俳諧の極意
乱暴なまでにいきなり開かれた
この半年の間、つかず離れずで総一朗をみてきた真吾には、信じられない
脇差の
「おや、お部屋を間違われたのかな」
悠然として言ったのは、長谷川雨太夫である。
ややしゃくれ気味の
それもいまの総一朗には
「おや、ご浪人さまとばかりおもうておりましたが、そうでもなさそうですな。なるほど、先ほどお伝えいただいた、
「いかにも」
短く総一朗は答えた。
ことさら総一朗は横柄さを装おっているようにも真吾にはみえた。
「
「さよう」
あくまでも総一朗の返答は短く、そうしてつっけんどんである。
「おやおや、なにかこちらに
「いや、ある」
「は……なんと申された?」
「返していただきたい」
と、総一朗は言った。
あくまでも短く、ことさら横柄な口調である。
「なにを……? で、ございましょうかな?」
「
「はて、まったくなにを申されておるのか、とんと合点がいきませぬが」
「近江八幡!」
突然、総一朗が地名を口に出すと、雨太夫のそばにいた若い俳諧師のからだが揺れた。
「そちらの配下らしき者らが、おれの脇差を持ったまま、逃げた」
「配下の者?……そのような言いがかりを……」
「ならば、
総一朗はあくまでも強気で
「ひゃあ」
と、思わず口に出していた。
と、いきなり若い俳諧師が立ち上がりざま、隠し持っていた大刀の
「や」
誰が叫んだ声であったろうか……。
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