クリスマス・SS
お兄ちゃんとサンタさん
皆様、メリークリスマス!
というわけで、前にpixivに載せた番外編を、こちらでもお披露目しようかなと、やってきました。
まだ、幼い頃の神木兄妹弟のお話です。
双子が、サンタの真実を知ってしまった時のお話!
少しでも、楽しんで頂けたら♡
✤──✤──✤──✤──✤──✤──✤──✤──✤
『お兄ちゃんとサンタさん』
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「うえぇぇん!」
今から9年前の12月25日。
その日の朝は、当時まだ6歳だった華の泣き声から始まった。
枕元にあるプレゼントの前に座りこみ、大きく声をあげて泣く華と、そんな華を慰めながら涙を堪える蓮。
それをみて、父と一緒に朝食の準備をしていた、当時小学6年生の飛鳥は、何事かと声をかけた。
「なに、どうしたの?」
「お兄ちゃん、なんで昨日サンタさん来なかったの!?」
目の前にプレゼントがあるにも関わらず、サンタが来なかったと豪語する華。
それを見て飛鳥が首を傾げる。
「なに言ってんの? プレゼントならそこに……」
「違うの! これサンタさんからじゃないの!」
「そうだよ! オレたち見たんだもん! お父さんがプレゼント置いていくの!」
「…………」
瞬間、飛鳥はなるほどと、その状況を理解した。
どうやら父がしくじったらしい。
(……なにしてんの、父さん)
泣きじゃくる双子を見つめ、飛鳥は軽くため息をついた。
父がプレゼントを置いている姿を目撃して、今年はサンタが来てくれなかったのだと思ったのだろう。
「なんで! なんでサンタさん来てくれなかったの!?」
「オレたちが、悪いことしたから!?」
「ん? なにか心当たりがあるのかな?」
「うぅ……私、お兄ちゃんのノートにラクガキした」
「オレは、歯磨きしてないのに、したって嘘ついた」
「へー……それは、なかなか」
素直に自分の悪事を暴露した双子を見つめながら、飛鳥はにっこりと微笑んだ。
いい子にしていないとサンタは来ないらしい。だから自分は悪い子だと泣いている華と蓮。
「ぅ、ごめんなさい、サンタさぁぁん」
「お兄ちゃん、いい子にするから、来年はサンタさん来てくれよね?」
(本当に信じてるんだ、サンタのこと……)
思い返せば、自分はもうこの頃にはサンタを信じていなかった。
できるなら、まだ信じていてほしい。
でも、真実を知ってしまったからには、もう打ち明けなくてはならないだろう。
「華、蓮。悪いけど、うちにサンタはこないよ」
「「!?」」
すると、目の前でピシャリと告げられたその言葉に、華と蓮はこの世の終わりとでも言いたげな顔をする。
「やだァァァァァ!! なんで! なんでこないの!?」
「だって、うち煙突ないし」
「「そうだけどぉ!?」」
「それに、うちは昼夜問わず、いつも厳重に戸締りしてるから、白ひげはやした割腹のいいオジサンが不法侵入してくるスキなんて一切ないよ」
「ぎゃぁぁぁ、クリスマスくらい鍵あけといてよぉ!」
「嫌だよ」
もはや地獄絵図のようだった。
布団の上につっぷし泣き崩れた華とパニックになる蓮を前に、飛鳥はやれやれと呆れ果てると、枕元にあるクリスマスプレゼントを手に取った。
「今までだって、そうだよ」
「え?」
「蓮華はいい子たちだよ。でも、うちにサンタさんは入って来れなかった。だから、父さんがいつもサンタの代わりをしていたんだよ」
二つのプレゼントを、それぞれ差し出すと、それを手にした華と蓮は大きく目を見開いた。
「……お父さんが?」
「うん」
「ずっと?」
「うん、ずっと……だから、これからクリスマスにプレゼントをもらったら、サンタさんじゃなくて、父さんに『ありがとう』っていってあげて」
優しく笑ってそう言えば、華と蓮は同時に顔を見合わせた。
今まで、サンタさんからだと思っていたプレゼントは、お父さんからだった。
「だから、お父さんがプレゼント置いてたの?」
「そうだよ。毎年こっそりね」
「そう、だったんだ……うん! 私たち、お父さんにいっぱいいっぱいありがとう言うね!」
「オレも!」
「うん……」
──その方が、きっと父さんも喜ぶ。
飛鳥はそう心の中で呟くと、双子の頭を愛しそうに撫でた。
サンタはまだ信じていて欲しいけど、やっぱり一番は、頑張ってる父に感謝をして欲しいから──
🎄🎄🎄
そして、その後、キッチンに戻った飛鳥は、エプロン姿で肩を震わせる父を見て眉をひそめた。
「父さん、大丈夫?」
「うぅ、うッ、飛鳥、俺あと10年は仕事頑張れるっ」
「いや、あと20年は頑張ってほしい」
どうやら部屋の外で子供達の話を聞いていたらしい。
感極まって抱きしめてきた父にされるがまま、飛鳥は『朝から手のかかる親子だ』と、そんなことを思ったのだった。
-end-
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