悪魔の愚痴日記

第1話

　オレは悪魔だ。

　ぺーぺーだけどな。

　でも、ぺーぺーなりに、言いたいことってあるじゃん？

　それを書こうと思って、日記をつけることにした。

　ところが、だ。

　オレってば、忙しいぺーぺーの身の上っしょ？

　いきなり日記帳を失くしちまったワケさ。

　凹んだの、なんの。

　ただの日記帳だけど、悪魔専用のは高いんだっ。

　悪魔ぺーぺー稼働日数換算で一年分くらいするんだっ。

　なぜ、そんな日記帳を失くすかな、オレ。

　でも、先輩悪魔がコッチ見てニヤニヤしてやがるから盗られたのかもしれん。

　どっちでもいいけど。

　日記帳がなくなった事実だけが転がっているだけだから。

　仕方ないから、人間界のをひとつ、失敬してきた。

　ニンゲンが使ってるノートってヤツは。

　なんかこう、かさばるのな。

　それにコレって、どこに書きゃいいのか。

　……え？　そのノートは、ノートにあらず？

　コレは車？

　どうりで重たいと思った。

　なんせオレってばぺーぺーの悪魔だからさ。

　おっちょこちょいのお茶目さんなのさ。

　改めて大学ノートってヤツを一冊、失敬してきた。

　今度は白くて罫線つきのだから、日記帳に出来るヤツ。

　ニンゲン界のシステムっていうのはさー。

　面白いっていうか、なんというか。

　なんか、ちょっと前に流行ったノート系のヤツ、あったじゃん？

　エンタメ系のヤツ。

　アレ、オレが失くしたノートなんじゃ……。

　と、ちょっと思ったけど。

　実害があったわけじゃないからオッケーとする。

　いやぁー、実際に人が死んでたら、オレも無傷じゃいられんかったわ。

　たすかったぁ～。

　悪魔って言ってもさー。

　自由裁量で出来る範囲は限られているワケ。

　ぺーぺーの悪魔に出来る範囲なんてのは、アレだ。

　素直になれよベイベーとか、我慢するなよベイベーとか、欲しいなら手に入れちゃえよベイベーとか、ささやく程度さ。

　捕まると「悪魔のせい」とか言い始めるヤツいるけど、違うから。

　やったのはオマエ。オレは、ささやいただけ。

　そもそも、具体的に何をしろとも言ってないしさー。

　やったのオマエじゃん。

　ぺーぺーに出来ることなんてさー。

　ホント、少ないわけよ。

　なのに責任求められるとか、割に合わないっすよー。

　生きるってツライねっ！

　え？

　ぺーぺーってナニかって？

　え？

　ぺーぺーって死語だっけ？

　え？

　今年って何年？

　……あー、オレも年食うハズだわ。

　メンゴ、メンゴ、

　それならオレ、もうぺーぺーじゃねぇーや。