ふと、夜にドライブへ。
須田凛音
ドライブへ。
金曜日の、日付が変わる二時間くらい前。 私は、家から少し出ることにした。
今週もいろいろなことに揉まれ、心身共に擦り切れそうになりながらも乗り切った自分を、心の中で褒めながら、待ちに待った週末に心を躍らせ、外に駆け出す。
冬の夜、風はあまりないけれども、冷え切っていて、上着なしではいられない寒さであった。
大好きな相棒のカギを握りしめ駐車場へと行き、解錠して、その運転席に座り込む。
カギをひねり、相棒の心臓に火を入れると、低く野太い鼓動が響く。 暖機運転を終え、ヘッドライトを点けて、シフトをドライブに入れると、私は夜の闇を切り裂くように走り出した。
夜の田舎道は、暗く、そして不気味なほどに静かで、少しばかりの恐怖心はあったけれど、まるで世界に自分と相棒の二人きりになったような気分になって、少し嬉しい気分になった。 嫌な日常からかけ離れた、夜の静かで自由な世界に飛び込んだ楽しさに、心を躍らせた。
夜の静かな環境の中に響く、相棒のエンジン音とお気に入りの音楽に聞き入りながら、私はどんどん相棒を進ませる。 木や丘を縫うように張り巡らされた道路を気持ちよく駆け抜けていった。
しばらく行くと、いつも訪れている道の駅の光が見え始めてきた。 そのまま立ち寄り、自販機で買った熱くて甘ったるいコーヒーをすすり、その場所から見える、壮大な星空と夜景を眺めた。 澄み切った空気の中、吸い込まれそうなほどに深い空に輝く星々を眺めて、感傷に浸っていた。
掛け値なしに美しい光景を眺めていると、なんだか心が温かくなってくるような気がした。
「よーし、この週末は思い切り楽しんでやるぞ!!」
広い空に向かって、気持ちよく叫ぶと、僕は夜の果てへと、また走りだした。
ふと、夜にドライブへ。 須田凛音 @nemerin
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます