写真

白川津 中々

「人生というのは一瞬しかないわけで、だからこそ一秒一秒が尊いわけで、それを写すカメラは偉大な発明なわけで、故に写真は素晴らしいわけで……」


「なんて説明したところでどうせ理解してもらえないだろう。多くの人にとって、写真なんてのは遊びの一つ。旅先の背景や美味しそうな料理。それっぽい空模様や街並みを写して悦に浸るばかり。メッセージ性は等しく、"見て。私の感性素敵でしょ"だ。くだらないなぁなんて思うけれど、そんなものだろうね。誰もが誰かに認められたいけれど、認められるのはごく一部。だからなんとなく綺麗に写る写真を撮って、"凄いね綺麗だね"なんて褒めてほしいんだろう。誰も本心からそんな事思ってないって知りながら」



「でもね。僕は違うよ?」



「僕はね。君を綺麗だねって、とってもとっても綺麗だねって、認めてあげられるよ?」



「だからね、笑ってよ」




「君は、とっても綺麗なんだから」





カメラを持って笑う男は、少女に向かってシャッターを切った。

少女は動けず、小さく呻くも声にならず、掠れた喉で、息を漏らす。


部屋には写真が一面に、おびただしく、おびただしく……

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写真 白川津 中々 @taka1212384

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