エピローグ
真っ青なキャンパスの上に白い雲が浮いている。太陽は輝き、春の訪れを表す桜が咲き誇っていた。
「
「分かってる! 今行くよ!」
窓から見える景色に目を奪われていると、下の階から叫ばれる自分の声。お気に入りの服を着ている最中で止まっていた手を急いで動かす。全身を見ることが出来るお気に入りの鏡で確認して、ランドセルを持って急いで向かった。そこには綺麗にお化粧をしてカバンを持ったまま待っているお母さん。保護者同伴で、と学校に言われていたので気合が入っているらしい。
「忘れ物はない?」
「たぶん?」
「もう、忘れ物しても知らないわよ! あ、あと、今日は
「はいはーい」
玄関先で今日の予定を伝えられ、私も急いで靴を履く。もちろん、これもお気に入りの靴。先月の誕生日にお父さんに買ってもらったのだ。ピカピカに光っている靴を履くと、扉を閉めそうになっているお母さんの元へと走った。車に乗るとすぐに発進し、外の景色が動くのを見つめる。お父さんの仕事の都合で転勤が多いので、今日のようなことは慣れている。でも、今回はしばらく動かないと言っていたので家族で喜んでいた。
「ほら、もう着くわよ。先に降りてなさい」
「分かった!」
ゆっくりと停止した車から降りて、学校の敷地内にある駐車場へと車が走って行った。何度も転校を繰り返しているので今更緊張はしないけど、今回は違う。ずっと同じ学校に通い続けるのだ。長い間お世話になるであろう校舎を見上げると、薄ピンクの花びらが舞っていた。
「あれ、あなた転校生?」
急に声をかけられたので振り返ると、そこには一人の女の子が立っていた。黒い髪を高い位置で二つに結び、少し高さのある靴を履いている彼女は可愛らしい。真っ赤なランドセルを背負っている女の子は近づいて来て、じーっと見つめる。
「な、なに?」
ふふっと笑った彼女は私の前に手を差し出してニコッと笑った。目元にある傷が少しだけ優しくなると、ブワッと勢いよく風が吹き抜ける。地面に落ちていたピンク色の絨毯が一気に舞い上がり、彼女の顔が見えなくなるほどの量だった。でも、自然と目を離すことが出来ない。
「私、
ヒラヒラと地面に落ちて行く桜の花びらの中から見えた彼女は、私の知らない誰かに似ている気がした。
絡まった糸をほどいて 茉莉花 しろ @21650027
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