日記
にーりあ
日記
「女の人のお股におちんちん入れる穴があるらしい。その穴に入れて動くと凄いらしいぞ」
給食明けの休み時間、トモロウは曇り空を眺めたまま呟いた。
「お前ら誰かやったことあるか?」
「都市伝説に決まってる」
事も無げにユウキチが言った。
「また嘘つきが現れた」
「お前騙されてるわ」
それにミノルとダイチが続いた。
「いやマジなんだって。先輩が言ってたもん。……なに?俺騙されてんの?」
トモロウはやはり空を見上げたまま呟く。
「さすがにねぇよ」
それを肯定するかのようにケンジが言った。
芝生の生えた土手に寝転んだ少年たちは、皆一様に灰色みを帯びた雲を眺めている。
風はないが雲の流れは速く、向こう空にある厚い雲も恐らくは一時間もしないうちにここまでたどり着いてしまうだろう。
昼休みが終わるまで、まだ15分ある。
「股に穴があるんなら俺らの股間についてるやつなんなんだ?」
トモロウは続けた。
「女の人カワイソウ…」
その横でケンタ小さく呟く。
「穴ってなんだよ。収納上手かよ」
「だいたい体に穴なんて空いてたら血とか出てくるだろ。もっとマシな嘘つけよ」
「いやいやマジなんだって。お尻とは別に女には穴があるんだよ。女にはおちんちん付いてないんだってよ」
「おんなにちんちんついてなかったらどこから小便するんだよ。バカも休み休み言え」
「その穴からおしっこするんじゃないか? でもおちんちんはないんだって」
「俺幼稚園の時に女子のパンツの中に手入れたことあるけど穴なんてなかったぞ?」
「その時おちんちんなかっただろ? きっと穴は普段は隠れてるんだよ。きっと。ビデオで確認したから間違いない。女の子の股間は――
――四角い格子状の模様が有るだけ」
「お尻の穴とは別に穴が開いてるって事? さすがに嘘くさ過ぎる。日記に書くぞ」
「……夢みすぎ。そんな穴あるわけねえだろ。俺も日記に書こ」
そうして少年たちの疑問は真実に辿り着くことのないまま、果てしない溝へと落ちていった。
―― 『タイムカプセルから出てきた少年たちの日記』より抜粋 ――
日記 にーりあ @UnfoldVillageEnterprise
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