悪夢採集記録抄

二枚貝

第1話

4/20

顔見知りの知人がソファに寝そべって喋っている。喋りながらずっと体の半身をぼりぼり掻きむしっている。引っ掻きすぎて傷になるとかいうレベルではなくて、皮膚がべろべろに剥けて垂れ下がって、ひらひらしたスカートみたいに見える。



5/6

ずっと車を運転している。雪道だったり高速道路だったり、他の車がほとんどいない道をスピード出してただただ走っていて、いつまでこの光景が続くんだろうなと思った瞬間タイヤのパンクで車がひっくり返って。運転席に座ったまま、体が挟まって逃げ出せず、ゆっくりひしゃげていく車体に押し潰されて、腰から下の感覚が消え失せた状態で、自分の肋骨がぽき…ぽき…と順番に折れていくのを泣くこともできずにただ聞いている夢。



5/16

セミそっくりに作られたクッキーを食べていた。ものすごく本物にそっくりのリアルさで、でも味は美味しいクッキーだったので次々に手を伸ばして食べた。

そうしたらその中に“本物”が紛れ込んでいて、かじった瞬間にセミの足が口のあちこちに刺さって痛かったし、砕けたセミの体がざらざら粉っぽく舌にまとわりついて気持ち悪かった。



6/22

料理しようと卵を割ったらひよこの雛みたいなのが出てきて、緑がかった灰色の塊がねばねばにまみれている。うえ〜と思いつつ半泣きで菜箸を使って取り除こうとするんだけど、雛は豆腐みたいに柔らかくて、箸の先で何度も千切れてしまってぼとぼと床に取り落とした。



7/14

顔見知りの友人知人と雪山登山したら、そこにイエティみたいな怪物が現れて、知り合いは次々なぶり殺される。彼らを囮にして自分は逃げ出す。

外は吹雪だから逃げても凍死するだろうし、生きたままイエティに腹のあたりを握りつぶされて上と下から内臓が出てくるのとどっちがマシだろうと考えながら息を殺して逃げて、ようやく見つけた洞窟に転がり込んで膝抱えてずっとガタガタ震えているという夢



9/25

サーカスの円形の舞台の上で紙吹雪をまきながら歩いている。踊りながら客席に語りかけながら、ザルみたいなものに入った紙吹雪を掴んではばら撒く。

頭上のブランコがずっとぶらぶら揺れてて、よく見るとブランコ乗りがロープに絡まっていて、体のあちこちが変な風に折れたり曲がったりしていて、その下に立つと血とかいろいろ降ってくる。

サーカスのメンバーが失敗したことを客に気付かせちゃいけないから、何でもないふりをして笑いながら紙吹雪をまいてずっと歩いてる。



11/18

小さい犬をつれて森を散歩していたら熊に出くわして、恐怖で逃げ出すこともできなくて、目の前で犬が裂かれて食べられて、キャンキャン鳴いていたのが聞こえなくなって、白い毛がボロ雑巾みたいにぐしゃぐしゃになっていくのを見ながらぼんやりと「身代わりになるものがいて助かった」と思う夢。



12/22

目が覚めたらベッド脇にいたおっさんにナイフでめった刺しにされて、痛いしわけがわからないし、血を吐いてごぼごぼむせて苦しいし、なのにいつまで経っても意識が途切れないからおっさんも「あれー? なんでやー?」と言いつついつまでもぐさぐさ刺され続けて、そのうち刺すところがなくなって腕や足や顔も刺されて、たまに骨にぶつかった刃がずるっとすべったりする夢。ボロ雑巾みたいになってもまだ動けるので、死なないゾンビってこんな感じなんだなと思った。



12/25

友人知人と旅館に合宿に行った先でなぜか自分だけ誰にも認識してもらえなく(見えなく)なる。

自分の存在になんとか気付いてほしくて、とくに親しかった友人の目の前でわざと壺を倒したり絵を壁から落としたりスマホの位置を動かしたり、といろいろやってみる。でも友人には相変わらず自分が見えないから、幽霊のしわざだと思われて、だんだんと友人の精神状態が悪くなっていく。「もう何なんだよこれふざけるなよ意味わかんねーよ」と叫びながら塩だか聖水だかを部屋中に撒き散らす友人の前で、どうしても気付いてもらいたい自分が片っ端から家具を倒して壁に穴を開けてドタドタ足音を立てて友人の周囲をひたすら走り回る夢。



2/19

知らない兄ちゃんと喧嘩をしている。殴ったり殴られたりした。

相手を突き飛ばしたら倒れて頭を打って動かなくなったので、慌てて救急車を呼ぼうとするがパニックになって、119番がどうしても思い出せない。

周囲の通行人に半狂乱でしがみついて「何番ですか? 救急車何番ですか?」と聞いて回る夢。心臓に悪い。

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悪夢採集記録抄 二枚貝 @ShijimiH

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