第5話 魔王に転生したよ

 いい加減慣れた。


 4回目の転生ともなれば驚いたりなんかしない。


 

 今回は…よかった!


 人に転生出来たみたいで安心しました。


 とりあえず起き上がってみ…っ痛


 頭になんかついてます。


 ……うん、立派なツノが両サイドに猛々しくついてますな。


 失礼して…記憶を…


 なるほど人ではないですね。


 では誰にかは分かりませんが、まずは自己紹介を。


 はっはっはー!


 我が名は真なる魔王にして世界を統べる者!ミギメ・ガ・ウズークであるぞ!


 下等な人間共よ!我にひざまづくが良い!


 

 ご静聴ありがとうございました。


 今回は、ゲームや異世界モノでお馴染みの魔王に転生しました。


 なんか無理難題をこなすくらいなら、もうこのまま魔王を楽しむのもありなん__っ


 悪寒が走った。


 …


 直後だからまだ覗いてました?女神様…


 そんな顔して拳を握りしめないで下さい。


 必殺 女神の一撃なんてコマンドにあったりしませんよね?……ね?


 ちょっとふざけていただけですので、これから仕事を再開します。


 女神様は安心して業務に戻って下さい。


 はい!誠心誠意頑張ります!


 

 ふぅ…疲れる。


 やる事やっちゃいましょう。


 まずは…っと、ふむふむ。


 俺は召喚魔法を使って…あちゃー…


 我が輩、なかなかエグい事してますな。


 記憶を精査していると、


 コンコン


 入れと言うと、配下らしきモンスターがやって来た。


 傍には薄い布を羽織った人間の女。


 透けて丸見……じゃなくて、召喚した中の1人だな。


 配下が今夜の分となっていますので、お召し上がり下さいとの事。


 確かにスタイルも顔もなかなかで、美味しくいただけそうだ。


 中身は25のまだまだ盛んな若者だからね!


 でも…ね…


 今宵は気が乗らぬ下がらせろ!と俺って魔王ぽい?魔王なんだけどさ!


 下がらせたのはちゃんと理由がありますよ。


 ムフフな展開に気が乗らないわけないじゃない。


 違うの、召し上がって下さいってのは本当に召し上がる意味なんです。


 そうそう…ご飯なの。


 無理無理。


 食べれません。


 袋菓子に入ってるあれと同じで食べれません。


 俺が目を付けられた理由は、現地の人間を食い飽きて異世界の人間を召喚しては食べていたから。


 魔王いわく美味。


 A5ランクなんか目じゃないみたい。


 鶏肉でいうなら現地人がムネ肉、異世界人がモモ肉な違い。


 たまに現地人も食べてるみたい。


 緩急は大事だよね、ジャンクフードが美味しい日もある。


 


 さあどうしますか…


 召喚はすぐ止めればいいんだが、困ったな。


 魔王が使える召喚魔法は、前回の魔法陣より使い勝手が悪い。


 初めて召喚した世界に固定されてしまうのだ。


 終わりました!女神様来てください!ってのが出来ない。


 問題はもう一つ。


 魔王は不死であった。


 なので今回は成果を評価されるまで待機なのだが…

 

 なんというか魔王は、人を食べる。


 味だけでなく、魔力を吸収するためでもあるみたい。


 普通の食材や魔物や同族だと吸収出来ない。


 しかし、中身は俺なので食べる気はさらさらないし無理である。


 このままだと餓死はしないが飢餓状態のまま何年も何十年も生きて行く事になる。


 辛すぎて考えたくもない…


 

 死んでリセットするにも、死ねないので自害も何も無い。


 封印か消滅させられる選択肢もあるが、封印はされてしまうと女神に引き上げてもらう事も無くなるのでより辛い。


 消滅とか魂ごと消えちゃうのは…今までの労力が無駄になるので避けたいよね。


 幸い魔王は唯一無二なので、配下に反乱されたり貶められる事がない。


 だって封印されたり、消滅したら配下も力を失ってしまうからね。


 今回はほんとどうしようか…アイディアが全くないぞ…


 

 数日後…


 お腹が空いてるのに平気って変な感じだ。




 半年後…


 女神様こないかなぁ。




 数年後…


 空腹問題は解決した。


 配下総動員で人を食うのは飽きたから、代わりになる野菜や肉を開発しろと命じてやった。


 美味くはないが、仕方ないよね?


 毎日味なしカロリー○イト食べてる感覚だけど、人は食べたくないし。

 



 数十年後…


 女神も来ないし死ねないので、国政に励んだ。


 支配はやめて、世界の統治者として住み分けや共存から始め、科学と魔法のハイブリッドを目指した。




 数百年後…


 もう迎えに来ないで欲しい。


 だってさ…めちゃくちゃいい世界になったんだよ?


 趣味も入ってるけど、SF未来みたいな…。


 車は空飛ぶし、巨大ロボも変形合体するんだよ?


 この前も宇宙からの侵略者をコテンパンにしましたよ。


 アンドロイドも高性能猫耳メイドで揃えてみたり。


 フルダイブで遊べるゲームも当たり前になったしね。


 転生する理由もなくったよ。


 ちなみに奥さんも10人以上いますし。


 


 旗って簡単に立つよ。


 だって…凄い顔した女神様が枕元に立ってるんだもの。


 薄々気付いてはいましたよ?


 やたらめったら文明レベルをいじったりしちゃだめなんだよね。


 だからチート召喚者もしちゃいけないし、利用するなって女神様が言ってましたし。


 え?ならなぜするかって?


 えー…それ聞いちゃいますか?


 だってね…


 暇でしょこんなん。


 死ねないし、女神様いつまでも来ないし。


 来たと思ったらもう来なくていいタイミングだし。


 扱いが酷いですよ?


 頑張って仕事してるのに、放置プレイとか。


 だいたい…そもそも…そちら様方が…


 責め立てる事数分…


 女神様が顔のパーツを差し替えてオーガになった模様。


 数百年放置された俺は言う権利があると思うんだが…


 今回もミッション失敗。


 あーあ…次はまともな転生がしたい…よ…ほ…ん…


 またまたブラックアウト

 




 




 


 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界召喚をしてる○○に転生する【解決出来なきゃ終われない】 おじさま @ichiyomu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ