文明観察

坂本

1.世界旅行

20XX年、5月のこと


A「これ全部ヒトが創ったなんて驚きだよな」


B「あぁ、ここに旅行に来て本当に良かったよ」


所狭しと並べられているトウキョウのオフィス街をまじまじと見つめながら、二人は話している。


その時、前から薄汚れた服を着た一人の少女が二人の元に駆け寄り、何かをつぶやいた。


A「物乞いかな」


Aは不安そうに小声でBにささやいた。


B「よくあることだ、食べ物を少し分けてあげよう」


Bは荷物をあさり、少女に食べかけのリンゴを渡すと、ものすごい速さで、その場を去っていった。


A「変なヒトだな、感謝の一つもない」


B「あぁ、この国では感謝をする文化があまりないのかもな」


A「にしても、さっきからヒトがどこにも見当たらないのだが…」


B「足の踏み場もないほどゴミだらけということはこの地域にはもうヒトがほとんど住んでいないのだろう」


A「じゃあ次はアメリカに行くってのはどうだ?ジユウノメガミっていう巨像があるみたいだぜ」


B「ここから向かえば3分弱で着くし、ヒトもいるかもしれないな。賛成だ」


二人はウキウキした様子で機内に向かおうとしたその時、どこからともなく、大きな音で放送が聞こえてきた。


A「何かを必死に話しているようだ。それも同じ言葉をずっと話してる。翻訳機持ってきてるか?」


B「あぁ、声の元はトウキョウタワーからだな、持ってくる」


Bは機内に入り、休憩室にあるアタッシュケースの中を探り、3分弱で戻ってきた。


B「すまん、忘れてきてしまったようだ。まぁ特に気にすることもないだろう」


A「それならしょうがない。次の目的地へ向かおう」


機内に乗り込もうとしたその時、大粒のしずくが空から降ってきた。


二人は見る見るうちに溶けていった。


雨音の中、あの放送が空しく東京内に響き渡っていた。


「酸性雨注意報 酸性雨注意報 地球に残っている者は直ちに火星へ避難せよ。」


一方、火星では一組の夫婦がこう話していた


女「火星に引っ越してもう三年がたつのね。」


男「あぁ、早めに引っ越しておいてよかったな」


女「その通りだわ。地球なんてもう住めたものじゃないわよね」


男「ただこの前ネットニュースで見たんだが、おすすめの観光地第4位に地球が選ばれたみたいだね」


女「モノ好きもいるものね」

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文明観察 坂本 @hiranoryoma0422

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