卒業式・SS

お兄ちゃんと第二ボタン


皆様、こんばんは。


世間は卒業シーズン真っ只中ですね。


そんなわけで、今日は卒業式をからめた、ちょっとしたSSショート・ストーリーを公開します。


お兄ちゃんが、高校を卒業する時のお話。

ギャグです。少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです。




 *─────────────────────*




      『お兄ちゃんと第二ボタン』




 *─────────────────────*




「隆ちゃん!」


 それは、飛鳥が高校三年の時の卒業式。


 学校一の美男子として、常に注目のまととなっている飛鳥は、放課後、隆臣に助けを求めていた。


「もう、無理! 助けて! このままじゃ、身ぐるみがされる!!」


 切羽つまった様子で泣きついてきた飛鳥は、今日も一段と輝いていた。


 赤みの入ったストロベリーブロンドの髪は、サラリと煌めき、海のように深いマリンブルーの瞳は、吸い寄せられるように美しい。


 しかも、走ってきたからか、息を切らしながら教室に駆け込んできた飛鳥は、色っぽい上に、つやっぽい。


 というか、今回も始まったらしい。

 卒業式恒例の『第二ボタン争奪戦』が!!


「お前、相変わらずだな。つーか、廊下は走るな。先生に怒られるぞ」


「そんなこと言ってる場合じゃないんだよ。このままじゃ、ボタン全部、取られる!」


「いいじゃねぇか、ボタンなんてくれてやりぁ」


「嫌だよ! 蓮が、桜聖高校を受験する気でいるから、何としても、ボタンは死守しなきゃ!」


「お前、もしかして、弟にするために、ボタン守ってんのか!?」


「そうだよ! 他に何があるの!」


 なんと、蓮に制服をお下がりするために、ボタンを奪われないよう奮闘している飛鳥。


 こんなにも煌びやかな顔をしているくせに、なんて庶民的なお兄様なんだ。


 だが、残念だが、弟へのお下がりは、どう考えても無理だと思った。


「お前、中学の時も、ブレザーごと奪われてたじゃねーか。今回も、そうなる運命だろ」


 中学の卒業式。

 飛鳥は、まさに、身ぐるみを剥がされていた。


 第二ボタンだけでなく、学ランとワイシャツの全てのボタン奪われ、上着までなくなった。


 それは、まさにボロボロっいった感じ!


 オマケに乱れた服で帰れば、変質者に襲われかねないため、隆臣が、ジャージを貸してあげたのだ。


 だからか、今回もそうなるのだろうと、隆臣は思う。

 しかし、飛鳥はニッコリ笑うと


「お前、何、勝手に運命きめてんの。中学の時みたいにならないように、先手を打ちにきたんだろ」


「先手? 一体、なにをする気だよ。悪いことはいわねーか、死にたくなかったら、いさぎよくボタン差し出しとけ」


「だから、嫌だって。今回は、なにがなんでも死守する(蓮のために)。それに俺、一年前も奪われてんの! 体育から戻ってきたら、制服のボタン、全部なくなってたの! ズボンまで!」


「あぁ……あの事件は、ひどかったな」


 ふと、懐かしいことを思い出す。


 あれは、高2の秋だ。


 飛鳥の制服のボタンが、全て盗まれたことがあった。

 しかも、売りさばかれていたらしい。


 あれは、恐ろしく最悪な事件だった。


「お前、マジで話のネタが尽きないよな」


「うるさいなー。それより、手伝ってよ」


「手伝う?」

 

「うん。今から俺のブレザー、ってことにして」


「は?」


 いきなり、意味がわからないことを告げられ、隆臣は、呆気あっけに取られた。


 すると、飛鳥は、いそいそとブレザーを脱ぎはじめ、自分のカバンの中に隠すように詰め込む。


 て……俺が、飛鳥の制服を?


「お前、何言ってんだ?!」


「だって、隆ちゃん、俺より足速いでしょ。だから、逃げ切れるよ。お願い♡ 俺が学校から出るまでの間、女子たちを引きつけといて♡」


「引きつけといてじゃねーよ!?」


「「あー、神木くん、見つけたー!!」」


「「!?」」


 すると、そのタイミングで、女子たちが大量の群れをなしてやってきた!

 

「神木くん、第二ボタンちょうだい!」


「えー! 私がもらうんだよ! 第二ボタンは!」


「ちょっとちょっと、早い者勝ちだった言ったじゃん!」


「あれ? 神木くん、ブレザーは?」


「今、が着てるよ!」


「!?」


 すると、宣言通り、飛鳥が隆臣のブレザーを指さしながら、そう言って、女子たちの視線は、一気に隆臣に集中する。


 しかも、その目は、まさに獲物を狙う猛獣のような目!!


「「「橘くん、その制服、渡して!!!」」」


「え!! ちょ」


「ほら! 隆ちゃん、逃げて! じゃなきゃ、死ぬよ!」


「お前、覚えてろよ!!」


 そして、隆臣は、にっこり笑って「頑張ってねー♪」と手を振る飛鳥を恨みつつ、全力で逃げたのだった。



 ***



 そして、それから数時間後──


「隆臣、どうしたの?」

「ボロボロじゃないか」


 無事に、学校から帰ってきた隆臣は、父の昌樹まさきと、母の美里みさとに心配されていた。


 卒業式でみた姿は、とても小綺麗だったのに、帰宅した息子は、制服のボタンを全て奪われ、ボロボロだったからだ。


「卒業式に、ボタンを全て奪われるなんて」


「お前、そんなにモテてたのか」


「俺じゃねーよ。モテてんの、飛鳥だよ」


 かくかくしかじか──


 その後、飛鳥におとりにされたことを二人に話せば、昌樹と美里は、飛鳥の第二ボタンを死守した隆臣を、たくさん褒めてあげたのだとか?




*おしまい*


*─────────────────────*



最後まで、閲覧、ありがとうございました。


卒業式やバレンタインは、飛鳥は大変でしょうね。

そして、隆ちゃんも。笑


こちら本編でも、ちらほら出てきたネタでした。隆ちゃんを囮にする飛鳥と、振り回される苦労人な隆ちゃん(笑)


仲良しな二人が、なんだか愛しいです。


とはいえ、相変わらず、ふざけた番外編をお届けして、すみませんでした。


息抜きがてら、さっき書きました(笑)


また、今後、本編にそった短い番外編は、舞台裏で公開し、際どいやつやIF物語メインの話は、FANBOXで公開ようと思ってます。


ただ、この後に、もう一つ、修学旅行の番外編を公開予定なんですが……


『お兄ちゃんと修学旅行』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054888822143/episodes/1177354054918921799


こちらの番外編。実は、ボツにしたシーンが沢山あるって話をしたら、読みたい方がチラホラいらっしゃったので、完全版みたいな感じで、ボツシーンをつめこんで公開したいと思ってます。


でも、舞台裏で公開するか、FANBOXで公開するか、ちょっと迷ってまして…良かったら、どっちがいいか教えて頂けたら嬉しいです。(完全版にしたら、ちょっと、長くなります)


あ。もちろん、本編の方も、ちゃんと進めますからね!


というわけで、しばらくは忙しいので、のんびりやっていきますが、更新は、ちょこちょこやって行くと思うので、引き続き、よろしくお願いします。


では、卒業シーズンとあり、出会いと別れの季節となりましたが、皆様の未来が、明るい花を咲かせることを、心から願っております。


皆様、いい春にしましょうね~

それでは🌸

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