厨二病君と厨二発言を真に受ける真面目君

ナガレカワ

第1話

こんにちは。僕は素田直。僕には実は、普通の人ととは違う力がある。それは、、人の心の声を聞くことができること。

そんな僕には最近使命ができた。隣の席の子のサポートをする事で世界を救う事。


僕はこの間この学校に転校してきた。あまりマンモス校ではない中学校で平和に過ごせたらいいなと思っていた。できれば仲良い子ができるといいな、といった呑気なことを。

しかしまさか隣の席の子が左腕にドラゴンを飼っているとは。もちろん彼が実際にそう言ったわけではない。彼の心の声が聞こえてきただけ。


「素田直です。鈴鹿市から引っ越してきました。よろしくお願いします。」

僕がみんなの前で自己紹介をすると続々と心の声が僕に関することになる。へー、こんな顔か、普通の顔、陰キャっぽいな、部活誘ったら入ってくれるかな?といったようなもの。そんな中、


『ふっ、今日からこの学校に入るのか。もうすぐこの世界が壊れることも知らないで』


と恐ろしいことを考えている人がいたのだ。僕は驚いてその人を探した。

あ、あの人だ。

長めに伸ばした前髪に左手に包帯を巻いているように見える。怪我してるのかな?


あの子の隣はちょっと怖いかな…と思っていたが残念、彼は後ろの席でしかも隣の席が空いていた。僕はクラスに入って開始10分で絶望を抱いたのである。


ところで僕は心の声で相手を判断しないことにしている。いちいち判断していると僕の心も疲れてしまうからだ。そのため僕のことを嫌っている声が聞こえていてもある程度親切にするし、好感を持っていても何の反応もしない。


しかし、この世界が終わる、と考えている人に対してはどう会話することが正解なんだろうか。わからない。そう思っていると神田くんはまた何かを考えているようで聞こえてくる。


『ふっ、この俺様、ダークブラッドの隣に座るとは運が悪い。まあ、左側出なくてよかったな。俺様の左腕には炎を出すドラゴン、ファイヤーゴッドが封印されているからな。』


えーーー?と反応しそうになって思わず口を抑えた。ちょっと待って、君、神田くんじゃなくてダークさんだったのか、しかも左側にドラゴン飼ってるの?ファイヤーちゃん。よかったぁ、右側で。危ない危ない。初日から燃やされたらたまったもんじゃないもんね。


休み時間になると僕の周りには人だかりができた。転校生の1日目あるあるである。口々に

「どの辺に住んでるの?」

『うちの近くかな?』


「あだ名とかあった?」

『結構かっこいいし仲良くなっといて損はないかも』


「部活入ってた?」

『野球部だったって言ったら即座に勧誘!逃がさん』

といったあるある質問をぶつけてくる。心の声も一緒に聞こえてきてちょっとうるさい。僕はそれらに答えているがその一方で隣の心の声から耳が離せない。


『ちっ、騒がしい奴らだぜ。なにが転校生だ。そいつは地球を滅ぼそうとしている悪の秘密結社ナイトメアフェニックスの一因かもしれないんだぞ』


また神田くんが怖いことを考えている。やっぱりさっきのは神田くんだったのか。

というか、僕の知らないうちにこの世界には秘密結社と合うものが存在していたのか。秘密結社というのが地球を滅ぼそうとしているのか。知らなかった。でも僕は秘密結社の人じゃないから安心してほしいな。


僕はクラスの人から話しかけられながらも神田くんに話しかける機会を狙っていた。できれば、秘密結社の人でない誤解を解きたいし、力になれることがあればなりたいと思って。が、全く機会がない。

しかしそんな僕の様子がわかったのかクラスメイトの1人が


「あ、隣のやつは気にしない方がいいぞ。厨二病だから。」

『まじきもいんだよな、神田のやつ。』


と言ってきた。ちゅうにびょう?なんだそれ?チュウ2秒?ネズミ2秒?

この子はあまり神田くんが好きではないらしい。でも、僕は神田くんのことをよく知らないし、ちゅうにびょう?だからといって彼を避けることはない。

僕は神田くんのことが気になってしょうがない。それに彼は心の中でずっと世界のことを考えてる。嘘を心で考える必要はないし、きっと大変に違いないんだ。


僕は神田くんの力になりたいと思った。でも問題がある。神田くんは僕に話しかけてこないし僕も話しかけられていない。だから僕が彼の左腕にドラゴンがいることや世界が終わってしまうことを知っていることを知っていることはおかしいのだ。


密かに神田くんを応援できる方法はないだろうか。僕は考えた。授業中も家に帰ったからもずっと考えた。僕が神田くんについて知っていることは、世界が終わることを知っていることとファイヤーちゃんを左腕に飼っていること…そうだ!

僕は家を飛び出し、急いでスーパーへと走った。


次の日の朝、

「神田くん、おはよう。ちょっといいかな。」

と僕は神田くんに声をかけた。神田くんは少し驚いた表情を見せたがすぐにいつものクールな顔を戻り、


「なんだ?俺になにか用か?」

『む?こいつ昨日の転校生か。俺様になにか用か。やはりこいつは秘密結社のやつなのか?』


と言った。

僕は神田くんを少し人のいないところに連れて行った。

よし、頑張って渡すぞ。きっと神田くんもダークさんとしてドラゴンと暮らしているが、誰にもいえず困っているはずなんだ。僕はドラゴンと暮らしたことはないけど絶対にこれがないと困るはずなんだ。

そう!心の声が聞こえる僕が陰ながらサポートする必要があるんだ。きっとこのために僕は人の心の声が聞こえるんだ!


「あのね…これプレゼント!」

といって僕は豚肉お得用パック500円分をプレゼントした。



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厨二病君と厨二発言を真に受ける真面目君 ナガレカワ @naga_rekawa

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