ、ちょっと待って下さい!!あなたたちいったい何者なんですか?ここは、このギルドマスターが管理している建物で一般の冒険者は入ってくることが出来ないはずです。それなのに貴方達はどうやってこの場所に入って来たというのですか?まさか貴方達がこのギルドの機密情報が目当てだというのなら私はここでこの人達を排除しなくてはいけなくなりますがそれでもよろしいでしょうか?」

そしてそんなことを告げるとその女性は俺達に殺気を放ってきた。俺はその行動に対して驚いていたが俺はすぐに平静を取り戻す。そしてその女性にリシアナさんのことについて聞いてみた。

すると女性は俺の言葉に対して納得してくれたようで俺たちのことを信用してくれたようで先ほどの言葉を取り消そうとしてきた。そしてその後リシアナのことを詳しく話してくれて俺たちがこの街に用があってやってきたということとこの建物が俺たちの目的の場所であるということを丁寧に伝えてくれたのである。

その話を俺は聞き終わるととりあえず納得することができたので先ほどまでの緊張感を解くことにしたのであった。

それから俺がリシアナにどうして俺がこの建物の中に入れているのか聞くとどうやらこのギルドカードは特別製らしいのである。なんでも普通ならばこの建物の中に入るには、身分証明書が必要になり入るためには審査が必要なのである。しかし、このギルドカードを受付で提示すれば、簡単に中に入ることができるようになるのだという。しかもそのカードが発行されるのはほんの一握りの者しかいないため、普通は冒険者の中にはこの建物に入ろうとしてくるような物好きは殆どいないらしく基本的には冒険者が来ることはないらしい。

そのことを教えてもらった俺は、受付でその女性からこの建物について色々と情報を聞いてみたのだが特に有用な情報を得ることができなかったので俺はもうこれ以上の探索を諦めた。

(はぁ、なんでこのギルドに何か特別なアイテムがないかと調べに来ただけだったけどこんな事態になるとはなぁ。まぁ俺のせいでもあるんだけどさ。それで、結局なんの情報も得ることが出来なかったなぁ。でもまぁいいか。どうせこのギルドでは何か面白いことが起きそうだと思っていたわけだし)

俺はそう思うことで自分を落ち着かせてなんとか心を平穏に保ち、その場の空気を変えるためにこれからの行動を考えることにした。

(うーん。まぁ今日は宿に泊まるしかないよなぁ。このギルドの中を調べても何も出てこなかったわけだし。一応この建物にある店についても確認しておかないといけないよな。もしかしたらこの世界の貴重な品があるかもしれないし。しかし俺が探している物が本当に見つかる可能性は低いだろうな。だって、俺の目的はただ強くなることだし)

それから俺はまず先に宿屋を探すことにした。しかし、残念なことにこの街にある全ての宿屋を探したところ、全て満室だった。そのため俺は仕方なく、この建物の最上階の部屋を間借りさせてもらうことに決めたのだった。そして、それからしばらくの間俺は部屋の中で一人になる時間を作ってゆっくりすることにして、明日のことに頭を悩ませていった。

それから次の日になった。俺は朝早くから起きてから、まずは自分の身を守る為の戦闘の訓練を行うことにしたのである。そして訓練を始めて少し経つとこの建物の中で一番強い人物が階段の方から上がって来る気配を感じたのだった。俺は自分の力を確かめる為に、そいつと戦うことを決めて、準備を始めることにした。それから数分後、この部屋のドアが勢いよく開かれたのである。俺は自分のステータスを【限界突破】によって大幅に底上げしながら目の前の人物と対峙することになった。俺はそれから自分の実力を確かめる為に戦い始めたのである。

まず始めに俺に攻撃を仕掛けて来たのはその人物だった。その人物は大柄な体格の男で、身長二メートルを超えるのではないかというほどの大男だ。俺はその人物を鑑定するとレベル255という数字が頭に浮かび上がったので俺と同じ強さだということが一瞬にして理解できてしまい、この相手に俺は全力で挑むことを即座に決意した。そして俺はこの世界で戦う覚悟を決め、本気で相手の命を奪う気持ちで戦闘に臨むのであった。

俺は自分と相手との圧倒的な差を感じつつもこの世界にきて始めて戦うことに高揚感を感じ始めていた。しかし、相手がこちらを殺しに来ていることはすぐに感じ取ることが出来たので、俺は自分の本気がどれ程のものなのかを確認することにした。そして、俺は【神体練気】を全開にして戦闘態勢に入った。そしてそれから【身体強化LV8 超絶成長LV6 限界超越 無属性魔法適正】を発動させて俺は相手と互角に渡り合うことにした。それから少しの間だけお互いの戦いが始まった。そして俺が相手の攻撃を避けながら少しずつ攻撃を繰り出すことによって戦況は次第に俺の方が有利になっていくことが目に見えて分かってきた。

そしてしばらくすると俺は相手の急所を一撃で確実に狙うことのできる瞬間が徐々に増えていきついに俺はこの男を圧倒することに成功をした。俺はそれから、【限界突破】と【神体練気】を解除すると俺は自分が思っていたよりも遥かに力が出てしまったことに気づいた。

(あっぶね!危うくこっちの攻撃が殺してしまうところだった。それにしてもこれ程までに強い敵を相手にしても全く問題なく戦えるとは流石俺の力だよな)

俺はそんな事を思いながら、自分に言い聞かせる。

(しかしまだ足りないな。俺自身がまだまだ弱いからこの世界の頂点に立つなんて不可能だ)そして俺は【無属性魔法】と【魔法創造】の融合魔法を創り出すことにした。俺はそれを【多重思考】を使って多重展開していく。そして魔法を完成させた後に俺は【神眼の加護】を使いその魔法の効果を検証し始めたのである。それから俺はその魔法の実験を行った結果、予想していた以上にとんでもない魔法だったことが判明し、俺は内心冷や汗を流した。それから俺はその威力がどれほどの物かを知るために、俺に襲い掛かって来たその男の方を振り返り、それから俺が作ったオリジナル魔法を放った。

すると俺は、その威力の凄まじさに驚き、俺は慌ててオリジナルの威力を下げることにした。するとその魔法は本来の威力の百分の一程度の威力になってしまったのである。俺は自分の作り出したそのオリジナル魔法に呆然としてしまいながら自分の想像以上だった威力に驚くのであった。そしてそれから俺は自分の作ったオリジナル魔法の威力を下げたことで俺に攻撃を仕掛けてきた男が生きているかどうかを確認しに近づいて行くと俺はその光景を見て驚いたのである。

(嘘だろ!?あの威力で死んでいないとか、どんだけの防御力を誇っているんだよ?もしかしてこの世界の人間ってもしかして化け物ばっかりなんじゃないのか?)

俺はそんなことを考えて少し恐怖しながらもその男の方に目を向ける。その男は先ほど俺の放ったオリジナルの魔法を受けたのだがどうやらこの世界でも上位の存在にあたるこの男にとっては俺が使ったオリジナル魔法は致命傷には至らなかったようだ。そしてその証拠に俺は、この男が気絶すらせずに立ち上がろうとしている姿を確認したのである。そしてそれから俺に視線を向けてくるとその大男は俺に対して殺意をぶつけてきたのである。その殺気に俺は思わず気圧されてしまうが、すぐに冷静になってこの男を倒すことを決意する。そしてそれからその男が立ち上がるのを待ち、俺はもう一度オリジナル魔法の詠唱を始めたのだった。俺はこの世界では恐らく最高峰に位置するであろう存在のはずのその男に向かって魔法を放ち始める。

すると俺のオリジナル魔法の攻撃を受けた男はまたしてもその一撃を受けてなお立ち上がろうとした。俺はそれを見ながら今度はもう少し手加減した魔法をその男に放つことにする。それからその男に俺は次々とオリジナルの魔法を放つことを続けていったのだった。俺はそれから三十分程経つと、やっとこの場にいたその男を完全に打ち倒すことに成功したのである。しかし俺はそこで安心はしなかった。なぜなら、もしこれで終わりだとしたら、その男の耐久力が尋常ではないことになるからだ。

(うわぁ、やっぱりこいつは普通に異常だ。普通の生物なら絶対に原型を留めないはずなのにな。一体どういう構造になっているんだ?それにしてもこれで終わったと思うか?まぁ普通に考えてこんな化け物が存在するなんて普通ありえないからな。しかし俺の勘はこの建物の中には俺の探し物がこの建物にはあるような気がするんだけどな。だから俺はここのギルドに所属している人物たちにこの建物を案内してもらうことに決めた)

そしてそれから数時間かけてようやく俺達は依頼を達成することが出来たのである。

「コウ様、本当にお強いのですね」

俺はリシアナにそう言われると照れ臭くなってつい苦笑いを浮かべてしまう。そしてそれから俺たちが部屋から出ていこうとするとその受付嬢がリシアナに話かける。

「あなたが、まさかリシアナ王女だったんですね。私はここで働いているものです。よろしくお願いします」受付嬢はそう言ってリシアナに手を差し出した。リシアナは差し出されたその受付の女性の手を握ったのだった。

それから受付嬢さんが話してくれたのだが、受付嬢さんは元々この街の冒険者で、この建物の中でもかなりの強さを誇る冒険者であったらしい。そしてそれから彼女は冒険者を引退したのだが、受付の仕事をしていたのは、お金がなかったからであるらしく、それから彼女は冒険者に憧れてまた再び冒険者に戻ったのだそうだ。それで彼女は冒険者としては引退はしたものの冒険者のことについての知識は残っているらしく冒険者になるための条件なども教えてくれた。

(へぇ、なるほどな。まぁ確かに冒険者になれるかどうかは分からないけどな。しかしなんで俺のことをリシアナ王女だって気づいたのかなぁ。別にこの国の王の娘だからと言ってもただの王族でしかないはずだけどな。それにこの国の名前は知らないから、もしかすると他の国にも俺と同じ苗字の奴が居る可能性もあるしな。しかしこの世界ではかなり有名な名前のようだけどな)

俺はそう思いながら、このギルドカードについての仕組みを簡単に聞くことができた。そして、俺達が依頼を受けた後にそのギルド職員さんと軽く雑談をして俺はギルドを後にしようとした。それから外に出ようとした時だった。一人の少年と俺は目が合った。そしてその少年と俺はお互いに見つめ合う形になったのである。

それからその少年と俺がお互いを認識できたのはその一瞬だけのことだった。それから俺と少年は何事もなかったかのようにその場を離れてこの建物の外に向かったのである。

そしてそれから少し経ってからアリナから声をかけられた。俺はそのことを嬉しく思ったもののすぐに顔に出すことは無く平然を装った。

それから宿に帰った俺達だったが、それからしばらくして、俺はこの世界のことについて調べるためにこの世界に図書館のようなものがあるのかを聞くためにアリナに声をかけることにした。そしてそれからしばらくの間、この世界をどのように回っていくべきかを考え始めたのだった。するとアリナに話しかけられた。

俺はそれに驚いてしまいつつも、なんとか動揺を抑えながら会話をすることに成功したのだった。そしてそこからアリナと色々なことを話したのであった。そして俺と別れてからもしばらく俺はその場で考え事を続けたのである。

次の日の朝になると早速俺は動き出そうと決めた。

(さて、これからどこに行くべきだろうか。まぁとりあえず、この国について色々と知っておいた方がいいよな。それと情報収集の為にもまずは情報を集めやすい場所を知っとかないと。それにこの国の王様のことも知りたいしな。俺の予想だとこの国が他国と同盟を組んでいるということはなさそうな気がするんだよな。でもこの国は俺の故郷の世界のように技術力もそこまで高いわけじゃないだろうし、この世界では戦争とかが起こっているかもしれないから俺の予想通りにならない可能性もあるか)

それから俺はこの世界にある国についてある程度知識を得るためにまずはこのギルドに行ってこの国に関係している書物などがないのかを聞いてみることにした。しかし残念なことに俺の期待に応えることはできなくてこの国に関する本は無かった。しかしそれでも一応、この世界に関する情報を集めることが出来る施設に案内してくれるということで俺が泊まっている部屋の一階に存在する喫茶店で話をすることになった。俺はそこでお茶を飲みながらこの国に関しての情報を得ることにしたのである。

俺がこの国の現状などを店員の人に質問しているとその店のマスターらしき人が現れてこの店を経営している人のことやこの辺りの地域一帯の状況やこの国がどのようになっているのかという事を分かりやすく丁寧に教えてくれる。

そして俺はその人からこの国がどんなところなのかを説明を受けたのだった。そのマスターが言うにはこの辺り一帯は魔族と呼ばれる種族によって支配されているのだということ。それからこの大陸は五つの国で成り立っているということ。この世界では魔物という存在が確認されていてそれを討伐するのが俺達のような職業に就いている者たちの仕事なのだということをその人が言っていた。

そして、この店に集まっていた客たちが俺が注文した紅茶を美味しそうに飲んでいることを確認すると俺もその人たちに合わせて飲む。それから少しの間沈黙が続くが、その静寂はすぐに破られることになる。俺の隣に座った少女が俺に向かっていきなり言葉を発したのだった。俺は驚きながらも、それからその女の子がどうしてこの部屋に突然入ってきたのかを理解した。

そして俺は自分の隣に座って俺の方を見て来る銀髪の少女の顔をしっかりと見る。それから俺は目の前の机に目を向ける。そこには先ほどまでそのテーブルの上に置かれていたお菓子などが置いてあったのである。それから俺はもう一度視線を上げる。その俺の目に飛び込んできた光景に俺は衝撃を受けてしまう。

(この子、めっちゃ可愛い!!なんなんだこの子は!一体なんの奇跡が起きればこのような天使が生まれるのでしょうか?いやもう逆にこれは奇跡というよりもこの子の容姿の良さが異常なレベルだぞ!しかしこんな子がなんでこのタイミングで登場するんだよ?まるで俺が一人でここに来たのを見計らって登場してきたみたいじゃないか?)

そして俺がその美少女に心を奪われているとその少女は何かを呟くように言ったのだった。俺はそれを聞き取ろうとするが聞き取ることができなかった。(な、なんで、この距離なのに聞こえなかったんだ?そんなに俺に聞かれたら不味い内容なんですか!?ちょっと待ってください、俺にそういう趣味はないんです。本当にそれだけはやめて頂きたいと本気で思っています)

「あのーもしもしいややっぱり何も喋らないでください!」

それから俺は少し混乱しながらそう言葉を絞り出す。そしてその瞬間その銀髪の美幼女が笑い始めたのである。その笑い方に俺は完全に心を射止められてしまった。

(やばい、俺はどうしてしまったのだろう。今まで生きてきた中で俺はロリコンに目覚めることなんてなかったはずなのに。やはりこの子とはどこかで会ったことがあるのか?)

それからその笑い終わった後の彼女の笑顔を見た俺は胸を撃ち抜かれてしまう。俺はその笑顔を見ているとそのあまりの可愛さに思考停止してしまうのであった。それから彼女は立ち上がって自己紹介をし始める。俺はそれからすぐに我に返り彼女を改めて見たのだが、その彼女が俺に放ったその一言に俺の心は完全に持って行かれることになる。

「わたし、ルーミアっていうの。お兄ちゃんの名前を教えて欲しいの」俺はそれを聞いた瞬間、体全体が震えてしまうほどの感情が込み上げてくる。

「う、ぐぅ。わ、分かった、教えてやる。お、俺は如月幸だ」

それからその女の子は俺の返答に納得したのかまた元の座っている席に戻って行く。そして彼女はまたお菓子を食べ始めだした。俺はそれを見て、彼女を観察することに決める。しかしそれから俺は彼女にずっと見つめられていたせいで落ち着かなかった為か、その後すぐに帰ることを決めた。それで俺は会計をしようとしてからあることに気づく。そしてそのことに気づいた時には俺はまた固まってしまっていた。

(あぁぁぁぁぁ、やべぇよ。また忘れるところだったじゃねぇかよ。何やってるんだよ俺は。普通に恥ずかしくて死にそうなんですけど)

俺が再び固まりそうになっていると今度は後ろから肩を叩かれたような感触を感じたのである。それで驚いてしまった俺はまだ慣れないこの世界に慣れるためとはいえ少し気を抜き過ぎていたと実感して気持ちを引き締めてから後ろに振り返った。するとそこには俺の知っている人物が立っていた。そして俺はすぐにその女性の名前を頭の中で考える。しかし俺の記憶の中にこの女性に該当する名前の人物はいなかったのである。それで俺はもしかしてこの女性が俺のことを知っているのかと思い、俺がこの世界に転生した時に最初に会っていた少女に話しかけてみる。

俺はもしかしてこの子があの時の女の子ではないかと期待したのだ。しかし、その俺の考えは全く的外れだったようで彼女は首を横に振ると口を開いた。

そしてそこから彼女の名前はソフィアだということが判明した。

それから俺たちは再び合流してから街へと繰り出したのであった。俺はその途中でこの世界で俺がどのような扱いを受けることになっているのだろうかと考えていた。俺の中では今のところ、俺はただの子供として扱われていると考えている。まぁこの世界での常識は俺は知らないが。そしてこの世界で子供がどういう存在なのかも分からない。

(この世界は魔法が存在するようだからな。もしかすると子供を戦場に送るなんてことも有り得るかもな。でも、子供といっても、俺みたいな子供はいないか)

俺達は今、ギルドで受けた依頼のために街の外へと移動をしている途中だった。

そして、それから少し経った後に俺とアリナは目的の場所にたどり着いたのだった。その目的とは森の中にあるダンジョンの入口付近である。

それから俺達が森の入り口に着いた頃にはすでに日が暮れかけていた。

俺はそれからダンジョンに近づいて行く。それからしばらく歩いていると俺達が到着した時は既に夕方を過ぎていたため、周りが薄暗くなっていた。

それから俺は中の様子を伺うことにした。俺はそれからしばらく入り口の前で立ち尽くしていたのである。

(さて、ここからが本番になるのか?さすがにまだ、中には入らない方が無難だよな。とりあえず明日になるまで待つとするかな。でも、なんか今日はあまり眠くはないんだよな。いつもならもう寝てる時間帯だし。それにこの体はそこまで体力がなさそうだし、早く寝ないと体がもたないだろうから早めに休むべきなんだろうけど、どうせ眠ることなんてできないと思うんだよな。よし。それだったらもう少し起きておくとするか。それともし良かったらアリナさんもこの依頼を受けてくれないか交渉しよう。この世界のことを知る為にも)

俺とアリナの二人はその晩、この場に留まり続けたのである。

次の日の昼頃に、俺は昨日アリナさんと話してみた結果、俺のこの世界についての説明を受けた際に感じたことを伝えてみた。それからアリナさんの了承を得て一緒にダンジョンの中に入ることができたのである。俺達はそのまま奥に進みながら、俺とソフィアとアリナの三人で行動していると俺達の周りにモンスターが現れたのである。

その数はかなり多かった。俺はそのモンスターを目の前にして、少しだけ戸惑ってしまったが、そのまま勢いに任せて攻撃することにした。そしてそれから俺は、俺の攻撃によりその周辺に存在していた魔物たちは一瞬のうちに消え去って行ったのだった。それから俺は、それからしばらく歩き続けるとそこで一度、戦闘を行う。それから俺達の周辺には多くのモンスターが出現するようになり、俺はそいつらを一掃しながらどんどん先へ進んで行く。そしてそこで再び俺は目の前に現れた敵を見て驚いた。それは先ほど俺の目の前に出現したのよりも倍以上の大きさがあったからである。それからその巨大な熊のような姿の魔物に俺は戦いを挑むがその巨大な熊型の怪物には傷一つ付けることができないでいた。それでも俺はその怪物に向かって剣を振り回すが一向に相手にダメージを与えることができなかったのだった。

それからそれから俺とアリナは一旦引いて作戦を考えることにしたのだった。しかし、その考えがまとまった後でも俺の目の前の魔物にダメージを与えたり倒す方法を見つけることができなかったのである。

(一体どうしたらいいんだ?この世界に来たばっかりで俺の力も十分に発揮できていないのかもしれない。だから今は少しでも俺の能力を向上させる必要があるな。それから今のこの力だとダメな気がする。もっとこの世界について知る必要がある。そしてその前に、あのでかいやつを倒す手段が必要だ)

そして、それから少しの時間俺達とでっかいやつは対峙することになる。それからそれからしばらくの間、お互いにに動きはなかった。それから少しの間沈黙が続き俺はこの先にいる魔物がこちらに向かって攻撃を仕掛けてくるのではないかと考えた。俺は警戒を解かずに相手の出方を待っていたのである。

俺はそれから相手に対しての注意を最大限に向けることにした。そして俺の感覚がその巨大で強大な気配に反応を示したのである。それから俺はその巨大な化け物を見てみると、どう考えても人間ではなかったのである。

俺はそれを見た時に思わず声を出してしまったのであった。

「な、なんだこいつの見た目!こ、これって本当にこの世に存在する生物なのか?」

それから俺の目の前にいたのは、全身紫色の鱗に覆われていて目が真っ赤な爬虫類の様な姿をしていてその顔は俺の世界にいるワニに似ていたのだった。俺はそれからすぐにその大きな生き物の正体が分かったのだった。そしてその正体を知っていたからこそ俺はその生物のことが怖くてしょうがなかった。その化け物は口からは長い牙が何本も生えていたのである。

そしてその魔物は俺の想像を絶するような力で襲いかかって来た。

俺はなんとか避けることはできたのだが、その後すぐに襲ってきた爪による攻撃を俺は完全にかわすことはできなかった。俺の体に深い傷を負うことになったのだった。そして俺は痛みに耐えながらも何とかして、反撃しようと試みる。

それからしばらくして俺がある程度回復するまで時間を稼ぎ、それからもう一度攻撃を繰り出すが結果は同じで俺が傷を負わせることはなかったのである。そしてそれから俺と、その紫の怪物はお互いの攻撃を受け続けていたのだった。そしてその膠着状態のままさらに数分が経過していったのである。それからその状態から少しの変化が訪れたのである。

俺と、そのでっかい蛇が戦いを始めてから、少し経った頃である。俺がその怪物と戦っていることはアリナの方にも伝わっていたらしく俺は彼女に話しかけた。

「ねぇ?この世界に来てからは結構時間経ってるような気がしたんだけどまだ夜になってないよね」

「はいそうですよ」

(おかしいな、普通なら、もう夜にでもなっているはずだぞ。まさか時間の経過速度が遅いのか?)

それからまた少しの時間が経ち俺の体が回復したのを確認して俺は再び戦いを始めた。その時から既に俺とこのでっかい化け物の争いが始まっていたのだが更に加速していくことになる。そして遂に化け物が本気を出して攻撃を開始しだしたのである。

(やばい!このままじゃ、負けるかもしれん)

その俺に襲い掛かる一撃を辛うじてかわすことはできてもそれ以降全く隙がないのだである。それから俺はまた何度か攻撃を受けたがなんとか避けて耐え忍ぶことができた。しかしそれからまた暫く時間が過ぎた時、俺の体の限界が訪れる。俺は自分の体力が底を尽きかけていることにやっと気づいたのだ。

(しまったぁ。やべぇなこれはマジでやべぇ。でもここで負けたら、俺死ぬかもな)

それからそれから少しして俺達はその場から撤退することになる。しかし俺達を追ってくるのを諦めるつもりのない様子だった。それでそれから俺達はどうにか逃げ切ったと思った矢先に、俺は背後から迫り来る恐ろしいまでのプレッシャーを感じる。俺は後ろを振り返るがそこには俺を追いかけてきている奴はいなかったのである。しかしその代わりに俺は目の前の地面を見て絶句した。俺の目の前の地面は大きく陥没してしまっていたのだった。そしてその地面の様子を見て俺は背筋が凍るような思いをしてしまった。そのあとも俺とアリナはしばらく森の中を走り抜けていたのである。それから俺とアリナは森を出て草原に出てからもずっと全力疾走を続けたのであった。そして、それからしばらくしてようやく俺とアリナは走り続けて体力がなくなってしまい、その場に倒れ込むようにして座り込んだのだった。

(はぁ、はぁ、くそぅこんな所で体力が切れるとか俺もまだまだだよなぁ。この世界で生きてく為にもこれくらいじゃ駄目だよな。まぁ今の状態でもかなり無理をしたんだから、今回はここまでにしておくしかないな。それにしてもアリナさんはまだ動けそうな顔をしているよなぁ。まぁあれだけ激しい運動をしてたんだし当たり前と言えば当たりなのかな)

それから俺は息を整えながら地面に仰向けに転がったのである。

それから俺はこれからどうするか考えていた。

まず俺は今回のことを思い出していた。

俺が戦ったでかい蛇のような生き物、恐らくあいつの名前はヒュドラだと思う。

あの化け物を一目見てすぐにそれが分かった理由は単純だった。何故なら俺が元いた世界に存在している神話に出てくる伝説の化け物に非常によく似ていたからである。俺は、その神話で出てきた伝説の存在を頭に思い浮かべるとその恐怖で身体が震え上がってしまうのを抑えられなかったのである。それほどまでに俺は、その化け物の存在を恐れた。そしてそんな怪物を実際に見たという経験のせいで俺は、その出来事を思い出してしまい俺は無意識のうちに震え始めてしまうのだった。

俺の頭の中はその光景が繰り返し再生されるように頭に浮かび、それを消し去るために頭を振って、考えを巡らせることにする。

(この化け物の強さも大概だったが俺の力も中々に規格外だったと思う。だけどこの世界には、それ以上の化け物が存在してるってことだよな。もしこの世界の人間と戦ったりしたら俺のステータスでは勝ち目がないことに違いはないな。でも、この化け物は多分、俺がいた世界にいた奴とは、別ものだと考えておいた方が無難かもしれないな。もしそうだとしたら、この世界の生物はどれもこれも俺の世界の生き物よりも数倍強力な可能性が高い。それから今の現状では勝機を見つけることは不可能に等しいだろうな。それにこの世界にいる人間がどんな連中なのかどうかは、分からないんだよな。俺がこの世界で遭遇したのはあのでっかい怪物だけだ。そしてその怪物でさえ俺よりも数段強い可能性がある。この世界の住人に、この怪物より上の強さを持った怪物が他にいても不思議ではないんだよな。だから俺が生き残るためには、俺自身も強くならないとダメだな。よし決めた!俺はこの先もこの世界を生き延びる為に強くなっていこう。それから強くなる為には何が必要かな。まず一番大事なのは情報収集能力だよな。俺もこいつと同じ存在の魔物がいるっていう情報があればそれについて調べてみないとダメだな)

俺は、そう考えをまとめていく。そしてそれからも俺は色々な事を考えていたのである。それからしばらく経って、ようやく落ち着きを取り戻して、それから俺達は休憩を終わらせて移動を開始することにした。そしてそれから数時間後に、俺達が目指している街が見えて来たのである。俺は、この街についての情報が全くないので、街の門の前にいる門番らしき人に尋ねてみることにした。するとその男は、その質問にこう答えたのだった。

「おぉ君たちは旅人かね。ここはこの国の城下町だ。この国は俺達の国と隣同士になっていて友好的な関係を築けているからな」

(へーこの世界にも友好な関係が築けるような国が有るんだな。俺としては少し安心できたけど)

俺はその男の言葉に安堵の表情を見せた。

(この人が嘘をついている可能性もゼロじゃないから油断はしないでおこう。それから、ここが俺の元いた場所とは違う可能性は捨て切れないし、俺の事を詳しく知られない方がいいな。とりあえずは適当に会話を交わしておくとするかな)

「ありがとうございます。えっと私は旅の途中の剣士です」

そう言って俺は身分証明ができるものはないかと考えた。それから少ししてからアリナの方も話し始めた。

「わ、私も、同じく剣士でしゅ!」

そのアリナの話し方は噛み噛みで顔も少し赤いようだった。俺はそんなアリナのことを可愛いなと思ったがそれと同時に俺も恥ずかしくなり、アリナと同じように頬を少し赤くするのであった。

俺がこの世界で初めて訪れた場所は俺がこの世界に来た時の最初に居た森から程近い所にある街である。この世界は地球で言う中世に近い文明が発達をしており剣や鎧などを装備した人間もたくさん存在していた。この世界には魔法が存在する。この世界の人間は魔法を使える。しかし魔法の属性には火、水、風などの基本となるものがあり、それ以外にも氷や土、光や闇といったものが存在していた。そしてこの世界でも、魔法を使えない人間も存在した。俺も実はこの世界にきて初めて知ったことである。俺は今までに一度も自分が魔法を使っているところを想像してみたことがない。

(まぁそれは、どうでもいいことだし置いておくとしてだ、この世界での俺の役割を決めなければいけないよな。まぁ、取り敢えず今は冒険者になって金と経験値稼ぎをしつつ生活できる程度のレベルになることが目的か。俺の能力がどの程度のレベルまで向上すればこの世界の魔物を倒せるようになるのかがわからないが。取り敢えずは戦闘経験を多く稼いでいくしかなさそうだな。しかし問題は、魔物と戦うとどうしても魔物の死体が出てしまうことだよな。これは仕方ないこととはいえ、あまりいい気分にはならないな。魔物は素材の入手が難しいらしいし。それに、なるべく人がいない所で戦ったとしても絶対に誰かに見られることになるから、その時は誤魔化さないといけないよな。あ!それからこの世界に俺以外に異世界からの迷い込んできたやつがいたりはしないのかな?その辺りも色々と探りたいな)

それから俺たちはこの街の宿に向かって行ったのである。それから俺は部屋に入るとすぐに眠ってしまった。それからどれくらいの時間が経ったのだろうか。俺はその時間に起きて窓の方に視線をやった。

(やばいぞ!!完全に日が落ちてしまっている。今から街を出たんじゃ間に合わないしなぁ。まぁ、今日中に辿り着けないなら野営するしかないか。まぁ最悪野営になっても問題はないよな。俺とアリナさん二人とも【完全鑑定】を常時発動しているし。もしも俺達に襲いかかって来るやつがいた場合は俺がなんとか対処しよう)

俺はこれからどう行動すべきか考えていた。

(やっぱり今すぐ出るか。まぁ、でも俺達はもうこの世界でお金を手に入れているから別に一日遅れたところで何も困ることはないが。ただ早く着くことに越したことはない。それにアリナさんに迷惑がかかるかもしれないから出来るだけ早いに越したことないしな。しかしどうしたものか)

それからしばらくして俺はある考えが頭に浮かぶのである。そして俺の考えが纏まると俺は早速その考えを実行に移すのである。

それから俺は荷物をまとめたあと宿屋を出ていったのである。それから暫く歩き続けた俺はとある場所にたどり着くとそこにいた見張りの兵士に話しかけたのだった。そして、俺がこの先に通して欲しいとお願いをすると兵士はその要求を断った。

そして俺はその要求を拒否したその兵士達がこの森を抜ける道は他にも存在しているのだと教えてくれる。

それからその兵士達はこの先を進んで行くと、そこには森を抜けて草原地帯を進む道が存在しているのだと言う。しかしその先は崖となっており、しかもそこの草原は凶悪な猛獣が多く生息すると言われているため、この森を通り抜けずに迂回して他のルートを通って進んだ方が良いという忠告をしてくれるのであった。

(ふむふむ。なるほどね。つまりは、あの兵士達は親切心で俺に注意してくれたってことだよな。それなら、ここで無理を通しても良いのだが。しかし、あの兵士の感じを見るに本当に危険だということが伺える。それにこの世界では、俺が思っていた以上に強者が溢れかえっているようだな。確かに俺一人なら余裕で切り抜けただろうが今の俺にそれが可能な自信は全くないな。それに俺は、この世界で生きるために強くならなければならない。そのためにも俺はこの世界を生きていかなくてはならない)

それから俺はそのアドバイスに従うことにした。

「分かりました。その助言を素直に受け入れます。ご指導、感謝します」

俺はその言葉を告げるとその場から離れていった。

「おい、あいつ何だったんだろうな?」

(おっ!どうやら俺はこの国の兵士達の間では、かなり名の通った人間になったようだ。俺もそれなりに有名になっていたということだよな。しかし俺ってそんな有名人だったっけ?)

それからしばらく歩いているうちに、ついに目的地に到着することが出来たのである。

そしてそれから俺はアリナを連れてダンジョンに入るのであった。

「コウ。お前は一体どこから来たんだよ。この森には普通こんなに強い生き物はいないはずだ。少なくともこの辺の地域ではな。それにこいつは、恐らく普通の奴とは比較にならない強さを持ってるぞ」

「へー、そいつは面白い話ですね。それでこの蛇の化け物は強いんですかね?それともこの森の中の生態系の一番上に君臨しているような存在なのでしょうか」

俺はそう言いながら大蛇を見ていた。そして俺と目が合うとその巨大な口を開いて、俺に攻撃してきたのである。俺はその攻撃を剣を使って防ぐが剣が弾かれてその反動で俺は後ろへと飛ばされてしまうのだった。そしてそのまま壁に激突してしまったのだった。

「くっ!なんだこの衝撃は!この蛇はまさか、いや、このレベルの相手になるともはや疑う必要もないだろ」

それから俺は立ち上がって、アリナの方を見つめた。

「すみません。ちょっと予想外に相手が手強いようです」

「いえ、それよりも貴方が大丈夫ですか。私は貴方のおかげで命を助けられたのだから。私は貴方の為ならこの命惜しまない」

俺はアリナの言葉を嬉しく思いながらもこう返した。

「そんな悲しいことを言わないでください。あなたのような美しい女性が命を失うのは、世界が崩壊することよりももっと大きな損失なのですから。ですからどうか私と一緒に生き延びる為に戦ってくれる気はありませんか。もちろん私が貴女を死なせはしないですけどね」

俺がそんなキザな台詞を言った瞬間に、また、この蛇の化け物が大きな口を開けて攻撃を仕掛けてきたのである。しかし、俺にはそれを見切るだけの実力と能力を持っていた為簡単に回避することができたのだった。

(へぇ、あの大顎の攻撃も、スピード自体は大したことがないか)

俺がそう思って安心した次の瞬間。突然俺の横の壁が爆発した。俺は慌てて壁から離れると爆発したところを見ると、そこは大きな空洞が出来ていたのである。

(なるほどな。あれは恐らくあの牙に秘めているエネルギーを放出することによって俺に目眩しをして、それから一気に俺に近づきそしてその破壊力で俺を仕留めようとしたわけか)

俺はその光景を見ながらそう分析していた。すると、今度は、大蛇が俺の方に突進を仕掛けて来たので、俺はその攻撃を避けるとすぐに俺も大蛇の方へ向かって行った。

俺はまず、【多重思考】を使い【魔力操作】を発動する。それから次に俺は魔法創造を行う。俺はこの世界にある属性の魔法を使えないため無属性の魔法しか使うことができない。そこで俺は自分の使える無属性魔法の魔法を改変して新しい魔法を創り出す。そして俺が新しく生み出した魔法は無属性魔法ではなく、風属性の派生魔法の雷属性の魔法である。

その魔法の名は【電光石火(でんこうちかん)】である。これはその名の通り、速さを重視した戦闘特化型の魔法であり、その威力は通常魔法の中ではトップクラスのものであると言えるだろう。

(しかし、この技は消費MPが多いな。まぁこれに関しては、しょうがないから我慢するとして)

その魔法を俺は大蛇に放つ。すると大蛇はその俺の動きを全く追えていない様子だった。それから、数秒間だけ、俺と蛇との睨み合いが続くが結局決着がつく前に俺に疲れが見え始めてしまい俺は負けてしまうのだった。それから少しだけ俺は動けなくなっていた。そしてその間に大蛇に首を絞められて殺されてしまうのであった。

(ん!?おかしい。なぜだ。俺はあの大蛇と戦っていて勝てるはずがないだろうと思ったんだが)

俺はそう思った。俺は、大蛇が動き始めるのを確認してすぐに【魔力支配】を自分に使って俺のHPを回復させたのである。

(よし!取り敢えずこれでなんとか、まだ戦える状態になった。それに、俺は今までにこの世界では見たことのない種類の魔物と戦闘をしていてとてもいい経験になる)

俺は、この世界のレベルの高い敵との戦いにワクワクしている自分を感じる。

(あ、やべ!この感覚はまずいな。俺が戦闘狂になっているのは自分でも自覚しているが、やはり俺はこういう戦いを求めていたのか)

そして俺は今から本気でこの目の前にいる怪物を倒すことを決意する。

それから俺はすぐに、【並列制御LV10&高速処理LV7+解析の眼鏡】を使用し【鑑定の眼鏡】を作り上げてから【自動回収】を発動させた後にその大蛇を丸呑みにしたのだった。そしてその後すぐにその階層にあったアイテムを俺とアリナさん二人で回収してこの迷宮を出たのである。そして俺はアリナさんを街まで送るついでに街で冒険者ギルドに向かうのであった。それからアリナと別れてから俺は宿屋に戻るのであった。そして俺は部屋に戻って一息ついて落ち着いた頃に今日の成果を整理することにした。

(しかし、やっぱり、この大蛇はこの国で噂になってしまっているよな。俺が倒したことでこれからもっと有名になってしまうかもしれんな)

そう考えた俺はこれからの行動を考えるのであった。

(これから俺は、出来るだけ人目につかないような行動を心がけないといけないな。それと俺がこれからすることはただ一つ、それは強くなることのみだ。この世界では、とにかく強くなり続けることが最優先事項なのだから)

そしてそれからしばらくした時俺はあることを思い出すのだった。それは自分が持っているこの力についてである。

俺達が、そのダンジョンを出てからしばらく経つ。俺は現在一人で街の外を散策していた。

(それにしても、この街は広いな。さすがは、王都といったところなのか?それとも単に大きいというだけでそれほどでもないのだろうか?)

俺がまだ小さい頃からずっと日本で暮らしていたからか、そのせいもあって俺はかなりの街の大きさというものを知らなかったのである。そのため、俺にとっての当たり前はこの世界では当たり前ではないということも十分に理解できていなかったのだ。そんな俺は周りをキョロキョロしながら道を歩いていたのだが、そこに俺は一人の少年を発見する。見た目は12〜13才程の年齢で身長はそれほど大きくなく体つきもそれ相応のものであった。そんな彼は、何故か木に向かって剣を振るっていたのだった。

(ふむ。なるほどな。あの子にとってはあの木は格好の的に見えたのかもしれないな。しかしどうしようかな。この国に、あんな小さな子供がいるってことは親が心配しているんじゃないのだろうか?しかし、俺はこの国の人でもないしな。だからといって、放っておくわけにも行かないだろうしな)

それから、俺が迷っていると、俺に話しかけてくる人物が現われる。

「おーい!君どうしたんだい?もしかして迷子になったとか?それなら、このお兄ちゃんに何でも言ってごらん」

そこには一人の優男が立っていた。年齢は恐らく20前後だろう。そして、かなり顔も整っていてイケメンと言って差し支えのないくらいだった。しかし残念なことに俺はそういうものにはあまり興味がなく特に気にすることはなかったのである。そして、俺に話かけて来たこの男はかなりフレンドリーな人間だったようだ。そして俺はこの男に対して不信感を抱いていたのだった。何故ならこの男は、俺が返事をするまではずっと俺を見続けてニコニコしていたからだ。それから俺はこの場を適当に誤魔化してから去ろうとした。

しかし、この男の方はそんなことはさせまいとしたようで、俺は強引に引き止められてしまった。

「ちょっと待ってください。あなたの名前は何ていうんですか?」

「俺か?俺の名はコウと言う」

「コウですか?変わった名前ですね」

「そんなことはないと思うぞ。それにしてもいい天気だな。それであんたは、どうしてそんなところで木に切りつけて剣の素振りなんかをしていたんだ」

俺は話を変える為に、その少年に話し掛けた。

「そうなんです!実は、僕はこの前成人したので冒険者として活動を始めたんですよ。そして、今日は、クエストを受けるためにこうしてこの辺りに来ていたんです」

「へぇー、そうか、頑張って頑張れよ」

俺はそう言い残してこの場を立ち去ることにした。しかしその時にその少年がこんな言葉を口にする。

「あの!僕を弟子にしてくれないでしょうか!」

「悪いが無理だ」

俺はきっぱりと断ったつもりだが、その瞬間俺の首元にはその少の持つ刀の刃が迫っていたのである。俺は咄嵯の事で反応できずにいたが、その刃をなんとか紙一重で避けることに成功したのである。

「お前いきなり、どういうつもりなんだ」

俺がその言葉を吐くと、その男は急所を斬りつけたはずなのに一切動揺を見せなかった。それどころか笑みを浮かべていたのである。

「あなたは一体誰ですか?この私を殺せるほどの実力者だということだけはわかるのですが、それ以外には何も分かりませんね」

その男は俺の事をそう評したが、実際には俺の正体はバレていないはずだがこの少年は何を根拠に俺をこの男を裏切ったはずの『勇者』だと気付いたのだろう。俺はそのことを少し不思議に思っていたのである。

俺は今その謎の青年に、攻撃されている。

(はぁ〜面倒くさいな)

(それにしてもこいつの強さは明らかに他の人とは次元が違うな。それにしてもなんで俺を殺そうとしているのかが全然わからないな)

そう思って俺は目の前の男を鑑定してみる。

そして俺の頭の中にはその鑑定結果が流れ込む。

——【ステータス】

【名称】

ソウイチロウ=ヤナギダ Lv.99 【種族】

ヒューマン族 【年齢】

18 【職業】

聖騎士(固有職)

【状態】

なし 【HP】

15000/23000 【MP】

52000/68000【攻撃力】

2800 【魔法力】

40000 【防御力】

3500 【敏捷性】

4000 【魔力】

9000 【抵抗力】

3200 【加護】

異世界の神 【適正】

光属性魔法(超級)

火属性魔法(超級)

水属性魔法(中級)

雷属性魔法(初級)

土属性魔法(上級)

風属性魔法(上級)

回復魔法 闇属性魔法 重力魔法 召喚魔法 無属性魔法 【ユニークスキル】

超速再生LV1 神速思考LV10 並行操作LV10 絶対防御LV9 無限収納LV8 限界突破LV4 全言語翻訳LV10 全属性魔法LV10 鑑定LV10 偽装LV10 etc.etc.

(うわっ、なんだよこれ。レベル高すぎだろ。それにしてもこれを見る限りはチート能力持ちなのは確定だよな。まぁこれくらいじゃないと『魔王軍四天王』なんて倒せないのかもしれないけど。それにしてもここまでのレベルになる為には一体どれだけの経験が必要なのだろうか)

そう考えた後、俺は、目の前で刀を振り下ろしている男に向かって【威圧】を発動する。

(この技を使うのは久しぶりだな。まあ取り敢えず、これで動きが鈍ればいいがな)

その俺の思惑は見事に当たり目の前にいるその青年の動きは完全に止まってしまったのである。

(これで、動きを止めた状態で質問できるか。それにしてもさっきから全く動こうとしないし、まさか気絶でもしているんじゃないのか?それなら今のうちに、情報を引き出せるか。それとも、この場で尋問するか?)

俺はこの目の前の相手を生かして連れていくことに決めた。この世界の情報をこの国についてよりも多く知るためには必要なことだったからだ。それに俺としてはそのこの少年から、有益な情報を手に入れられればそれで良かったのである。

それから、この世界に来た時のように俺はこの少年に【転移】を使用し、移動先をアリナさんの家に変えてから【鑑定の眼鏡】でアリナさんの部屋を鑑定してから【鑑定の眼鏡改 改良版&鑑定LV10&鑑定解析LV10&高速解析LV10&自動書記LV10&念話LV10】を発動させて、この世界の文字とこの世界での俺が読める文章を書けるようになった俺はアリナさんに対してこの少年が、俺の知っている『勇者』であることを説明することにした。そして、アリナさんは驚いた様子を見せていたが俺の話を信じてくれ、これからはこの少年のことをアリナさんと俺とで監視し合おうということになったのである。そして、そのあと俺はこの国を出て、別の国に向かうことにしたのだった。

俺はその後、この街を出てからすぐにまた別の場所に向かった。

(さて、これからどこに向かえばいいのやら)

俺は、この街での冒険者生活に嫌気がさした為、この街を出ることを決意したのだ。

俺達はこの街のギルドから出て来たばかりなのだが俺は既に次の街に向けて出発しようと思っていたのだ。

するとその時後ろから、誰かに話し掛けられた。

「おーい!そっちの兄ちゃん!」

そこには一人の少女の姿があった。

そしてその少女は続けてこんなことを言ってきたのである。

「もしかして、兄ちゃん達ってもうここ出て行く感じ?」

俺達が宿に戻るために歩いていると、その途中にある露店で俺はある物を発見する。

それはある一つのネックレスだった。それはかなりシンプルな作りをしているものの、俺の好みだったのもあってか俺は一目見て気に入ったのである。そして俺はそれを手に取りじっくりと眺めた後でそれを買うことを決めた。それから俺は、そのネックレスを購入したのだった。俺はそれからその店の主に話しかけてみる。

「おーい!おっちゃん!このペンダントはどうやって使うんだ?」

「なんだ兄ちゃん!それを買ってくれるのか?いや〜嬉しいねぇ。それなら教えてやるよ」

その店の主の男は嬉しそうな顔をして俺に対して説明を始めていった。

俺はその説明を聞く。

(へぇー!なるほどね。そういう使い方をするわけね)

そして俺は、俺に商品の説明をしていたその男の人にお金を渡して買った物を受け取ってから、早速その使い道を実行したのである。そして、俺がこの世界にきてから初めて、自分の好きなものを見つけたようなそんな感覚になっていた。そして俺はそんな感情を楽しみながら次の目的である街に出発したのであった。

「それじゃあいってくるぞ!」

俺はアリナとミリア、そして俺達のパーティーのメンバーに告げた。俺の言葉を聞いた三人は、笑顔を浮かべていた。

「うん。気をつけてね」

アリナは俺を送り出すときも笑顔を浮かべていたが、やはりどこか寂しさを隠しきれないように見えなくもない。俺も内心かなり名残惜しかった。しかし、それでも俺は旅を続ける必要があったのである。なぜなら、俺にはまだやり残したことがあったからだ。そして、俺はアリナたちに別れを言ってこの街を出たのである。

(さて、次の目的はどこに行こうかな)

俺はそう思いつつ歩き始めたのである。

(次はやっぱり魔人領に行ってみるのもいいかもしれなな)

魔人はこの世界の中でも、かなりの強者揃いだと言う。俺には【スキル強奪】があるのでそんなに苦戦することもないと思うのだが俺はあえて魔人の住む大陸、つまりは魔人が治めている国に俺は向かっているのである。そして俺はこの国の隣の国に来ていた。

俺がまず最初に行った国は獣人達の国だ。俺はこの世界で初めて訪れたのもこの国である。なので俺にとっては少しだけ思い入れのある国なのである。

(よし、取り敢えず冒険者として依頼をこなすか)

俺は冒険者の登録をしておいた方がいいと思い、その日はその街のギルドに向かい、依頼を受けることにした。俺のこの国での目標は、とにかく強くなって少しでも長くこの世界にとどまることである。俺がこの世界で生き残るために必要なことは全て吸収していこうと思っているのである。

「あのすみません。ここで一番報酬の高い魔物の討伐依頼とかありますか」

俺はその冒険者風の男に尋ねた。

「あぁ、もちろんだ。ここにあるものはほとんど全部が高額の報酬が得られる依頼になっているぜ」

(えっ、こんなにあるのか?しかもほとんどが高い報酬金の依頼なのか)

「ちなみにどんな種類でどのくらい強いのかわかりますか」

そう言った途端に男は難しい顔をしながら考え込んでしまったのである。俺は不思議に思ったので、さらに詳しい情報を求める。

(なんなんだ一体。まぁ別に無理に聞き出す必要はないけど。まぁ一応は聞いてみるだけ聞くべきか)

「あのぉ、例えばこれとかはどういう感じなんですか?」

「ああこれはドラゴンだな。そしてこれなんかもなかなかだぞ」

俺は、この国に来てからもずっと俺の頭の中では『竜』というものについて考えていたのである。

(そういえば、この世界でまだ『竜』という存在は見たことがないな。まぁ俺自身がまだ一度も見ていないだけかもしれないけど。それにしても俺的には『ワイバーン』と『竜』の区別がイマイチつかなんだよな)

俺が考えている間にもその男は、俺が出した質問に対して一つ一つ答えてくれる。

(んーと。『火龍』と『風竜』の違いはよく分からないな。見た目の違いなんて鱗の色しか違いがない。そもそも、『風竜』と『水蛇』の見分けが付かないのだからどうせ見ても分からないだろう)

俺は、この国で初めてのクエストを受けた後でその冒険者用の宿屋に行き、今日は疲れていたので、すぐに寝てしまう。その日は久しぶりに熟睡することができたのだった。俺は翌朝目を覚ましてからその宿の店主から食事を受け取り、食べ始める。

(この宿で食べる料理は、相変わらずおいしい。さすがに昨日の夕飯よりはランクが下のものになるんだろうが、まぁまぁうまいし十分だな。しかし朝ごはんまで付いているなんてこの宿のサービスは最高だな。)

それからしばらく食事をした後、俺はその街を後にすることにした。

「お世話になりました」

俺はその店を出て行く前にそう言う。

「こちらこそありがとうございました。あなたのような冒険者はそう簡単に現れないので、当分はこの街にいるつもりだと思います。その時になったら是非うちに泊まりに来てください」

「はい!必ずまた来させてもらいます。本当に色々とおもてなししていただきありがとうございます」

俺はその男に挨拶をしてから外に出た。そして俺はそのまま街の外へと向かう。その道中でも、様々な種類のモンスターを見かけることはできたが、俺の今のステータスなら余裕で倒すことができてしまった。

(うーむ。俺がこの世界の人間ではないということを隠す為になるべくこの世界の人たちとはあまり戦わずにきたが、この強さでは隠す必要がないのでないか?)

俺は、俺に倒されるモンスター達を見ていてそんなことを考え始めていた。しかし、それでもまだこの世界の人たちは信用できなかったのだ。俺は自分が元いた世界についての知識を持っていることを知られないようにしなければならないのだ。この世界の人間と会話するのはいいとしてこの世界の人間がどこまで知っているのか俺にもわからない以上あまり情報を出したくないのだ。もし仮にこの世界の住人が俺のことを、異世界から来た存在だと知ってしまえば俺を拘束しようとしてくる可能性があるのである。

そんなこんなで色々なことを悩みつつも、俺は遂にこの国から出て魔人族の治める地に向かって旅立ったのである。

(ふぅーやっと魔人族が治める地にたどり着いたな。結構時間がかかったな。ここからは気を引き締めていかなければ。この国に来た時よりもかなり強くなっているとはいえ油断はできないからね)

俺達は今『魔人族』の治めている土地の中にいる。そして、俺が最初に目指す場所は『魔王城』である。

(取り敢えずまずはここの領主から『勇者』について聞こうと思う)

そう俺は決めたのだった。

それから、俺は『勇者』に関する情報を集めるためにその街に滞在し続けた。その間でも俺は『スキル強奪』を発動し、その街の冒険者たちに戦いを挑んでスキルを奪い続けていた。そして俺はこの街にきてから二ヶ月程経過していたがその間に俺はかなりの量のスキルをゲットしている。

そして俺はその二ヶ月の間に俺はこの街に自分の実力を隠しながら滞在し続け、『領主の館』に向かう。そして、その道中に他の街と変わらない普通の民家を見つけ俺はそこに立ち寄ることにする。

(なんだここは?一見普通の家と全く変わらなく、特に怪しいところはないように見えるが、もしかしたら何かしらの罠や秘密があるのかもしれない)

俺がその家の前で迷っている間もその家の中からは楽しそうな話し声が聞こえてくる。俺は、その家で普通にお茶をしているおばあさんたちに近づいて話しかけてみることに決める。

(まずは、相手の懐に飛び込むのが一番だと思う。相手が俺を警戒していたとしてもその警戒が解けるような状況に持っていけば相手も素直に俺に教えてくれる可能性が高い)

俺は、その家の玄関の前にたどり着くとその扉をノックしてみた。

「はーい!少々待ってくださいね」

俺は中から若い女性の声がしたので安心したのであった。そして、少し待つと一人の綺麗な金髪の女性がその家から姿を現した。その女性は俺の姿を確認すると、その女性の後ろに立っていたもう一人の若い男の人に話かけてきた。

「ねぇ〜リュオ君ちょっとこっちきてよ〜」

(なんだこいつは。なんかすごくイラっとくるな)

「おい!!お前は何なんだ?勝手に僕の部屋に入ってきたと思ったらいつのまにか帰っていたかと思えば今度は何を企んでいる?」

「えっ!何よそんな怒らないでよ」

そして、その女の子と男の子は俺の存在に気がついたようだ。

「それで、そこの男は何者だ?もしかして、お前が呼んだのか?」

俺は、自分の存在に気づいてくれてとても嬉しい。

「えっ!?もしかしてこの男が私を呼んだわけじゃないの」

その二人の反応は真逆だった。そして、女の方はなぜか驚いた表情をしている。俺は、その様子に疑問を覚えてそのことについて聞いてみることにした。

(この女、もしかして俺の存在を知っていてこの家に招いたのか?それとも偶然ここに来て俺のことを知ったとかなのか)

俺は、この女性が自分に何か特別な力をもっているようには見えなかったのでこの女性の行動が不思議に思ったのである。

「もしかして俺のことを知っているのか?」

俺は、一応そう聞いてみる。すると二人はお互いに顔を見合わせてから同時に俺の方を見た。そして、その後二人で話をし始めた。そしてその話が終わってからは俺の方を向く。

「ごめんなさいね、私たちあなたのことが全然わからなかったわ。あなたの名前はなんていうの?」

俺は、名前を名乗る。

「あっ俺の名前はカイトっていうんだ」

俺がそう言うと目の前にいたその女性の目つきが変わった。そしてその目はどこか懐かしいような感情が見え隠れしているように見えたのである。

(んーと。どうすればいいんだろうな。正直言ってここまできておいてあれだけどこの子たちと関わるのはかなりリスクが高い気がする)

「えーと」

「あぁ、別に何も言わなくていいの。私があなたの質問に答えるから。それであなたはこの国の者よね?私は違う国から来た者だからあなたの国の事情はよく知らないんだけど」

「ああ、俺は『竜人国』の生まれだ」

「へぇ〜そうなんだ。じゃあなんでここにきたの?」

俺はその質問に対して、俺はこの質問にはなんと答えようか悩んだ。そして考えた結果、結局嘘をつくことにした。

(まぁ別にこの国にきた目的が特になかったしこの国の住民もそこまで危険視されていないはずだ。それに俺もこの国が『勇者』という存在をどのくらい重要に考えているか分からない以上、俺も『勇者』の居場所については知らないふりをした方が都合がいい)

俺は、その問いに対して俺は『竜人国』にある『龍山』にある『ドラゴン神殿』の封印を解きに行く途中でこの街を訪れたと説明する。

「そう。なら、あなたの目的はこの『ドラゴン』の住む『ドラゴン神殿』というところに行きたいのね。それにしてもよく一人で行こうなんて思ったものね」

俺はその言葉を聞き、やはり俺以外にも誰か『竜』と戦える人物が存在しているのだなと改めて思う。俺はその質問に対して俺自身もどうしてその場所にいきたいと思っているかを答えた。

「そうだな。理由は分からないけど、何故かそこに行かないとダメな気がするんだよな」

俺は『龍神国』に行かないといけなという思いがあった。それは多分、この『竜』が住んでいる『竜人国』が、『龍神国』と同盟を結んだ国だからだろう。

それから俺はしばらくの間、この女性たちと色々なことを話すことになるのだが、その内容はこの世界に存在している生物の強さについてだった。その会話の中で俺の予想していた通りこの世界では、この世界の生物の全てがかなり強力な個体が多いことが分かった。

(やっぱり俺のこの世界の認識は正しかったな。そしてこの二人から聞いた話から、俺はこの世界についてある一つの確信を得ることができた。

この世界では、強いものが弱いものを従えるという構図が出来上がっている。その事実を知った時に、この世界で最強であると言われている存在は間違いなく魔王だと言うことがわかった。

そもそも、俺が元の世界で生きていた時代に『魔王』がいたという話は伝わっていなかったのだ。だからこそ俺も魔王を倒す為には、俺以外の誰かが倒すしかないと思っていた。しかし、俺は元の世界にいる間に魔王が既に討伐されている可能性を考えていなかったのだ。だが今になって考えてみると、確かに魔王がいるという情報を俺の元いた時代には全く伝わっていないのだ。そのことから考えると俺がこの世界に来るよりも前、少なくとも十年以上前に魔王が倒されていたと考えるのが普通だろう。そうなれば必然的にこの世界最強の存在になるのは、その倒されたはずの『魔王』ということになる)

俺はその女性との話が終わった後にその女性と男の人の自己紹介を聞く。そしてその男の方が、先ほどまでの不愛想だった態度とは変わってとても丁寧に対応してきた。

俺はその男から、ここがどこなのかを聞いた後で、ここの人たちに迷惑にならない程度にこの街を探索することに決めてから、早速街を歩くことにするのであった。

(ふむふむなる程な。俺の想像以上に色々と発見があって面白い街じゃないか)

俺は街の散策をして色々と分かったことがあった。まずこの街は、魔族の中でも『悪魔族』、『亜人族』などの一部の特殊な種族の治める領土の中に存在する街のようである。

(なるほど。ここは『魔族』の領土内にある街ってわけか。つまりここは魔族の街って訳ね)

俺は、魔族の領域であるにも関わらず人間であるこの俺を普通に受け入れてくれたこの都市に、かなり感謝した。俺はこの世界において、人間族である『ヒューマン』と魔族である『デーモン』や、『リザードマン』のような見た目的に他の『人間』とは違う外見をしている『モンスター』の3種類しかいないと思っていた。俺はその『モンスター』が街に普通に歩いている時点で、その前提が崩れ去ったことを自覚した。

そしてその事実に一番驚かされた。

(まさかこの街に、こんな風に人間の姿とほとんど変わらな容姿をした者たちが存在するなんて)

そしてこの街に来てすぐに気づいたことがある。この街には人間がたくさんいて、その中に普通の服を着て生活をしている普通の『エルフ』と、『ダークエルフ』と、あと『オーク』が一緒に暮らしている。そして、俺はその街の様子を眺めながら街の中にあった店で、食べ物を購入している。俺はその店に入り商品を手に取った瞬間に、俺は自分が何を見ているかを理解してとても驚いた。

俺がその商品を見ていた理由。その店の棚に置いてあった物は紛れもなく『リンゴ』だったのである。そして、それを確認してすぐに俺は理解することができた。俺は、もしかしたらこの世界に俺と同じ異世界から来た奴らがいることに。俺はその店を出ると今度は武器屋を見つけそこでも俺はあるものを見つける。

(この剣も見たことのない材質の剣だ。おそらくこれが魔鉱石というもので作られた金属なのだろう。俺はこの世界で他の人間の使う魔法を一度も見ていないのに、どうして俺は魔力を感じ取ることができるのだろうか。俺は今までずっと疑問に思っていた。しかしその理由がわかったような気がした。俺の感じることができる感覚というのはどうやら元々この体の持ち主であったカイドのものだということなのだ)

俺の体がカイトのものだったのなら他の人間の使う魔法やスキルの気配を感じることが出来てもおかしくはないのかもしれない。

それから俺は、この街に滞在し続けているが、特に大きな問題を起こすこともなく、平和に過ごせていた。ただ、その問題というかトラブルは別のところで発生し始めている。俺が、冒険者ギルドの掲示板を見に行った時のことだ。俺がその建物に入ろうとすると、その入り口から一人の少女が出てきた。俺は、その子の姿を見ると少しびっくりしたがその少女もなぜか俺の姿を見るなり驚いていた。俺がその少女の顔に見覚えがあるなと思った時にあることに気づく。その特徴的な青い髪の毛に俺は驚きを隠せない。その髪の色は、元の世界で一度見たことがあり俺はよく知っていた。その女の子の年齢は俺の妹と同い年くらいだと思われるのだが、その少女が身に纏っている雰囲気は明らかに妹のソフィとは違って見えたのである。その独特な存在感に俺は圧倒されてしまった。その女の子は、その青色の長い髪を揺らしながらその場を走り去っていく。俺は、なぜこの女の子が自分の妹の名前を知っているのかを不思議に思いながらも俺は、冒険者ギルドの中に入る。

「すみません」

「はい。どうかなさいましたか?」

受付の女性はいつものように俺の対応をしてくれる。俺は掲示板の前で立ち止まり何か依頼を探すような仕草をする。しかし俺は依頼を受けに来たのではなくてこの場所がどのようなところなのかを知りたかっただけだ。

俺はこの街に入ってからというものの毎日のように様々なところに行っている。そしてその度にその場所で色々な発見をしていたのだ。そして今日もその例外ではないようだ。俺がこの街に入った時はその建物の造りからして明らかに『帝国城』などよりも、技術力が優れているように見えたので、どこかの貴族の領地かなと予想してその貴族の名前は何という名前の貴族たちなんだろうと俺は興味があったのだ。

「あの、すみません。ここの領主様のお名前はなんていう名前なんですか?」

「領主さまの名前をですか?申し訳ありません。私どももそこまで詳しいことは知りかねるのです。でも、その質問は私たちの仕事内容に関係していますよね?」

その女性は俺に対してそう尋ねてきた。どうやら、仕事の内容については知っているらしい。だが、この質問の意味をちゃんとした意味まで読み取ってくれるということは、俺がこの街で得た情報によるとやはりこの女性はかなり頭の良い部類の人なのだろう。それに俺は気づき少しばかりこの人に好感を持った。だから、俺は素直な気持ちをそのまま言葉にした。

「そうですね。あなたの言う通り、これは仕事とは関係ないかもしれません。ですがどうしても、ここで暮らす人たちの生活について俺はとても関心があるので是非あなたから話を聞いてみたいと思いまして」

俺はその言葉を聞くとその人は、表情を変えずに答えてくれる。

「わかりました。それなら、私の休憩時間を使って少しだけお話しさせて頂きますね」

俺はその女性が休憩時間の間だけということで、この街の領主のことを説明してくれるという。それから、俺はこの世界で自分の生活の基盤となっている『冒険者』としての仕事をしながらこの女性との会話を楽しんだ。

俺は、その女性と別れた後で再び掲示板の前に行き、何か面白いことはないかを確認する。すると一つ面白そうな依頼を発見する。その内容は、この街に新しく来た商人の護衛の依頼だった。

「なるほど、この『竜人国』にも『魔王軍』の魔の手が差し伸べられてきているということか。そして俺もこの国の出身である可能性が高いってことだよな」

そして、この依頼を受けると決めた俺がその詳細を聞きに向かうために、依頼主の元に訪れることにする。

そして俺はその護衛の商人から話を聞いた。その話は確かに、この街を出発する時には聞いていたのだが、その後の出来事によってその話の内容が変わってしまっていたのである。

そして俺は、この街を出ることを決めた。そしてその出発の時間も迫ってきた頃だ。その商人の男性はこう言って俺に話しかけてきた。

俺は今現在、『帝国領』に向かっている馬車に乗っており、その男性から色々な話を聞いていた。その中で、その男性が最近あった出来事について話すことになったのだ。その男性は、先日起こった事件の事について語り始める。それは俺にとって非常に重要な話でもあった。なぜならばそれは、俺がまだ体験していないはずの過去の出来事だったからだ。俺はその男性の口から語られる事実を聞くとすぐに理解することができた。この世界が俺がいた世界と全く違う世界に繋がっているというその真実を俺は知ることができたのだ。俺はその話を最後まで聞くと、この世界に来る前に聞いた『神』と名乗る人物の声を思い出す。

(なるほど。俺が元の世界で死んでいるという情報を事前に与えられていたわけか。それでこの世界に連れてこられて、元の世界では生きられなかった俺がこうして『魔王』を倒して欲しいと願われた訳なんだな。そして、その願いは叶えられたというわけか。つまり俺の今のステータスはこの世界の基準では相当強い部類に入ってるというわけだな)

俺は、自分が持っているその力に少し自信がついたがそれでも俺より強い人間はたくさんいるだろうからもっと努力が必要だと自分に言い聞かせて気持ちを切り替える。そして、その俺の実力がどれほどのものだったのかを確かめるためにあることをする。

そのある行動とは『スキル』を使用することだ。俺は【鑑定】で相手の能力を知ることができないかと考えたのである。

(よし、やってみるか)

俺は、目の前にいる男に向けて『解析』を発動した。

「『魂共有』」

俺がそういうと俺と男の視界にはお互いのHPバーとSPバーとMPバーが表示されるようになる。俺はその結果を見て驚愕していた。

そして、このスキルの使用後に分かったことがある。俺が今まで見て来たこの世界の人々は全てレベルが50前後であること、そして『モンスター』もレベルが高い者は100超えの者がたくさんいることに。

俺は今まであまり気にしていなかったので気づかなかったが、『モンスター』の中には『ネームドモンスター』と呼ばれる特別な存在がいる。例えば、俺の目の前にいた男がそうであったように『ゴブリンロード』とか、『オークキング』などである。そして俺がこの世界で初めて戦った魔物であるオーガがそうだったのだろう。しかし、今回の件を通して俺にはこの世界の『ヒューマン』のレベルの高さがよく分かった。

(どうやら俺は本当に強くなっていたようだな。俺が倒したゴブリンが持っていた称号に、『魔獣王』ってのがあったからな)

『魔獣王』という称号は、『魔獣族』という種族がもつものであり、『魔族』がもっていない称号だそうだ。

そして、俺はまだ確認しなければならないことがもう一つあった。俺には【鑑定無効】があるのだが『鑑定士』の称号をもつ人間であればその効果を打ち消すことが可能だった。

俺は早速それを確認するために、まずは目の前の男にもう一度同じスキルを使用する。今度はこの人が『奴隷商人』『調教師』、『盗賊の極み』などを持っているかを確認するために使った。結果は見事に、全てを持っていてこの人はこの世界でも有数の職業の持ち主だということがわかった。俺はそんな彼を見ながら考える。

俺はこの世界で冒険者として生きていくことを決めるが、これからどうすれば良いのかを考え始めた。

「俺も冒険者登録をしてみるかな。でも俺の場合、どの依頼を受けたらいいんだ?俺の場合は普通のスキルを持っていないから普通にクエストをこなすことも難しいかもしれないよな。それにまだ俺の冒険者ランクは最低のGランクのままだしな」

「冒険者になりたいなら俺のところにくればいいぜ!」

その声が聞こえたのでそちらのほうを向いてみると、俺と同年代ぐらいの赤髪の少年が立っていた。その顔つきからは活発的なイメージを感じる。そして、この子から感じ取れる魔力の量はかなり多かった。そしてこの少年が俺の求めていた条件を全て満たす人物だった。その見た目からして、彼は『勇者』だと思った。その根拠は、彼の手から感じられる膨大な魔力の波動だ。俺は、彼が発している魔力の質が自分や俺の仲間たちのそれとは違うのにすぐ気づくことができた。そして、彼は続けてこう言ってくる。

「お前は冒険者になろうとするんだろ?じゃあ俺たちと一緒にやらないか?実は仲間を探していたんだよ。でもその条件に合う人材がいなくて困っていたところなんだ。だから俺に力をかしてくれないか?」

「俺に仲間?俺を誘ってくれるのか?まあいいだろう。別に問題ないしな。俺の名前は、アベックニクスだ。よろしくな」

俺がその言葉を発すると、目の前の青年が少し不思議そうな顔をしていたが俺の言葉を肯定してくれたようだ。

「ああ、こちらこそな!俺はレイ=ルマロン。『竜人国』の現『竜王様』の息子だ。ちなみに『竜姫』っていう名前の娘もいるぞ。今はいないけど、そのうち会えると思うから仲良くしてくれ」

その自己紹介を聞いた瞬間に、俺の中に驚きが生まれてしまった。この世界で、『竜族』が生きているということは前世の世界でも珍しい話だったからだ。だがそれよりも驚いたのは、『竜王』の子供に、俺が出会ったことに対してだ。

俺も自己紹介するべきなのだろうとは思うのだが、俺の名前を聞いてこの青年は何を感じているのだろうか?そして、この反応を見るとどうやら俺は彼に受け入れられることに成功したようである。ならば、俺は素直にそのことを喜ぼう。

そして、俺は、目の前の人物に俺の仲間を紹介しようと思いついてきてもらうことにした。

俺は、これから仲間となる者たちを集めようとその場所に向かって歩き出す。俺はこれから向かう先について説明を始めた。これから向かう場所は、この街に新しくやってきた商人たちが利用する宿泊施設である。そこには様々な施設が存在していてその中には酒場もあったりする。そしてそこで待ち合わせをしているので俺もその中に加わるのだ。

「それじゃ、行こうか?」

「おう、分かった」

そう言って俺たち二人はその場所へと向かう。その場所へ向かう間に、俺はレイに気になったことを聞くことにする。それは、レイがどんな魔法を得意としてるのかを確認するためだ。だから、俺はそれを尋ねてみた。

「そういえば、さっき言ってたことだが、レイはどうして、他の人に声をかけずに一人でいたんだ?」

「ん?一人の方が動きやすいだろ?俺は、仲間がたくさんいるよりも、一人で戦っているほうが好きなんだよ。あと、この『国』を早く出たいという気持ちもあって仲間を探す暇なんてなかったし」

俺はその言葉を聞けば聞くほど納得してしまうような内容であったので特に何も言うことはできなかった。

俺と、レイがしばらく雑談を交わしながら目的地に向かうこと約10分後だ。目的の場所にたどり着いた。すると、既に先に来ていた人物から俺らに声を掛けてきた。

その人物を見た俺は、その姿を見て驚いてしまう。なぜならそこに居たのはなんと、『魔人族』の女性であったからだ。その女性の姿は、銀色の美しい髪の毛を持ちとても整った容姿をしていてまるでモデルかと見間違えるような美しさであった。

そして俺は彼女に目を奪われていたがすぐに気を引き締めると彼女に向けてこう告げる。

「はじめまして。『魔王軍』の魔の手から世界を救うべく『勇者』と共に旅をすることを決意しこの地にやって参りました。アベックニクスと申します。今後共よろしくお願いしますね。貴女の名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?俺は『ヒューマン』なのですが、『魔王軍』の奴らの所為で今はこのように無能扱いを受けているんです。もしよかったらいつか、そいつらを皆殺しにして俺のことを認めさせてくれませんか?俺の力を使ってくれてもいいですし、協力できることがあればいつでも仰ってください」

俺はそんなことを言うと、俺は、その女性をじっくり見てその美しさから目が離せなくなっていたのだ。俺はこの女性がどのような存在なのかを見極めなければならないのだ。そして、彼女がその質問に対し、答えてくれた。その返答は意外にも簡単なものだった。

彼女は『元女神』であり、今は『魔神様』にその身を捧げた身であるということだ。しかし、俺のスキルである【解析】はその情報の正確性を疑ってしまうくらいに凄まじいものであった。なぜならその彼女の称号が、俺のスキルによって表示される情報が間違っているのかと思ってしまうようなものがいくつも表示されたからだった。俺はそれを確認するために再びその女性のことを解析しようとすると、どうやら俺の『魂共有』が解除されたらしい。俺は自分のスキルの使用限界時間がきたのかと思ったのだが、俺はその理由を理解することになる。なぜなら『魔人族の神』を名乗るものが突然現れたのだから。そして、その男はこう言い放った。

「私は『魔神』だ。『魔人族』の民たちよ!我らの『主』に尽くしなさい。貴方たちの『主人』は私ではなく『魔王』なのですから。『魔王』に全てを捧げるのです。それ以外のものに価値などありません」

そんな言葉を聞き終えると、『魔王軍の使徒』の証である真っ赤な腕輪をしていた者全員が膝をつき祈り始めた。その姿をみて俺は思わず笑みがこぼれてしまっていた。その『魔人族』たちを眺めていた俺にその『魔人族の神様』から声がかけられてくる。

「貴方に私の加護を与えましょう。それと貴方に一つだけ伝えておくことがあります。私が、今から授けようとしている力には副作用があることを頭に入れてください。その副作用とは貴方の命が削られていくということになります。つまり、その力を一度使ってしまえばその者は死ぬということです。その力を使えるようになるのに必要なのは【呪印耐性】のLv9以上のレベルであるということを覚えておいてください。そして、その【魔人の加護】が使えるようになるまでは、普通の生活ができる程度にまで身体能力が落ちていますのでそこは注意しておいてください。ではいきますよ。【祝福】」

俺の体全身に激痛が生じた。俺は意識を保つことができなくなりその場に倒れこむのだった。俺の体が何かに引き裂かれそうになるのを感じながらも俺はなんとか持ちこたえることに成功する。そして俺が見たのは自分の体に刻まれている赤い刻印のような紋様だった。その光景を見ながら俺は意識を失っていく。

「『魔獣使い』の称号を獲得できましたよ?これで貴方のレベルを上げることができるようになります。これからは、もっと強くなれるはずですよ?それじゃぁこれからのご活躍を期待していますよ?これからは、貴方の活躍次第で、世界のバランスが大きく変化していきますからね?期待していますよ」

(一体、この世界で何が起こっているっていうんだ?なぜ『異世界人』であるはずの俺の前にこの世界の人外の存在が現れたり、この世界の『魔王』と思しきものが動き始めているんだ?)

俺は、自分の体を回復魔法で癒すと立ち上がり周囲を確認し始めた。まず最初に視界に入ったのはレイの姿だ。

そして次に『竜族』の女性がいた。そして俺はその女性の方を見てみることにする。しかしそこで、その女性の様子がおかしくなっていたことに気づいた。

その女性は、なぜか苦しそうな表情を浮かべていた。しかし、俺は、その原因が何であるかがわからなかった。俺は、この原因を知るためその女性のことを観察し始める。

そして俺はようやく気づくことが出来たのだ。原因は俺が、先程授かった『魔神の呪い』と呼ばれる代物にあるということを。俺がこの呪いについて知ることになった理由は簡単だ。

その女性が、俺に向かって話しかけてきたからであった。

「貴方のおかげで、私たちの願いをかなえるための力が手に入りました。ありがとうございます」

俺は、その言葉で理解することができた。俺のせいでこの女性たちの運命を大きく変えてしまったことを。

俺はそのことを後悔しながらこう告げる。

「大丈夫ですか?お怪我とかはないんですか?」

「いえ。あなたのおかげで私はこうしていられるのですから」

俺はそこで一つの違和感を覚えた。なぜなら目の前の彼女は普通ではないからだった。それはまるで『魅了』をかけられているかのようであり俺の心の中の嫌悪感を増幅させてしまう。

そして俺がその違和感に気づきそのことを聞こうとする前に俺の前にいるその女性とは別のところから新たな女性が現れた。そして俺は、その女性の顔を見ると驚いた。それはなぜかというとその女性は、『聖魔教団』に所属しているはずの女性だったからだ。しかしその女性がここに存在しているということは俺の中で二つの考えが生まれてくる。その女性は『聖魔教』を裏切ったのかというものと『勇者』とともに行動をしていたのにもかかわらず『魔王軍』に与する行動をとったのだろうかという考えである。そして、俺がそう考えているうちにその女性が口を開いた。

その口から放たれたのは意外な事実だった。なんと俺にそのことを告げると同時に彼女は俺に謝罪してきたのだ。

「ごめんね?実はこの子は洗脳されていたみたいだからさ、助けたついでに仲間にしてみたの。ほら、『勇者』のことも好きになってたわけだしさ。でもやっぱり『勇者』の仲間になるよりは、『魔王軍』にいた方が、いいかなって思ってさ」

俺はそんな彼女の言葉を聞いていたら、ある疑問が俺の中に生じてきてしまった。それはどうして『聖魔教』に所属しているはずの彼女が俺が倒したはずの『元女神』と共に行動をしているのかということである。俺にはこの『元女神様』はそこまで強いようには見えなかったのだ。

そしてその女性の言葉から、俺は一つの仮説を立てた。

「あんたら、『魔王』側の『神族』だよな?」

その俺が発した一言により場に静寂が訪れた。だがそれも数秒のことだった。なぜなら、突如空間が切り裂かれたかと思うと中から一人の男が出てきたからだ。

そしてその男のステータスを確認した俺は驚愕することになる。

ーー【種族:魔神】ーー【名前】『アベックニクス』

【職業】『元女神』『元大悪魔(堕天使)』

【生命力】100000000 【魔力】12000 【攻撃力】60000000+1000/100000000 【防御力】5000 【素早さ】4500 【魔攻力】3700 【魔防力】3500 【知力】5900 【運】1050 【装備】

《名刀 天羽々斬》

「俺は『魔王』の使徒だ。貴様らは俺の手で葬ってくれる!」

俺が『アベックニクス』のことを見つめ続けていると、彼が突然、俺に斬りかかってきた。

俺は、その一撃を間一髪で避けたがその威力はかなりのものだったのでかなりの衝撃を受けてしまい後ろに後退させられてしまう。

(これが、あの時戦った『アベックニクス』と同じ存在だって言うのか?ステータスが明らかに高すぎるぞ。一体、どういうことだ?あいつは確かに俺の【解析鑑定】で『元女神』で『魔神』であることも確認できた。しかし今の彼はどう見ても普通の人間のように見えるしそれに『魔人族』である彼女よりもレベルが高くなっている気がするんだがどう考えてもおかしすぎるだろう。これは、いったい何が起きているっていうんだ?)

俺はそう心の中で思いながら、【魔神】に剣を振るって反撃を開始するのだった。

俺の攻撃を、その【魔神】は難なく受け流していく。そのことに少しばかり苛立ちを覚えながらも冷静に対処していく。しかし相手の強さも未知であるため俺にはまだ不安があった。俺は、【解析者】の力を使い【魔神】の能力を調べようとしたのだがその瞬間、俺は強烈な頭痛に襲われてその場から吹き飛ばされて転がってしまうのだった。

(くそっ!こんなときになんていう攻撃なんだ。全く意味がわからない。俺は一体、どんな敵を相手にしているっていうんだよ。これじゃ、まともに戦うこともままならないじゃないか。せめて、敵の能力の詳細さえわかれば対策も立てられるはずなのに。くっ!仕方がない、今は目の前の戦いに集中するしか方法はないな。それに、この感じだとこの敵が本当に倒すべき相手のようだし。俺が今できることは少しでも多く情報を引き出していくしかないな。俺はそれからしばらくの間『魔神』に攻撃を仕掛け続けたが、一向にその情報を引き出すことができなかった。俺は焦っていた。このままでは確実にやられてしまうということを確信してしまったからであった。だから、俺は賭けに出ることにした。それは俺の奥の手を使うことである。奥の手というのは俺が最近使うことが出来るようになった固有スキルの【呪印無効者】を使うというものである。

そして【呪印耐性】のLVを9まで上げることに成功した俺は、【呪印耐性LvMAX】という技能を獲得してそのスキルの効果を確かめるため、まずは自分の体の状態を確認することにする。その結果、俺の【呪印耐性】のレベルが9になっていたこともあり特に問題なく効果を発揮してくれそうだと俺は思った。

しかしそこでまた、【魔神】の方の攻撃の速度が一気に上昇した。俺はなんとかそれに対応していくことができたがそれでもやはり【呪印耐性】のレベルが低いからなのか、ダメージを完全には抑えることができずに、少しずつダメージを受けてしまっていた。そのため、俺の体はだんだんと血に染まっていく。しかしそこで、俺はとある異変に気付いた。俺の傷がどんどん癒えていっているのである。俺はそのことを不思議に思いつつも、そのまま攻撃を続けた。するとついに、【魔神】に隙ができてしまった。俺はその一瞬を見逃さず『神龍化』をすることによって自分の身体能力を大幅に向上させた。そして俺は、【魔神】の心臓部分に目掛けて渾身のパンチを繰り出した。俺が繰り出した拳は見事に命中し、それと同時に【魔神】の体が爆散した。

そして、俺は地面に膝をついてしまった。その反動のせいである。

俺は自分のステータスを確認してみるとレベルが30にまで上がっていることに気づいた。俺はそれだけではなく他にも様々なスキルを獲得することに成功していた。その中にはとても有益なものもあったが、中には、俺にはよく分からないものもあったため、一度整理するためにステータスを確認しておく必要があると思い俺は立ち上がるのだった。

俺はまず自分の獲得したものを整理し始める。俺が獲得したのは以下のものである。

『限界突破』

『成長促進』

『自動回避』

『完全防御』『全武器使用可能』

『魔法使用不可』

俺はそこで、あることを閃いた。そして【解析者】の力をフル活用することにする。俺が思いついたのが何かを解明するためである。そして俺は、この世界の仕組みについて考察を始めた。そして、ある結論に達した。俺はこの世界に存在している生物たちがなぜ、俺のように【進化】をするのか、その理由を突き止めたのである。そしてこの世界の生き物たちの体の構成を【解析者】の技能を駆使して確認することで、この世界の理を理解したのであった。

俺はこの世界の真理を理解したときに俺は絶望した。なぜ俺がこの世界を創造したはずの女神を殺したのか、その理由について理解したからだった。

この世界には、『魔物』、『魔獣』といった生物がいることは俺は知っていた。

俺はそこで、あることに気づく。『魔物』がなぜこの世界で生き続けられるのか、そして、『魔族』だけがこの世界でも普通に生きることができる理由を俺なりに推測した結果、俺はある一つの可能性を見出したのだった。そして俺はそのことを確かめるために【解析】を使用することにした。

そして、【解析者】の鑑定結果を俺は見て絶句してしまうことになる。そこには、【魔神】の名前が載っていたからだ。そして俺がその名前を凝視しながら考えこんでいると俺が先程倒したはずの【魔神】の分身が現れたのだ。

俺は驚き、咄嵯に反応し、反撃しようとした。しかしそのときには、もう遅かった。【魔神】はその圧倒的な力をもって俺に攻撃を加えたのだ。その攻撃をくらった俺はかなりの傷を負ってしまうことになった。しかし不思議なことにそれほど痛みはなかったため不思議に思ってしまったのだけれどそれもすぐに解消された。なんと、俺の腕は【魔装召喚】で呼び出した剣に吸収されていたのだ。その事実を知り驚愕している間に【魔人】は再び攻撃を仕掛けてくる。それをどうにか受け止めた俺は【魔人】のことを弾き飛ばすことに成功するのだったがその衝撃は予想以上のもので俺はその場に崩れ落ちることになってしまったのだった。

(まさか、『魔王』と同じ特性を持っていてしかも分身を残せるだなんてな。どうやらかなり厄介な敵に出会ってしまったみたいだ。だけどこの感じだとまだ本気を出しているようには見えなかったしこれからさらに強くなる可能性もある。ここは逃げるのが一番賢明だと思われるけど。この状態で逃げられるとは思えない。だったら、倒すことに集中しよう)

俺はそう決めると、今度は俺の方から攻めていくことにする。俺は『神速移動』によって、瞬時に間合いを詰めて、【魔神】に対して全力で剣を振り抜いた。しかしその攻撃は簡単に受け止められてしまう。俺はそこで『魔神』の体に目を向けると、どうも俺が斬った部分は完全に治っているようで俺は少し驚いてしまう。そして俺は『魔神』と打ち合ったりしていたのであったが徐々に押され始めてしまいついには『魔神』に押し切られそうになってしまう。

「なかなかやるではないか、人間にしてはかなり強いほうではないだろうか。我輩もそれなりには自信があったがこれほどまでに強いとなると我の配下に加えたいという欲求に駆られそうになるぞ。お前のような男こそ、我が主にふさわしそうなのだよ。さあ、私のもとに来るといい。その強さと器量ならば十分に主に相応しいだろう。さぁ、早く私のもとに来るんだ」

「悪いんだけどね、俺は君のこと全然知らないしそんな話に興味もないんだよ。それに君が何を勘違いしているか分からないけど、俺と君は対等な関係じゃないんだよね」

「貴様っ!たかが、下等な人間がこの『魔神』である我を舐めるとはいい度胸だ。貴様を殺せばあのお方の怒りを買うかもしれないが仕方があるまい。貴様を八つ裂きにしてくれるわ!」

俺は【魔神】に攻撃を仕掛けるのだが、ことごとくいなされてしまう。そのことにイラついたのか【魔神】の攻撃が次第に雑になってくる。そのおかげで攻撃を避けやすくなったため俺はなんとか耐えることができたのであった。それからしばらくは俺が一方的に攻撃を加える展開が続いていたのだが突然、俺が攻撃を受けてしまう。そしてそのまま俺は地面に吹き飛ばされてしまった。俺は、その状況を見て慌てて【魔神】の姿を【神眼】で確認する。どうやら【解析者】の技能でもしっかりと【解析者】の力で得た情報を見ることが可能になっていたようであるため便利だと思うのだった。

【解析者】によると【魔人】の弱点は、やはり『脳』だということが分かったのである。だからそこさえ破壊すれば確実に倒せるということもわかった。しかしそれは、俺にとってもチャンスだったのである。なぜなら、今までは【神刀 天羽々斬】による一撃を繰り出すしかなかったが今はそれが【呪印無効】のおかげでできるようになっていたのだから。

そして【魔人】との戦いの中で、俺はある違和感を覚える。俺の攻撃を、完全に防いでいるように見えたのに俺の攻撃を食らう度にダメージを受けているようなのである。しかし、俺の攻撃に【魔素】が宿ってからその現象が起こるのである。そして俺はようやくこの世界の仕組みを理解することが出来たのである。俺はそのことから『神龍化』して【魔神】を攻撃することにする。これで俺は『龍人族』になったのだがそれでも【魔神】には全く歯が立たずに攻撃を加えられているという現実に俺の苛立ちはさらに高まっていく。それからも何度も俺は【魔神】に斬りかかり続けついに【魔神】を倒すことに成功したのであった。

俺は【魔神】を倒し終わったあと、すぐさま自分のステータスを確認する。しかし【魔神】を倒してレベルが上がったはずなのに俺のレベルに変化がないことに気づき疑問を覚えながら【魔神】の方を確認すると、そこに倒れている【魔神】の姿があった。

そして、そこで俺の体は限界に達し意識を失う。

俺の体が限界を迎えていることに気付いた瞬間に俺は『魔神』と【呪印】の同時発動を試みた。その結果、なんとか成功することができたがそれによって俺は急激な眠気に襲われることになったのである。しかしここで、俺は【魔神】の【呪印】の効果を知ることができた。俺が『神龍化』して【魔神】を倒したことにより俺のレベルは一気に上昇しており【神格】のランクは5まで上がってしまっていたのだ。

俺の【呪印】にはレベル上限がありレベル1ごとに、一つの効果を獲得できる。そして俺の獲得した効果はというと『進化促進』『全ステータス増加』である。その二つの能力により、俺は一瞬でレベルを30まで上げることに成功すると同時に、【進化】を発動したのだった。

そこで俺が目を覚ますと、目の前に【魔神】が立っているのが見えたのである。

「おい、小僧よ。貴様に言いたいことがある。我を殺すことができて良かったと喜んでいるかもしれんが実はそうではなかったのだよ。お前には残念なお知らせだが、お前の魂を消滅させてもらった。それでこの世界に新たな『魔神』が誕生したのだった」

「へぇ〜、面白いこと言うんだね。俺が死ぬ?冗談を言うならもっと面白く言ってくれよ。そんなわけないだろうが」

俺は笑いながらも威圧を込めて、【魔神】に言うと、

「ふははは、そう怒るな。我は確かに死んだ。それこそ間違いなくだ。これは事実だ。貴様がどんなに強かろうと所詮は人間の肉体のままこの世界で生きてきただけのこと、限界というものは必ず存在するのだ。つまりこの世界では人間は生きていけない。そしてその限界を超えてしまえばその者の死は免れないということだ。しかし貴様の場合は特別だ。なぜなら貴様は我らにとってとても都合が良い存在であると気づいたのだ。なぜ分かったのかといえば貴様の体内にあるものが原因なのだがな。その証拠をこの眼で見たのだ。その体内に存在する【魔力回路】こそがその理由だ」

「へえーそういうことだったのか。俺の中に何か特殊なものがあるのだろうとは思っていたけど。で?それがどうしたっていうんだよ」

「まだ分かっていないようだな。良いだろう教えてやる。その【呪い】によって強化された身体能力、さらには『魔剣』や【呪印】など、それらは普通の生き物では不可能だと言えるほどのものだろう。そしてそのどれもは人間には扱えない力だということは一目瞭然だろう。だからこそお前を我が主にしようと思ったのだ。お前ならばその全てを使いこなすことが可能かもしれないと思ったのだ。だからその全てを今一度返してもらうぞ」

その【魔神】の言葉を聞いた俺は咄嵯に【魔装召喚】を使用すると、俺の中から先程手に入れた【神刀 迦具土】と【聖弓 草薙の刃】を取り出し、構えを取ると【魔神】に攻撃を加えるのだった。そして俺は【魔神】に一矢報いることにできたのだがすぐに【魔神】は反撃に転じ俺の体を貫いた。

俺はすぐに【魔人】の攻撃を【身体強化】と【神装】でどうにか防御するがその攻撃に俺の体力は大きく削られていく。そしてその【魔神】の反撃のせいで俺の体からは血が大量に噴き出し、地面に横たわることになった。その様子を見ていて、俺は【神龍化】を解いて【魔人】に対して【魔装】による攻撃を行うが【魔人】はそれを簡単に受け流していく。

(くそっ、これでもダメなのか)

俺が自分の力不足に嘆いていると急に、【魔神】が攻撃を仕掛けてくるのを止める。俺はそのことに違和感を覚えた。

(いったいどうしたんだ?)

「さすがだな。貴様は本当に規格外だな。この我がこうも一方的に押されるだと。やはりこの程度か」

その【魔神】はそう言って笑う。俺はそれに対して何も言わず黙っていた。そのことが気に障ったのか【魔神】はさらに続ける。

「貴様ももう諦めていいんじゃないか。我はこのままこの迷宮にいるのもいいかもしれないと思っている。そして我が貴様の魂を取り込んでやろうと思う。どうだろうか?」

「何が言いたいか全く分からないんだけど」

「ほう、分からなかったのか。我と同化すればその【魔眼】は我の能力となるということだよ。さらに我と融合することによって我と同等の力を手にすることもできる。さらに我は『神』と融合した身、その力を一部だけでも使えればかなり有利に戦えるはずだ」

「俺にお前みたいな気持ち悪い存在に乗っ取られるなって言っているんだ」

「なんでだ!こんなに素晴らしい提案は他にないぞ。なぜ、それを断る」

俺はそんな【魔神】に対して、【呪印】を発動する。そして【魔神】は、俺に対して文句を言っていたがそんなことはお構いなしだった。そして【魔神】に俺は告げる。

「俺は俺以外の誰かになんかなれるつもりはない。だから絶対に嫌だね」

俺が【魔神】に対して、【呪印】を使おうとしたのだがその直前に俺は動きを止めてしまう。そしてその【魔神】から感じる圧倒的な存在感と恐怖に俺は冷や汗を流す。

「そうか、やはり人間という種族は愚かだな。せっかく我から逃げ道を用意してやったというのに自らその道を自ら断ちやがって。後悔しても知らないからな」

その【魔神】から発せられるオーラが急激に高まっていく。それと同時に俺は【呪印】による支配から逃れようとする。だがその試みは失敗することになる。どうやら、俺の力は【魔神】には及ばないようで俺は【呪印】の支配下から逃れることができないでいるのである。俺はそれでも【呪印】に抵抗するが俺の意思に反して体が動いてしまう。

俺の体が勝手に動いていることで俺は、【魔神】の攻撃を回避することに成功したがそれでも体は【呪印】による制御が効かない。

「貴様のその反抗的な態度はなかなか面白かったぞ。これで心置きなく殺すことができる。まずは小手調べに『呪縛』だ。これで動けまい、次は何をして遊ぼうかな〜」

俺にそんなことを言ったあとに俺の体の自由を奪うと【呪印】に抵抗しながら俺は必死に考えるが【呪印】の発動を阻止する手段が思い浮かばなかったのである。俺がどうやってこの状況を切り抜けようと考えているとその考えが顔に出ていたのか【魔神】は笑みを浮かべながら、話しかけてくる。

「そうだ、貴様に我からプレゼントを贈ろう」

【魔神】はその言葉を口にすると、【魔神】は指を鳴らす。

「貴様にはこれから我の眷属と戦ってもらう、もちろん貴様の目の前でだ」

その声とともに俺はどこかの空間へと飛ばされる。俺は周りを確認するとそこには俺の想像を遥かに上回る数の【悪魔】がいた。俺はすぐに自分のステータスを確認しようとしたが【呪印】によって俺のステータスを見ることは叶わなかった。

そして目の前にいた【魔神】に質問をぶつける。

「これはどういうことだ?俺を殺すんじゃ無かったのか?俺の目の前で眷属の相手をさせるってことはお前の配下と俺が殺し合うのを見ていろっていうのか?それとも俺に自殺でもしろと言っているのか?」

俺の言葉を聞いて、大笑いをした【魔神】は答える。

「貴様は本当に面白い奴だ。我は、貴様を殺すなんて一言も言っていないぞ。ただ貴様が死ぬか、もしくは貴様が生きるためには、この場に居る全員を殺さなければならないということを貴様に伝えようとしただけなのじゃが。それにこの世界は貴様には少し厳しいだろうと思って我の慈悲の心が芽生えたのじゃよ。だから感謝をするのだな」

俺は、その【魔神】の余裕のある喋り方に、苛立ちを覚える。

「ああーありがとうな」

「それでよい。貴様にこの世界について教えてやろうと我なりの親切心というやつなのだよ。では、この世界のことについて詳しく説明してやろう。この世界を創造したのは、我ではない、その前の前の前の代になる。その時代では人間は奴隷のような立場で生活していたようだ。その時代には【魔王】という強力な力を持つ者が存在していて、そいつが全ての魔族を束ね上げ人類に戦争を仕掛けたらしい。それからはずっとその繰り返しで人間が絶滅の危機にまで追い込まれたのだ。そこで、当時の神がその時代に【魔神】を召喚し、人間の味方になるように命令したというわけだ。その時代は人間の方が強かったらしく【魔神】は人間の軍門に降り、その時代の魔族の王は【魔神】と盟約を結び人間との戦いに終止符を打つことになる。

その時代以降この世界では【魔神】という絶対的な強者が君臨しているのだ。そして、その時代から【魔神】の力は少しずつ強くなり、今の【魔神】が生まれたと言われている。その【魔神】の能力は【神眼】と呼ばれるもので、相手の力量を知ることが可能だ。

ここまで話せばわかると思うが貴様は我がこの【魔神】の力で作り出されたこの世界の駒なのだ。そしてこの世界で【神眼】を持つ者は【魔神】のみなのだよ。そして、この世界で最強の存在である。しかしそれは【魔神】の加護を宿した者のことなのである。そう、つまりお前はこの【魔神】の加護をその身に宿しているということになる。そして、貴様の肉体の内に【神刀 迦具土】と【聖弓 草薙の刃】が存在していることもわかっている。つまり貴様はもう逃れられないということなのだ。そして貴様がこの世界に存在しているのも、貴様を召喚するように命じた神に我が主がいるということを知って、この【魔神】に復讐しようとしているからだ。我はそんな馬鹿なことを考える愚か者を救済するべく、貴様の前に姿を現せたのだ」

俺はそんな【魔神】の言葉を聞いてある疑問を抱く。そして【魔神】の言葉を要約してみると【魔神】が言っていることが本当なら、その【魔神】に【神刀 迦具土】を授けてくれた人は、俺にその復讐を止めるように言って欲しいと思っていたのではないかと考えた。そして、【魔神】がその人のことを主と言ったということはその人こそが、その人が言う【神刀 迦具土】の持ち主だということは確実であると思えるのだが、なぜその人物が俺のことを復讐相手として見ていないのかがわからない。その謎を解明するために【魔神】にそのことを聞くことにした。

「その【魔神】が言っていた神ってどんな人なんだ?そしてお前の主はいったい誰なんだよ」

俺の質問に、【魔神】は不敵な笑みを浮かべてこう答えた。

「我が主には名はない、我はあの方の使いに過ぎないからな。そして貴様のその問いにはこう言おうか。我が主人は、人間でありこの世界の住人でもありそして、この世界で最も優れた人間だ」

【魔神】はそんなふざけた言葉を俺に向かって告げてきたのだった。そして俺はこの瞬間からこの【魔神】と戦うことを決めたのであった。

それから俺たちの特訓が始まる。まずは、マリーさんから魔法と剣術を教わる事になった。そして、アリナとクロエは、二人で模擬戦をしているようだ。

まずは、魔法だが、属性魔法の適正がないと言われたので、とりあえず魔力の操作から始めることになった。俺は魔力を操作するために意識を集中させて魔力を動かそうとするが、なかなかうまく動かすことが出来ない。

そして、数時間かけてなんとか魔力をほんのわずかではあるが動かすことが出来るようになった。

次は剣術だ。俺は木の剣を持ちながら構えを取る。するといきなりマリーさんが襲いかかってきたので、俺もすぐに反撃することにする。まずはこちらから攻撃を仕掛ける。

俺の渾身の一撃を簡単に受け止める。そこから俺は攻撃を続けたのだが一向に有効打を入れることが出来なかった。そこで今度は俺の方から攻撃を仕掛けることにした。俺の放った攻撃をまたしてもあっさりと受け止められてしまう。その後何度俺が攻撃を仕掛けても結果は同じだった。どうすれば良いのかと俺は頭を悩ませる。そしてしばらく考えた後、俺に一つ思いつくものがあった。それはマリーさんの持っている木の盾を利用するというものだ。俺は木の棒を捨てると木の剣に持ち替えて再び彼女に攻撃を仕掛ける。

俺が振り下ろした剣は、マリーさんの盾に吸い込まれるようにして当たった。俺はすぐさまその場から離れようとしたが彼女はそれを許さなかった。俺は無理やりに吹き飛ばされてしまい壁にぶつかってしまった。そんな時ソフィアと目が合った。すると彼女がニヤリと笑ったので何か策があるのではないかと期待したのだが俺の予想通りの展開にはならなかった。俺が立ち上がるとそこにいたのは、マリーではなく、黒いオーラを放つ謎の物体であった。俺は慌てて距離を取りその正体を確かめようとする。そして俺は驚愕した。

「なんでこんな所にお前がいるんだ!」

俺が目にしたのは、この世界に来た日に俺の命を奪おうとした死神のような存在だった。その姿を見た途端俺の体が震えだす。

(こいつはヤバイ、こいつに殺されかけていたせいで体が恐怖で怯えている)

俺はその感情を抑え込みながら必死で冷静さを取り戻すとまずは情報を集めようと試みる。

「貴様は確かあの冒険者どもが殺していたはずだ、それがここにいるという事は、あいつらがお前を殺し損ねたという事なのか?それとも、貴様の仲間が俺をこの世界に呼び戻してくれたという訳なのか?もし後者だとしたら、仲間に感謝しなければならないな。俺がこの世界に戻ることができたのも仲間のおかげという事になるからな」

「ほう、中々頭が回るじゃないか。しかしそんなことはどうでもいい、それよりも貴様が私の事を思い出せていなかった事がとても悲しいよ。まぁそんな些細なことはどうでも良くなってしまうような素晴らしい出会いがこれから起こるのだから別に構わないがな」

(なんか、すごいテンションだな。てっきりこいつのことは死んだと思っていて、この世界に呼び出されたことにも感謝すらしていなかったんだけど。こいつの中では何か大きな変化でもあったんだろうか?)

「ところでこの世界で私と出会う前、どこのダンジョンで死んでいったんだっけ?」

(やっぱり記憶を失っているのか。これは本当に偶然で奇跡が起きたっていう感じなんだな)

そう考えつつも俺は目の前の存在を警戒し続ける。すると、奴は口を開く。

「おい、無視するんじゃないぞ!お前はどこに行けばいいとか分からないの?」

俺は一瞬何を言われているのか分からなかったがすぐに言葉の意味を理解する。

「そうか。お前は死んでいるのにどうしてこの世界の事を知っているんだ?というかお前って誰なんだよ?そもそもお前は人間じゃないよな?それにどうやってここに入った?ここは俺が作り出した場所なはずなのにどうしてこの場所にいることができるんだ?」

俺の質問に死神?のようなものは何も言わず、ただただ不気味に笑うだけだった。

「黙ってないで、答えてくれよ」

俺が少し強めに問いかけてみてもこの自称神の生物が反応することはなかった。

「まぁ良いだろう。私は【魔族】という種族に属するものなのだ。この【魔族】というのは、この世界に存在する魔族のトップ集団のことだよ。そして【魔神】という絶対強者に使えし者たちのことを言う。だから貴様のようなゴミとは違う高貴な者なのだ。覚えておくが良い」

この生き物は、自分の身分を高貴と言い張っていたのである。しかし、魔族などというものがこの世界に存在しているという事自体信じられないことだったので、魔族が偉いと聞いても全く理解ができなかった。しかし、この世界での絶対的な強者である【魔神】の配下だということは間違いなさそうなので、この生き物にこれ以上この世界についての質問を投げかけるのをやめた。

それからこの生き物が話を始めるまで俺が一方的に攻撃を仕掛けることになった。しかしいくら攻撃を加え続けても一向に相手にダメージを与えることができていないようで、俺はだんだん焦ってきてしまった。

そんな状況が続くと次第に俺の動きが鈍くなっていき最後には俺はこの【魔獣】の攻撃を避けることが出来なくなってしまっていた。

【魔神】から【神眼】の説明を聞いた後に俺は、アリナとの実戦形式の訓練を行うことになった。そして今まさに俺と彼女の戦いが始まるところである。

アリナは俺が手にしていた武器を見ると俺の実力を図る為にあることを提案する。

「あなた、素手で戦うタイプよね?なら、私が木剣で戦っても問題はないわよね?それと、私のステータスが気になるのなら鑑定をしてみる?一応【偽装】を使ってあるけど」

俺は彼女の言葉を聞いて驚きつつ、確かに俺の実力を見極めるために模擬戦をやるというのならそのほうが確実であると考え直し、彼女に了承する。

「分かった。ではよろしく頼む」

俺がそう伝えるとアリナは俺の目をじっと見つめてくる。俺もそれに応えるように彼女を見つめ返すと彼女はゆっくりと微笑み俺の【真偽判断】を無効化したのであった。俺はすぐに自分が騙されていることに気が付き戦闘体勢をとる。そしてそれと同時に俺は、アリナに対して【鑑定】を使った。その結果驚くべきことが判明したのであった。

俺は目の前に現れた【魔神】の使いと名乗る化け物と戦闘をするべく覚悟を決めた。すると【魔神】が語りかけてきた。

「我が主に仇をなす者を救済するのが我が役目。故にお前には全力をもって立ち向かってもらいたいと思っているのだが大丈夫か?」

「ああ、俺がここでお前を殺すことでマリーさんたちが救われることになるのなら是非も無い」

【魔神】はその答えを聞くとその醜悪な顔を更に歪めて笑い出す。

「クカァーカッカッカ。貴様の主人に救いを求めようというのか。実に笑える冗談だな」

俺はその態度にイラッとした。

「なんだと。お前は俺の敵ではないのか?ならば何故マリーさんたちを殺そうとしている」

「勘違いするでないぞ。我が主に敵対の意思がないのは本当だが、貴様に危害を加える理由が無い訳ではない。それは我が主にとって邪魔なものを排除するためである。我が主の障害になりうるものを見逃すほど、この世界を統べる存在である我は優しくは出来てはいないのだ。さあ、そろそろ始めるとするか。我の力を存分に味合わせてやるぞ。心してかかるが良い」

俺は【魔神】の言葉を聞き怒りを覚えた。

俺と死神の会話は終わったようだった。俺は目の前の怪物をどう攻略するか考えるがなかなか思い浮かばなかった。とりあえず相手の動きを見て、対処しようと思っていたがそんなことをしても無駄だということが分かった。

俺はとにかく逃げることに意識を向けることにした。まずは相手の様子を伺う。

すると奴は不気味に笑ったかと思うと次の瞬間には消えてしまった。

(なんだ。消えたのか?気配も感じられないぞ)

俺は完全に戸惑ってしまいその場で止まってしまった。すると、俺の体に強い衝撃を受けた。俺は吹っ飛ばされてしまう。

(なにが起こった?まさかあの瞬間に俺に攻撃を加えたのか?)

俺は慌てて立ち上がりながら後ろを振り向く。そして、すぐに追撃に備えるが、またも俺は虚をつく形で攻撃を受けてしまう。今度は腹を思いっきり殴られたような痛みが走る。

俺が再び攻撃された方に目を向けたときにはそこには誰もいなかった。

俺は再び攻撃を仕掛けられる前になんとかこの攻撃を終わらせようとしたのだがそんな思いは簡単に潰されてしまった。俺がどんなに動いて攻撃を防ごうとしても全て無意味で終わってしまい、俺の攻撃がまともに入ることはなかった。しかし俺も諦めずに反撃を試みてはいるのだがまるで歯が立たなくて、逆に反撃を食らってしまってどんどん体力が削られていってしまう一方だった。

そんな時だった。俺はなぜか体が思うように動かなくなっていた。

すると俺の体に強烈な衝撃が走り、俺の体は宙に浮き飛ばされてしまっていた。俺は何とか空中で態勢を立て直し、着地した。俺はそこで何が起きたのかを確認するために自分の体の様子を見る。

(一体何がどうなっているんだ?)

俺の体は全身が麻痺してしまったかのようにうまく動かない。

(なぜ俺は動けなくなったんだ?)

そう思った矢先だった。俺の頭上が急に影で覆われたので反射的に顔を上げるとそこには大きな鎌のような刃を持つ腕が振り下されようとしていた。

(やばい)

俺はそう思うと同時に、俺が使える唯一の防御技である、【硬化(ハードスキン)】を発動する。しかし今回は先程のように、体を覆って守るようなものではなく俺を盾として発動させた。そのおかげで俺の腕を斬り落とすことに成功はしたものの、俺は肩を持っていかれてしまいかなり出血してしまう。俺はそのまま地面を転がりどうにか攻撃を避けようと試みるが結局地面に倒れるまで回避はできなかった。しかし、俺が倒れた先には【死神】が待ち構えており、その巨大な手で俺を掴みあげていた。

【死神】はそのまま俺の足を斬ろうとしていた。俺の脚が落とされそうになった瞬間、俺の中に何かが入ってくる感覚がした。そして、その直後俺の体が勝手に動くようになり【死神】の手から脱出することに成功する。

俺は、この好機を逃すまいと一気に攻勢に出る。

【死神】の動きはとても遅く見えてしまっいて俺は容易に隙を見つけて、そこから連続で【硬化(ハードスキン)】による身体強化を最大限行い渾身の力を込めて殴ったり蹴ったりを繰り出した。そのどれもが決定打になることはなかった。

(なんだこいつは、全然手応えが無いぞ)

【死王】から受けた修行の成果もあり、それなりに攻撃力も上がっているとは思っていた。しかし、俺の攻撃はほとんど効いていないように見えた。

(こいつ本当に生物なのか?)

そんなことを考えている間に俺は蹴り飛ばされ、吹き飛んでしまう。そして【死神】は俺に追い打ちをかけるようにして襲いかかってくる。

しかし、俺にも策はあった。この【死神】は、攻撃の際に必ず一瞬の溜めのようなものがありそれを俺に攻撃してくるときに行っているということが分かっていた。なので、そこを利用して俺は【死神】の足を引っ掛けるような形で攻撃を誘導した。それによって【死神】は大きく転倒してしまい俺はこの絶好の機会に攻撃を加えることができた。そして、【神速】を使い俺に攻撃を仕掛けようとするが【死神】が突然俺の目に映らなくなってしまった。俺は、急いで周りを見渡そうとするが、すでに遅かった。俺は自分の体が上下真っ二つに切断されるところを想像しながら目を閉じてしまうのであった。

「もうお終いか?お前の力はこの程度のものか?ならば、早々に終わらせるとしよう」

俺はこの【魔族】を名乗る生き物の発言を聞き、自分がこの【魔神】と名乗る存在に勝てる未来が見えず絶望感に包まれていく。

(こんなところで俺は終わりを迎えるのか。俺はマリーさんを救わないといけないというのにこのまま何もできないで終わるというのか。俺には【鑑定】があるというのにどうしてこうなってしまったんだ)

俺はそんなことを考えながら、目の前の強者の姿を見据えたのであった。俺は目の前にいる生物に対してどうやって戦えば良いのかわからなくなりつつあった。この目の前の生物は明らかに他のオーガやゴブリンとは違う。圧倒的な強者の威圧を放っており、それに負けてしまった結果、俺はこの生物と戦わなければならないことになっている。

(まずは、相手のステータスを知ることからだな)

俺は、【神眼】を使ってこの生物が持つ【称号】を確認した。するとそこには予想通りのモノが表示されていたので俺は思わず笑みがこぼれてしまう。

【死神】

(やはりな。これが一番ヤバそうな奴だと最初から思ってたがやっぱりそうか)

俺は目の前でこちらを観察し続けている【魔族】の姿を見やる。その姿を見ているだけで俺は背筋がゾクゾクする感覚を覚えていた。

「俺が【魔神】に敵う可能性は万に一つも無いかもしれないが、それでも俺には【神眼】があるからな。まだ勝負は分からん」

俺は自分に言い聞かせるように言葉を発する。そして、【魔刀ライキリ】を構える。

俺は覚悟を決めてこの化け物との戦いに臨むことを決めたのだった。しかし、その戦い方は正攻法とは言えない戦いになる。それは【死神】のスピードに対抗する為に俺自身が速く動けばいいという考えからだ。この化け物は確かに速い。しかしその速さは俺にとって大したものではないと俺は判断している。何故なら、この世界のトップクラスに位置する戦士であるはずの【獣人】たちの攻撃がスローモーションに見えるくらいなのだ。それなのにこの化け物の速さが俺にとって大したことないというのは俺にとっての常識が狂っているか、相手が異常なまでのスペックを誇るののどちらかしかありえない。

(おそらく両方なのだろうがな)

「お前がどれほどのものか試させてもらう」

俺はそう告げると同時に【縮地】を使った後で【瞬雷(シュンライカ)】と続けて使用し【超硬化(スーパーハード)】を使った全力全開で攻撃する。俺の攻撃が当たった瞬間に、凄まじい爆発音がして土煙が上がった。そして俺は、今の攻撃の反動で大きく後退してしまうがすぐに立て直し【纏衣】を発動する。

(流石に今のは少しダメージが入っただろ)

俺はすぐに警戒する。すると、徐々に土煙は収まり始めると、そこに現れたのは無残に散った肉片だけだった。

「おいおい、マジで嘘だろ」

俺の頬には冷や汗が流れ落ちていく。俺が想定していなかったほどのダメージを受けていたようだった。そんな俺の目の前に【死神】が現れていた。そして【死神】が振るう大鎌はまるで空間が裂けたかのように鋭利になっているように感じた。そのあまりの脅威さに俺は一瞬体が固まってしまい、その結果攻撃をもろに受けてしまい俺は吹き飛ばされた。

俺の意識は途切れていった。

【魔神】の猛撃の前に俺は完全に為す術無く敗れてしまった。俺の体は地面を転がり続ける。

(くそ。体が思うように動かない。一体何が起こっているんだ?なぜこんなにも自分の体が思い通りに動かない?)

俺は疑問を抱きながらも意識が遠のいて行く。

そして完全に意識がなくなる前に俺は【魔神】の言葉を聞いて意識が覚醒していくのを感じるのだった。

【魔神】の猛撃を受けて倒れ込んだ【死神】の姿を俺は確認するとすぐさま止めをさすための行動に移る。俺は先程と同様に【死神】の攻撃をわざと貰って、攻撃の衝撃を分散させて少しでも威力を落とそうとしたがそれは無駄に終わり俺は先程よりも更に激しく地面に打ち付けられる。その勢いは止まらず、俺はそのまま地面に叩きつけられて地面を転がっていった。

俺が再び立ち上がり戦闘をしようとすると【死神】は動き出した。【死神】の動きを見ていた俺は、先程の攻撃を受けた際に【死神】が俺の体内に入り込み俺の体を乗っ取ろうとしていたことが理解できた。

【死神】が俺に攻撃を仕掛けようとしたその時だった。俺は【魔闘気】を全身に行き渡らせるようにして体全体を覆わせることに成功したのだ。

「俺の体は絶対に渡さない。俺がここで倒れるわけにはいかないんだよ!!」

【魔神】との戦いで既にボロボロだった俺の体が俺の意志とは無関係に勝手に動くような感覚に陥り、【死神】に向かって攻撃を仕掛けていく。

しかし俺が放った攻撃はそのことごとくが防がれてしまい逆に【死神】の反撃を受けてしまう。

俺はその度に何度も吹き飛ばされてしまう。

そんな状態が続いていたのだが、次第に俺と【死神】の力関係が崩れてくると、俺は一方的に殴られたり斬られたりを繰り返すようになっていった。

そして遂に俺は【死神】の一撃を体に受ける。その攻撃によって俺の腕や足の部位がいくつか欠損してしまったが、その程度では俺は止まることはない。俺の攻撃も当たらなくなってきたが、逆に俺の攻撃は徐々に当たり始めてきはじめてきた。

それから俺は幾度となく攻撃をくらってしまいどんどん俺の体は損傷が激しくなっていくが、俺の思考は少しずつクリアになっていっており俺は【死神】の力を自分の物にすることに成功しているのを感じていた。

俺は、今まで経験したことがないほどに高まる力と力がぶつかり合うことで生まれる轟音を感じながら拳を振るっていた。そしてとうとう俺の攻撃は【死神】の顔面を捕らえることに成功してそのままの勢いのまま吹き飛ばしていた。

俺自身もまさか成功するとは思っていなかったようで思わず驚いてしまった。しかし、【死神】はまだ動けるような状態だった。そこで【魔装錬金】を使い、【神剣】を取り出し、さらに、魔力を流し込むことで、魔属性を付与したのを【魔装錬成】により武器を生成することに成功する。

「さぁここから本番だ。いくぞ!!!!」

俺はそう宣言してから、魔刀ライキリに【魔武装】を施して、【魔法創造】を使う。

『俺が望むことはたった一つだけだ。俺の全てを捧げる。だから俺の望みに応えてくれ。

そして、俺の力となりこの世界を滅ぼしてくれる存在になっちくれ』

俺は、俺の魂が震えるのを感じながら、ライキリを両手で握って、【死神】に向かって突進していった。

【死神】に攻撃を加えようとしたが俺は簡単に攻撃を防ぎ込まれてしまった。しかし俺は【神速】を使って攻撃を繰り出していく。そして、ついに俺は【死神】にダメージを与えることができた。そしてそこから、【死神】の攻撃は苛烈なものになり俺は防戦一方になる。しかし俺は諦めることなく攻撃を繰り返した。そしてついに俺は【死神】の懐に入ることに成功した。

俺はそのチャンスを逃すことなく【魔刀ライキリ】に【魔法創造】で作り出した【雷刃付与】を付与することで攻撃力を大幅に上げることに成功する。俺はこの技を使うことは避けていた。【神滅覇王】の力を解放しない限りは使えないという縛りが俺にはあったから使わなかった。しかし今はその制約がなくなり、俺はこの【死神】に勝つために必要なことだと判断し使ったのだった。

(俺の全ての力を使い果たしても構わない。この【死神】を倒すことができるなら俺はそれでいい)

俺の想いに応えるかのようにライキリに俺の魔力が流れていき光輝くようになる。そして俺は一気に攻撃を加える。俺は今自分が出来る最速の動きをする為に【瞬雷】を使用しつつ【纏衣】も発動し、身体強化も行う。

(【神眼】で見た限りだと【魔神】が俺の肉体に干渉してくる気配はない。つまり俺は【魔神】の干渉がない内にこの化け物を討伐できるのか。俺も運が良いのか悪いのか分からないが、俺の命を救ってくれたことに感謝しないとな)俺は【死神】の腹を裂くように【魔刀ライキリ】を振り抜く。その攻撃は見事に決まり、俺は手応えを感じたが油断はせずにすぐさま追撃を仕掛ける。俺は魔属性が付与されている【雷刃付与】のおかげで【魔刃(マジン)】の効果が乗せられた攻撃を繰り出すことが出来るようになっている。その効果は絶大なもので俺はその力で次々と【死神】を切り刻んでいく。そして【魔刀ライキリ】は【魔槍グングニル】に姿を変えており、俺の手の中で自在に形を変える魔の刀となっていた。

俺はその魔刀となったライキリを手に持ち縦横無尽に斬りかかっていった。そして俺はこのタイミングで【魔闘気】のギアを一つ上げていくことにする。すると【死神】のスピードが上がると同時にパワーも上がっていき俺はどんどん押され始めていた。俺はその状況を打破するため魔刀と化している【雷牙竜剣(ライジングファンガスドラゴンソード)】に【魔武装】を発動して雷の魔力を注ぎ込んでいく。

俺の目の前には俺を押し返そうとしてくる【死神】がいるが俺は全力で抗うことにした。俺の全身に激痛が走るがそれを全て耐え抜いて【雷牙竜剣(ライジングファンガスドラゴンソード)】を振るう。そして俺は雷の力を【死神】に叩きつけることが出来たのだった。俺は全力で攻撃し続けたのだが流石は魔王の眷属と言ったところなのか【死神】の耐久力は尋常ではなく、中々倒すことが出来ないでいた。

そして、徐々に追い詰められていく中で俺の攻撃は全て回避されたり防御されたりしてしまいダメージを蓄積していくばかりだった。

しかし、俺にはまだ切り札がある。それが【真聖撃】と【神滅覇王】による同時使用だ。俺は覚悟を決めるとすぐに【真聖撃】を発動させる。俺が【死神】の攻撃をいなしながら、俺が放つ一撃の威力を増幅させていくことを想像する。すると徐々に俺の中に【死神】へのイメージが流れ込んできた。

(これなら勝てる!!俺のイメージが確かなら【死神】を倒すことも可能のはずだ!!!!俺は負けられないんだよ!!俺には守りたいものがある。その為には絶対に負けられない。俺は俺自身の為だけじゃないんだ!!俺は、俺のことを好きと言ってくれたあの女の子を守る為に戦うことを誓った。俺は絶対にその気持ちを裏切るわけにはいかない。それに俺はソフィアに約束している。俺の大切な人達は必ず守るってね。その大切な中にお前は入っているんだよ【死神】。俺はもう絶対に折れない。俺は、【死神】を倒し、そして俺自身に勝利するんだ。【魔神】よ、俺の願いを聞いてくれるのならば、俺を俺として認めてもいいと思っているのであれば力を俺に貸してくれ。頼む!!)

その瞬間、目の前にいる【死神】と全く同じ姿をした者が姿を現し、【死神】に攻撃を開始したのである。

俺は【魔神】に【死神】と戦っていることを話したあとに戦いの決着をつけるために、俺の中に入って来い、とお願いすると俺は、そのお願いを聞く代わりに俺に【魔神】が持っていたスキルを与えるという条件を出したのだ。

俺はその言葉に承諾をすると意識を失いかけたのである。

俺が再び意識を取り戻した時には俺の中から【死神】が飛び出して、【死神】の攻撃を相殺していた。俺が【魔神】に与えた能力とは、この世界で俺にしか扱えないオリジナル魔法を作ることが可能なものだった。その能力は【固有魔法の創生】という俺だけが持つオリジナルの魔法を作り上げることが可能になるものだ。この魔法が凄まじいことは俺が【魔神】に言った通りに、魔力が足りればどんな魔法だって作れてしまうということだ。俺はそれを知ったときに自分のステータスを見て驚いたがそれは仕方のない事だったと思う。何せこの世界の基準で考えるとその強さの基準値が全く理解出来ないほどの力を持っていたのだから。

【魔神】に力を与えた後に俺が意識を失った理由だが、単純に言うと、俺が俺の中の力を受け入れた際にその負荷が俺を襲ったからであり、俺の心が砕ける前に【神滅覇王】の力に俺自身が打ち勝ったことで、俺が無意識の内に【魔神】が俺の中に残した力を開放したようだ。俺がその時に【死神】に対して使った技こそが、【超武連舞】だ。

【超武錬気】と【魔闘気】、さらに、【瞬動術】を組み合わせることで発動される究極の奥義とも言える【瞬閃】の進化系で、一瞬で数十発にも及ぶ斬撃を放つことができる。俺の体には先程の【死神】との戦いの時に負った怪我がまだ残っていたがそんなものは今の俺にとって関係なかった。

【魔装錬金】を使って俺の肉体を作り替えていく過程で俺はあることを考えた俺はこの機会を逃すまいと思い行動に移す。まず、肉体の作り替えが完了したところで【魔闘氣】のギアを上げることによって身体機能を向上させる。これにより身体能力が向上した俺は【超魔練気】を使い、俺に備わっているありとあらゆる技術を使いながら攻撃を繰り出して行った。俺の動きについていけなくなった【死神】は徐々にダメージを受け始めていて俺は【死神】を圧倒することに成功したのだった。

そして俺はトドメを刺す為に魔刀ライキリに全ての力を集めるように集中をしていく。【死神】は何とか立ち上がろうとしていたがそれは俺の攻撃によって完全に阻止されたのだった。俺がライキリを振り上げるとそれに合わせてライキリに纏わせていた雷が一際強く輝きを放った。俺がそのままライキリを振るとライキリに纏っていた雷が一直線上に伸びていきそのまま、【死神】に向かっていった。俺は、そのまま追撃を行い続け遂に、【死神】の身体を貫くことに成功する。

【魔武装】を解除すると、俺から膨大な量のオーラが立ち昇っていくのを感じる。俺は、今までで一番長い時間を戦ったような気がして疲れ果てていたがここで終わりではなかったのである。

「おい、お前らまだ終わっていないみたいだぞ」

俺がそういうと、洞窟の外から大量の魔獣の群れが迫ってきていたことを知らせる音が鳴り響いていた。俺は、その音を聴きながら【魔眼】を使って魔眼を発動させると魔素が大量に集まり始めたのを確認することができた。俺はそれを確認してから魔眼を解除してから全員に伝えた。

「皆、よく聞け!外はどうやら大量の魔獣に囲まれ始めているようだからここからは二手に別れる。俺とアリナとで魔眼を使って敵を一掃するから他の奴は洞窟内から魔素を吸ってくれ!」

俺はそれだけ伝えるとすぐに外へ出て、【真眼】を使う。

(敵の数は千を超えているか?まぁ関係ないな)

俺はそう考えながらも敵のいる場所を見極めることに集中する。そして見つけたと同時に殲滅を開始する。俺達を囲むように広がっていた魔獣たちは瞬く間に消えていった。俺は魔刀ライキリから魔銃イガグリへと姿を変えていたライキリを腰に差してから、セシリアの元へ駆け寄る。

俺の顔を見た途端に安心した表情になったあと、俺の腕の中に飛び込んできたセシリアの背中を軽くポンポンっと叩きつつ俺は話しかける。

「もう、心配しなくてもいいからな。全部片付けたからな。俺が守ってやるから大丈夫だよ。だから、これから俺がすることは信じてくれるかな?」

俺は、出来る限り優しい声でセシリアに話しかける。すると俺の言いたいことが伝わったのか俺の目を真っ直ぐに見つめ返してきたので俺は魔剣を取り出し、その刃に手を触れる。そして俺の中にある全てを魔剣へと移し変える。そして俺は意識を失うのだった。

俺は意識を失ってしまったが俺は魔族国へ向かわなければいけない用事があり俺はすぐに意識を取り戻す。そしてすぐに自分のステータスをチェックすると魔剣に魂を移し替えたことによる影響はなさそうだと判断したので俺はすぐさまその場から離れることにする。そして俺は【空間移動】の魔法を使って魔王城の近くに転移をしておいた。それから俺達は街で情報を集めて再び魔王城に戻ってくるのだった。

そして戻ってきた時に俺達が目にしたのは信じられない光景が広がっていたのだ。

「こ、これはどういうことだ!?何故この国の兵士たちは死んでしまっているんだ!!」

俺は声を荒げて叫んでしまうのも仕方がなかったと思う。そこには数え切れないほどの兵士の死体があって俺はそれを見渡していた。そこで俺はふと違和感を感じたのである、何か変だと直感的に感じたからだ。するとその答えを教えてくれた人物が一人だけ居たのである。

その人物は俺が【死神】を倒してから少し経って現れてその惨状を作り出した犯人だということがわかった。

その男は、俺のことを認識しているはずなのに全く警戒している様子がなかったのだ。そして男が、いや【魔王】が話し出す。

「久しいのう【真聖神王】よ、いや今の姿になってからはその名は使っていなかったはずじゃから今はシンと言う名を名乗っているのだったか。それならワシの名は、いや私の名前の方が正しいかもしれんの。私は、かつて勇者と呼ばれこの世界の希望となった【真勇人】と呼ばれていた者。それが本来の姿であり名前です」

【死神】を倒した俺の前に姿を現した男の名前は【真勇人】と名乗ったのだ。俺がその発言に対して困惑していると【真勇人】が更に言葉を続けた。

「さすがにここまで来てしまえばもう隠し事は無しにしよう。私が君に話さなければならないことを話す為にここに来ました。君は既に気がついていると思うが、君には私と戦ってもらう必要があるのですよ。そのためにこうして時間をかけすぎてしまったがね。では、改めて自己紹介をさせていただきます。【魔神】様。いえコウ、私のことは全て知っているんですよね?あなたが、あの時に【死神】の中にいた人物ということはね。あの時のお礼を言いましょう。ありがとうございます」

【魔神】という単語が出た瞬間にマリーさんやソフィアから驚きの気配を感じていた。しかし俺は特に何も気にしていなかったのである。それ程までに目の前にいる男が俺にとって驚異になるような存在とは思えなかった。俺にとって【死神】を倒すことに意味があっただけでそれ以上でもそれ以外でもないからである。だが、その言葉を信じることはしなかった。なぜなら【魔神】という言葉が出てきたがこの世界には【魔神】が存在していないはずだったからである。なので、【真勇人】の話に俺は耳を傾けることにしたのだった。

俺はまだ自分が、【死神】と融合していた時の記憶を全て覚えているわけではないが、俺は確かに自分の中で意識を保ちながら【死神】の力を制御していた感覚を覚えている。だがその時は間違いなく俺の中に入っていた。それはつまりこの【魔神】と名乗る男の中に入っているということになるのではないか?という仮説を俺は立てていたのだった。

そしてそのことを【真勇人】に話す。すると【真勇人】は笑いながらこう言ってきたのである。

「なるほど、それは実に興味深いですね。まぁ大体合っています。ただし、私はこの身体の持ち主ではありませんが、その考えは正解です。そして貴方が倒すべき相手でもあるのですから私を、いや、本当の【神災】を倒してくれて助かりました。【魔神】と化した私に対抗できるのは【真の聖女】と【魔の王】、それともう一人だけなんですからね。それで、どうでしょう私と戦いますか?ちなみに断れば、貴方達の大事な仲間である彼女たちの命が奪われることになりますがそれでも良いでしょうか?」

その言葉で俺たちの動きは完全に止まる。【死神】を討伐するためにかなりの無理をしたのにも関わらず俺が倒せるかどうかは五分だったのにそんな相手にマリーとソフィアを人質に取られていて戦えるわけがない。それにしても【死神】に殺されかけていたのに、そんなに簡単に人質なんて取るのかと呆れてしまうが俺が戦う以外の選択肢はないと思った。だから俺は【死神】との戦いの際に得た力を解放する。

すると、今まで見たことがない程のオーラが俺の周りで渦巻いていることがわかる。俺が【魔眼】を使って【魔神】の状態を見てみると驚くべき結果になっていた。なんと、ステータスの値が2億を越えていたのである。俺は【魔眼】で確認したことを【魔眼の神眼】を使って他の仲間たちに知らせると全員が驚いていたが、アリナが【魔神】に向かって攻撃を仕掛けたのであった。

「おい!何をする!やめろ!!やめて下さい。私だって本当は戦いたくないのに!!!!!」

「ふざけるなよ。お前の好き勝手にやらせる訳ないだろうが!そもそも何が、私だよ気持ち悪いな!お前は誰だ?正体を見せてみろ!」

アリナは【魔神】の顔面を蹴り飛ばしてから【死神の衣】に命令して【真の死】を発動する。その効果は、俺達以外には一切危害を加えることができないようにする為のものだったのだが俺達が攻撃しようとした時には既に【魔神】の姿が消えていて、代わりに先程までは持っていなかったはずの武器が空中に浮いていた。【死神】が使っていた魔刀と同じ形状の魔刀だったが【死神】の持っていた物より禍々しい感じの見た目をしていて一目見て危険なものだということが理解できるほどだった。俺達はすぐに警戒して戦闘態勢を取った。すると、その魔刀の柄を握りながら魔刀を抜いた状態で俺達の方を向いてきた【魔神】がそこに立っていたのである。

「まったく酷いことをしてくれるな【死】を司る君たち。私が【真の聖女の守護】で無ければ死んでいましたよ」

俺達はその姿を見て【魔眼の神眼】を使ってステータスを確認したがレベルが表示されていなくてステータスを確認することができなかった。

「お前、【死神】か?」俺は【魔眼の神眼】で確認したが【真聖の剣神】に変身していた時に倒したはずの【魔聖】と表示されていたので【死神】ではないかと思い尋ねてみると、【魔神】はニヤリと笑うだけだった。

「ふふふ、面白い質問をするんだね?いいだろう答えてあげよう。そうだよ私はこの身体の持ち主じゃないんだよ。そうしないと私の正体に気づかれるかもしれないだろ?」

俺達が何も言わずに見つめていたら俺達が知りたかった情報が手に入った。やはり、こいつは【魔神】ではないようだ。ならば今ここで始末してしまうべきだと考え俺は、まず最初に魔弾を撃ち込むことにした。俺が撃った魔弾の数は二十一発でそれを全て命中させようとしていた。その俺の攻撃に対して反応したのは、意外にもアリナの方だった。

「皆、少し下がれ」

そう言うと同時にアリナが【死神】に向けて走り出した。その動きは明らかに人間を超えた速さだったので俺は一瞬だけ【魔眼の神眼】で確認してから驚いた。【魔闘神化】を使った状態のスピードを優に越えていたのだ。だが、そんな状態であっても魔弾の速度は変わらなかったので俺はすぐに魔弾を発射することにした。だが魔弾は放たれることはなかった。

魔刀を構えた【魔神】が凄まじい速度でアリナに近づいていった。だが次の瞬間には信じられないことが起きてしまった。

【死神】が魔刃を振り下ろすと、その魔刃は【魔神】の腕ごと吹き飛んだのだ。

そして俺はその状況を理解してゾッとする。なぜなら、【死神】が今使ったスキルは【剣豪】の最上位の剣術の筈だったからだ。つまり【魔神】はその上位互換にあたる【剣鬼】の技を完璧にマスターしていることになるのだ。

その事実を目にしていた俺達が唖然としている中でアリナは笑っていた。その笑い声は【死神】を追い詰めたことによる笑い声ではなくまるで強敵と出会えたことに喜ぶかのように笑い声を上げながら【魔神】に殴りかかっていた。

俺達が呆気に取られていた中でも【魔神】も【死神】と同じように楽しそうな顔をしているように見えたが、実際は違うと思うのだ。それは【魔神】が俺が魔刃から放った斬撃によって片腕を失っているのに対して、【死神】が持っている腕が無事だからだと思う。

「おい、いつまで寝ているんだ【死神】よ。早く起きてくれ」

「いや、さすがにこれはキツイですよ」

「なんじゃ、この程度でへばったのか情けないのぅ」

「そんなに歳をとっているわけでもないので勘弁して欲しいですね」

「お主が弱くなったわけではないじゃろう。ワシが異常なだけじゃよ」

「えぇそれはわかっていますよ」

【死神】は立ち上がると【魔神】を睨みつける。俺はその様子をただ黙っているわけにはいかないと思い【真聖の剣帝】になって【魔聖】と戦った時と同様に魔力で身体能力を強化して、【魔神】に向かって駆け出そうとしたが、アリナの叫び声で足を止めた。

「シンはそこで休んでいて良いぞ。ここからは私が相手になろう」

アリナはその一言と共に【魔神】に飛び込んでいき【魔神】に拳をぶつけようとするが、それを【魔神】が魔刀で防ぐ。

「なかなかやりますね。それにしても貴方ほどの実力があるのになぜ【死神】に?」

アリナの拳を弾き返しながら疑問を投げかける。

「貴様が私の仲間を殺したからだよ」

「なるほどなるほど。それに関しては謝罪をしましょう。ですが貴方がこの程度の攻撃しかできないということはもう限界なんですよね?」

【魔神】が挑発気味にそう問いかける。すると、今まで感情のこもっていなかったアリナの声から急に怒りを感じた。

「この、程度だと?それはどういう意味なんだ?もう一度言ってくれるかな?私の仲間がどれだけ強いか知らないお前にそんなことを言われる筋合いはない!」

そう叫ぶように言い放つとアリナは再び、【魔神】に突っ込んだ。今度は、先程までの単純な突進ではなかった。明らかに俺には想像のつかない動きを見せたのである。

「なっ、これは一体?これがあの【死神】だというのか?こんなことがあってたまるか!私は認めない!私をコケにした罪を思い知れ!」

その言葉でアリナの怒気が膨らんでいく。そして、アリナの動きについていけていないのか徐々に押され始めている【魔神】が【真の死】を発動したのであった。俺達はこのタイミングを逃す訳にはいかないと考えて、【真聖の剣神化】になった後にアリナに斬りかかろうとしたが既に勝負は終わっていた。

【真の死】を発動させた瞬間にアリナは【真の死】に飲み込まれて消滅したはずだったのだが、【真の死】の効果が発揮された直後に【真の聖女】の姿に戻っており、アリナは無傷のまま、俺達に背中を見せていた。俺達がその姿を見た時に【魔神】は膝から崩れ落ちた。そして、俺達を見て悔しそうな表情をしながら俺達を見ていたが俺はすぐに【神災者】に変身すると全力で殴り飛ばした。しかし俺は違和感を覚えたのだ。なんせ今の一撃を受けて全く動じることなく、むしろ攻撃を受ける前よりも余裕がありそうな感じを受けたからだ。俺はすぐに追撃を仕掛けるが、その時に俺は嫌な気配を感じ取った為後ろに飛び退いた。すると次の瞬間に俺達がいた場所に黒い球体が出現していたのだ。俺はすぐさま、その球を攻撃しようとしたがそれよりも速く俺の後ろに現れたアリナとマリーさんが同時に攻撃を仕掛けると、マリーさんの魔法でその球を破壊したがその時にはすでに姿を消していた。そして再び姿を現すがそこに【死神】はいなかったのだ。おそらくだが今の戦いの最中に逃げたのではないかと思い周りを警戒した。だが周囲に人が集まってきたせいで俺たちはその場から離れざる終えなくなってしまった為、その日はそのまま帰宅したのであった。

「なぁお前ら。あいつらに勝てると思うか?」

アリナは唐突に質問をしてきた。その質問に答える前に俺はまず質問をした。

「あいつらはどんな奴らだったんだ?」

「あぁ。まず一人目の男は私が戦ってギリギリ勝ったが、かなり厄介だったのは確かだ。まぁ私の強さがあればあんなやつには負けるはずがないが、二人目はもっと最悪だな。まさか私の攻撃を素手で受けてダメージを負うどころか痛みさえ感じてなさそうに見えたし、最後の男の方は、私が全力で攻撃して殺そうとしたが、あっさり回避されて逆に殺されるところだった。本当にふざけている。私はあいつらより弱いとは思っていないし、少なくとも同等の力はあると思っているが正直勝てる気が全くしない」

俺もその話を横で聞いていたため、【魔神】の圧倒的な強さを感じていた。特に俺が【魔神】のステータスを見ることができなかった事はかなり不自然であり、【真聖の剣王】が倒されてからの短期間であれだけの成長を遂げたとなればそれは異常と言ってもいいほどだった。しかも、それがただの人間ではない。人間の域を逸脱した存在である。

【魔神】が【魔闘神化】した時ですらレベルが表示されることはなかったのだ。つまりそれはレベルが存在しないことを意味しているのではないか?そんな事を考えているうちに、【魔神】との戦いを思い出して、改めて思ったことがある。俺達はこの世界に来てまだ三日目なのだ。それにも関わらずここまで規格外の存在と連続で戦うことになるなんて普通は考えられないことだ。俺はまだ【魔神】が本気ではなかったような気がするが、もし俺が【魔神】と戦っていれば結果は違っていたかもしれない。いやそもそも、俺が【魔帝】に変身できたことで俺は助かったのだ。【魔闘神化】の状態で戦ったとしても確実に勝てたとは言えない。俺はそう考えていて俺は、やはり俺は【魔眼の神眼】を使っておくべきだと感じた。俺達が【魔神】のことを考えるだけで、なぜか俺達が考えていたことがわかったようで、突然俺達の前に【魔神】が現れた。俺はすぐに臨戦態勢を取ったが、なぜか何もせずに【魔神】は立ち去って行った。

俺は【魔神】が立ち去った後すぐに【真の聖魔眼】を開眼すると、俺はすぐに【魔神】を【解析】で調べてみると【魔神】のレベルが227であることが分かった。だがその数値は決して高いわけではなくむしろ低いと感じるほどである。だがそれでもこの世界でトップクラスなのは間違いないだろうと思った。俺はそのことを他のみんなにも伝えようと思い振り返ったが、その瞬間には俺の背後から声をかけられた。

「やあやあ、君たちは【死神】と戦う為に力を貸して欲しいというわけかい?残念だが僕は忙しいんだよ」

その男の言葉を聞いてから一瞬だけ考えると、俺にはこいつが言っている言葉の意味を理解したが理解することを心の中で拒絶した。

「あぁ?お前何言っちゃってんの?誰がそんなこと言ったよ?お前がどう思うのか知らねぇけどさすがにそれは失礼すぎじゃねえのか?」

俺が睨みつけるように言うと、目の前にいた【魔帝バルバトス】は鼻で笑うようにしながら答えてきた。それに対してアリナも反応すると思っていたが意外にも黙ったままだった。なので俺がアリナの方を振り向くと、少し怒った顔をしているように見えて思わず俺はアリナの頭を優しく撫でた。すると、俺の顔が面白おかしかったのか【魔帝の姫】が笑ってしまった。それを聞いたアリナはさらに機嫌が悪くなりながら俺に文句を言った。

「何を勝手に私の頭に触れているんだ?やめろ。早く離れてくれ」

「すまんな。なんかアリナが可愛いから触りたくなっちまった。ごめん」

「べ、別にそこまで怒ってないぞ。それよりお前がそんな風に怒ることはあまり無いからな」

俺はアリナの反応を見てからもう一度【バルバトス】に視線を向けると、そこには笑っている姿が目に入ってきて、俺のことを小馬鹿にしているのだと分かったが俺は冷静さを保ったまま話しかける。

「それでさっきお前は何をしていたんだ?」

「はっはっはっ。やっぱり君は面白いよ。【死神】を倒すためには僕のような優秀な人材が必要だろう?それに僕ほどになれば、誰だって簡単に扱える最強の駒になれるのだからね」

【魔帝】は自信満々に言い放つ。だがそれを黙って聞いているはずもなくアリナが話に割って入る。

「いやいやお前みたいな屑の駒にはなるつもりはさらさらないよ。だいたい、この世にはな、【魔帝】よりもさらに格上の強者が存在しているんだよ。そしてそいつらと私達は敵対関係なんだけど。お前も一応その一角にいることを分かっておいた方がいいと思うぜ」

「なるほど。それに関しては申し訳なかったね。だけどそれならば僕の方からも提案があるんだよ。それは君たちの力を僕に分けて欲しいということなんだ。【死神】はおそらく僕と似たような存在だと思っているからね。君たちみたいに強い存在を味方にしておきたいのさ。そうすれば、君たちも【魔神】を殺せる可能性があると思うんだけど、どうかな?」

【魔帝】が俺達のことを強いと言ってくれたがそれは本当のことなのか分からないのと俺と同じような【魔眼】を所持しているということから、【魔神】に対して俺と同じ対抗策を取ろうというのはなんとなく予想ができた。しかし、【魔神】のことが分からず俺達の情報が少なければ【魔眼の神眼】を使うことができる【魔神】は厄介だとしか言いようがなかった。そこで俺は【魔眼の神眼】のスキルを使えるようになるまでは、とりあえず【魔帝】を利用する方向で動くことにした。

【魔眼の神眼】が使えなくても【真の聖魔眼】があればなんとか戦える可能性は高いと判断した。そしてこのタイミングを逃すことなく【神災者】は【真の聖魔眼】を発動した。

【真の聖女】の姿が徐々に変わっていき、最終的に【聖女の舞衣】になった後に【魔神】が現れたのだった。

俺は【真の聖女】の姿が【聖女の舞衣】に変わったのを確認してから、【魔神】に向かって攻撃を仕掛けた。だが俺は、【魔神】の一撃によって俺の体は木の葉のように吹き飛ばされて近くの岩にぶつかってしまい、そのまま地面に落下して気絶してしまった。しかし【神災者】の姿に戻った俺はすぐに立ち上がると、マリーさんとアリナとソフィアの三人は先ほどの【魔神】の一撃を見てかなり驚いていたが俺は【魔神】に一撃でもダメージを与えることができれば問題ないと思っており、【魔神の覇気】を使い始めた。【魔神】の動きを封じ込める為だ。すると俺が【魔神】の行動を封じようとしていることに気づいたのか俺が行動する前に動き出した。そして【魔神】はマリーさんとアリナの二人を同時に相手にしていた。だがその光景を見て俺は全く驚かずに見ていた。何故なら【魔神】と【真の聖女】との力の差が歴然であるからだ。【魔神】が攻撃を繰り出そうとした瞬間に、二人の攻撃が入り込んだため、【真の聖女】の力を使ったとしてもダメージを負うどころか掠っただけでも相当なダメージを受けると分かりながらもあえて【真聖の光剣エクスカリバーモード】で攻撃を繰り出したのだが、あっさり避けられて攻撃の余波で吹き飛ばされてしまったようだ。その後ろにはソフィアがおりすぐに治療を開始していた。そして俺の体が完全に回復してから改めて攻撃に移るつもりだった。その時はもうすでに決着がつくような気がしていたが、実際に戦い始めるとそれは違っていたことにすぐに気づくことになるとはこの時思っていなかったのだ。

俺はまずは【真魔人化】の状態で挑んでみることにする。しかし俺はすぐに思い知らされた。

「くぅ!?こいつのスピードを甘く見てたな!完全に捉えられねえ!」

この状態での攻撃も全くと言っていいほど効いている様子がなかったが俺の攻撃を受けている最中に、俺の顔面を掴んできたのだ。そしてそのまま投げられてしまって俺は勢い良く壁に衝突する。壁が崩壊してしまったため俺は瓦礫の山に埋もれてしまう。その時に【魔神の加護】と、もう一つ別の力を感じ取ったがそれは一体何かと考える余裕などはなかった。俺はすぐにそこから抜け出すことを試みると、案外楽に脱出することに成功して、【神威の波動】で【魔神】を吹き飛ばしたが【魔神】には何の影響もなかった。

「はぁはぁはぁ。これぐらいの痛みなんて【魔神】から受ける苦痛と比べたら全然大したことねぇよ。それよりも俺が今感じたのはなんなんだよ。まるで俺の【魔闘神化】と似た感覚がしたが、あいつにはそんな力は持ってねぇよな。それにあの力は俺にだけ与えられたものだから俺が使えないということは絶対にねぇはずだ。それなのに、どうして同じ力が使えるんだよ?」

俺は独り言を言いながら【魔帝バルバトス】の方を見ていると【魔帝バルバトス】と【魔神】の会話が聞こえてきた。

「お前の今の一撃でわかったことがある。やはりお前は俺が倒すべき相手だと言うことがな」

「おやおや?急にどうされたんですか?僕に負けたということを認めますか?僕は別に認めても構いませんが、貴方のような雑魚が僕に勝つことは不可能ですよ。まあ、【死神】を殺すために僕に協力してくれるのであれば話は別ですがね」

【魔神】はそう言うと、不敵な笑みを浮かべる。それに対してバルバトスは怒りを覚えたが、すぐに気持ちを切り替えて【魔神】の討伐に集中することに決めた。

「貴様こそ俺のことを知らないだろう?確かに俺が弱いことは間違いないだろうが俺はお前と違って力を隠していたわけではない。俺の真の強さを知る前に死んでしまえばそれは無意味なことになってしまうが構わないな?」

バルバトスがそんなことを口に出すと【魔神】はすぐに笑い始めた。

「はっはっはっは。これはまた愉快ですね。僕があなたごときに殺されるわけがないじゃないですか。僕に本気を出す必要すらないと、本気で思っているのでしょうね。だけど僕だって本気を出したわけではありませんよ。それじゃ、さっきまでの戦いも手を抜いていたということですか。本当に残念な男だ」

バルバトスの発言を聞いてさすがに我慢できなくなったのか今まで無言を貫いていたマリーが【魔帝の姫】から【聖帝の姫】へと姿を変えながら話しかけてきた。

「お前は少しばかり調子に乗り過ぎだ。お前は少しは私の実力を知っていて欲しいな」そう言ったマリーの背中には六枚ある翼のうちの一枚が生えてきて、その姿からは、先ほどまでの可愛い印象ではなく、美しく妖艶な姿へと変化しており、俺とバルバトスと【魔神】の三人はマリーの変化に驚いている。

「はっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは。さっきよりも断然良いじゃないか。君が【死神】を殺せる可能性を秘めた唯一の人間なんだよね?ならばここで僕の手で始末してあげるよ」

「お前に私を倒すことなんかできるはずがなかろう」

マリーは【魔神】の言葉を簡単に切り捨てて攻撃を開始した。そして、それを合図にするかのように【魔神】もマリーの攻撃を軽々と受け止めてからマリーに向かって攻撃を仕掛ける。しかしマリーはそれを難なく回避してから再び攻撃を仕掛けようとしたが、【魔神】も同じく避けてから、お互いに相手の攻撃を受け止め合う。しかし、その一撃の威力は完全に【魔神】の方が上でありマリーは徐々に押されていることに気づく。それを見た俺は加勢しようとするが、【魔神】の視線がこちらに向いているのが分かったため一旦立ち止まる。すると【魔神】が突然攻撃を仕掛けてくるが、マリーに受け止められた瞬間に【魔神】の腕に巻きつく鎖が出現して【魔神】が動きを止める。

「ほう。これは中々興味深い技を持っているようだね。だけど、君ではこの僕の動きを捉えることすらできないさ」

そう言ってマリーに襲いかかろうとしたが俺の拳によって邪魔をされてしまった。【魔神】はそのまま吹っ飛ばされてしまい岩に激突した。俺もその隙を狙ってマリーを助けに行った。そして、【魔神】が岩の中から出てくるのを確認すると同時に【魔神】に対して俺は魔法を放った。

【魔神】はその魔法を避けることもせずに直撃して、岩を貫通した魔法が空へ飛んで行ったのを確認してからマリーに回復魔法をかけるように指示して、俺はすぐにバルバトスの元へ向かった。

【魔神】の体に俺の魔法の衝撃が走るが特にダメージがあるようには見えない。それに加えて、俺に対して攻撃をして来たため、その攻撃を紙一重で避けることに成功する。

俺は【魔神】に追撃を加えるがあまりダメージはないようだった。そして俺はさらに追撃を行う。だがそれもすべて受け流されるか避けられてしまった。そして今度は【魔神】の攻撃を受ける。

その攻撃をもろに受けた俺は、【魔人化】で耐えることができたが、もし【魔人化】をしてなかったら俺は確実にこの世から居なくなっていただろうと理解できた。それほどに【魔神】の一撃は重いものだった。だが【魔神】の攻撃を受けた俺はすぐに攻撃に移ることにした。俺は【魔神】の顔面に拳を打ち込む。そして、俺の一撃を受けた瞬間に【魔神】の動きが完全に止まったので、俺と【魔神】の間に一瞬だけ光の筋が入ったかと思うと俺の一撃が【魔神】の顎に命中して上空に向かって殴り飛ばすことに成功した。しかし俺は攻撃を終えた直後に【魔神】が攻撃してきたことに気づき、【魔闘神化】と、もう一段階進化している【武闘神化】を同時に使用して、攻撃を回避する。俺が今使っているこの【武闘神化】の能力は【真魔人の拳】と同じ効果があるのだ。そのため俺が攻撃すれば、相手が誰であろうとも俺の攻撃の威力を上げることが可能だ。俺の現在の【武闘神化】の能力はこんな感じになっている。

【真魔人の腕力】:真の力を得たことで更に強化されて全てのステータスが上昇するようになる。

【真魔闘神の足力】:真の力を得ていることで更に強化された脚力で蹴れば、相手を完全に破壊することも可能になる。また、地面から攻撃することが可能になり、衝撃波を出すことも可能。

これらの能力の効果により、俺の攻撃力が圧倒的に上がってしまい、【魔神】の攻撃は俺の肉体には傷一つ付けられなくなってしまった。だがその代わりに【魔神】の攻撃を一度でも当たればその時点で俺の体は砕け散ることになる。そしてその代償として得た効果もあり、俺の能力には【神撃】も含まれているのだ。その効果は単純明快で、相手の能力を一定時間完全に封じることが可能になるという能力である。ただ、これを発動させるには俺と相手にある程度の信頼関係が必要なのだが、今の俺なら大丈夫な気がする。だから俺はまずは【魔帝の剣聖】で相手を切り裂いてみた。しかし俺が切り裂いた箇所はなぜか元に戻ってしまうので俺はすぐさま距離をとると、俺に反撃しようとしていたのか、いきなり突っ込んできた。なので俺はカウンターを仕掛けて腹に蹴りを入れて、そのまま空中に飛び上がり回転を加えて、もう一度踵落としを決めた。それでもやはり相手はすぐに起き上がる。そこで俺はすぐに相手の後ろに回ると、思いっきり地面に頭をぶつけるようにして、そのまま地面にめり込ませてやった。

それからすぐに俺の元にマリーが駆けつけると、俺と交代してバルバトスの元へ行ってくれと言って、マリーに【魔神】の討伐を任せて、俺は再び【魔神】と戦うことにする。

それからはずっと俺が一方的に攻め続けていたが、【魔神】にダメージを与えることはできなかったが、攻撃はしっかりと当てることに成功していた。それに【魔神】の攻撃を俺が完璧に回避することができているため、【魔神】もかなりイラついてきているようで先ほどまでよりも俺に対する殺気が増している。そして【魔神】の攻撃をなんとかギリギリのところで避けてから、【魔神】の頭に全力のパンチをお見舞いすると、ついに【魔神】の顔が歪んだかと思うとその痛みに耐えかねたのかその場で動かなくなった。俺はチャンスだと思って何度も連続で殴り続けた。そうすることでようやく【魔神】の意識が途切れそうになっていた。それを見た俺はかなり動揺してしまったが、どうにか平静を保ちながら最後の一撃を加えようと構える。

【魔人化】を使用したことによって身体能力が大幅に上昇したからなのか、俺自身の体が壊れ始めている。そして俺の視界にもヒビが入って来て今すぐ治療しなければ死に至るだろうということがわかるほどだった。

「おい、今どんな気分なんだ?【魔神】お前の目の前にいるのはもうお前の敵じゃなくて、お前を倒すことができるかもしれない唯一の存在になったわけだ。これでわかっただろう?お前と俺との格の違いってやつがさ。いい加減に諦めて、楽にしてくれないか?」

「はぁはぁ。お前に何が分かるというんだよ。僕のことは絶対に理解できないさ。僕は選ばれた人間なんだ。だから僕は負けるはずがないんだ」

俺はバルバトスの言葉を鼻で笑った。確かに俺はバルバトスの過去は分からない。だけど今だけは俺の感情は理解できるはずだ。なぜなら、俺は自分の強さに溺れてしまって、そして最後には自分を見失った挙句、マリーを傷つけてしまいそうな状況になってしまった。だから俺はバルバトスに少しだけ共感できていた。だからこそ俺にできることをバルバトスにしようと思ったのだ。俺はそんなことを考えていたせいか、一瞬だがバルバトスのことを気にかけることができていなかった。

俺はそんな隙だらけの状態からバルバトスの攻撃を受け止めることができず、俺は【魔人化】が解除されてしまう。しかしそんな状態の中であっても【武魔一体】を使うことによって何とか【魔神】の攻撃を受け止めきることができた。

俺はそんな危機的状態の中で【魔闘技】と、新しく使えるようになった【魔闘術】と、俺が編み出した技を組み合わせて技を使うことにした。俺が新たに考えた技の技名は俺がこの世界で初めて使った技でもあるから、この技に【真武闘神化】という名前を付けることにした。

そして俺はその技を使おうとした時だった。

「お前はまだ僕が負けると決まったわけではない。僕はまだ負けてはいない」

バルバトスはそう言って魔法を放ってきた。俺は魔法を回避しようとしたが、先ほどまでとは桁違いの魔法が放たれたため俺はそれを食らってしまった。そして俺が先ほどまで立っていたところには大きなクレーターができているが、俺の体からは煙が出ていたが俺はすぐに立ち上がることができた。

そして俺の目の前に突然大きな魔力を感じた俺は咄嵯にその魔力を感じる方向を見て、先ほど放った技の続きを行おうとするが俺の眼前に巨大な火柱が現れてしまい俺はそれに巻き込まれることになった。その威力が凄まじいものだったため俺はそのまま後方へと吹っ飛ばされてしまう。だが、吹き飛ばされながらも体勢を整えることに成功した俺は、【真武闘王化】を使ってさらにスピードを上げて、先ほどの場所に戻ると【魔神】と目が合うがすぐに俺は【魔神】に攻撃を仕掛ける。俺は渾身の一撃を相手に打ち込むと【魔神】に直撃したが【魔神】はその攻撃を受け止めた。

「くっ、さすがにこれ以上攻撃を受けるのは無理があるな。よし、ここら辺が潮時のようだね」【魔神】が何かを言い終わった途端に俺の体がボロボロと崩れ始めてしまった。

「ふぅー、危なかったね。今回はここまでだよ。君たちはもう少しで強くなるだろうね。君たちが強くなればなるほど、君たちを殺すために僕が強くなって君たちに復讐を果たせることに期待しているよ」

俺はそんな言葉を最後に聞いてからすぐに意識を失ってしまった。

「コウ!目を覚まして!」

俺は誰かの声が聞こえてきたような気がしたけど俺は今、それどころではなかった。【魔帝】に俺は攻撃されて、俺は死ぬ寸前の状態になってしまっていた。このまま俺は確実に殺されて終わるのだろうと思っていた。

俺のスキルは俺に恩恵を与えるものだ。そして俺は俺が持っているスキルのすべてを把握していて、そのすべてが今の俺のステータスに反映させている。だが俺の場合はそれだけではなくて、もう一つ別の効果が上乗せされている。

俺の持つ【商人】の職業に関係してくる能力なのだが、俺は自分のステータスが相手より低い状態で戦う場合に限り俺のステータスの2倍の強さを発揮できるという特殊な効果を持っている。この【商人】の特殊性に気づいた俺はすぐに【勇者召喚】される前までに、【商人】以外の全てのジョブの固有スキルを全て調べ上げた。その結果が今の俺が保有していて、使うことができる固有スキルの数になる。ちなみに今の俺の保有している固有スキルの数を言えばおそらく世界一だと思う。なぜこんなことを言ったかというとそれは、この固有スキルというのは俺だけが使用できるスキルだから、もしこの固有スキルを他人に奪われれば俺でも対抗策はなくなる。つまりこの世には【商人】の固有スキルに対抗する方法はないと言っても過言ではない。そしてこの世界にきてから、俺は自分が保有していた全種類の【固有スキル】の把握に努めた。そして俺は、俺が覚えられるだけの【商人】のすべての固有スキルを覚えることに成功したのだ。

ただ俺は俺が習得することのできる固有スキルには限りがあるため、俺は全てのスキルをマスターしたというわけではなく、あくまでも全てを覚え終えただけに過ぎないのだ。そして【勇者召喚】されてから、この世界で【賢者】になってからの俺は今まで俺が持つことのできなかった固有能力や技能をどんどん手に入れることに成功していた。ただ俺の保有する全ての固有能力、スキルを覚えたところで俺の本来の実力からすると、【賢者】の時はそこまで強くないのである。その理由はこの世界に来たばかりの時に、レベル上げの目的で、俺は【神闘】と【真武闘】を習得するためにひたすら戦闘をしていたのだ。ただその時はレベル上げに精一杯だったために、俺自身の戦闘能力はおざなりにしてしまった結果だった。それに【魔剣聖】が覚醒してからは【魔剣聖】の力も試してみたかったからということもあって、ほとんど訓練はして来なかった。

俺がそんなことを考えていたのには理由があった。俺は【魔神】との戦いの最中、意識を失っていたのだが【魔神】の最後の攻撃をもろに食らってしまって、体の中が大変なことになっていたからだ。そのため【商人】の力で回復を試みたがうまくいかないのだった。

(俺の力が足りないせいなのか?それともこの状態のままだと、死んでしまうのか?俺はここで死んでしまうのは仕方がないのかもしれない。でも、このままでは絶対に俺は納得できない。俺はもっと強くなりたいんだ)

それからしばらくたっても俺が一向に治る気配がないために、俺は覚悟を決めて俺の中にある【神闘】を発動させようとした瞬間だった。俺が倒れている地面の中から【魔神】が現れたのであった。そして【魔神】は俺に向かって、

「君の魂は素晴らしい力を持っているね。僕は気に入ったよ。だから君は僕が直々に殺すことにする。だけど、まだ殺せないのであれば、せめてもの情けとして、今すぐ僕の奴隷になりたければそうしろ」

そんな言葉を【魔神】が口にしたため俺は少しだけイラついたが、俺の命を助けてくれたのも、また事実だと思ったので、【魔神】の言葉を受け入れるのであった。

「あ、あなたが助けてくれなかったら、俺はもうとっくに死んでいただろう。感謝してもしきれない。俺はまだ、死にたくないんだ。俺はあなたの下につくから俺を生きさせて欲しい。お願いします。俺のことはいくら殴ってくれても構わない。だが、俺の仲間や、家族に手を出した時には容赦なく俺を殺しに来てもいい。だから、どうか頼む」

「へぇー、本当にいいのか?それで後悔はしないのか?」

「もちろんだ。俺はまだ、やりたいことがたくさんある。せっかくマリーと一緒に暮らしていけるところまでこれたんだし、俺はまだまだ生きたいんだよ」

「わかった。君の意思を尊重することにする」

こうして俺は完全に【魔神】の下についた。

「それじゃ、まずはお前の名前を聞こうか」

「ああそうだな、俺はコウと言う名なんだがお前の名前を教えてくれるか?」

「僕の本当の名前は忘れてしまったが、僕がこの世界の神になる前の名前はベルというらしいんだよね。君がその名前で呼ぶならそれでも別にかまわないけどね」

俺は【魔神】、いやベルがあまりにも自分の名前を気にしていないように思えたので、俺が新しい名前を付けてやることに決めた。

俺はベルのステータスを見たがやはり俺よりも遥かに強いことがわかると、俺の中で【魔帝】が俺の邪魔をしてこないか心配になってしまう。

しかし、俺は俺自身と対話した時に【魔帝】のことについてしっかりと話し合っておいたので、【魔帝】が俺に対して、直接干渉することはほとんどないと予想しているため、今は安心しておくことにしたのだが、俺は【魔神】ではなくて【魔帝】に話を聞くことにした。

「それでは改めて、俺がこの世界に来る前はどんな生活をしていたんだ?俺と会っていたりとかしなかったのかな?その辺のことを聞きたくてさ」

俺は気になったことを素直に【魔帝】に聞いたが、俺の答えを聞いた途端に【魔帝】の顔色が悪くなってしまった。

「う、嘘をつかないでくれよ。そんなの僕には信じられないことなんだけど」

「本当なんだよ。お前は俺と同じで、日本っていう国から召喚されたんじゃないのか?しかもその様子だと、俺のことを知っているようだな」

「そ、それは確かに君が言っているとおりだよ。僕だって最初はそんなことを信じていなかったけどね。それに僕は今、【魔帝国】を統べる皇帝になっているんだぞ!その国の元トップが実は魔王になってしまっているなんてことありえないじゃないか!もしそれが真実だというのであれば、その証拠を見せてもらいたいところだね」

【魔帝】はそう言い切った。俺としては【魔神】であるベルに言われたら信じてしまうかもしれないのだが【魔帝】である彼が言ったのならば、その発言の真偽を俺は確認することはできないため【魔帝】に聞いてみるしかなかった。

「ま、とりあえずは【魔神】の言うことだし俺の質問にはちゃんと答えろよ。まずは【魔帝国】のトップということは、俺と会ったのは何年ぐらい前のことだ?」

俺の問いかけに対して【魔帝】はその問いについては簡単に答えたのだった。【魔帝】によると彼はこの世界に召喚されてから、一年後に俺のことを偶然見つけてしまいその後、ずっと探していたようだ。それだけでなく俺を探す過程で仲間を増やしていったようで、【勇者】が仲間になってくれるかもしれないということで協力を要請されていたみたいだったが【勇者】は頑なに断ったらしく結局、誰も協力してくれなかったのだという。【魔帝】は自分の国を捨ててでも俺に会いにきたかったようだった。俺はそんなに想われてとても嬉しい気持ちになっていたが、それと同時に自分がそんなに愛されている存在になっていたのかと考えるだけで嬉しくて、胸の奥が苦しくなるのを感じたのだった。

俺も自分がなぜこの世界にきてしまっているのかを確かめたくなったので再び【鑑定】を使って【魔神】の情報をもう一度見てみることにしたのだった。

【魔神】

年齢 —歳 性別 男(肉体年齢18才)

職業 【魔神】→魔族の王(魔人族)

種族【魔神】【悪魔】【亜神】【神】

LV

— HP 10000/10000 MP — 物理攻撃力 99999900 魔法攻撃力 99000 防御力 100000 俊敏性 1001000 命中率 0 体力 110100113 運 1000 魅力 90 状態 なし 装備 武器: 聖剣エクスカリバー【伝説級】

体防具:黒金竜鎧【伝説級】

頭防具:黄金皇冠【伝説級】

腕防具;暗黒の籠手【伝説級】

脚防具:暗黒の靴【伝説級】

アクセサリー類

:無限収納のペンダント【神話級】

→無限収納のリュック【神話級】

固有能力【魔眼】【超絶記憶】【解析者】【隠蔽者】【完全複写】

固有技能【魔闘技】【真武闘】【武闘奥義】【龍闘】【獣闘】

【精霊闘】【魔力操作】【闘気操作】【瞬足】【剛力】【神闘】

その他 称号【魔帝の契約】【悪魔の契約】【魔神の契約】【全知全能】

加護【全女神の加護】

レベル差がありすぎるせいなのか、俺では【魔神】の情報を完全に見抜くことができなかったので、俺は一度自分のステータスを確認すると俺のレベルは500を超えており、俺も強くなっていることを実感するのであった。

(レベルは500を超えているがそれでも、ステータス的には全然追いついていないよな。それに加えて【魔帝】もステータスは相当高かったよな。これは俺の修行がまだまだ足りないということなのか?ただ俺は【勇者】と会う前にもレベルを上げてきたはずだからそこまで低いというわけでもないはずなんだけどな。ただ俺のステータスが高すぎるから比較する相手が悪いのかもしれんが。でも俺は【魔神】を俺の支配下に置くことに成功した。これから【魔神】がどういうふうに俺を手助けしてくれるのかというのはとても楽しみだな。そして俺は【魔神】と一緒に俺の元いた世界に帰れる方法を一緒に探したいと思っているんだ。この世界を滅ぼさないでほしいとも頼んでおいたが、俺が【勇者】と戦わなければ【魔帝】はこの世界が滅びることを知っているのか?)

「おい【魔神】よ、お前はなんでそんなに強いんだ?【魔神】というくらいだからもっと弱々しいものをイメージしていたんだけど。なんか見た目と違うよなお前って。」

「ああ、僕の本当の姿はこんなにも醜い化け物ではないんだ。僕の本当の姿を今見せることはできないが、今の姿よりも醜いことは確かだと思う。今度僕に見せてくれないか?」

俺は【魔神】の言葉に違和感を覚えると俺の中で【魔帝】が俺に話しかけてくる。

「【魔神】は本当の姿を君に見てほしいみたいなんだ。君が見せて欲しいといえばおそらく、その言葉に従うだろう。しかし【魔神】には、【魔神】にしかない考えがあって、今のような姿になったんじゃないかと俺は推測しているんだ。俺も本当の姿が見たいな。俺のステータスが低すぎて見ることのできない俺の力になって欲しい。そしていつか【魔神】の力を解放してやろうじゃないか」

俺は【魔帝】が言ってきた内容を聞いて【魔神】と同じような思考を持っていることに驚いたが、今は【魔帝】の考えを尊重してあげることに決めたのだった。俺はそのことを【魔神】に伝える。

「わかった。それじゃあ俺のステータスを上げる方法を探しながら、この世界にきた時の目的を果たすためにも俺が強くなれるように手伝ってもらうことにするか」

「ありがとう。僕もできるだけ、君が目的を達成できるように協力しようと思う。僕の力が君の役に立てるように努力しよう。それで僕のステータスを見るためにはどうすればいいんだ?」

【魔帝】は自分からそういってくるなんて本当に珍しいこともあるものだと思ってしまうがとりあえずは【魔神】に協力してあげないといけなくなるなと思い俺の力を解放するために俺は協力してもらうことにした。俺はとりあえずは【魔帝】に俺に命令をする権限を与えた。

俺はその権限を使うことで、まず俺を奴隷のように扱いたいというのなら俺は抵抗するがそうでないなら受け入れてやるというスタンスをとったのだが【魔帝】はその俺の行動が気に入らないようだったので俺は【魔帝】の目の前で俺の力を解放することにした。すると【魔帝】はかなり興奮したような表情になりその瞳は真っ赤に染まっていた。しかしすぐに落ち着きを取り戻したようで俺は【魔帝】のことを信用してみるのもいいのかもしれないと思うのであった。だがやはり俺と話すときは、敬語口調になってしまうので、そこはなんとかしないといけないとは思った。そのため、一応は俺の方が立場的に上だということを忘れずに伝えておくことにした。そして今後、対等な立場で話し合うことができるようになればと思っていて、今は俺のことを少しでも【魔帝】の心の中に刻みつけておきたいのだ。それにしても【魔帝】がこんな状態になるほどのスキルを俺が所持していることに俺自身も驚いてしまったのである。俺はそんなことより今はステータスがどれぐらい上昇したのかがとても気になるのでさっそく確認することにした。

まず俺は【魔帝】に【魔帝】の現在のレベルを俺に報告しろという命令を俺は下す。そして俺のステータスを確認してみると、俺はその光景を見て思わず笑ってしまっていた。

【名前】

草薙

真樹 Lv:999(1UP)

HP 9,999,999,999/10,000,000,000(1UP)

MP 8,900,99,000,000,0(5UP)

物理攻撃力:10,999,000(4UP)

魔法攻撃力:100

防御力:10(3UP)

俊敏性:20(2UP)

命中率:200(7UP)

体力:500(3UP)

:1000(MAX)

魅力

:150(8UP)

《ユニークスキル》 【絶対領域】LV- →半径500メートル以内にいる生物は、 俺の命令に逆らうことはできなくなってしまう。

【完全鑑定】LV3 →全ての物を鑑定することができる。

《固有能力》 【魔闘技】LV- NEW! 【全知全能】LV- →あらゆるものを調べ尽くすことができる。

【神眼】LV5 NEW! 【神速思考】LV- NEW! →【神域転移】を使用せずに思考スピードが音速を超えて動 ける。

【魔剣召喚】LV6 NEW! →自分の魔力を使用して、魔剣を召喚できる。

《オリジナルスキル》 【限界突破】LV? →ステータス値が数値の上限を突破する。

NEW 【神魔眼】LV-??? NEW 【魔神眼】LV- NEW 【龍魔眼】L????? NEW《獲得済み称号》 <<魔剣の主(new)>><亜神魔導を極めし者(New)><真魔神(神魔の領域)

の眷属(魔神の眷族New)

俺は【魔神】にステータスを伝えると、俺は笑いを抑えることができず、つい笑ってしまったのだった。それをみて【魔帝】はなぜか俺に近づいてきていきなり俺に対して土下座をしたのであった。それを見た俺は少しだけ【魔帝】が可哀想だなと感じていた。それは【魔帝】が自分の強さについて過信しているせいで自分のことを強いと思っていたが実際はそんなこともなく、むしろ俺が異常なだけで普通に見れば俺の強さがどれだけのものなのかを身をもって体験したので、【魔帝】に俺が異常であることを伝えてやったのである。

「俺は普通の人間だぞ。俺にそんなことをされても何も嬉しくはない。だから早く俺の前で土下座するんじゃなくて立ってくれないか?【魔帝】、俺はまだ【魔帝】を完全に支配下に置いたわけではないからそういう態度をとる必要もないんだ」

「はい、わかりました。それでは、私は貴方の手足となってこの世界のために尽くします。この世界の魔人族は私を含め全員が魔帝の配下です。魔人は全員魔帝には絶対服従しております。どうか私の力をお使いください。そして必ず、私がこの世界の支配者になってみせましょう」

「はぁ、【魔帝】お前は自分のことを勘違いしているようだな。俺の配下になってくれと俺は頼んではいない。俺の支配下に入るかどうかは自由意志に任せる。だから、もし俺の支配下に入ったからといって、俺が無理やりお前を支配することはないんだ。わかったか?」

俺は【魔帝】がまた同じ事を繰り返し言い出したので面倒くさくなり、俺はもういっそのこと俺の言うことに素直に従ってもらおうと思ってそう言ったのだがそれでも俺を説得するように言葉を続けていたので、結局俺は【魔帝】の言葉を全て無視することに決めると俺は、自分の力の解放を試してみることにする。

まずは、この【全女神の加護】の効果を詳しく知ることから始める必要があるなと思ったのだった。この【全女神の加護】の能力は、俺の知っているものとは大きくかけ離れていた。この効果は、おそらくステータスだけではなく、このスキルが使えるということ自体がかなり特別なものであるということだろう。この効果のおかげで俺のレベルは上限に達していない。レベルが上限に達しているということはつまりレベルが上がることがないということだからな。

俺は、ステータスの上昇幅の確認もしなければならないため、【魔帝】に俺の能力上昇分の数値を報告してもらうと俺は思わず絶句してしまうことになる。俺はこんな数値を見てしまったら自分が【勇者】なんかよりも遥か上にいることを理解したのだった。そして【魔帝】に俺はステータスがおかしいということを説明して、今後はステータスを隠そうとも思っているが【魔神】として行動している間は、ステータスを隠して動くことはできないので、ステータスのことは秘密にしてもらえるように【魔帝】に頼むのだった。すると【魔帝】はすぐに理解してくれたようで俺は安心することができた。そして俺は自分のステータスを確認したことで気になっていたことがあり、それを確かめておきたいと思う。

「なあ【魔帝】俺はこの世界にくる時に『全魔法』の本を手に入れたはずだよな。その本をもう一度使うことができたりしないかな」

「ああ、あれは君とこの世界を繋いでくれるものだったから君の意思があればこの世界でも使用することが出来るよ。だけどあの本を使うのに条件があったりするけど、大丈夫かい」

「ああ、そのことについても俺は確認しておきたかったんだ。どんなに強力なスキルでも使えないのなら宝の持ち腐れにしかならないからね。俺が聞きたいのはその本は一度使用したことがある人物以外だと使用することができないのかっていうことと、この本が俺の手元にある時しか俺は【全魔法】を使用することが出来ないのかということだ。どうなんだ?」

俺は、俺の考えが間違っていないかどうかをまずは確認するためにそう質問をしてみた。俺の考えが正しいならその二つの条件を満たした上で【全女神の祝福】を使えば俺は【魔法創造】の魔法を手に入れることが出来る。俺の考えていたとおりのことが本当に起こるのならば【全魔法】のスキルは手に入れやすくなるということになりそうだからだ。

【魔帝】は俺の言葉を聞くと、俺に少し待っていて欲しいと言ってどこかに行ってしまうと、すぐに戻ってきて【魔帝】の手には古ぼけた茶色の本が握られていた。俺がその【魔帝】が持っているものを見ていると俺の頭の中に【魔法の本】の説明が思い浮かぶ。

俺の予想は当たっていたようであり、この【全女神の祝福】がなくても俺はスキルを手にすることが可能だということが分かったのだ。ただこの【魔法の書】には注意書きがあり、スキルの取得に必要なMPはこの【全女神の加護】を持っている場合は、MPを消費することがなくスキルを取得することができるのだ。しかし、それ以外の場合は、【魔法の書】にMPを流し込むことによりスキルを得ることができるみたいだ。【全魔法】を新しく覚えるための【全魔法の書】なので当然と言えば当然だがな。そして俺はとりあえず、ステータスを偽装したいと思い【魔力隠蔽I】とステータスに表示された能力値を隠すことにした。これはあくまでステータスを偽装するためのものだ。これを使うことでステータスを下げることも上げることもできる優れものなのだ。だがこの【魔力隠蔽】というスキルを他のものに付与することは今の段階では不可能なようである。なぜなら、そもそもこのスキルは俺の持っているものでないと発動しないらしい。そのため、【魔帝】に俺がスキルを覚えたいというとスキルを覚えることができる【魔道神の指輪】というものをくれたので、それを装備しておくことにした。

それから俺の【全女神の祝福】で新たに取得したスキルを見てみると【完全解析】は鑑定系統の最上位スキルで鑑定したものや自分以外のものを調べ尽くし全てを把握することができるスキルだった。また他にも、【万視の瞳】、【未来眼】、【叡智眼】の三つが新たに取得されていたのである。

【神速思考】

→自分の思考が通常の約3倍の速度で動けるようになる。

【神魔眼】→魔力を見ることができるようになる。【千里眼】と同じ効果がある。

NEW →相手と心が繋がっていれば相手の考えていることや見ようと 思えば相手の心を読むことができる。【精神同調】の 効果でさらにパワーアップしている。

俺はそれらのことを改めて再確認できただけでもかなりの成果が得られたと思えるほどに【魔神】が保有している力はとんでもないものだったのである。まぁ、【魔帝】に教えてもらった【全知全能】の力もあるため、あまり驚きはなかったんだけどな。俺がそうやって考え事に没頭していたら急に【魔帝】が話しかけてきたので少しだけ驚いてしまった。俺がそのことを話すとその【魔帝】も同じようなことを思ったらしく、少し俺のことを笑ってしまった。

「はははっ、ごめんごめん驚かせちゃったね。それで君の話していたことなんだけどね実は私は少し知っていたんだよ。なんていったって私も神族だから、この世界のことはだいぶ知っているつもりだよ。だから、私が知っている情報を教えてあげる。この世界は神族たちが作り出してからすでに2000年以上の月日が経過しているの。そしてその間に、この世界の種族間で激しい戦いが起こり、その結果としてこの世界に人間、エルフ、獣人族、亜人族、ドワーフ、竜人族などたくさんの種が誕生した。神族たちはそんな人間の争いを止めようとした。しかしその前に人間が戦争を起こすための道具を作ってしまっていたから止めることは不可能になったのよ。その人間は自分たちを勇者と呼び、魔王と呼ばれる者を倒して世界を平和に導くと言い出してしまった。そんな時この世界に突如現れた魔族は、そんな人間たちに対抗するために作られた兵器みたいな存在だったのよ。

そしてその勇者によって召喚されてしまい、そのまま奴隷となってしまった。魔族はそんな人間たちに反旗を翻して魔族の王を作り上げ人間たちを皆殺しにした。それが【魔神】様がこの世界に降り立ち、初めて行ったこととされているわ。この世界ではその【魔神】がこの世界で好き勝手したおかげで私たち魔族は、この世界の人たちからは魔人と呼ばれ忌み嫌われる対象になってしまったの。だけど私たちは魔人がこの世界の人を殺すような真似はしないと信じていた。だから、この世界から逃げ出した魔人を私たちも一緒に探していた。魔人の王は魔人の中で最も力を持ったものがなるのだから魔人はみんな強い力を有しているの。

それに魔人の中でも【魔導師】【剣聖】といった職業を持つものは特に強い力を持っていて、その強さはレベル500を超えてしまっている。つまりレベルが上限まで達した魔人たちは、魔人も超えた存在としてその実力だけで頂点に立つことができたのよ。そのせいでこの世界にはもう【魔導師】【賢者】【剣豪】などといった職に就いている魔人もいるのよ。この世界を救いたいと思っているのなら絶対にその力が必要な時が来るはずよ。だから君が今のうちに強くなることをオススメするわ。それでは私のところはこれで失礼するわ。最後に言っておくけど君は私の加護を受けてるのよね。それは他の魔人からしたら喉から手が出るくらいに欲しい代物でしょうね。だから気をつけてね」

「ああ、忠告感謝するぜ」

俺は【魔帝】に言われたことを思い出しながらも俺はどうやってこの力を使えるのかを考えていた。

俺が魔人と戦えるレベルまで強くなりたいとは思っているのだが、俺にはかなりの問題が存在しているのだ。それは【魔神】というジョブが、そもそも戦闘を生業としているものにはあまりにも向いていないということである。【魔神】の固有スキル【魔法創造】を使えばなんとかなる可能性はあると思うが俺にはそこまでの力があるようにも感じられないからな。やはり魔人を倒せるほどの力が無ければいけない。そこで、俺はまずはこの世界で生きていくための拠点を作ろうと考えた。その方が動きやすくていいだろう。

そして俺は拠点を作り終えると、その街で一番高い建物の屋上に登っていく。俺はこれから自分が住む街の景観を楽しみたかったのでわざわざこの建物に来たのである。この街はどうやらかなり栄えていて色々な店が存在していたのだ。この建物もその店の一つのようだ。俺は一通り見渡した後その街並みを見下ろしてみるととても綺麗に見えた。その景色に満足すると俺は自分のステータスを確認することにした。

俺が【魔帝】の加護を受けている時に【魔力隠蔽I】のスキルは【隠蔽】から進化をして新しい【全偽装】へと変化をした。これは今まで【隠蔽】の能力を完璧に使いこなせていなかったということを表しているのか、もしくは、元々存在していたスキルを隠蔽で隠していただけなのかは分からないが俺にとっては良い方に進化したと言えると思う。俺はその【全偽装】のステータスを確認しようと思い【魔帝】がくれたスキルを発動させたのである。

名前:神崎悠里

性別 :男

種族 :?

年齢 :17

レベル:156(99+155)/2999【0】

HP

:252045000

MP 208458000 筋力:5074980

体力 :5052910

魔力 460280000 物理耐久力 :5057901

魔法耐久力 :4598916

敏捷 :504870 ▲

(んー、やっぱりこのスキルがおかしいんだよなぁ。まずレベルが上がりすぎて意味がわからない。しかも、【魔帝の祝福】と称号の効果が強すぎる。この二つのお陰で俺の強さは普通の人と比べてかなり異常だ。これはこの先どうにかしないといつかトラブルに巻き込まれそうだな。とりあえず俺にできる対処法としては、まずは自分のステータスが他人に知られないようにする必要があるか。ただ【魔帝】の言ったことが本当なら俺は神族たちからすれば喉から手が出るほど欲しくなるようなスキルを保有しているわけだからすぐに神界にいる他の魔人に目を付けられる可能性もある。俺はそのことについて考えてみた。その結果、俺が自分の身を護るために必要になるスキルを考え付いた。それは【魔法反射装甲I】と【全魔法耐性強化I】と【魔法反射IV】だ。

【魔法反射】の効果は、その名の通り、魔法を跳ね返すことが可能になる能力である。そしてこのスキルを持っている限り全ての魔法を弾き返すことが出来るというのだ。しかし魔法にも相性があるので万能とは言えないらしいが。

【全魔法】の効果については簡単に言えば全属性魔法を使うことが可能となるスキルだ。魔法にはそれぞれ弱点が存在していてその魔法の効果を打ち消すことも可能となる。このスキルがあれば大体の攻撃は打ち消してしまうことが可能であり、俺にとってはかなりありがたいスキルなのだ。また、俺の持つ【万視の瞳】の能力と組み合わせればさらに威力は上がるはずだ。この【全女神の祝福】で新たに取得した【万視の瞳】の能力は、視界に入った者のあらゆる情報を手に入れることができると言うものなのだがこれは、あくまでも見る対象の魔力を見ることのできる範囲までしか広げることはできないようで基本的には俺の知っている人限定にしか発動ができないようだ。

次に俺が最も警戒している【魔帝】から授かった神族の固有スキルの一つである【神の導きII改】である。

この効果は対象の人物を強制的に仲間に加える効果があるらしくこれを使われた場合、おそらく俺は無理やり連れていかれそうになる可能性が高いと思ったからだ。

それからもう一つ考えたものがあるのだがこれに関してもあまり使うのは危険だと俺の直感が告げているのである。なので、まだ保留しておこうと考えている。

それからしばらく俺がこの街について考えていたら、俺の目の前に突然【魔帝】が現れてしまったので俺は驚きのあまり、思わず叫んでしまった。

「ぎゃぁぁぁ!!出たぁぁ!!」俺は【魔帝】を見て悲鳴を上げた後に、恐る恐る話しかけることにした。

「えっ!ちょ、ちょっとなんでそんなに驚いてるのよ。なんか私が幽霊にでも見えるって言うの?」

俺の反応を見た彼女は少し怒ったように話しかけてきた。そんな彼女のことを俺は睨むようにして見ると少し怯えるようにして、また消えてしまうのではないかと心配していたのだがどうやらそういうわけではなかったようだ。

俺は少しだけ落ち着きを取り戻してからもう一度、彼女に声をかけた。

「いや、別にそうじゃないんだけどいきなり出てきたから驚いてしまったんだ」

「そ、そうだったのね、ごめんなさいね。驚かせちゃって、でもあなたが急に現れるのが悪いんじゃないの?私だって一応この世界で最強と言われている種族の一人なんだから少しは気配を感じ取ってほしいものよ」

「ああ、ごめんごめん。悪気はないんだよ、ごめんごめん。それでどうして【魔帝】はここに来たのか教えてくれないか」

俺が謝りながらも、このタイミングできた理由を聞くとそのことについて【魔帝】はすぐに話し始めた。

「私、さっき言ったことの訂正しなくちゃいけなくなったのよ。私は確かに君の力をこの目で確かめたから大丈夫だけど君は全然強くなかったの。だから、これから私は君に試練を与えようと思うの。その課題は簡単よ、君のその力を完全に引き出したら合格にしてあげるわ。だけどそれじゃあ面白くないから、もしこの試験で落ちたとしても私は君を無理に連れて行こうとはしないから安心してちょうだい。

だから君に一つ忠告をしてあげる。今から行くところはね【死王城】っていうダンジョンがあるの。そこを君に一人で攻略してもらうつもりだから準備をしときなさい。そこで待っていてあげるから、早くここまで来ることを祈っているわ。それじゃあいいわね」

【魔帝】は俺に向かってそう言って来たのだが、俺が【死王の魔導書】を持っていることは知っているはずなのにそれをわざわざ聞いてきたのだ。そのことに、疑問を感じたので質問をしようとした瞬間には【魔帝】の姿がどこにもなかったのである。

俺は仕方なくこの建物から出ていくことにした。この世界に来て初めての冒険が始まるのだ、それに俺も早く自分のステータスを確認するためにも早くこの【死王】が支配をしていると言われている迷宮に挑みたいと思っているのだ。だから俺は早速、この街を出て【死王の魔導具】の【死王の魔杖】を取り出したのであった。この【魔帝】にもらった魔装【魔帝武具シリーズ】の一つ、それがこの【死王の魔杖】という魔導武器である。これはこの武器はどんなものでもこの世に存在する魔力で作られている物質を崩壊させることができる力を持っていてこの武器を使えばほとんどのものが消滅させることが可能というとんでもないものだ。もちろん俺には、この【魔帝武具シリーズ】の中でも【魔帝の魔刀】という剣が存在している。この剣はこの世界の魔法を全て斬り伏せることの出来る代物なのである。この【魔帝武具】シリーズは、この【魔帝の魔銃】と、【魔帝の魔剣】の他にあと二つ存在してるのだ。俺が、【魔帝の魔剣】以外のこの二つの魔剣を使っていない理由は、俺は【万物の加護者】によってMPの上限が無くなっていることから俺は魔素が濃ければ濃い程、その力を発揮することが出来る。そして俺の持っている【魔帝の魔弓】は魔弾に属性魔法を乗せることで攻撃ができるというもので、俺自身の魔力が魔弾として発射されている状態なため俺は魔矢を無限に放つことが可能となっている。

俺が今回この【魔帝魔杖】を選んだのは単純に俺自身が接近戦をする必要がなくなったからである。なぜならば、俺は【魔帝】にステータスを改竄されているため俺が近接戦闘で敵とまともに戦うことは不可能となってしまったからなのだ。そのため俺は遠距離からの魔法攻撃に特化していくことに決めた。そのために俺は、俺が使える魔法の中でこの【魔帝魔杖】との組み合わせが良いものを考えた結果この二つのスキルに絞られた。【魔砲魔法】【魔雷砲】の二種類をこの魔杖と合わせて使っていくと俺は確信していたのである。そして俺は街を出て少し離れた森の中に入って行った。それから俺は自分がどれだけ戦えるようになっているのかを調べるべく、まず初めに自分の周りにあるもの全てを消し去れるかの実験を行った。その結果俺は自分が触れてさえいればこの世のすべてのものを消すことが出来ることを確認したのである。

そして次は、その実験の成果の確認を行うことにする。それはこの前倒した怪物が俺に攻撃をした時の現象を検証することだった。その検証というのはまずは【万視の瞳】の力を使って俺のことを攻撃してきた相手の情報を見極めるというものである。その方法は単純で【万視の瞳】を使いながら相手を視界に入れておくだけだ。すると俺の頭の中には相手の名前や性別などの情報が見えてくる。俺がこのスキルの一番の強みは、相手がどういう行動をするのかということが分かるということだ。しかし【魔帝】から貰った称号のおかげで俺には未来予知に近い予測が可能になっていた。この【魔帝】から貰った称号のお陰もあって俺の攻撃は確実に敵にダメージを与えることができるようになっていたのである。

(やっぱり【鑑定眼】の能力が上がっている。しかも、称号の効果もあるせいかさらに詳しく分かるようになったぞ)

名前:無し

性別 :男

年齢 :15

レベル:283

HP :258900/55000

筋力:500000

体力 :500000

耐性:500000

敏捷:500000

運 :500000 【ユニークスキル】

剣術I(S+ランクアップ可能!)

拳術II 魔法反射I(SSS-ランックアップ不可能!)

【エクストラスキル】

闘神化 武王神(Aランクダウン不可!)

スキル【格闘王】【瞬歩】【威圧】【神速】【身体強化III】【魔力操作】【風属性強化】【光属性強化】【気配感知】【魔力制御】【限界突破】【魔力自動回復】【無詠唱】【経験値増加】【魔力消費激減】【超絶成長】

称号: 魔を統べるもの 武を極めるもの 武神龍を討伐するもの 龍殺者 龍神の呪いを受けている 覇王 天を超越する者 天空の王 竜魔を従わせる者 竜魔 このステータスならなんとかなるかもしれないと思い、今度は本気で殺し合いをすることを決意する。俺の今の本気の戦闘スタイルとしては俺が使うことのできる魔法を、魔弾と一体化させることで、さらに威力と速度を高めていった上で発動させることである。俺は【魔帝】から貰っていた【魔皇槍】の【神装解放】のボタンを押してみたのだが、何も起こらなかった。この【魔皇帝の魔刀】にも同じような能力があるらしいのだが、俺はまだ使いこなすことが出来ないようだ。それから俺は試しに俺に攻撃をしてきているこの【死王魔狼】の群れと戦ってみることにした。俺は【死王魔獣の毛皮】を発動させると俺は目の前にいる敵を睨むように見た。そして俺の頭の中に【死王】という文字が表示されてから、俺は死んでいる【死王魔狼】に向かって走っていき蹴り飛ばすことで、その魔獣を粉々にしてしまった。その後、また違う方向に向かっていく【死王死鳥】がいたので俺は【死魔導師】を使ってその【死霊人形】を一瞬にして消してしまう。俺が次に目を向けたのは【死王】であった。

そして、この【死皇帝蛇魔蟲】が出現した時に使った魔法である【冥獄炎弾】を発動させてしまったのだ。俺はその瞬間に、俺は死んでいるのが分かっていた。そして俺は【死皇帝】の【冥呪魔術】を使うことで【死帝魔道具】を一つ手に入れたのである。

俺は【死王魔杖】で、今しがた死んだ俺に対して攻撃して来た敵に対して【死の裁き】を発動させたのだ。俺に攻撃を仕掛けてきた【死死王魔猪人】はその場で崩れ落ちると消えてしまい俺は無事に生き残った。

(やっぱり、これくらい強い奴らがゴロゴロしているんだったら俺の持っている魔装を使うしかないのかもな。この世界に俺の常識は通用しないってことが分かった以上は、俺はこの魔導武器を使ってでも強くならないとダメだよな。よし、決めたぜ俺はこれからどんどん魔装を解放していく。この【魔帝武具シリーズ】は【死帝魔杖】だけじゃないんだよな。あと三つあるんだ。その三つの魔武器を解放するまで、まだまだ時間が必要かも知れねえから、その分強くなってやるよ。そうじゃなかったらこれからの戦いを乗り切るなんて出来やしないからな。でも、俺には【死王の加護】っていう反則級な力があるからそこまで焦らずに行っていこうと思う。それこそ死ぬことを恐れないぐらいの精神力がないと俺は生き残れないはずだからな。まあとりあえずはあの迷宮に潜り込む準備をしなくちゃだ。それにはまずはこの森を出ようと思ったんだけど、そういえばここはどこなんだ?)

俺は、そう思い【死魔剣】を使って周囲の魔力の流れを読み取ろうとしたのだがこの周辺に俺の知っている生物が一切存在しなかったのだ。そこで俺がこの世界について知るためにもこの【魔皇帝の魔盾】の力で世界全体のマップを確認してみることを試みた。その結果俺は驚愕することになる。

「は?なんでこんなことになってるんだよ」

俺は思わずそう呟いてしまうほどにこの世界は異常なことになっているのであった。この世界は、今までに生きてきた世界とは全くの別物で俺はどうすればいいのかわからなくなってしまった。この世界には、魔素が存在していないようなのである。そのため俺は魔力が練れなくなってしまいこの世界での俺は魔法を行使できなくなるということになってしまうのだ。つまり俺はもう魔法も魔武器の力も使えないということになるのである。だからといって俺は魔法を使えなくなるのを恐れているわけではない。

俺は魔法を使えることが幸せだと思えなくなっているからだ。この世界の魔族が魔法を使わないのになぜ俺だけが魔法が使えるのかという疑問を持っているのだ。だから俺はこの世界の魔法を使ってこの魔帝を倒してやりたいと思っているのだ。この世界の魔法がどんな魔法なのか知らないけど魔帝の力があればこの世界でも俺は戦える気がした。だからこそ、俺は自分の力で魔族の長に勝たなければいけないと感じるようになったのであった。

(まずは、ここの魔素の濃度を濃くする方法を探さないとダメだな。この魔杖の力を使えば簡単に出来るんじゃないだろうか。だってこいつは【魔帝】が作ったものだからな。魔石が埋め込まれていてそれを起動することで使えるみたいだし。それにしても魔石の魔素が全然吸収されないから俺は困っているんだけど。どうにか出来ないものだろうか。

それから、この魔杖の本当の名前は『魔杖』ではなく『万魔筒』というものなのだ。万魔筒という名前には二つの意味がある。それは、この武器の名前でもあるこの『魔杖』という言葉と、『魔を操りし者へ送る』という意味が込められている。そしてもう一つの意味としては魔を滅するということだ。魔を滅する。この世界において魔を消し去るということは絶対にあり得ない現象だということを俺はすでに知っているのでその二つを合わせて、魔を滅する者というふうに俺は解釈したのである。しかしこの万魔筒という名前は俺が考えたものじゃない。なぜならば俺は魔を消滅させるというイメージだけで、魔を滅するという言葉は頭に浮かんでこなかったからである)

しかしいくら待っても魔石を起動させてもその機能を使いこなすことができないので俺は途方に暮れていたのである。

(俺はどうしてこうなったかを考え始めた。そもそもこの魔素が全く無いというのは俺の予想していた事態とはかけ離れているわけだがそれでも俺の考えていた最悪の想定の範囲内であることは変わりがないのだと思う。この世界には俺以外にも人間が存在しているのかもしれないけど俺以外の人間のことは今は考える必要はないのである。俺が一番考えなくてはならない相手がいるのでそいつのことに集中しないといけない。俺が最も恐れているのは魔族ではないので、この俺のいる大陸は危険視すべき場所ではない。

そして次に警戒するべき場所は海を隔てた先にある島にいると思われる魔帝だろう。この島にいても特に何のメリットもないと俺の経験が言っている。ならば魔帝と戦うためには俺が元の世界に帰る必要があるという結論に至る。俺の仮説では、俺が死んだことで俺に掛かっていた封印のようなものが解けたのではないかと思うのだ。この世界に飛ばされたときに俺はこの世界での生を全うし、その対価として元いた世界に帰りたいと思っていたのだから、それが反映されてもおかしくはない)

そんなことを考えているときに急に魔帝と俺との間にいたはずのアリナの姉の姿がなくなったので俺は急いで周りを見渡してみたところ、そこには魔獣たちがこちらに向かってくるのが見えたので魔装を使うことにした。

すると魔装を発動したとき【魔皇剣】が輝き出したのである。その光が収まるころには【魔皇槍】【魔皇杖】の二つに変化が現れていた。そして俺は試しに槍に付いている魔石を押し込んでみると魔素を吸収し始めることが出来たのだ。さらに杖にも魔素が吸い込まれるようになっていた。そして【死魔銃】と【死魔弓】にも変化が起き始めていた。

まずは魔弾の魔武器が変化しているようで俺の頭に情報が流れ込んできた。その変化した魔弾を俺が放ってみると、俺のイメージ通りの魔法弾になったのだ。次に【死魔杖】のほうの変化は、【魔弾】を放つことが出来るようになり、しかもその数が増えることになったのだ。これは【魔弾】を複数発動することができるようになったということである。【魔杖】の場合は、その効果範囲を広げることができてその効果が発動した場所に【魔導】と【死魔】を発動できるということが分かったのである。それから、【死魔弓】は、【魔弓】の矢を生み出すことが出来、さらに魔武器自体の性能が上がることが判明した。

さらに俺はこの二つの魔武器の効果を確認したところ、この二種類の魔武器に共通している効果はこの【魔皇帝の魔杖】で生み出した【魔杖】の本来の姿と、【死皇帝の魔槍】の本来の姿を【魔帝武具】で作り出せることができるということであった。俺は早速作ってみることにすると魔杖を作り出した。そして次に魔槍を作り出そうと思った時に俺は【魔皇剣】の力を引き出していることに気づく。【魔皇帝の剣】が【魔皇帝の剣】を形作ることに成功したのだ。俺には、その剣の形状がどのようなものか分かってしまうのでそのイメージ通りに剣を作っていくと【魔剣】が完成した。そして【死皇杖】を【魔皇帝魔刀】に変形させると俺が手に持っていた槍が変化していったのだ。そして最後に魔弓を作り出してそれを俺は構えると、魔弾を大量に放つことによって目の前にいた数十体の敵をまとめて葬り去ることができたのである。この光景を見た他の魔獣たちは恐怖を感じ取ったように逃げ出してしまった。

(ふぅー何とかなるもんだな)

(この世界に来たときはいきなり襲われたりもしたもんな。あれ?そういえば、あいつらは一体どこにいったんだろう?)

(あぁそういうことだったんだな、そういや魔帝を倒した後にすぐに消えたから気になっていたんだよな)

(よし!ここは一旦帰ることにしよう)

(あ!しまった!またあのスキルを忘れていたぞ!)

「【瞬間移動】」

それから俺がこの世界に来る前の世界の自宅の部屋に戻ることに成功して安堵している時であった。俺の家の部屋の中は綺麗さっぱり掃除されているかのように物が一切なかった。それどころか埃一つ落ちていないのである。俺は、その部屋の様子に唖然としてしまい俺はその場で立ち尽くしてしまった。

それから俺はこの部屋をどうすればいいのかを考えなければならなくなったのである。このままここに居続けても俺はいいのだが、もしこの部屋に人が入って来たら俺がこの家の中にいたということがバレてしまうのである。しかしここで暮らすにしても問題がいくつかありそうなのである。俺がこの部屋で暮らしていて何かしらの不都合が出てきてしまう可能性もあり、それを対処しなければならないという問題があった。そこで俺はまずこの部屋の外に出ることを決めてから、どうやってここから外に出ようかということを考え始めたのである。

(そうだ!俺が転移のスキルを持っていることを話せばいいんじゃないか?それで俺のことを不審がっている人が現れたときには【鑑定】で相手のレベルを確認して強い奴だった場合には逃げればいいだけの話だし、そうでなくても戦えばいいんだよな。それに俺が持っているこの二つの魔道具を使って魔武器を作る練習をすることも出来るはずだからな。それにはやっぱり実際に戦わなきゃいけなくなると思うから俺は外に出ることを決意した。

そういえば俺がこの世界に来て初めて出会ったあの男はどうしてるんだろうか?あの男は確かこの世界で二番目に強いと言われていた気がするんだけどもしかしたらもうこの大陸を出てどこか別の大陸に行ったのかもしれないし、もうすでにもう死んでる可能性もあるよな)

それから、俺はとりあえず俺の家に侵入者が来る前にこの家の中に何があるのかを調べることにしたのである。しかし何も見つかることはなく、俺の知っている物以外は何も置かれていなかったのだ。この世界の俺はこの家に全くと言ってもいいほど物を置かないような男なのかもしれない。

(俺はこの世界の俺に呆れながらも、これからこの世界で生きるための計画を練ることにしたのである。まずこの世界がどんな世界なのかということを理解する必要がある。俺は、まずは魔帝を倒してこの世界に平和を取り戻さなければならないと思っているので、そのためにはまず魔帝の情報を手に入れなければいけないのだ。魔帝の情報を手に入れるためには俺が知っている限りだと四人いるとされているこの国の王の魔帝と【魔帝の加護】の所持者である魔帝くらいしかいないだろうから、魔帝に会うことを優先しようと思っているのである。俺の知っているこの世界の知識が、どこまで正しいのか確かめる必要がある。だから俺は、この大陸で一番大きな街に向かうことに決めた。俺が一番最初に見つけたこの家の中にあった本によるとこの国の名前は『エルグランド王国』というらしくて、その中でも一番栄えているらしいこの街『メルクリウス』に行くことを決めた。

それから、次にやることが決まっているとすればそれはこの世界を旅をして回って強くなることだ。そして俺は自分のステータスを確認することにしたのである。俺が今の時点でどれほどの強さになっているかを確認したいと思ったからだ。

名前:レイ

種族 :人間

職業:無職

Lv.82 HP:156600/156602

MP:254004/2640005

攻撃力:2400008(+1060003剣+魔装+15000、【死魔皇帝】+50、【万魔筒】+1、魔帝+30 その他は装備の分含む。【死皇帝魔剣】+100 【魔皇帝魔刀】+150)【死皇帝杖】×1、魔帝×6、死魔杖×2 攻撃上昇スキル(【剣術】+剣)

(死剣Lv.2、魔皇剣LV.3、万剣LV.1【魔杖術】+杖)

(死魔剣Lv.2→魔皇帝杖Lv.1へ進化 死魔杖Lv.4→魔皇杖Lv.2、魔皇帝杖Lv.3【死魔武器強化】)

(死皇杖、魔皇杖が融合して新しい魔武器が生まれたことにより、魔皇帝武器、死魔杖が【死皇帝杖】に合体)

防御

力:15720(0/100【魔皇鎧】)

魔装:22200

魔力回復率:500%

魔素濃度1000 固有スキル:全状態異常無効 【魔皇の瞳】

(状態異常無効のスキルの効果が上がっていた。おそらくこれはアリナの姉さんがくれた能力の影響だろう。さらに魔素の回復率がものすごく高くなっていることも気になるけどそれよりももっとすごいのは、魔力回復量が大幅に上がっていることだ。これは俺の体の中にある大量の魔素のおかげだろうな。魔帝武器のおかげで俺自身の体が魔素を吸収するようになっているようだし、これがあれば俺の寿命は大幅に伸びるってわけだな。これは魔武器を作って良かった。)

(それとこのステータスだけど俺のレベルが80を超えてるんだよね。なんかおかしいと思わないかな?)

そして俺は自分が強くなっていることはわかったので次に、俺の使える武器がどのような武器になっているのかを調べていくことにする。まずは、【魔皇帝の指輪】と魔皇の剣の能力を鑑定したのだ。すると、【魔皇帝の指輪】にはこのような説明がされていたのである。


***

<死皇>のリング>死皇の証、死皇帝の加護、不老不死の能力を得ることが出来る魔具である。<死魔皇帝>は使用者の意思に応じて魔武器を生み出すことができるようになる。

***

(なるほどな。つまりこのアイテムには、【死皇帝の杖】と同じように死属性の力が付与しているのかもしれないな。でも不老不死ってなんだろ?それに、このアイテムの効果に意思によって魔武器を作り出すって書いてあるのが、よく分からないな)

それから、【魔皇帝の杖】と死皇帝魔刀の能力を鑑定した結果はこんな感じであった。

(魔皇帝魔刀の能力はこんなのが書かれていた)

魔武器 魔帝武器

(【死魔武器】【魔皇帝武器】【死皇帝魔剣】【死魔剣】【魔皇剣】は融合により【魔皇帝魔刀】に変化)

死魔杖

(魔杖)

【闇杖】【魔杖 ダークロッド】

(闇の魔力が付与された魔法の威力を大幅に増幅させることのできる魔法補助のための魔杖。また魔杖としての特性で、その形状を変えることが可能。杖の状態のときは通常時よりも効果を増幅することができる。また、変形することで様々な形態に変化することができる)

この二つも【死皇帝魔刀】と融合したことで【魔皇帝魔刀】の特殊能力の影響を受けているようでその二つの魔杖に書かれていた文章を読む限りではその二つの魔武器の性能は今までのものより格段に向上していることに間違いはない。そして俺はもう一つの【死皇帝魔弓】の性能を見ることにしたのである。

(そういえば【死魔弓】にどんな効果があるのか調べるのを忘れていたな)

死魔弓 死魔弓は矢を生成することに特化した弓矢で、放たれれば必ず相手に致命傷を与えることの出来るほどの攻撃力がある この三つの魔武具についての説明を読んでみると俺はあることに気づく。俺は【魔帝魔銃】の弾丸を作成する際にもMPを消費するということに今更ながら気づいたのである。俺はそのことに驚いていると【魔皇帝魔剣】から、こんな質問を受けたのだった。

「この三つの武器に共通しているのは魔武器化できるという所だがどうする?作ってみない?」

(そうか、俺はこの世界に来てからは、自分の力で手に入れた素材で作ったりして作ったりしたことはないが、これからのことを考えるとこの三つが使えるようにしておいた方がいいかもしれない。ただ俺の場合は、MPがあるだけあって他の人に比べて圧倒的に武器を作ることができるのは利点なんだよな。まぁ試すなら魔弾を作る時の感覚でやって見よう。とりあえず魔弾を発射するように魔道具を作りたいんだけど、この三つの武器の中で一番イメージしやすいものはやっぱり魔皇帝魔剣だよな。俺の一番使い慣れている魔道具だから、それを使うのが一番良いよな。それじゃ早速やってみるか。俺のこの魔道具を作るのに必要な材料はもう全部手元にあるし、さっそく作ってみるとするかね)

俺はそれから俺は魔皇帝魔剣を使って俺のイメージ通りにこの世界での俺オリジナルの魔弾を作ろうとしていた。しかしこれが上手くいかず俺は結局普通の魔力で撃つことができる普通の矢の形にしてしまったのである。俺はこの武器で普通に使うこともできるのかを確認して、この世界にいる間はなるべく使うようにしようと決め、残りの三個の魔武器も作ることにするのだった。

それから俺は、全ての魔皇帝の魔武器と魔魔皇の魔武器を作成してみた。そして出来上がったそれぞれの武器を見て、俺はその完成度に感動していた。なぜなら、これらの武器は全てこの世界に存在するどの魔武具よりも優れていたからだ。

魔帝武器 魔帝魔剣

(【魔皇帝の証】)

魔帝槍斧 死皇魔槌 死魔魔弓 死魔魔弓

(【死魔の刻印】【死魔の波動】【魔帝の加護】【死魔の瞳】)

死魔の指輪

(【死魔武器強化】)

死魔の首飾り

(【死魔武器操作】)

死魔の腕輪

(【死魔武器強化】)死魔のバングル

(【死魔武器作成】【死魔の瞳】)

死魔の足輪

(【死魔武器強化】)

魔皇帝の杖

(魔皇帝杖)

魔皇帝杖

(【万魔筒】【万魔杖】【死皇帝の杖】融合後)

死魔の魔杖

(【魔皇帝の力】)

この七つのアイテムは俺が、それぞれを鑑定していくとこのような結果が表示されたのである。そして俺は、これらのアイテムに名前をつけることにしたのである。まず俺が作ったのが、この四つの死皇の武器だ。これらはどれも性能が凄まじく高いことがわかっており俺が作り出したのはこれらには特別な力を付与している。

まず最初に、【死皇帝魔杖】は魔武器化する時に俺が魔力を込めていたおかげで魔力回復率が大きく上がり【死皇帝杖】へと進化したのだが、俺が【魔皇帝の瞳】を発動しながら、死皇帝魔杖に触れたことによって、死皇帝魔杖と融合したのであった。その結果死皇帝杖になったのだ。ちなみにこれは、俺が今まで作ってきた中で間違いなく最強の杖であると断言することが出来るほどの性能を誇っている。

次に、死魔剣は魔皇帝魔刀が融合して【死魔刀】に変わった。これも【死皇帝の証】と同じく融合して変わった武器なのだが死皇帝武器の中でも特殊な武器と言えるだろう。この武器は【死皇帝魔弓】に込められた死属魔法の力をさらに強くしたものがこの武器にも付加されているのだ。この武器が持っている能力は【死霊魔術】の技能が使用可能になりまたさらに死属性魔法が扱えるようになるというものだった。この武器は、死皇帝魔刀と融合したこともありかなり強力なものとなっているようだ。そして、魔皇帝魔弓は死皇帝魔弓と融合したことで魔力の回復率が飛躍的に向上しているのはもちろんのこと魔力消費が抑えられており魔力切れの心配がなくなった。

最後に魔皇帝魔槌だが、俺が初めて作り出した死魔杖と死魔のバングルと融合したことで【死魔の魔鎚】となり死魔の指輪が【魔皇帝の瞳】によって【死皇帝の魔指輪】へと変化した。

この四つは俺にとって非常に重要な意味を持つ武器となるだろう。というのも、死皇帝魔剣は俺の切り札の一つでありこれさえあれば俺の負けることはほぼありえないだろうと思うくらい強い武器なのである。死魔杖も同じく俺が死皇帝魔杖に込めることが出来た膨大な量の魔力は、この世界でもおそらくトップクラスだと思われるし、それに【万魔の魔眼】の能力を使えばさらに強くなることは間違いないだろう。

この二つに関しては、死皇帝魔剣のように融合して変化するタイプの魔武器ではないので【魔皇帝の魔武器】とは少し違う形となっている。ただ死皇帝魔杖と融合した【魔皇帝の魔杖】には今までの【死魔武器強化】に加え新たに【魔皇帝の瞳】が追加されているのでその分は死魔杖と融合しても能力が強化されるということになる。

死魔のバングルと融合した死魔の魔腕輪には今までは死魔属性魔法を扱うための腕輪というだけのものしかなかったのだが、今回はそこに死属性魔法を更に強化する【死皇帝の瞳】の能力が追加されることになった。これにより、死魔のバングルの特殊能力は格段に上昇しており【死魔】という特殊能力まで追加されていたのである。死魔の指輪は、この二つの魔具によって強化された死属性がさらに【魔皇帝の瞳】の能力によって【魔皇帝】に強化されるというものだ。これでこの指輪は、【死魔】だけでなく【魔皇帝】の二つの力が宿ることになる。

この三つに関しても【死皇帝の証】と同様に、死皇帝の証である融合をして変化した三つの魔武器は俺の中でかなりの力を持つ武器となっていた。特にこの三つは死皇帝の魔杖や魔皇帝魔槌よりも、攻撃力が高くなっており死皇帝の証の効果によって死属魔法の威力を増幅することができることから俺はその点においても期待をせずにはいられなかったのである。

(よし!これだけあれば、しばらくは何とかなるかな?でも一応俺もまだ死魔武器が融合した状態で死皇帝武器を作ることができるか実験はした方がいいかもな。だってもし融合したまま作ることができたなら俺は今までよりも遥かに強力で使い勝手のいい死魔武器を作り出すことが可能かもしれないんだ。そう考えたら試さないなんて選択肢はないな。とりあえず試すとするかね)

俺はそう思ったあと死魔武器の魔皇帝魔剣を作る前に他の魔皇帝武器を作ることにするのだった。それから俺は死皇帝魔剣に死皇魔杖の魔力を注入して死皇帝魔剣を作りだしそれから死皇帝魔剣の融合も試みることにした。すると死皇帝魔剣に融合し死皇帝魔弓に合体した後の魔武器はこうなったのである。

(うん!上手くできたね。これは良い武器になったみたいで良かったぜ。この武器にはかなり大きな期待ができるし、上手く使えばかなり強くなれそうだから今からすごく楽しみだよ。それで次は、この三つの魔武器を一つにまとめて一つの武器にすることはできないのか確認する為に一度【万魔筒】の中に戻すか。あ、そういえばこの三つの魔武器ってどうやったらいっぺんに合成する事ができるのかわからないんだよな。今度、リシアナに相談してみよっかな)

俺が自分の中で考えていると、そこで俺は俺のことを見ていた視線を感じたのでそちらを向くことにする。そしてそこにはさっきまではいなかったはずの女性がいつの間にかいたのであった。

俺はいきなり現れたその女性に驚いたが、その女性はそんなことは全く気にしていないようで笑顔を見せながらこちらに向かってきたのである。その顔立ちはこの世界の女性の中でも相当整った部類に入るような美しいものでありその金色の髪の毛は美しく輝いていたのだった。

(うーん。これは俺も知らない美人だよな?俺の記憶の中にこんなに可愛いくてしかもスタイル抜群な人は見たことがない。それに何だこの俺の心が吸い込まれるかのような不思議な感じは。俺が今まで会った女性の中のトップレベルかもしれない。この人って誰なんだろうか。一体どうやってここに来たんだろう。ここは俺の隠れ家の一つのはずなのに、俺ですら知らなかった俺の隠れ場所をどうしてこの人が知っているのか。いや今は、それを考える時じゃない。取り敢えず話を聞かないと。俺はまだ何も話してないしな)

俺は、心の中のモヤモヤが消えることはないながらも目の前に現れたその金髪の綺麗なお姉さんに対して警戒心をマックスにして対応する。しかし彼女は敵意があるわけでもないらしく、とても嬉しそうな表情をしていたのである。

「あらまぁ〜。これが噂に聞く魔皇帝武器なのかしらねぇ?それにしても随分強そうだわ。流石は私のご主人様です」と言って微笑んでいたのだ。

そしてその後ろには二人の少女がいてそのうちの1人である水色の長い髪をしていて瞳の色も髪と同じ水玉色をした可愛らしい少女の方は興味深々と言った様子で俺の手元にある三つの武器を見つめていたのである。もう一人の赤紫色の短めに整えられた髪の毛の瞳が青と黄色を足して2で割ったような色の珍しい瞳の少女は冷静な目つきをしながら、まるで品定めをするかのようにじろじろと俺の顔を見つめている。

(えっと、俺のことを見ているのは水色の髪をしている子だけだよね。ていうかさ、俺はこの人達が俺のことを呼び捨てにしていることがかなり気になっているんだけど、俺の聞き間違いではないのだとしたらこの人達って俺が召喚されてすぐにこの部屋にやってきたあの人たちなんじゃないかな。まさか、また同じことを繰り返そうとしているんじゃないよね。もう、勘弁してくれよ)

「あの、失礼かもしれませんがあなた方は俺が召喚された時に俺と一緒にいた方達でしょうか?」

俺は少し嫌だったが念のために彼女たちが誰か聞いてみる。

すると彼女達は不思議そうな顔をしながらも答えてくれたのである。そして彼女の口から発せられた言葉はやはり、俺が予想していたものだった。

「あら、私がお伝えした情報通りご存知なのですわね。私は、この国を統べる国王の娘のリリアーナと申します。そして私の後ろに控えているのは私の側近であるメイアとクレアになります。よろしくお願いしますね魔皇陛下」

(へぇー。この子がリリアーナっていうのか。やっぱりこの国の王女様だったんだ。この二人がリリアーナのお付きの人ってことだね。ていうか、やっぱり俺にまた魔皇にならなければこの城にいる全ての人間を殺すとか言ってくるのかな。また俺に魔王になれとかいうんだろう。もう、そういうの本当にやめてほしい。というかそもそもこの世界に魔皇帝なんか必要なのかね。普通に考えていらないだろう。そんなものを俺に継がせて何がしたいんだ?というかこいつらの目的は結局のところ何なんだ?)

俺はリリアーナと名乗ったこの国に存在している5人の王女の中で一番偉いというか地位が高いであろう人物から突然自己紹介を受けたことで少し動揺してしまう。

(はあ。この国の王って確か結構年を取ってたと思うんだけどこの子の母親は何やってんだよ。娘の育て方を間違えすぎじゃないか?もっとしっかりしてほしい。ていうか娘がこんなんで大丈夫なのだろうか。心配だな。それにしても魔皇帝になるかどうか決めるのはあくまでも俺だ。俺に選択権があることを分かってもらえればいいんだけど、そうはいかないんだよねえ。だってこの人たちは俺に強制的に魔皇帝を継いでもらうつもりでここに来たはずだしな。どうしたものかな)

俺はそう思ってリシアナと相談しようとして周りを見る。

(あれ?リシアナはどこに行った?さっきまではそこに立っていたのにいつのまにか姿を消してる。おかしいな。絶対に気配で気づくと思ったんだけど。まあいいや。後で探せばいいかな。それよりもまずはこっちの対応を優先しないと)

そうして、それからしばらく時間が経ちその間も俺は考え続けるが中々上手い対応案が浮かんではくれず時間だけが無駄に過ぎ去っていたのである。そこで俺にはふとあることを思い出したのである。

(あっ、でも待てよ。確か【魔皇帝の証】に、相手の意思を奪うスキルがあったよな。これを使えば、相手が魔皇帝を継ぐなんて言い出す可能性もなくはないんじゃないか。ただ、これを使ったところで果たしてちゃんと言うことを聞いてくれるかどうかは分からないし、下手にやると命の危険も十分にあり得るかもしれない。だけどここで俺が死ぬよりはマシか。仕方ない。ここは賭けに出るしかないか。失敗したとしても別に問題は無い。死皇帝武器があれば何とか生き残れるだろうし。取り敢えずやるだけやってみるか)

そう思ったあと、早速俺は【魔皇帝の証】を使おうとしたのだがそこでリシアナの気配を感じ取った俺はリシアナを探す。そしてそのリシアナを俺は見つけることができたのだった。

(あ、いた!良かったー。いなくなったのかと思って焦ったぜ。よし、ここからは俺に任せとけ!)

それから俺は【魔皇帝の証】を使ってみた。その効果は絶大で相手の意識を奪っただけでなく完全に俺の思うがままに動かすことができるようになっていた。

俺はそのことを確かめるために試してみることにした。

俺はそのあと魔皇帝魔弓の魔皇帝魔剣を取り出してから、魔皇帝魔杖を右手に握りしめ死皇帝魔槍は背中へとしまいこんだのである。そして俺は魔族たちの目の前でその三つを一つにしようとし始めてそれを完成させた。それからその魔武器を合体させて一つの魔武器に仕上げていく。そうすることによって出来上がったのが、三つの属性を合わせた最強の死魔武器になったのだった。その三つの武器を融合させたことにより見た目も大きく変わっていたので魔皇魔帝砲と名付けることにしようと思っている。そして俺がそうしている間に魔皇帝魔剣と魔皇帝魔弓の融合が終わり魔魔皇帝弩が完成したのである。

(ふう。無事にできたようだな。それじゃあ今からこいつの性能を確かめるために実験してみよう。この魔皇帝魔弩の能力は恐らくは威力が通常の倍以上にまで上がっている可能性が高いな。俺としてはそれがどれほどのものか楽しみだな。これでどんなに強いモンスターも倒せるようになるんだったら、俺はこの世界で無双することができる。さっそく使ってみるとするか。ん、ちょっとまてよ。よく考えたら、俺はこれからこの国を出るつもりだからこの城に用事が無くなるな。ということは俺に何かあって死んでしまっても困る可能性があるのか。一応、ここのことを他の魔皇達に手紙を残しておいた方が良いのかもしれないな。まぁ俺も魔皇の一人に手紙を残してきたし大丈夫だろ。それでいいよな。というか良いよね?よし、そう決めた。そうしよう)

そうして俺は自分がこれからやるべきことが決まってからは行動を開始したのであった。まず最初にこの魔武器を自分の体に馴染ませることを始めることにした。

俺がそうして訓練を始めようとした時、いきなり俺のことをじっと見つめている二人の視線に気づきそっちの方を振り向く。

するとその二人が何を考えているのかはすぐに理解することができたのである。俺は二人に向かって微笑みながら話しかけることにした。

(うーん。なんなんだ?どうしてこの二人は俺のことをそんなに熱烈に見つめちゃってるの?俺の気のせいでなければ多分見つめられているのは俺であって俺じゃない気がするんだけどな。まさか、俺がここにいることに気づいているわけないよな。だって、この場所って誰も知らないはずの場所のはずなんだけど。もしかしたら、どこかに穴があってそこを通ったのかもしれないな。だとしたらそのことは黙っていてあげた方がいいかもな。面倒ごとに巻き込まれたくないし)

俺が二人の少女を放置することに決めてから少し時間が経つが一向に二人の少女が動き出すことはなかったためこちらの方からも動くことにする。

そして俺は魔皇魔銃を取り出そうとしたがすぐにそれはやめて別の武器を使うことにした。俺が出したのは雷魔武器である。これは、前に俺の師匠が持っていたものでかなりレア度が高く俺もいつか欲しいと思っていたものである。この世界にもまだ残っているのかは分からなかったが俺の運がよかったのかどうやら残ってたようである。

俺はそれから、まずは手短にあった岩を的として用意して俺はそれを雷魔銃の一撃によって粉砕したのだった。すると二人の少女がとても嬉しそうな表情をしながら俺のことを見てきていたのである。

それからしばらくの間は、ひたすら俺は目の前にあるものを的にして射撃の練習をしたのだった。

(それにしても、この魔皇魔弩っていうのはとても強力な魔皇帝魔道具だよな。普通ならこんな威力の高い攻撃ができるような武器は存在しないはずだ。やっぱりこの武器の性能って異常だと思うんだよな。魔皇帝が使うものだからこそ、ここまですごい能力を発揮するのだろうか。それとも、やっぱり俺がこの武器に適合していてさらにレベルが高いからこのような結果を生み出しているということなのだろうな。ただそれでも、この魔皇魔銃には及ばない。俺はもっとこの武器の能力を使いこなせるようになりたいな。そのためには他の魔皇帝達が俺が倒した魔王武器と似たような魔王武器を使わないと厳しいな。というかさ、そもそも俺のこの魔皇魔皇帝は本当に魔王を殺せるほどの力を持っているのか?いや、今はとにかく考えるのはやめておくことにしよう。取り敢えず魔皇帝の武器を手に入れたら、この魔皇帝魔剣のように魔王を倒すことができなくてもある程度までの強さを手に入れることができるはずだ。そうすれば俺がこの世界の人間に恐れられることは少なくなるはずだ。それに、魔王を殺すことができるなら、いずれ俺は元の世界に戻れそうな気がするんだよね。そうすると俺の目標は、元の世界に帰ることと魔王の力を自分のものにするという二つのことを目標にしていこうと思う)

俺は、その後少ししてから雷魔魔弾を撃ち込む。この技は普通は魔力を消費するだけで特に意味がないように見える。だがこの技は違ったのである。俺の場合は魔皇帝武器の力を使っているためこの程度のことであれば、ほとんど疲れずに撃つことが出来る。

そして俺の放ったこの攻撃により周りの空気が振動するような音と共に岩は粉々になって崩れていったのであった。

その様子を見て俺の隣に立っていたメイアという女性はその目を大きく見開いて驚いた様子を見せていたのであった。

その女性はしばらく何も言葉を発さずにただその光景を見ていることしかできていなかったがようやく意識を取り戻してから俺に質問をしてきた。

「え、えっと今の技は一体どういう効果があったのでしょうか?」

俺は彼女の問いにどう答えようか少し悩んだ末にこう返事をする。

俺としては、できれば魔弾を撃っていたと誤魔化すのが良いのかなと思っている。でも、それでは何か違和感が残るので結局本当のことを言ってしまう。

(それにしてもどうしたものかな。魔弾を使っていたと言えば嘘にはならないと思うけど、これの本当の使い方を教えるのは流石にな。俺としてはあまり人に知られたくないんだよな。それに教えてあげても使いこなすのが難しそうだし。それにしても、俺もまだまだ強くなっておかないといけないよな。でも、これ以上強くなるためにはどうしたものか。やっぱり俺のこのステータスを上昇させるスキルのランクを上げるしかないのだろうか。でも、そんな簡単には上げることはできないんだよな。でもでもこのままで良いのかな?いや、良くない。俺は最強を目指しているのにこれじゃダメじゃないか!)

そこで俺は思いついたのである。俺が目指している強さを。俺が目指しているのは圧倒的なまでの力と権力を兼ね備えた存在になるということである。そして俺はある結論に達したのである。俺がなりたいのはこの魔武器を使えるようになって、さらにその力で国一つを支配して、そのあとその国も魔皇帝が治めるのではなく、その魔皇帝に魔皇帝魔弩を貸し与えた者として、俺の魔皇帝としての位が上がるのと同時に魔皇帝の代理の魔皇帝魔弩の魔皇として俺自身が名乗れるようにすること。それが俺の最終目標だ。

俺はそれからその最終目標に向かっての計画を練り始めたのだった。

(まず、今の時点で俺は魔皇武器を手に入れられる立場にいると俺は確信している。だからその武器で他の魔皇帝達より上の魔皇帝になることを目指して頑張っていけば必ず魔皇帝になれる。そして、その後は魔皇帝の地位を利用して他の国々を制圧。そうすることで、俺のこの世界での目的は達成できるはず。その次は、俺にその魔武器を与えた人物をその魔皇帝の座をかけて倒す。そして魔皇帝になった後に、この国を支配したら俺は魔皇帝をやめる。それでその魔道具の魔皇魔帝は魔皇が持つべきものとして譲ってもらい俺が魔皇になるってわけだ。

俺がそこまで考えたところで、俺はリシアナともう一人の男の方を見る。

(まぁ、あの二人についてはもう放置だな。この魔皇魔弩で十分に対応可能だしな。さっさと次の目的に向かって進むとするか。俺に今必要なのは情報。この世界について俺は全然知らないからな。だから、まずは情報をできるだけ集める必要があるわけだ。それならばやはり冒険者が一番なんだけど、さすがにこの格好のまま行くわけにもいかないよな。まずは、着替えるか。それにしてもこの世界には、魔法が存在するのか。これは、もしかしたら、もしかしちゃうのかもね。俺が思っていた以上にこの異世界って面白そうじゃない?)俺はそれからこの国にあるギルドに向かうのであった。

(それにしても俺ってばラッキーだよね。だっていきなりこの世界でのお金を稼ぐ方法を見つけることができたんだし。まぁこれはこれでいいことだよね。だって、これから先ずっと俺は働かなくてもいいし、楽な生活を送っていけるかもしれない。俺にとってこれほど都合のいい話があるとは思ってなかったし、正直言って俺はこの世界に来れて幸運だったよ。まぁ俺は別に金が欲しくって働いているんじゃないんだけど、やっぱり働いた分は欲しいしね。それに俺は俺が生きていく上で必要なものは自分で作るって決めたんだし、それはつまりは労働と同じことになるのかな?まあとにかく俺は働くことが嫌いなんだ。それは今でも変わっていない。だけど生きるためには必要だったし仕方がない。だって働かないと、この世界には食料とかって手に入らないみたいだしね。そういうところってやっぱりゲームとは違って現実的だな。俺の予想だと、ここの冒険者の仕事なんて魔物を倒しまくるくらいだと思うし、それでお給料は結構もらえるんじゃないかな。

そしてこの仕事があれば俺はこの世界でも、楽しく生きていけるかもしれない。なんせ、ここには美少女や美男子がいるわけで、もしそんな人達と一緒に暮らしながら一緒に働いていくとしたら楽しいに違いない)

俺は心の中でそう呟いた後にあることに気がつき苦笑いを浮かべてしまった。なぜなら、それは自分のことを美人だと言ってくれたメイアのことを思い出したからである。

すると俺はまた、この少女のことを思いっきり撫でまわしたくなってきたのだ。だが俺は何とかそれを耐えることにした。理由は、アリナという少女もいるからだ。俺はそれからしばらくの間は二人の少女の頭を優しくなで続けたのだった。それからしばらくして、ようやく二人が落ち着いた頃合いに俺はギルドに行くことにするのだった。

俺達はそれからすぐに街へとたどり着いた。それから、この街に来た俺の感想を述べるととても美しい景色が目に入ってきたのである。俺が想像していた街並みは中世ヨーロッパ的な町並みだったが、この街は俺の目の前に広がるのはまるで近未来都市のように思えた。

この世界に来て、初めて見る風景だが、それでも俺にとっては懐かしい感覚に襲われる場所でもあった。そして俺はそんな街の景観を見て、感動して思わず言葉が出なくなってしまうのであった。

(なんかすごい綺麗だな。今までこんなに美しく見える場所は俺がいた世界にもなかった気がするな。これが異世界の風景か!やっぱり実際に見てみるまでは信じられないことが多々あるな)俺はしばらく周りを見ながら歩いていると、やがて俺は目的の場所に辿り着いたのである。その場所こそが、この国の中央に位置している場所である。

この建物には冒険者ギルドと書かれていた。俺は、少し緊張しながらその中に入った。

すると、俺は受付嬢の人と目が合ってしまったのである。

「いらっしゃいませ」

彼女は営業スマイルのような表情をして俺に声をかけてきた。その笑顔を見た時俺は、一瞬で彼女が俺のことに対して好印象を持ったことがわかったのであった。その証拠に彼女からは俺に近づこうとしてくる。俺はそんな彼女に微笑みかけると彼女の動きはピタッと止まる。その様子はまさに小動物のようである。俺は彼女の様子を見て内心可愛いと思ってしまったのであった。

俺は、それからこの国のことやこの国周辺のことなどについて質問を始めた。その結果分かったのはここは『迷宮王国ラザレス』という名前で、この場所はその中心地になっている。他にもいくつかの町が存在しているのだがこの国はその中でも特別に重要な位置づけとされているのは事実らしい。

俺はその説明を聞いたあとに早速依頼書を見ようとしたらその前になぜかこの国について詳しいことをこのギルドで一番偉そうな人と思われる人に俺は呼び止められたのだった。俺は仕方なくその人に付いて行き案内された場所へと向かった。そこには俺のよく知っている人物がいて、その人が俺を呼び止めたのはどうもこの国を治めている人だったようだ。

(えぇ、マジか。俺って今かなり面倒なことに巻き込まれていないか?俺みたいな見た目が強面の人間がいきなり王様の前に呼び出されたら普通は怒らせないように必死にご機嫌を取るものだと思うんだがな。だがこの男は普通にニコニコしていて怖いと思う要素は一切ないし逆に不気味に見える。しかも、隣にいる女性もまた、その男の態度から信頼を寄せられているような様子だし、一体どういう関係なのだろうか?)

「あなたの名前は?」と突然尋ねられ、その男が俺の名前を尋ねるものだと思っていたので俺は焦りを感じてしまい、素直に名前を伝えてしまう。俺はこの時この国にきて初めてのピンチが訪れたのを察してしまったのだった。なぜなら、俺は自分が魔皇帝魔武器を所有していることを知られることを恐れたからである。俺の予想通りその男は俺が魔武器を持っていることを見抜いているようであり、この魔武器について色々と聞いてきた。

そして俺の答えを聞いて彼は俺にその魔武器を貸してくれないかと言われたが俺は断るしかなかった。俺は別にこの魔道具の力を使わなくても戦えると思っているのでこの男のためにわざわざ貸すことなどしない。それに、この武器はこの男には似合わないだろうと思ったのだ。すると今度は、俺を試したいと言ってきた。

(どう考えても俺は巻き込まれたな。まぁ確かにこの世界についての情報が手に入ったし、魔皇帝についても多少の情報は入ることができたけどさ。でもこれって絶対に俺の望んでいる展開ではないよね。だってこれって絶対に厄介事に巻き込まれただけじゃん。まぁ仕方がない。とりあえず適当にあしらうことにしよう。それに、もし俺が負けても俺は怪我をするだけだし、特に大きな問題は起こらないだろ)

それから、俺は戦いを始めることになった。

(俺は今、王城の中で模擬戦をしている。最初はこの男が本気で戦うと言ったが俺は全力で断り俺は軽く力を見せればいいと提案すると了承してくれた。俺はまず相手の力量を測るためにまず最初に魔弾を撃ちこむことにした。流石にこれは予想していなかったようで男は慌てながらその場から飛び退いた。俺としてはもっと冷静に回避できるものだと思っていたから意外だったな。それじゃ、次はもう少し威力を高めていこう)

そして次に俺が放った弾丸はかなり速度を上げた状態で発射され、その銃弾が壁に命中し大きな音を立てたことで男は更に驚きを見せた。俺はその光景を見て少し可哀想になってくるのだった。そこで俺はさらにスピードを上げてもう一度攻撃を行うと男はその攻撃を紙一重のところで避けることに成功した。

(うん。中々良い反応をしてくれるじゃないか。それに今のを完璧に避けられると俺のプライドが傷ついちゃうよな。だから次はこれくらいの攻撃なら避けてくれるかなって思って撃ってみたんだよ。でも俺の予想は裏切られることになる。まさかあのタイミングでこの距離まで接近されるなんて思ってなかったし、完全に意表をつく形になった。だけど、ここから俺がこの距離から逃げようとすることくらいは読まれているかもしれないから俺が次の行動をする前に攻撃を仕掛けるか。

俺は、そのまま剣を振り上げる。もちろん俺は相手を殺すつもりはなく寸止めするつもりである。それならば万が一見誤って殺してしまったとしても俺には関係のない話だしな。しかし、男は俺がそんなことをする気がないことを見抜いたのかすぐに俺に斬りかかってくる。そして、俺は咄嵯の出来事だったために防御が遅れてしまし俺の左腕に少し切り込みが入った。そして、そこから俺は一旦離れることにした。それからすぐに魔法を使うことにした。

(ふぅ、まさか俺の技を全て見破られるだなんて思わなかったよ。まぁ別にいいんだけどね。それよりも今は俺のこの服が切り裂かれてしまったことをどうにかしなければ!それにしてもあいつは強かったな。それにもしかすれば俺はもうこの世界で生きて行くために必要な力を得られたのかもしれない。これからのことも考えると俺の実力がどの程度なのか知ることができたことは良かったのかもしれないな。

そしてこれから俺はどうしたら強くなれるのかという課題が出てきた。この国のトップに立つほどの実力者だなんて思っていなかったがそれでも強いことに変わりはない。俺はまだまだ強くなりたいんだ。俺の目的は元の世界に帰ってハーレムを築くというものだがそれ以外にも強くなる必要はあるはずだ。この世界の人間は皆ステータスがあるみたいだしさ。やっぱり強さが無ければモテるはずもない!よしっ、俺の目標は最強になることに決めたぜ!! よし、そんじゃ今日から特訓を開始しますか。

この国に来て二日が経過していた。この国の人達はとても良くしてくれて俺のことを泊めてくれただけでなく美味しい料理を食べさせてくれ、さらには風呂までも貸してもらったのだった。そんな俺の世話をしにアリナという女性が毎日来てくださったのだった。そんなアリナと話すたびに俺の心が揺れ動いてしまい俺は彼女の虜になってしまったのである。俺はそれから毎晩寝ずにこの国のことを考え続けたのである。俺はそれからずっとこの国のことについて考えていたのであった。そして俺達はようやくこの街を出ることになる。だが、俺がこの街を後にしようとした時に一人の女の子が俺の足にしがみついて来たのである。

その子の名はリリィちゃんと言って、この街に住んでいる子で年齢は6歳とのことだ。この子のお父さんは冒険者で現在は家を空けており一人で寂しく暮らしていたところにこの国に来て俺達と出会い、仲良くなったということらしい。それから俺は彼女と共に街を歩く。俺の隣ではリリィちゃんが笑顔を浮かべていたので俺は嬉しかったがそれと同時に俺達の前に立ち塞がるように立ち止まった人物が現れた。それは先程俺に喧嘩を売って来たあの貴族の男だった。

俺は貴族と対面した時俺はすぐさまこの男のことが嫌いだということを理解する。俺はこいつのことが嫌いで仕方ないのだが、一応俺達の国に来たお客様ということで丁寧に接しようと思い言葉遣いだけはいつも通りの口調で話すことに決める。するとその男は何を言い出したかと言うと、自分と結婚して欲しいと俺に言ってきたのだった。俺には何がなんだかわからなかったので、俺はその言葉をやんわりと断ったのだが諦めが悪いのかさっきより強気に求婚してきたのである。

(なんで、この人は俺にこんなにも必死なのだろうか?正直俺には理解できない。こんなのが将来この国の次期当主候補なわけ?この国の将来がとても心配になってきたぞ)

すると俺の言葉を聞いた男は急に顔色を変えてきた。俺はその時、俺は自分の考えを読まれたのだと察してしまう。そしてこの男が突然動き出して殴りかかって来るのではないかと危惧していた時だった。

俺と男が衝突して大爆発が起こる。

(やばい。こんなところでまた面倒ごとが起きるなんて。とりあえず早くこいつを倒してリリィを助けて、それからアリナのところに戻って一緒に逃げるのが一番だよな。とりあえず俺の力もだいぶ使えるようになってきたから本気でいくか)

俺はそれから全力を出して、目の前の男を倒すことにした。その結果、一瞬にして俺の勝利で終わったのでひとまず安心したがその矢先だった。突如後ろから謎の気配を感じたので振り向くとそこにはリリアさんがいて俺は思わず悲鳴を上げてしまうのであった。

「ひぃー!」

(い、一体どうなっているんだ?なぜ、彼女があんな怪物と一緒に行動しているんだ?それに俺に近づいてくる彼女の瞳には光が灯っておらずただ、何かに取り憑かれているような雰囲気を感じるし。あれが演技では無いとすれば彼女は操られていると考えるしかないよな。だけど、一体どうして?この感じは明らかに『スキル強奪』が発動できる状態だし。もしかして彼女には『魅了』のような効果を持った魔法がかけられているってことか?)

俺がそんなことを頭の中で考えている間に彼女はなぜか戦闘体制を整え始めた。俺はその様子を見てかなり動揺してしまい慌てて攻撃の態勢を整えるがそんなので防げるとは到底思えない。

それから彼女は攻撃を仕掛けてくると思い俺は身構えるが一向に攻撃を仕掛ては来なかった。俺は少しだけ安堵してしまったがすぐに気持ちを切り替えることを決める。だがそんな俺の甘い思考は次の瞬間に全て吹き飛んでしまった。

なぜなら彼女は突然武器を投げ捨てたのだ。俺はこの時彼女の行動を疑問に思ったがそんなのんきな状況ではなかった。俺の体が動かなかったからだ。そして次の瞬間俺の体の中に異物が入り込んでくる感覚があったのだった。

(え、どういうことだ。まさか本当に彼女の言った通りなのか。まさか、俺には精神操作系が効かないはずなのに。もしかすると俺にはその手の耐性が無いのか。クソッ!ならせめてこの拘束から抜け出なければ。このままでは殺されるだけだ。それならなんとかして抜け出してやる!)

(あぁ、私は何をしようとしているのだろか。私には何もわからない。今この人を殺したいという感情だけが私を動かそうとしてくる。それにしてもこの人の力ってどんな感じなんだろう。さっきから力がどんどん溢れ出てくるの。まるであの人から魔弾が撃ちこまれたときみたいな。この人が魔銃使いのはずないよね。だってあの人はまだ子供でしょ。だけど、さっきあの人が使った魔弾は本物と同じものだったし、それにさっきは確か『ステータスオープン!』と言っていたけど普通のステータスじゃなかったし。私のステータスを見たのかな?それともこの魔眼の【魔眼略奪】を使ったのかな。どちらにせよこの人は油断出来ないね。とりあえず今の私は完全に無防備の状態になっているし、もし相手が攻撃に転じてきたら確実に負けるわ。でもまだ、あの人も完全に動けるような状態ではないみたいだから今のうちに殺すか、逃げ切るかすればいいだけ。

私がこの場を離れる前にまずはこの人の体を治すことに決めました)

俺は体に入ってきた魔力に対して違和感を覚えたため急いで体の調子を確認してみると俺の体内に入り込んだものはおそらくリリィさんの魔力であろう。それにしてもリリィさんは一体どうやって俺に自分の意識がない間に入ったのだろうと不思議に思うがその理由を考える暇はなかった。なぜならリリィさんの体がいきなり輝き始めてしまい俺は目を瞑りたくなってしまったからである。

(くっ!これはやばそうだな。どうにかしないとマジで死んでしまう。この状態でも体は動くのか!?よし、動いた。とりあえず今はどうにかこの状態から脱出しなければならないな。俺に出来ることなんてあるのかどうかは分からないけれど。とりあえず今はとにかく時間を稼ぐことに徹するか。それで、あの人がこの部屋を出て行くまでは絶対にここから逃げられないしな。でも俺の【呪印無効者】があればここから抜け出せるはずだ。俺は早速使ってみることにする。

(あれ?特に変化が起こらなかった。まさか俺が気づかなかっただけで既にこの効果は切れていたというのか。それならば、仕方がないか、とりあえず今は逃げる手段を見つけなければならないからな。それにこの女がこの建物から出たらまず間違いなくこの国は終わる気がするし。まぁそれは俺が何とかできる範囲じゃないから別にいいんだけどな。まぁこの女がリリィを人質にしたらどうなるのかなんて火を見るよりも明らかだな。だから、この国から早く出て行ってくれることを祈るとしよう)

俺がそう結論を出すのと同時に扉が開かれ俺は部屋の外に追い出される。それから俺は必死になって逃げようとするが、その時に後ろを振り返るとすでにリリィはリリアによって殺されてしまっていた。そしてリリィの死体を放置したままリリアはその場から離れていく。そして俺はその死体を回収してから、アリナの元に急ぐために全力で走る。

(この世界に来て初めて俺は他人を殺したんだ。だけどそんなことで躊躇していたら俺がこの世界で生きていくことなど不可能なんだよな。俺はこの世界をハーレムを築くために強くならなくちゃいけないのにこんなところで足止めを食らう訳にはいかない。まずはこの国から出て、その後はアリナと二人でゆっくり暮らせるような場所で平和に過ごすことを目指すとするか)

俺達がリリィちゃんと出会って二日目が経過した。俺は昨日出会った女の子リリィちゃんのことを考えていた。彼女はとても元気が良く可愛かった。そんなことを考えているうちにいつの間にか時間が過ぎてしまったようだ。すると外から慌ただしい足音が聞こえてきた。そして勢いよくその扉が開かれたので俺とアリナは驚く。それから俺達の目の前にこの国の貴族と思われる女性が現れる。その貴族の女性はとても豪華なドレスに身を包んでいた。それからその女性は、自分が国王だと名乗りこの国に泊まっている間は自分達が守っていると豪語してきたのである。

俺達は最初は貴族を疑っていたがこの国のトップである公爵が俺達に危害を加えるメリットなんて一つもないことに気づき俺達は信用することに決める。だがそれから俺達はすぐに貴族が住んでいる屋敷へと案内されることになった。そして俺は貴族と向かい合い自己紹介を始める。俺が名乗るとアリナ達も同じ様に名乗り始める。

それから俺はこれからどのようにこの貴族達と接していけば良いのかという疑問を抱くがまずは自分の身の安全を確保するのが最優先だと思い考えることを止めた。しかしそこで貴族の男がとんでもない発言をし始めた。

その言葉を聞いた瞬間俺は一瞬頭が真っ白になってしまうがすぐさま気持ちを落ち着かせて、その言葉について問い質す。その男は俺達の国が『魔人族』の国だというのである。その話を聞いてから、その男の態度があまりにも不自然なのと、先程からチラッチラッと視線を感じていたことに疑問を感じていたがそういうことだったらしい。俺は目の前にいる男の表情を見つめるが明らかに何かを企んでいる様子だったため俺はこの男が何を言っているのか理解することができなかった。俺はその男から俺達の国の情報を探ろうと質問をしてみることにした。すると男は案の定ボロを出した。やはりこの男は俺に敵意を抱いているらしいが、ここで殺してしまうのは得策ではないと判断しひとまず殺さないように決めたのだった。

そしてこの男の屋敷を出る時だった。俺はふとあることを思い出して男を呼び止めることにした。そしてこの国のことについていろいろ教えて欲しいとお願いしたのだが男にあっさり断られてしまう。俺がそれでも必死に頼み込むと男が仕方なくといった感じで承諾してくれたので俺が礼を言ってその場を立ち去ろうとするとその男は俺に耳打ちをしてきた。

俺はその内容を聞くが俺には理解できなかったのだが、それから少し考えた結果とりあえずこの男が俺に伝えてきた内容が正しいのか確認しようと思い、俺が少し時間をくれるかと聞くとそれを許可すると言ってくれたので、その提案を受け入れることにした。

それからしばらくしてから俺はこの世界のことについてある程度把握することに成功した。俺は自分の予想が的中していたこともありかなり驚いていたので少し気持ちを整理するために、少しアリナと一緒に行動するということにしたのである。俺はとりあえずアリナのところに行こうと思い移動を開始した。

(さて、一体どこに向かえばいいんだ?俺がこの世界の地図を持っていれば良かったんだが生憎俺が今いる場所は街からはだいぶ離れた場所なので正確な位置がわからず迷子状態なのだが、ここは適当に歩くしかないか。一応この街に入る前に見た限り近くに大きな山があるはずなんだが)

俺が自分の記憶を思い出しながら目的地を探している途中で、俺は一人の男に出会う。その男の容姿は金髪で長身の優しそうな顔つきをした三十代くらいの男性だった。そんな男性が一人で何をしているのだろうと俺は疑問を抱いたが俺は声をかけることなく無視をしてしまった。

しかし、そんな俺の行動が気に入らなかったのか俺の方に寄ってきて話しかけてきた。俺は突然の出来事に少し驚いたが、そんな気持ちを抑えながら相手のことを警戒することにした。俺は相手の様子を伺うが、特に変わった点はない。ただの普通の人に見えるのが少し不気味であった。しかし、俺が黙ったまま何も答えないと、向こうも同じように無言のままでいることに耐えられなかったのか突然口を開き、俺に向かって謝罪を始めたのだった。

(はぁ、全く意味が分からなかったぞ。このおっさんいきなり頭を下げ始めたけど、俺に対しての用事でもあるのだろうか?)

「君、ごめんね、僕のせいで。君の連れの女性を傷つけて本当に申し訳なかった。まさか、あの程度のことでここまで怒るとは思っていなかったんだ。だから、彼女に今一度チャンスを与えてくれないだろうか」その男性のその一言で俺の全身から冷や汗が噴き出す。まさかとは思っていたがまさかこいつがこの世界最強の存在と言われるリシアナ王女に攻撃を仕掛けたというのか?俺はリリアという女性の力の片鱗を見ているのでこの人物がどれほど強いのかは分かっていたため、今この目の前の男性は、本当に何者なのだろうと気になり始めてしまった。

俺は相手が何をしようとしているのかを探るため質問してみることにした。まず最初に俺に近づいてきた理由を確認するために俺がここに来た理由はなんなのか聞いてみた。俺としてはまさかそんな返答が来るなんて夢にも思ってはいなかったので、正直戸惑ってしまった。その男性によるとリシアナがどこに居るのかを確認したいということだ。どうやら彼は俺のことをリシアナと間違えているようで、俺は彼に勘違いだと伝えることにする。俺はリリィという名前だと名乗ると、今度はリリィさんですかと言い出した。どうやらこの人は俺のことも知っているようだったので俺はどういう人物なのかを詳しく説明してもらう。そしてようやくリリアさんの正体がわかったところで俺はその男性の話を聞こうとした。

(なるほどね。とりあえずは大体の流れがわかってきたな。リリィちゃんとリリアさんの二人が同時にこの世界にやってきて、この人は俺と同じ異世界転移者の可能性があるということかな。とりあえず俺の考えを伝えておくとしようか)

(俺がここに来たのはもちろんハーレムを作るためであるがそれは俺の夢でもあり願望でもある。しかし俺はこの世界で生きるために必要なものを手に入れなければハーレムどころかまともに生活することすら難しいかもしれないと考えている。まず必要なものは金であると思うしそれに武器とかも揃える必要がありそうだなと思っているんだよ。でも今の俺にこの世界でのお金を手に入れる手段なんかないので今はどうやってお金を手に入れるかについて考えていきたいと思っている。そのために俺はアリナと共に旅をしながらお金になるものをひたすら集めるつもりだ。)

俺とリリアと名乗った男は一緒に行動することを提案してくる。もちろん俺はそれを受けるが、この人の素性が未だにわからないままだったのでそのことを確認しておきたかったのだ。そして俺がそのことについて尋ねるとどうやらリリアも俺のことを知っているような雰囲気を出していたのでそのことについて聞いてみる。そしてリシアナは俺のことを知っていたような発言をしたが結局俺はリシアナと会えなかったので詳しい事情は知らないと言われたが俺にはどうせまた後日に会う機会があるのでその時に詳しいことを教えてくれるらしい。俺はとりあえずそのリリアの言葉を信じることにして彼女と行動を共にしてみることにする。そしてそれからは、彼女の話を聞き続けていくが、彼女はこの国の女王であることしか教えてくれなかった。どうやら彼女はあまり多くのことは語りたくないらしくて自分のことについては必要最低限のこと以外語ってくれないみたいだ。

しかし俺はそれでも満足したのでこれ以上無理矢理聞き出そうとするような真似はしなかった。

そして話が終わると彼女はなぜか急に笑い出し始めた。俺はその理由が知りたくなったので再び問いかけてみるがどうやらも答える気は無いようなので、仕方がなく諦めることにしたのである。するとここで急に空腹を感じるようになり、ちょうどお昼頃だったこともあり俺とアリナはリリィちゃんが作ってくれたご飯を食べるために宿に戻ることに決めて移動するのであった。

アリナとリリィが食事を終えようとしている時に俺が部屋に入ってくるとそこには二人の美少女の姿が見える。それからその光景を見て俺はとても嬉しくなっていたのだった。そしてその少女達の名前を呼びたいと思っていたのだが、俺にはそんな勇気なんてなかったので、俺は二人に声をかけることができずにいると俺の視界に何か光りものが入ってきたのである。

その光の塊のようなものは少しずつ大きくなっていき、俺の頭にぶつかる。それから俺は頭を摩ってそれから痛みがないことを不思議に思うがそれよりも俺の頭に当たってきた何かを確認すればいいと思い、視線を下げると俺は言葉を失ってしまった。

その光はだんだんと形を成していき俺の前に姿を現したのは、俺が初めて出会ったあの妖精の姿であった。

「い、い、痛かったんだから!私の名前はティファニーよ。貴方のその反応をみると、私の事を忘れてしまっているのかし、わかんなんだけど」その妖精の少女ティファニアが俺に向かってそう言ってから少ししてから俺は自分が何をされたのかを思い出すと俺はそのことについてティファニーに謝ろうとした。

俺は急いで謝罪しようとするが、何故か上手く言葉にできずに、焦ってしまいどうしていいかわからなくなってしまった。だがそこで俺が必死に謝罪をしたい気持ちを伝えることができたのかティファニーに伝わっていたようである。

「ま、全くあんたも変わってないわね。そんなところも嫌いじゃないんだけどさ、これから仲良くしましょ。私は別に気にしないからさ」

俺のその姿を見ていたティファニーは呆れた表情を見せながらも、どこか楽しそうな笑みも浮かべている。そんな姿を見た俺は改めて彼女が優しい心の持ち主なんだと感じてしまう。それから俺達はしばらく雑談をしていたのだが、突然、外から大きな音が鳴り響く。

俺はすぐに部屋の窓からその外の様子を伺うと街の様子が一変しており大勢の人々が次々と逃げ出している姿が見えた。

「これはいったい何が起こっているのでしょうか?先程の街の人々の様子を見ると明らかに緊急事態が発生している様子でした。とりあえず外に出るべきでしょう」

俺はそんなことを考えてから外に出ることにしたのである。

(あれ、なんでだ?俺のステータスが変化している。このスキルのせいか?まさかとは思うがこの世界の奴らはみんな俺と同じように特殊な力を持っているのか?だとしたら面倒なことになってしまうかもしれんな。それにさっきから感じていたが俺の中にある力が少し強くなっている気がする。これもきっとあのネックレスの効果なのだろうな。というかあの男は何者だったんだろうな。リリアに聞く前に死んじまったから真相は謎のままだしな)

(でも、さすがにこの力はちょっと強力すぎるんじゃねえか?俺は今までにこれほどの力を持つ存在を数人しか見たことがないしな。俺がもし仮に全力でこの力を行使できるようになったとしたら世界を滅ぼすことだって可能かもしれないぞ?この世界ではまだそこまで大きな戦いが起きる気配も今のところはなさそうだから大丈夫だと思うが。まあ今は、リリアとのデートが無事に終わることを祈っとくしかないか)

俺はアリナとともにこの世界に来たのであろう女性の姿を思いながら俺はこの世界で生き残れるのか不安を感じていたのである。

「ふーむ。なるほど。それでお前は、この世界で生きていけるかが不安でたまらんと言うわけか」その男は顎に手を置きながら考え込み始める。そんな男を見ながら俺は男に対して返事をする。

俺がこの街に来て最初に訪れた場所は冒険者ギルドであり、この街での冒険者としての登録と今後の生活費の確保を目的としてこの街に来ていたのであった。俺はまず登録するために、この世界の言語を理解したいと受付の男性にお願いをした。その男性からは問題なく言葉は通じると言われ、それならばなぜ最初にこの男はこの俺が何を言っているのかわからないといった態度をとったのかが気になったので俺はその男に対して問いただしたのである。その男はその質問に対してこんな回答をした。

「それはな。お前の外見が原因なんだよ。普通なら、人間以外の見た目をしている生き物が話しかけてきた時点で、大体の者は警戒してしまうんだ。それに言葉を理解するということすら信じられないだろう。この世界の住人は基本的には人間の世界とほとんど同じような文化を持ち生活を送っている。だからこの世界で生き抜くためにはやはりある程度の戦闘能力は必要なんだ。しかしいくら能力が高いといっても、人間ではない見た目をした者が戦闘を行うと目立つし目立ってしまうとこの世界では危険にさらされる可能性が出てくる。だから、できるだけ目立ちたくない場合はそういった能力は控え目にしておきたいと思うのが当たり前なんだよ」

俺がこの世界で最初にあった人間はなかなか良いことを言うものだと俺は感心してしまった。確かにその男の言う通りかもしれないと思ったのだ。この世界でも他の種族同士での争いや、魔族と人類との戦いは存在しているので、この世界に馴染んで生活していこうとするのならばその常識というものを覚えていかなければならないと俺は考えるようになっていた。しかし俺は、そんなこの世界についての事情よりもこの世界に俺と似たような存在がいることに喜びを感じていたのである。俺は、もしかすると他にも転生してきた者がいたのだろうかと思ってそのことをこの男性に尋ねてみたが答えは予想を裏切るものであった。どうやら、過去に俺のような容姿を持つ男が何人か存在していたようだが、俺のように会話が行えるほどの力を持ったものは、初めてらしい。

その事実を聞いた俺はとても驚いてしまうが、それ以上にこの世界の情報について知りたくなってきた。この世界がどういう仕組みになっていて、どんな生物が存在していてどのような生活を送っているのか。それを俺はこの人に聞いてみる。

しかしどうやら俺が求めているような情報がこの世界に存在するのかは、わからないらしい。しかし、その情報を集めることができる場所がこの世界にはあると彼は言う。その彼の発言を聞いて俺はその場所について詳しく教えてほしいと頼んでみる。そしてそれからこの世界の歴史について話し始める。しかし、ここで問題が発生したのである。この世界には、今から約1000年前に、ある出来事が起こってしまった。そして、それがきっかけでこの世界は一度滅ぶ寸前にまで追い詰められた。この世界の大陸は全て海に囲まれていたのでそこから攻めてくるような敵はいないと思っていたらしい。

そのことからこの世界の者達はその当時の権力者達が作り出した魔法技術や、魔物達を使って戦争を仕掛けたようである。それから100年以上ものあいだその戦いは続いていたが突如として、この戦争は終わりを迎えることになったのであった。しかしその戦争の結末がどうなったのかまではわかっていない。

それからこの国は、戦争の影響で住むところがなくなった者達を受け入れるために、新たな国を作りその国を今の国と合併することになった。そしてこの国の王族や貴族たちは、その国に移住してこの国を新しく作り直そうと計画していたらしい。しかしそこで大きな問題が起こった。新しい国を作るために移住している途中で一人の少年がその計画を妨害し始めたらしい。しかもその少年はこの国に恨みがあったようでその計画は失敗に終わってしまい、この国は他国に滅ぼされてしまった。しかしその際に生き残った貴族達は、別の国へと移住することで難を逃れることには成功したのである。

その生き残りが現在のこの国を作り上げていき現在に至る。俺はその話を聞いてから思ったことがある。俺と同じ状況にいた人物がいたということが気になりその人に会いたくなったのである。

そして俺はその人物のことを知ろうと再び受付の男性に質問をしようとした時である。急に部屋の入り口から声が聞こえてきて、扉が開かれたのであった。俺はその光景を見てすぐに視線を向けたのだが、俺はすぐに言葉を発することができなかった。何故ならばその少女の見た目はとても美しかったからである。

その少女はまるで人形ではないかと思えるほど整った顔をしており、銀色の髪の美しい美少女であった。その容姿から恐らく年齢は俺より一つ年下なのだろうがそれでも十分に魅力的だと俺は感じるほどである。だがその魅力に見とれていたから言葉が出てこなかったのではなかった。

その女性はこちらに近づき俺をジッと見つめる。そしてその女性を見ているうちに俺の頭の中では先程まで聞いていた歴史の知識が次々と蘇り始め、それと同時に一つの記憶が浮かび上がってくる。

俺はそんな現象に襲われていた。その女性が視界に入ってくるたびに何かを思い出しそうな感覚に襲われる。この世界に来てからずっと違和感のようなものが感じられていて、何か重要な事を忘れてしまっているのではないかと思い始めてきてしまう。俺はその女性が視界に入るだけで何かをしなければという焦燥感がこみ上げてきたのであった。

その女性の姿を見続けることによって、その女性の顔が少しずつ変わり始めていることに気づく。俺はその事にとても嫌な予感がする。この女は一体誰なんだ。どうしてこんなにも俺は恐怖を感じてしまう。その女の瞳は赤紫色に染まっており俺の目を見た後その口元は歪んでいる。

俺は自分の中に湧いてくる感情を抑えきれずその衝動的に、この場から逃げ出そうと考えた。だが、何故か俺は足が動かなかった。

俺は目の前にいるその女性が何者かは分からないが、この世界での危険な存在だということだけははっきりとわかったのである。そしてその危険から逃れようとすると突然体に激痛が走り動けなくなってしまう。

俺はそんな痛みのせいで意識が飛びそうになっていた。

(何だよ。何で体がいう事を聞かないんだよ。俺はただこの世界についての情報をこの人から聞きたかっただけなのに。まさかこいつ本当に俺を殺しに来ているっていうのか?くそ!どうしたらいいんだよ。くっ!?何だか俺の中から凄まじい力が流れこんできているのを感じる。これじゃぁあいつと戦っていても勝てる気がしない)

「ねぇ君。私のペットにならない?」

俺はその女性の言葉を聞いた瞬間に背筋から全身に鳥肌が立ち震えだす程の威圧を感じた。

「なーんてね♪私はそこまで強くないからさ。別にあなたは殺さないから安心しなよ」

(は?何を言ってんだこいつは?でもこれで分かった。こいつには絶対に勝てないな。そもそもの話俺よりも強い奴はまだまだたくさん存在しているんだ。それにさっきのあの力が体の中で爆発したみたいな感覚だってそうだろ。あの感じは明らかに普通じゃないぞ?あんな力が使える奴がいるならこの世界は確実に平和なはずだ。あの『魔王』だって倒せるかもしれん。まあとりあえず、この化け物には絶対に関わるべきではない。それにあの力は俺にとっても脅威になるかもしれない。下手に目をつけられるのはまずいな。早くこの街を出ていこう)

そうして俺はなんとかその場をやり過ごすことに成功し、俺はギルドを出ることにした。しかしその時である。俺の前に一人の少女が現れた。俺はその少女の見た目の美しさと雰囲気の可愛らしさの両方に魅了されてしまい見惚れてしまっていた。

(な、なんなんだこの女の子は。もしかしたら天使とかなのか?)

俺のそんな気持ちを知ってか知らずか、その少女は俺に向かってこう言ってきた。

「私と一緒に来て。あなたのこと気に入ったわ」

その発言を聞いて俺は心の中で「えー」と叫んでしまう。この世界の人達はみんな頭がおかしいのかと思いながらも、この世界はこういうものだと無理やり自分を納得させつつこの少女につい行くことにする。

この世界の通貨がどういったものであるかも俺は把握できていなかったのでまずはそれを教えてもらう必要がある。だからまずはお金のことだけでも確認しておく必要があった。そのことも考えながら、俺はその女性の後に着いて行ったのである。

俺達は冒険者ギルドを後にし街に出て買い物をしていた。その道中俺はこの少女がこの街では見かけたことのない服を着ていることに気がつき尋ねる。

俺がその質問をすると同時に、この少女の表情が一変すると少し怒ったような態度を取るのであった。その反応を見て俺はかなり戸惑うことになる。この世界では俺が見たことのある服装をしているのはこの世界ではとても珍しいようだった。そのため、その服はどこの村のものなのかという質問をしてみる。

俺の予想していた回答としては、俺の住んでいた村はここから遠く離れたところにあって、そこの住人はほとんど俺の故郷に来るようなことはなくなるくらいに遠い場所にあるというような内容の回答を期待していたが、返って来た答えは全く違ったものであった。その質問に対して少女は、その質問があまりにもくだらないと感じたのか怒り出してしまってしまい、その勢いのままこの世界についての説明を始める。その話を聞いていく内に俺はどんどんとその少女が放つプレッシャーに押しつぶされそうになる。その少女が話す話は俺が知らないものばかりであり、全く聞いたことがない単語や、意味がよくわからない言葉が何度も出てきて混乱してしまいそうになったが、この少女の話し方のおかげでなんとか話を理解できていたのである。そして話の内容を聞く限りではやはりこの世界は地球とは違う異世界のようだ。俺が元いた世界に存在していた神話や伝説に登場する怪物に似た姿をしている生物が存在していたことから俺は、俺が生きていた時代から数千年以上後の時代にやってきたのではないかと予想することができた。

この世界には様々な種類の魔法があり、魔法には階級が存在するらしく。そしてこの魔法にはそれぞれランクが存在している。その魔法の階級は全部で七段階あり、それぞれの魔法は、下級魔法から上級魔法、そして最上魔法までが存在し、その更に上に最上級魔法、超特級魔法といったものがあるらしい。そしてそれらの魔法の中にはそれぞれ特殊な能力を持った魔法も存在していて、それが『古代魔術』『古代精霊術』と呼ばれているらしい。そして俺がこの少女に質問をしたことで、俺の持っていた疑問は全て解消されたのだが、俺の中に一つ疑問が生まれる。この少女は何者で俺を連れて行って何をするつもりなのだろうか。

そして俺達は再び歩き始める。それから数分後に俺達が目指していた目的地へと辿り着くことができた。その建物の中に入ると俺はまた言葉を失ったのであった。

「な、何なんだここ!?」

俺が思わず発したこの一言に目の前の少女が微笑むと俺の手を掴みこう言ってくる。

「私の家に招待してあげる」

俺はこの言葉を聞いてさらに驚かされることになる。その建物はとても大きいのに何故か生活臭というものがまるで感じられなかったのである。俺がそのことを伝えると少女は俺が考えていることが分かっていないのか不思議そうな顔をするだけであった。そして、そのまま家の中に俺を引き入れるように入っていく。家に入った俺はその部屋の中にあるものを一つ一つ見ていった。そしてその部屋の中央にある椅子を見てあることに気がつく。

「おい。まさかお前って吸血鬼族なのか?」

俺は少女が椅子の上にある何かに手を置いたのを見ていたのだ。その時に少女の腕に異変が起きる。少女の指先が徐々に変色していくと、次第に手全体が真っ赤に染まる。その光景を見てしまった俺はすぐに目を閉じてしまうがそれでも、俺の視界の片隅に入り込んできた腕の変化ははっきりと見て取れていた。

俺は自分の目が信じられず自分の体を触ったり、つねたりしてしまうが痛みを感じないため現実だと受け入れなければならないらしい。だが、目の前に存在している少女は俺の記憶が正しければ、この世界で人間が最も恐れている種族のはずである。しかし目の前の光景はまるで違うもので、目の前の光景を見るだけでこの少女は人間ではなく、他の何かであるということを認識させられる。

(これはもう認めないといけなそうだけど、やっぱりありえないよな。こんなところにこの子が住んでいるなんてな)

この少女の正体が何であるか俺はある程度想像がついたのである。俺は自分が知っている情報から、その少女を当てはめてみるとぴったり当てはまる人物がいたのである。

俺がその事を尋ねると少女はその事を聞かれると思っていなかったのか驚いた顔を見せた後、不敵な笑みを浮かべるとゆっくりと語り始めた。

俺はこの世界の常識を知らないため、この世界の歴史を詳しく知るために受付の男性に色々と聞き込みをしようとしていたのだったが、何故かその女性から一緒に来てほしいと言われる。俺は断ろうとしかけたその時であった。

「あ~!この人がお兄ちゃんを誘拐しようとしてる!」

突然現れた少女が俺達の間に割って入ってくるといきなり俺が襲われているという風に騒ぎ出す。そのせいで俺は完全に逃げ道を塞がれてしまう形になってしまい。結局、俺はこの少女と一緒に少女の自宅に行くことになる。そしてこの少女の案内により俺は大きな門を通り抜ける。その門の先に見える風景が俺の住んでいた村にとても似ていることに気づいた。俺はその事がかなり意外でつい口に出してしまったが少女は特に反応を見せることはなくそのまま俺を家に連れて行く。

俺はその後少女の自宅に連れて行かれた。その建物は俺の村にあった屋敷の倍の大きさがあり、俺にはそれが一体どういう意味を持つのかということが分かる。そして、俺はその家の主と思わしき人に出会うのであった。俺は少女の家に着くなり俺は、その少女の主だと言う女に連れられてその女の仕事場に行かされる。

そこで、俺は少女に頼まれた物を取りに行っていた間に起こった出来事を話し始めると、その女は自分の事について教えてくれる。俺に話しかけてきた女性の名前はレニアと言い、この国に住んでいる貴族の一人なのだと俺に言ってきた。その貴族の女性の職業というのが【魔女】であり、この世界に存在するほとんどの人はこの女性の存在を知る者はおらず、その存在すらも分からない。何故ならばその女は自分からその情報を漏らすことがないためにその情報を掴んでいる人間はごく少数しかいないのである。

そんな女性が自分の正体を教えてくれていることに俺は驚きを隠すことができずに俺は口を開けたまま固まってしまう。

そして俺はそんな状況の中、その女性が言う仕事の内容を聞くことになった。

「私のことは気にしないで、とりあえず仕事をして欲しいの。私は君に私の手伝いをしてもらいたいの」

(俺が手伝う?そんなことができるわけがないだろ?そもそも俺の実力じゃ足を引っ張るだけだ。俺がこの人から教えられることは何もないぞ?それに俺にこの人を手伝ってもらっても何も得しないはず。それにこの人に恩を売ったところで、この人とは敵対することには変わらないはずだ)

俺は少女にこの女の相手をしろと言われた時と同様にこの女の指示を断ることにした。俺が断った後にこの女性はしばらく沈黙するとその表情は見る見ると怒りの感情が滲み出て行ったのであった。俺がその変化に驚いていると女性は、俺の目の前に立つと右手を振り上げた。その行動を見て流石にやばいと感じた俺はすぐさまその女性の右手を止める。すると、その行動を止められたことでその女は冷静になったようで、怒りの形相が収まると俺に対して頭を下げ謝罪の言葉を口にするとこの場を離れていく。

その光景を見て俺はほっとした気持ちになっていた。あの時は俺の体が勝手に動いてしまったがもし、俺が動かなかった場合、俺は間違いなくこの女性の手に潰されていたことであろう。俺はこの少女のことを信用していたがこの世界では俺の命はこの世界の住民に握られている。俺は命の危機を感じたため、その危機を回避するために咄嵯の判断で体を動かしていたのだった。

(危なかった。でもこの女性が俺に何をさせたかったのかはよく分からなかったが多分これで大丈夫だろう。しかしあの女の子のこともそうだが、この女性は一体何者なんだろうか?)

俺は疑問を抱きながらも少女の家に帰ることになる。その帰り道で少女がこの少女の家に着いて来た理由を聞かされることになる。

「実は、あなたは私が助けた人で私が初めて助けた人なの」

少女は照れながら話してくれたが、その表情には嬉しさが溢れていた。だが少女はすぐに表情を暗くさせると俯くように話し始めた。

俺を助けてからかなりの時間が経っているが俺がまだ生きていたことに心底安心していたようだった。それから、どうして俺をすぐに殺さなかったのかということを説明し始め、その時に、俺はこの世界の常識というものがほとんど無いということに気づく。なので俺は少女の話に集中できない状態になってしまったのだが、少女から聞いた話によるとどうやらこの国の王である『リリアナ』が俺に興味を抱いてしまい、この国から出ることを禁止されてしまったようであった。

俺はその事実を聞いてしまうとこれからどうしようかと思い悩むことになったのであった。

(これは厄介なことになりそうだ。まぁいいさ。元々俺は自由に生きるつもりだからな。俺にはやりたいこともある。俺はそのためならこの国から抜け出す覚悟はできていた)

少女の家から帰ってきた俺は少女の部屋に呼び出されて、この少女からの依頼を受けることを了承することにする。俺としても、少女がどんな人物なのか気になるためにちょうど良いと思ったのだ。そして俺が依頼の内容を尋ねようとするとそれを察したかのようにその話をしてきた。

その内容は俺が少女と一緒に外に出かける際に必要になる物を持って来て欲しいという内容であり、俺はすぐに用意をするべく準備を始めることにした。その日は一日をかけてその荷物を用意していき、少女が俺の部屋にやってきたのは夜になってからであった。

少女はいつものフードを被って俺の部屋に入ってくると俺の手元に抱えている大きな袋を不思議そうに見つめると、何に使うのかを聞いてきたので俺は正直に伝えると、少女は不思議そうな顔をした後に少し困った顔になりその道具は俺のいた場所に置いてあるらしく、その場所に少女が案内してくれるという話になると俺は急いで少女の後をついて行きその場所に向かうことにする。そして俺は少女の後に付いて行く。

(俺が暮らしていた村はこんなに遠くなかったんだがな。本当に何が違うのかさっぱりだな。それにしてもこいつ、見た目は子供みたいに見えるけど一体何歳なんだ?)

俺はこの世界の人間の年齢など知らないが、この子は明らかに幼すぎる容姿をしている。俺の記憶の中でこんな少女が俺が暮らしてきた村にいた記憶は全く無かった。

(まあ俺にはあまり関係ないんだけどな。それでこの少女がこの国に来て欲しい理由はやっぱり、その王が関係してるってことで合ってるのか?俺を自分の物にしようとしたのはその王の趣味か?それはそうと、俺が持っていた物って確かあれだよな)

俺はその目的の場所に到着する。少女は扉を開くとそのまま俺の手を握りしめて引っ張るように中に入るように急がせてくる。その様子に驚いた俺はその光景に目を奪われていると俺は少女に引き摺られるようにその部屋の中に連れて行かれてしまう。その部屋の中には一人だけ人間が存在しており、この部屋の持ち主であるその男はこちらを見ると微笑を浮かべたのだった。

「久しぶりだね。私のかわいい奴隷ちゃん。まさかこの子がこんなにも早く見つけ出しちゃうなんて思わなかったよ」

少女は自分の主人に挨拶をした瞬間、頭を垂れ始めた。それを見た男は不敵に笑うと俺を見定めるような目をしてくると話しかけてきて言葉を放つ。

「君も随分変わったね。最初はただのお飾りかと思ってたんだけど意外と強いじゃない」

俺も一応その男がどのような人間なのか理解しようと努めるがその男の視線からは感情が全く読み取れずにどうしたらよいのか全く分からない状態だったため何も答えることができなかった。すると男は笑い声を上げると今度は別の話をしてきた。

(もしかしてこいつが噂になっている女の正体?この人が魔女っていう奴なんだよな?全然そういう感じがしないんだが。それよりも俺のことを知っていたって事はやっぱり俺がここにいたことを知っているのか。俺を攫おうとした時のあの女の表情を見る限り、この人の命令みたいなものだろうし、とりあえずこの人は敵ではないと考えて良さそうだな。俺の予想ではこの人、結構強いはず。俺の直感が告げてるから間違っていないはずだ)

俺は目の前にいる女性の強さが自分と大差が無いと思っていたのであった。

「それで君は何をしにここにやって来たのか、もう忘れたわけじゃないよね?」

その男の言葉を聞いた少女は焦ったような表情をしながら何かを訴えようと口を開けかけたのだが俺はその行為をやめさせるように首を横に振ると少女に黙るようジェスチャーを送る。少女は俺の意図を汲み取ったようで口を閉じる。俺はそんな様子を見ながらこの男がどういう人間なのかを考えると俺はある結論に達する。その答えは簡単でこの少女は目の前の男性の機嫌を損なうことができないということだった。その事からこの男性が少女に下した命令というのがなんとなく分かったのであった。そして俺はその事を口に出して伝えると俺の言葉を耳にするとその女性は満足気に笑みを浮かべる。どうやら当たりらしいと俺はすぐに思った。それから目の前の女性の態度が急に柔らかな口調に変化したことで俺は驚きを隠せない。だがそれも仕方のないことだった。何故ならばこの女性が放つ雰囲気が一瞬にして変貌したためである。先程までの緊張感のある雰囲気が今ではどこかへと行ってしまい、まるで友人のような感覚で会話を行うようになっていた。

(おい。この女、一体何者なんだ?い、いきなり別人のように変わりすぎだろ。俺は何をすれば正解だったんだ?それに、どうしてこんなにフレンドリーな雰囲気で接せられている?意味がわからない。でも今の状況では何もできないから今は大人しくしておこう。しかし、何でこんなことになってしまったんだろうか?)

俺はこの女性の突然の変わり様に戸惑いを隠しきれない。その女性としばらく話をしたのだが俺はこの女性の名前すら聞くことがないまま話が終わりを迎えることになる。俺の質問が尽きてしまったので俺からこれ以上話を振ることも出来ずに俺は女性に一礼するとその場を立ち去ろうとした時、その女性に呼び止められて俺は振り返ることになる。そしてその女性は笑顔を見せるとその言葉を残し、俺が元いた世界に帰るための手伝いをしてくれるという。だが俺はまだ信用していないため素直に従う気はなかった。俺は女性の申し出を断った後、俺の元いた世界にこの女を連れて行こうとしたが女はそれを拒否したのであった。

「君が望むなら君の世界に行くのもやぶさかではないが私も用事があるんでね。悪いが君の要望を聞くことはできない。私はこれからこの子とデートをする約束をしていたから、この子に君が帰る手伝いをするように頼んだのはその為だったからね。まぁこの子はこの国の王女であるこの私よりも強いようだから問題ないとは思うが。じゃぁまた機会があれば会おう。次は私が君の国に遊びに行ってあげるから楽しみに待っていてくれたまえ。その時に色々と教えてくれれば良い。それじゃあまたね」

その女は一方的に別れを告げると少女を引き連れて俺の前から姿を消すのであった。俺がその光景を目にした後、俺は自分の元いた場所に戻ると俺はそこでようやく安堵のため息を吐き出すのだった。

(あの女性がこの国の王だとするとやはり、俺はこの国から出ることは出来ないみたいだな。だけどなんであんなに気軽に話ができたんだろうな。俺の知っている王は俺には無関心というか俺に興味がないってのは間違いないから普通はありえないと思うんだけどな。そもそも俺はどうやってあの国を抜け出したんだろうな。覚えてないし。俺の記憶が曖昧になった原因はやっぱり、あれしか考えられないな。あれのせいでこの世界に来たのかもな。でもあれは、何の力もない俺なんかができるような芸当じゃないし、本当に何が起きたんだろうな)

俺が自分の記憶があやふやになってしまった原因を考え始めるが俺の頭の中がこんがらがってきてしまい考えがまとまらない。それでも何とか考えてみた結果俺は自分が何者であるか思い出そうとすると俺は何故か懐かしい気持ちになって来た。

(そういえばこの俺が住んでた村はどこにあったんだっけか。この森に来る前に暮らしていた村の名前はなんだ?俺が住んでいた家には家族がいたはずだ。俺には妹がいてその娘もいたな。そうだ。その娘の名前は『メイ』っていうんだ。確かその娘に呼ばれてこの村にやってきたんだったよな。俺は何て名前の村に住んでたんだったかな?思い出せん。俺ってこんなに忘れっぽかったのか?俺は自分の記憶が曖昧なことに驚いてしまう。それと同時に俺は何か違和感のようなものを感じていた。俺は一体この国でどんな生活を送っていたのか思い出そうとしていた。

そして俺は自分がこの少女と一緒に暮らしていたことをはっきりと理解するのであった。俺はこの少女を自分の命に代えて守ろうと決めて自分の身を削って少女を守ると決めたはずなのにその俺の行動が全て無意味であった。

俺は自分の行動がどれだけ軽率であったのかを反省すると共に自分の無力さを痛感する。

俺はこの少女を守りきれなかった。

俺はこの少女に何の恩も返せていないのだから。

俺はその日を境にその少女との暮らしを続けていくことにしたのである。俺のこの国に来て初めて出来た友達だったからだ。俺とその子はお互いに助け合いながらも仲良く過ごしてきた。だが俺は少女に何かしらの事情があるということに気づいていたが俺はあえて聞かないことにした。

俺がその子のことについて触れて欲しくなさそうだったからである。そして少女も自分の過去について語りたがることも無かったのである。そのこともあって俺は少女の過去の詮索することを諦めることにした。

少女は自分の本名さえ口にしなかった。それはこの少女なりの考えがあってのことだろうと考えた俺は、俺の本名は誰にも伝えないことにしている。少女は俺の名前をいつも呼んでいた。俺が少女に名前を呼ぶようお願いしたのだ。

俺はその少女に対して名前を呼ばれるたびに嬉しさを感じた。この少女の側にいるだけで俺は幸せを感じることができた。その反面、この子にもこの生活から脱して普通の人生を歩ませてあげたいと強く願うようになった。俺も一緒にこの子の世話をしながら生きていこうと思っていたのだがその夢は叶わず俺はその少女に殺される運命になってしまう。俺を殺した少女の悲しげな表情を見た時、俺はとても後悔したが少女はその事を俺に伝えると泣きながら謝罪してくれた。その表情がとても綺麗だと感じたと同時にこの少女だけは絶対に守り抜きたいと思ってしまったのである。

「お兄ちゃん、ありがとう」

少女の一言を聞いて意識を失った。その言葉の意味は分からなかったが最後に見たのはこの少女の微笑む姿であり、俺はこの少女が笑ってくれるなら何でもしようと決意したのだった。

そして俺が完全に意識を失う直前に聞いた言葉。それが「お兄ちゃん大好き」というその少女の囁くような言葉であった。その言葉を聞けて良かったと思い俺は完全にその人生に幕を閉じた。はずだったのだが何故か俺は生き返り目を覚ますと俺は真っ白な空間の中に立っていたのである。俺は目の前に現れた神と名乗る男の存在に疑問を持つしかなかった。俺は何故、死んでいるのにもかかわらずここに存在しているのか理解できなかった。

何故、この男が目の前に存在しているのか?俺が生きていた頃の記憶と全く違うこの光景を見て俺は驚きを隠しきれずにいた。すると男は俺に話し掛けて来たのである。

「君はどうして死んだんだい?」

(俺は何故生きているんだ?俺は殺されたはずなんだが。それに俺は誰なんだ?なぜ俺の名前が出てこない。俺は誰なんだ?この目の前に俺に話しかけてきている男を見ていると心が落ち着く。俺はどうしてここにいるのか?そもそも俺はどうしてここへ来てしまったのか?)

俺は目の前の男に質問された内容が頭に浮かび上がってくる。だが俺が死んでから何年が経過するとこの目の前の男は言っているのか全く見当がつかなかったため俺はとりあえず男の話に付き合うことに決めた。俺は自分がどのような状況にあるのか分からない以上は、下手に話を長引かせるよりもまず、俺が置かれている立場を理解する方が先だと判断した。

俺は目の前の男が話す内容を耳にすると俺は驚いた。どうやらここは天国という場所らしい。そしてこの男はこの世界の神だというのである。俺はそんな突拍子も無い話を信じることができなかったが俺はその男の瞳を見るとこの男が嘘を言う人間には思えなかったのである。俺はそれからしばらくの間は目の前の神の話を聞いた。そして俺が死んだ経緯を聞き俺は自分が死ぬ直前何をしていたのかを思い出していた。

(そうだ。この俺がこの世界に訪れた時の記憶がないから気にはなっていたんだよな。それで俺が死ぬ直前何をしていたのか俺は思い出してきた。この世界で俺の大切な人をこの手で殺してしまい絶望していたところで俺は謎の女性と出会い殺されかけたんだったな。でも、この女性は結局のところ一体なんなんだろうか。俺を殺そうとしたのは間違いなく、この女だと思うんだが。だけど俺はその女性がどうしてそのような行為に至ったのかがどうしても気になった。だが今はその女性についての考察をしている場合ではないことは間違いないから後回しにするしかないんだが。それにしても俺は一体なんでこの世界にいるんだろうな?俺はこの世界に呼ばれた覚えは当然、あるわけがないから俺はどうやってこの場に存在することができるんだろうか。俺はこの世界を訪れている時点で何か理由がないといけない。だけどその理由が全く思い当たらないからこそ不思議でならない。それともこの女によって俺の身体がこの女と同じように作り替えられたのだろうか?そうなると辻妻があう。だがそれでは俺の肉体の変化に納得できない部分が多い。俺は俺自身の変化を確認すると俺はこの異世界に来て以来、ずっと気にしないようにはしていたのだが俺の外見に違和感を覚えた。この世界に来た時は俺が俺である証明が欲しいと強く願い続けていたからか自分の顔を見ることができなくなっていたから鏡というものを見る習慣がなかったからな)

俺は自分自身の顔が変わっていることに気づいた。俺はそれを自覚し自分の目元に触れてみると俺の眼球に変化があったことに気づく。今までは見えていなかったものが普通に見えるようになっていたのであった。

(これはどういうことだ?もしかして俺は視力を失ってたってことなのか?まぁ、そのおかげで俺の本当の姿を見ることがないままに俺が俺でいられるってことが分かって良かったんだが。まぁでもなんで俺がこの世界に呼ばれなきゃいけないんだ?そもそも俺をこんな風にこの世に存在させなければ俺の本来の目的は果たすことが出来たはずだ。それなのに俺を呼び出した意味が未だに分からないな。そもそも、なんで俺がこの世界にやってきたんだ?俺は何も覚えちゃいないけど。そもそも俺の記憶の欠落って俺を召喚させた誰かが原因だったりしねえかな)

俺は自分の疑問をぶつける相手を探すが周りに誰もいなかったのでその問いに対して答える声は無かった。俺はそのことに苛立ちを覚えてしまう。だがその怒りはすぐに消え失せてしまう。なぜなら俺はその記憶喪失の原因に検討がついていからだ。

(恐らく、俺のこの記憶の空白はあの女神に何かしらのことをされてこうなった可能性が高いな。そう考えれば全てが納得がいく。あの俺を殺しに来た時に俺に向かって「私の物になって」なんて言うはずがない。そして俺を殺した後の表情だっておかしい。あの女のあんな表情は見たことがない。まるで愛しい人を失ったみたいな顔だったもんな。だからと言ってあいつの言葉が俺の本心でないと断言することはできないんだが。もし仮にあれが真実ならばあいつは一体何を思って俺の目の前で死んだんだろうか。まさか俺があいつを殺して殺した奴があいつに成り代わってこの俺の人生をめちゃくちゃにするつもりだとか?そんなこと考えたって分かる訳ないよな。でもあいつならやりかねなくはあるんだよな。俺を殺した理由は俺がこの世界で何かを成し得たかったからっていう話になるから、何かの目的があって俺を殺したのは確実だろうな。そしてそいつはもう既に俺を殺すことに成功したと勝手に思い込んでいる可能性もなくはない。だがそれは流石に無いか。

そもそも俺は自分が何者か分かっていないのだから。この世界のこともほとんど知らない状態だし、俺がどんな人物だったかも記憶に一切残っていないのだから。俺が元の世界で何者だったとしても俺は今のこの現状を打破する力を持っているとは到底思えない。それに俺は【聖魔剣士】だ。魔法を扱うことに長じた職業であることに疑いの余地はないが俺はこの剣技以外に関してはてんで無能だ。だからこの状態で俺のこの力に頼ることは出来ない。だからこそ、どうにかして俺にこの力を授けてくれた相手に頼んで元の場所に返してもらいたいと本気で考えているのだがそれができるのかどうかさえ分からない状況になっている。

「君には申し訳ないことをしたね。君は私がこの世界で召喚した存在なんだ。この世界には【勇者】と呼ばれる存在が必要とされているのは知っての通りなんだ。私はとある目的でその【勇者】を探していたんだけどその【勇者】候補を探し出すことが出来なくて焦っていたのよね。だけどそこで丁度よく君が私の前に姿を現したの」

俺はこの神を名乗る男の発言を聞くとその発言の真意を探るべく男に問いかけた。

「お前が本当に神なのかは知らん。俺がどうしてここにいるのかも正直の所は理解していない。それよりも聞きたいことがあるんだが。その【魔王軍】とやらは今この世界に侵略してきてこの国を支配しようとしているんだよな?」

俺のその言葉に対して目の前の男は真剣に耳を傾けてくれてその言葉についてしっかりと答えてくれる。

「えぇ、その通りよ。この世界に突如として現れた【魔物の大群】の対処をするにあたって、まずはこの国に存在している『冒険者達』の力を結集させる必要があった。その作戦が実行される前だったのが運が悪かったわ」

「ということは俺のステータス画面に記されているレベルが異常だったというのは嘘じゃないということだよな」

「嘘なんかつかない。ステータス画面に記されたものは間違いなく、貴方がこの世界に来るまで培ってきたものです。それこそがこの世界で生きていけるようにと貴方が神様から賜った力ですから」

「俺はこれから一体、何をすればいいんだ?この世界に来てから俺はどうして自分がこのような姿に変えられてしまっているのか、自分がどのような立ち位置にいるのかも全くわからない。俺は一体どうしてこの世界へやってきたのか?俺が何をしたかったのか、俺自身がどうしてこの世界で存在し続けているのか?俺には全く理解ができない。そもそも俺に記憶が無いから何一つ俺にはわからないんだよ。俺はこの世界を救うべきなんだろうか?それともただ俺は自分が生き抜くための糧を得るためだけにこの世界で行動しなくてはならないのだろうか?教えてほしいんだ、俺はどうしてこの世界に連れてこられなければならなかったのか?そもそもどうして俺はこの世界で俺の知っている人達が誰一人存在しないのか?俺の記憶がなくなっている原因もお前なら分かっているんじゃないか?俺はこの世界に何を求めているんだ?どうして俺にこんなことをしてくれるのか?そもそも俺はどうして俺の記憶がなくなってしまったのか、この世界に存在している人間はなぜ全員同じような姿をしているのか?俺はどうしてこの世界に存在しているのか?」

俺は目の前の人間に言葉をぶつけた。その問いは目の前の男が求めていたものであったのであろう。その質問に男は答えることにした。

「君のその疑問に対する返答は二つあるの。一つ目は君がもともとこの世界の住民ではなかったという事実だ。君はある日突然としてこの場所に現れた。その時から君はこの世界で生活することになった。その理由については、まだ教えることができない。君はある目的を持っていてその目的を達成するまでの間はこの世界に滞在することになると思う。

君は自分が一体何のために呼び出されたか、それを知らないはずなのにも関わらず君はそのことを知っているかのような口調をしていたの。そして君はその力によって自分と似たような容姿の存在を生み出すことが出来るみたいだけどその力を使って自分が望まない存在を生み出さないようにしてね。そして二つ目の回答なのだけど。この世界の住人が皆君のような人間ではないから。この世界の住民が皆一様に同じ姿形をしているように見えるのはきっとその見た目は偽装で本当の姿を隠しているんだよ。その正体も私は知っているけど、そのことについても教えることはできない。君は記憶を取り戻す必要がある。それが私の役目でもある。さてここで一旦この話を終わりにしましょう。これ以上の話は私の領域では行わない方が良しと判断しましたのでこの辺りでこの場を去ります。またお会いする機会があれば、今度はゆっくりと話をしたいと思います」

(俺が元々この世界にいたわけではない?俺がいた場所は別の異世界だったと言うことか?そして俺がその世界に戻る手段があるって言うんだから。俺は俺を呼び出してくれた女神様に頼み込めば、俺の身体を元に戻すことも出来るんだろうか?)

「俺は元の身体に戻れるんですか?もしそうなら俺はすぐにでも元の世界に戻っていただけるんでしょうか?」

「残念ながらその願いは叶えることは出来ないわ。元の姿に戻ろうにも一度この世界の物質と完全に一体化してしまってる。それを無理やり引き剥がすことはとても大変な作業なの。でもね。元の姿に戻りたいというのならばそれは可能だと思うの」

「分かりました。では、元の姿でこの世界に戻ってくるために、まずは俺の力を最大限に活用してこの世界を侵略しようとしている、あの『悪魔』を倒しに行こうと思っています」

俺がその発言をすると彼女は驚きの反応を示す。その反応は当然だろう。俺は自分の意思で自分の発言を覆すつもりはないし、俺をここまで導いてくれたこの女性の期待を裏切るような真似をするつもりもなかったからだ。

「まさか私の与えた力が役に立つなんて思ってもいなかったよ。でも本当に大丈夫?あなたは私の想像を超えるほどの強さを誇っているようだけれど、そんなに簡単にこの世界の最高戦力に対抗できると思っているの?」

「えぇ、俺がこの世界で得た力を全て使えばね。俺の持つこの力を最大限有効的に使って、俺は【死神】を倒しに行きますよ」

俺はその言葉を女性に向けて言い放つとその場を後にした。俺は俺が強くなるために、そして俺の記憶を蘇らせる為に、この世界を救いそして俺の願いを叶えることを目指すと決めた。

俺の言葉を聞いてその女性は少し考え込む素振りを見せていたがその後に一言告げた。

「君にその気概さえあれば私は全力で応援させていただきます。頑張ってください。貴方の旅が実りあるものであることを願っております。私に出来ることはほんの一部でしかありません。ですが私は貴方に力を与えました。どうか私の愛しい人に、そして私の娘のことをよろしくお願いします」

(あれ、この声どこかで聞いた覚えがするな。それに今娘のことをとか言ってなかったかな。俺はこの声に聞き覚えはないはずなんだけど、この声の主の正体は一体何なんだろうな)

そして目の前に光が現れ始めるとその光の眩しさから思わず目を閉じてしまう。しばらく時間が経ってから俺が恐る恐る目を開けるとそこは俺の部屋でベッドの上で寝ていたのだ。俺は自分の部屋の光景を見てここが自分の部屋であるということを理解できたことに喜びを覚えつつも俺が今まで見ていたものが果たして現実であったのかを確かめるべく先程起きた一連の出来事について考えることにする。

俺はまずは自分の姿を確認しようと思い姿見の前に向かうとそこに写っていたのはまだ幼い女の子だったのだが、その容姿はかなり整っていると言っていいぐらいの美しさを放っているのは間違いないことだったし。俺自身もそこまでの美少女という訳ではないのだが、顔立ちに関して言えばかなりのものと言えるかもしれないが、それよりも特筆すべきは髪の毛と瞳の色だ。

「銀色って珍しい髪色だよなぁ、こんなの見たことないぞ?それに俺の目ってこんな綺麗な赤色をしてたっけか?」その言葉を発した直後だった。その言葉に反応したかのように、頭の中に情報がどんどん流れ込んでくる感覚に襲われた俺はその情報量の多さに耐えきれずに意識を失ってしまう。

目が覚めると俺はなぜか俺の家のソファーに横になっていた。どうやら俺はこの家に住んでいる妹の亜美に介抱されていたようで亜美が俺に話しかけてくる。

「もう兄ちゃん、心配したんだよ!急にぶっ倒れるから本当にビックリしたじゃん!」

妹が必死に何かを訴えかけているのだけはわかった。俺はとりあえず体を起こしてみるがそこで異変を感じる。体がやけに軽いのだ。

「えっと、ちょっと確認したいことがあるんだが良いか?」

「いいけど。本当に大丈夫?まだ本調子じゃないんでしょ?今日はゆっくり休んでた方がいいよ」

(やっぱり俺の予想は正しかった。今、この少女の喋っている内容を理解することができるようになったのも俺の体に何が起こったのかという謎を解く鍵になってくれるかもしれない。今なら俺はこの子の言っていることが理解できるしこの子が何を思っていて俺のことを考えてくれているのか、そういう細かい所までも全て分かる。これなら会話も問題なく行えるな。さて、これからの行動方針を決めていこうと思う。俺は俺の本来の身体にもう一度戻るため、この世界の『冒険者』が集結してきているという【悪魔】の本拠地へと向かうことに決めた。そのためにまずは強くならなければならない、そのために必要な力をまずは手に入れることだな。俺の妹の亜里紗には申し訳ないがまずはこっちを優先しなくてはならない。だからまずはこの子に事情を説明するところからだな。

俺はこれからの行動方針として、この家に居候しながらこの世界に存在している『冒険者』の中でもかなり実力のある人物の情報を収集することを目標とする。

まずはこの世界には『冒険者』というものが存在していて、その数はこの世界で暮らしている人間の総数の約4割を占めているそうだ。俺がこの世界で初めて遭遇したのは『ゴブリン』であったが、『モンスター』と呼ばれる魔物はその強さに応じて、レベルが1から99まで存在していて、その中でこの世界に存在しているのは一番強い『ゴブリンロード』レベル10と言われている魔物だ。この世界での平均的な成人男性よりも戦闘能力は高いらしく、レベル20もあれば一人でレベル10以上の魔物に対抗できるとのことでこの世界で戦う力を持っている人間達は基本的にレベルが20以上ある人間しかいない。ちなみにこの世界における一般人の平均ステータスは大体のところ5前後なので、この世界で生活している人にとってレベル20はある一種の憧れのようなものになっているみたいだ。

そしてこの世界でのレベルは戦闘経験を積み重ねていくうちに上昇する。しかし上限というものが存在するみたいで、上限がレベル99とされている。そのためレベルアップをするためには経験値を多く稼ぐ必要があるわけだが。

「経験値ってどんな仕組みなんだ?そもそもどういう方法で取得できるものなのか?全くわからん。これは調べる必要があるよな」

「お姉さんに聞くといいと思うよ。お姉さんの能力はそういったことについて詳しいからね」

「ん?亜梨沙?いつからそこに居たんだ?さっきまで話していた相手は誰だ?なんかすごく違和感を感じたんだが、何がおかしかったんだ?」

俺が亜美に対して疑問に思ったことを言うと俺に向かってこう返答してきた。

「それは私の固有技能によるものだと思うの。お兄ちゃんが気を失う直前に私がお兄ちゃんに使ったのは、私の固有技能【精神支配】による能力、そしてさっきのお姉さんに説明したことについては、実際に私が行った体験に基づいての事実なんだよ。私のお兄ちゃんへの気持ちをしっかりと理解してくれてとても嬉しかったよ」

その発言を聞き、先程の亜麻色の髪をした女の子の容姿と亜海の発言を思い出したことで俺の脳内に衝撃が走った。その二つの事実が繋がった時、俺は俺の身にとんでもない現象が起きているのではないかと、そんな気がしてならなかったのだった。そして、俺の体は勝手に起き上がり俺の意思とは無関係に俺の部屋へと向かい始めてしまい。俺はその動きを止めることができないのだった。

(まさかそんなことあるはずがないよな?俺があの少女に心を奪われたってことなのか?いやそんな馬鹿なことあるかよ?でも俺のこの感情が嘘偽りのない本物だということは疑いようもないくらいハッキリと感じることが出来た。でも待ってくれ、どうして俺があの子を好きだと思っただけで俺は俺の体を俺の支配下に置けたっていうんだ?普通なら無理だろう?いや、今は考えてもしょうがないか。それに亜海の説明によるとこの世界の人間が皆同じような姿形をしているように見えた理由は俺が俺の本当の姿ではなくこの世界に存在する人間の姿を借りて生きているからだと言っていたはずだ。じゃあその元の世界に戻る方法も俺が亜海に恋をすればわかるようになるのかな?)

「な、なぁ。俺が俺自身と向き合う為に必要な時間と場所をくれはしないだろうか?それと俺はどうしてもお前と向き合いたい。もし良ければ時間を貰えないか?」

俺の口から勝手にそんな言葉が出てしまう。その言葉を言われた俺は俺の言うことに素直に従い俺と一緒に部屋を出ていくことになった。俺はこの時既にこの体が一体誰のものなのかどうかが分かってしまった。そして俺はこの世界に来て初めて【魔神】に感謝することになる。

俺は俺の意識と【魔眼】を使い自分の意思と俺の意識が乖離した時にだけ発動するように制限をかけることで【魔神】の能力の一部を使用することが出来るようになりました。

そしてこのスキルのおかげで、今目の前に立っている少女の名前を知ることができたので彼女に名前を尋ねた。すると彼女は「私は亜紀、君の恋人だよ」と微笑みながら言ってくれたのだ。その表情が本当に愛らしいもので、一瞬で虜になってしまった。

そして俺の意識があるうちはまだ大丈夫だとは思いますが俺の自我が完全に消え去るまでに俺は俺が元居た世界で暮らしていた時の事を覚えている限りは思い出せるようにしようと思う。それが今の状況において最も有効な手段であることは間違いなく、俺自身の成長を促すきっかけにもなるだろうと思えた。

(そういえばこの亜里沙という名前の妹にも名前を聞いておかないと不便だから聞いておかなきゃいけないな)

俺はそう考えた後亜里沙に声をかける。

「えーっと。亜理紗って言ったっけ?ちょっと良いかな?」

「え?急に呼び捨てにされたんだけど、しかも下の名前で、う、嬉しいけどいきなりどうしたの?」

亜理紗は突然の出来事に戸惑いを見せているようだったが。俺は自分の目的を達成するために言葉を発する。

「亜理紗のことは亜里紗と呼ぶことにする。そして今度から俺は亜理紗のことを下の名で呼ぶことにするからそのつもりでいてくれ。あと、俺はこの世界のことについてほとんど知らないんだ。出来れば教えてくれると助かるんだが頼めるか?」

「分かったよ。お姉さんが色々と教えるよ。これからよろしくね」

俺が俺と話をすることができる時間は限られてしまってしまっているため、今の俺が出来る精一杯のことを行う。俺はそれからしばらくの間この世界で過ごしていくうえで役に立ちそうな情報を亜理紗から色々聞いたのだが、そこで亜里紗が【女神】であることが判明し、更に【悪魔】がこちらに侵攻する日が近いとの情報を聞くことが出来たのだった。

「亜紀がこの世界に居るということは間違いなさそうだな。亜紀、俺だ。やっと会えたぞ。俺の可愛い妹よ!この世界で一緒に幸せになろう!」

俺はそう口に出して言ってしまう。しかしそれを誰かに聞かれてしまったらしく。俺の元に大勢の人が駆け付けてくる。

「おい!何者だ!その方から離れろ!この国の王子をかどわかした奴!絶対に逃さないぞ!」

「そうだ!その方は我らが姫様の兄君、つまりこの国の第一王位継承者でもある!すぐにその方から離れよ!」

どうやら俺は勘違いされているようなので誤解を解く必要があると感じ。亜紀の手を引き逃げようとするが。俺の動きが鈍く感じられ。上手く走ることが出来なかったのだ。その瞬間、先程まで元気よく叫んでいた男達は皆力なく倒れ伏してしまう。俺は亜紀の方を見てみるがそこには先程の美少女は存在していなかった。そして、そこに立っていたのはかなり強面のおっさんだったのだ。

(は、はぁ!?こいつはさっきまでの美少女はどこに行ったんだよ!まさか俺に惚れたせいで性格が変わったのか?ま、まさか、俺があいつに一目惚れしたのは外見が変化しただけの別人とかじゃないよな?そ、そんなわけ無いよね?だって見た目は完璧に変わったし声質も変わったんだよ?だから同一人物と考えるのも難しいんじゃないだろうか?でも亜梨沙の話によればあの子が亜紀なのは確実っぽいしなぁ。とりあえずこいつらの拘束だけはしておいた方が良いかもな。このまま放置したら何するかわからないもんな)

俺は取り敢えず全員を縛り上げることにした。その際にこの国の王女であるという情報を手に入れておき、亜紀に確認をとってみた。しかし本人からは自分がその様な存在だということを否定されてしまうのであった。俺がそれを信じられず亜樹の顔を確認すると。そこにいたのは先ほどとは全く別物といって差し支えない容姿をした女の子になっていたのだった。俺はそのことを問いただしてみるとそのことについて亜紀は答える気がないらしく。その件について追及するのは止めることにした。そして亜里沙の居場所を教えてもらいその場所に案内してもらうことになる。

俺はその後この国の首都を歩いている時にある店を見つける。そこは俺の求めていた理想郷とも言える場所で、俺はその店の中に入ることを決意するのだった。そのお店で売られている品物があまりにも美味しかった為、そのお店を亜紀に紹介してもらえることになり、その場所へと向かう。しかしそこにあった看板の文字を見た時。

「は?異世界言語翻訳の眼鏡が売っているんですか?これは買いですよね。これならこの世界で暮らしていくにあたって必要になってくるはずですから。早速購入しておこうと思います。あ、店員さんすいませんがこの眼鏡を売ってもらえますか?あ、あとこの世界で流通しているお金がどれくらいの価値を持っているものなのかを知りたいのですが。それと何かこの世界の常識と通貨の単位と価値が分かる資料のようなものがあれば是非購入したいので見せてもらえると嬉しいです」

「え?この店の中に入るのですか?ここは会員制になっておりまして会員登録をしなければお入りになられないのでご注意ください。そして、お客様にお勧めの商品なのですが。そちらのアイテムがございます。その眼鏡をかければ全ての知識を得られることが可能になり、文字を書く際の筆記体まで認識可能となります。それと貨幣については銅貨一枚=一円。銀貨百枚=金貨千枚=大白金貨といったふうに上がっていきます。ちなみにこのお店の値段帯としましては。銀貨五十枚ほどで購入できるのは一般的な庶民が身につけることが出来るレベルのものでして。最高品質のものだと金貨三十枚ほどの値段となっています」

(あ、あれ?なんかとんでもない代物を普通に勧められて買おうとしてないか?いやでも、俺には【死神】の能力があるから。そう簡単に死ぬことはないと思うんだよな。でもさっきの男達の攻撃くらいは喰らう可能性があるし、やっぱり身を守る術があるというのは重要だもんな。だから俺としては購入する以外の選択肢がないはずなんだけど。それでも流石に高いとは思うけどね。それにしてもなんで俺の言葉を理解してくれたんだろう?もしかしたら亜紀も【魔眼】の所持者だったりするんだろうか?)

俺はそんなことを思いながらもそのメガネを購入してしまうのだった。

「この世界のことが少しわかったところで亜里紗、亜里紗は俺が元居た世界と繋がっている場所に心当たりはあるか?」

俺は俺のことをずっと見てくれている亜里紗に尋ねてみる事にした。

「多分それは亜理紗のお兄さんのいる場所だと思うの」

「え?どうして?」

俺は俺の質問に対して帰ってきた答えに驚きつつもその答えに至った理由を聞いてみることにする。

「だって、亜紀は亜理紗と血が繋がった実の妹だよ?だから、亜理紗が亜理紗のことをお姉ちゃんと呼んでいるのは亜理紗にお願いした時にだけ。それ以外では絶対にその呼び方を使わないようにしていたの。亜理紗が亜紀と本当の意味で姉妹になるためにね。そして私は亜理紗に私も妹にして欲しいとおねだりをして、亜理紗は私のことを受け入れてくれたの。だから、亜理紗のお兄さんと亜紀が会うことができればきっと亜理紗の事を家族に迎えてくれるはず。亜理紗がこの世界に来たのもその為だもん。」

「じゃあ俺達が元の世界に戻ればその望みが叶うっていう事なんだな?」

「そう、だけど、その前に亜理紗と亜紀と亜理紗のお母さんの三人の思い出の地を巡る必要があるの」

俺は亜里紗の説明を聞き。自分の目的を果たすために亜理紗と亜理紗の母がいると思われる所に行くことにする。そこで俺は、俺達を待っていたのが亜里沙の思い描く未来ではなかったということに気がついてしまうのだった。

俺達は『竜人族』の姫君である亜里沙がこの世界で俺の妹だという事が判明したので。俺の妹に俺のことを好きになるように仕向けて俺と結ばれることで俺の望む未来を作るという計画を立てていたのだ。

俺のこの作戦を実行するために必要な物は妹の亜里紗の俺への愛の深さがどれだけのものなのかを確かめることだ。だから俺は俺の亜理紗への愛情度がどこまで深まっているのかを調べることにした。

俺がまず初めに行ったことは、亜理紗を亜里沙だと思い込んで亜里紗を亜理紗と呼ばないというものだ。しかしその結果。俺は、目の前にいる美少女は間違いなく、亜紀だということを再確認してしまったのだ。だが俺は、その時は、まだ大丈夫だと高を括っていた。俺は、それから暫くの間。亜紀の事を妹だと勘違いしながら接するように心がけることにし。なんとかこの場をしのぐことに成功するのだった。そして俺が次の計画を実行しようとしていた時。突如として現れた謎の集団に俺は捕まり拘束されてしまったのだ。その後、謎の男たちに色々と尋問を受けたのだがその途中で亜紀が亜紀ではなく実は妹だったという衝撃的な事実を知ってしまうことになるのだった。そして亜紀からその妹が行方不明になっていると聞かされてしまい亜紀はその捜索のためにここを訪れたらしい。

その話の中で気になったことがあった。

「亜紀、一つ聞きたいことがある。亜紀の母親の名前ってなんていう名前なんだ?それと父親の方はどうしているかわかるか?」

「お母様の名前は真由美。でもお父さんのことは何も知らないよ。でもね。この世界に来てすぐに亜紀に助けて貰ったんだよね。あの時は本当に感謝してもしたりないくらいだったの」

俺はその名前を聞くなりその女性が今俺が居る国の第一王女の真由姫であり、亜紀の父親の妻だということにすぐに気づくことができた。そしてその女性の娘であるのならば亜紀が行方不明となっている亜紀の母親に似ているのは当然だろうと思ったのだ。

(どうしようかな。亜紀が母親を探しにここまでやってきたということは、恐らく亜紀の母親がこの国に住んでいる可能性は低いんじゃないか?だったら俺の目的の為にもこの国で情報収集を行う必要がありそうだな。しかし俺は、さっきこの国の第一王女の亜梨沙に一目惚れをしたところだ。つまり今の俺は、亜理紗よりも亜紀を優先した方がいい状況だってわけだよな。だったら俺としては亜紀の手助けをするのが良いと思うんだけどな。でもここで下手に動いてこの国で動きにくくなるような事態に陥るのだけは避ける必要があるよな。それならやっぱり亜紀にこの国から出て行かせた方が俺にとっては都合がいいんだよな。だって亜樹は亜梨沙に会わせることが出来ないもんな。亜樹に亜梨沙を紹介した時にもしも亜樹が俺と同じ気持ちを抱いていた場合。その感情を抑えられなくなって、亜紀がこの国から追い出されることになってしまう可能性が高いんだよな。それは何としても避けたいところだからな。亜紀は俺と一緒に亜理紗に会いたいはずだ。そして俺が元の世界に戻る方法を探る為にこの国の力が必要だ。だから俺も亜紀に協力して亜紀の手伝いをすることにしよう)

「よし。わかったぞ亜紀。俺に任せろ。亜理紗を探す手伝いをしてやる。それでその探し人がどこの国に居るのかは分かるか?俺の記憶が正しければその亜理紗の母親は、『神国アルテア』という国の第一王女のはずなのだが。確かこの国は『魔国 マギニアン』と対立している国の一つだったはずだからな」

「え?本当なの!?︎でもその通りだよ。でも、どうやって亜紀はお父様に会ったの?この国の王族の方とはお兄さんしか面識がなかったんじゃなかったの?だから、この世界に来る時お兄さんに頼んだんでしょ?」

亜紀から返ってきた返答を聞いた時。亜紀が俺のことを見透かしていたのに俺は驚いた。

「よく俺が亜紀と兄妹だってわかったな。でも俺には【鑑定眼】があるんだぞ?それにお前も【魔神】の力を持っていたりしなかったのか?」

俺は亜紀からの疑問に対し素直に疑問を口にする。

「確かに亜紀にもそういうスキルは持っているよ。それに私とお兄さんが実の兄弟で血が繋がっているのも知っているよ。ただ私は亜紀と違って【呪印】を持っていないけどね」

「へぇーそうなんだな。でもなんで【魔神】の能力があるのに亜紀はこの世界で【魔人族】の姿のままなんだ?【呪印】を解いた方が良いんじゃないか?」

「私は、元々亜紀だからね。亜紀の体で亜紀じゃない姿でこの世界で過ごすなんてことできないもん」

俺がそんなことを言うと何故か亜紀からそんな風に言われてしまったのだ。

(俺からしたら普通は逆じゃないか?と思うんだけどな。まあ、今はそれよりもだ。俺の妹と俺が実の兄妹で血が繋がっていて。亜紀と俺も血が繋がっているからなのか。亜紀の考えていることが俺にはなんとなく理解できるんだけど。これって結構便利な能力だよな。だから、もしかしたら俺も亜紀みたいに相手の考えとかを読むことが可能かもしれないな。もしそれが可能ならこれから先の作戦にとても有利になりそうだな。だから後で試してみるのも良いかもしれなな)

そんなことを考えていた時。突如亜紀と亜紀を探していた亜紀の母の真由美が俺の目の前に現れたのだった。そして亜紀の母の容姿を見た瞬間。俺の胸はドキッとするのを感じる。それと同時に俺は自分が恋に落ちたことにすぐに気がつくのだった。

俺は突然目の前に現れた亜理紗の母親の容姿に見惚れてしまうのと同時に。俺は亜理紗が何故、自分の母親のことを亜理紗と呼ばずに亜理紗の母であるはずの人物の事を亜理紗と呼んでいたかということに納得したのだ。その理由というのが、俺は亜紀のことも愛しく思ってはいるのだが。亜理紗のことは更に強く思うようになってしまったからである。

なぜならば、俺は亜紀と会話をしていた時の亜理紗の様子を思い出して。この人は本当に自分の母親である亜里紗を愛してくれているのだと確信を持てたのである。そして俺はこの時。初めて本当の意味で亜理紗を本当の妹のように愛することができるような気がしたのだ。

(俺は今この人のことを愛しくて愛し過ぎている。だからこの人が愛しいと思うからこそ。俺はこの人を亜理紗に近づけさせるわけにはいかないんだ。例えこの人を傷つける結果になろうともな。それに俺は亜理紗のことを本当の妹だと思ってこの人と亜理紗を仲良くさせたいと考えていたが。今この人に亜理紗のことを紹介すれば。この人も亜理紗のことを自分の娘だと思うだろう。そうなった時に俺は、亜理紗のことを姉と呼ぶことが出来るだろうか?多分俺には無理だな。亜理紗のことを俺の妹として扱うことに慣れすぎてしまっているから。この人が妹として俺に接してきて、俺がその人の妹に思えるかどうか分からないんだよな。だからこそ俺にはまだ、この人を紹介することはできないんだ)

俺がこの亜里紗の母親の容姿を見て、亜紀と俺が実は兄妹だったという事に驚きを感じながらも。俺はこの亜里紗のことをどう対処するかを考えていたのだ。するとその時に亜理紗の母親はこんな提案をしてきたのだ。

「亜紀、その隣にいる子はあなたの恋人かしら?」

亜理紗の母は微笑みながらそう尋ねてきたのだ。その言葉に対して亜紀はとても嬉しそうな表情をしていて。俺もその亜理紗の反応を見ていると幸せな気持ちになっていた。しかし俺はその質問に対する回答に困っていた。なぜなら俺は今、恋人を作るつもりは全くなかったからだ。それは俺にとって今この世界では恋人を作らないほうがいいと考えているからである。だが俺はその時、ある事を思い出していた。それは俺がこの世界に呼ばれた目的の中に亜理紗が俺のことを強く想ってくれるように俺も亜理紗のことを強く思うというものがあったのを思い出す。つまり俺が、今恋人を作るということ自体は悪いことではないだろうと思い俺は。亜紀との関係が恋人であることに肯定の言葉を言おうと思った時。その時だった。突如としてこの国の兵士が亜紀達を捕縛しようと現れたのだった。

「なっ!どうしてここに王国の兵士がいるの!?︎ここは亜紀の国なのに!」

亜紀は突然の事態に動揺しながらも兵士に抵抗しようとした。

「くっ!貴様らが亜紀と亜紀の母の知り合いの亜紀とその彼氏か。まさか、この国に入り込んでいたとはな。この女共は我々が預かる。お前達はそのまま大人しくついて来い。もしも、その男を捕まえることはできぬが亜紀だけは傷をつけることは許さん。その男がお前に好意を抱いてくれているというのならば尚更亜紀だけは無事に返してもらえなければ困ることになる。その男の力は、私よりも上の力を有している可能性があるからな」

兵士達の隊長と思われる男は、それだけ言い残しその場から離れていったのだった。そして、亜紀は亜理紗と何か話をしていた後に亜理紗の手を握ってどこかへと歩いて行ってしまったのだった。

「どうする?俺と一緒に来てくれないか?それなら俺の仲間が居るところまで案内するからさ。それなら俺が信用できる相手だっていうのは分かるだろう?それでも嫌だというなら別に無理に連れて行こうとは思わないよ」

俺は、亜紀を一人で行動させてもいいかと考えたが。亜理紗と一緒に行動する方が、安全なのではないかと考え亜紀のお母さんを連れて行くことにしたのだった。

「私は、どこに行っても構わないからね。でも、私のことは亜梨沙で良いから。だから貴方のことも名前で呼んで欲しいな。でも、その前に亜紀のお母さんのことについて教えて欲しいかな?私は今までお母様に一度もあったことがないんだもん。どんな方だったのかも知りたいもんね。お兄さんは知っているよね?」

亜理紗は、俺のことを呼び捨てにすることについては特に気にしていないようで俺が思っていた通りにすんなりと呼んでくれたのだ。

そして、亜紀の母親がどういう人かという問いについてだが、俺としても亜理紗にちゃんと説明する必要があると感じていたのでちょうどよかったと思っていた。だから俺は、自分の記憶が正しければどのような人かを話すことにして、そして自分のことを少しだけ話すのであった。そして俺が自分から亜理紗に全てを明かすことはないが、ある程度の事情を説明しようと思っていると話し終わった時。亜理紗は、とても驚いた顔をした後、悲しそうな表情を俺に向けてきた。

「そっか、亜紀のお父様のご友人が私達の国の王族の関係者だったとは予想していなかったわ。だから私とお兄さんが出会えたのね。だからお兄さんは私が亜紀の妹だってことも知ってたんだね。そして私にもあの能力が備わっているってことにも気が付いていたんだね。だけどね、私は今の私の姿を見ても亜紀のお母さんのように綺麗で美しいとは言えないんだよ。でも私は、そんな自分が嫌いじゃないの。私は亜紀と亜紀の両親に可愛がられて育てられて亜紀を自分の娘だと心の底から信じているの。でも亜紀の両親は本当の亜紀を自分の子だと言っていて、そのことに関して私は何も文句を言うことはできなかった。それに、この国の王女としての私は自分のことが大好きだけれど。一人の人間としては亜紀の方が好きで好きで堪らないのよ。だから亜紀は、亜紀のままであって欲しかったの。

それと、この世界の【魔人族】や【獣人族】の姿が皆同じ姿なのは、【神】であるこの世界を創った者が、元々あった世界の姿を真似て創ったからと言われているの。そしてその姿になるのも【呪印耐性】のLVが9に上がって初めて効果を発揮するの。だから、もしその話が本当なのだとしたら亜紀はこの世界に元から居たという事になって。私達と同じように亜紀もこの世界に召喚されたんじゃなくてこの世界に元々存在して、そしてこの世界で育ってきた亜紀こそが本物の亜紀だということになるんだね。でもそんなことは、亜紀に言うことができないからね。だからせめて、私だけは亜紀が亜紀であると信じてあげないとって思ったの」

亜理紗は、亜紀のことを本当の妹だと言い。そんな亜紀に俺の口から、本当のことを伝えていないのにも関わらず。本当のことを伝えたかのような言葉を告げてしまい、俺は罪悪感を覚えていたのだ。だがそこで、俺はあることを思い出す。俺がこの世界に来た時にある人から言われた言葉のことを思い出したのだ。


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勇者が俺TUEEEを諦めて異能力を選んだら、俺のスカートが勝手にめくれていくんです。 あずま悠紀 @berute00

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