「◯◯感を感じる」の正体

カメリア🐢

第1話(この作品における唯一のエピソード)

ごく当たり前に「違和感を感じる」とか「距離感を感じる」とか耳にします。しかし「◯◯感を感じる」とすると重言のようになって気持ちわるい部分があるのも事実です。口語ではいいとしても、文章の中で使うのは抵抗があるかもしれません。


それにしても、そもそも重言なんでしょうか。「◯◯感」というのは「◯◯と感じる」と訳せます。「感」の文字は話者に帰属することになります。これだと「◯◯と感じることを感じる」となって重言です。


しかし、別の捉え方もあります。髪型について言及するとき「跳ね感がある」などと言います。この「感」は話者ではなく言及対象に帰属しているように見えます。跳ねを感じているのはあくまで話者ですが、通念上「跳ねている感じ」を髪が持っていると解釈されます。この場合の「感」は「感じる」と言うより「雰囲気」という意味に近いでしょう。こうした捉え方をすれば重言ではないと言うことができます。


さて、ここで「◯◯感がある」と「◯◯感を感じる」を比べてみましょう。そうすると前者は断言しているのに対して、後者は「私が感じているだけですよ」というニュアンスを含んでクッション言葉になってるように見えないでしょうか。上述の「◯◯感」が言及対象に帰属する流れで断言してしまうと、特に否定的な意味の場合に言葉が強く響きます。これに「感じる」と付ければ柔らかくなります。微妙なニュアンスを含んでいるのです。重言であるにせよ、ないにせよ、双方は表現的に異なるものということになります。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「◯◯感を感じる」の正体 カメリア🐢 @camellia_public

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ