下ネタ寸劇『葵上Remix』

小田舵木

『葵上Remix』

           コント風寸劇 『葵上Remix』


【キャラクタ】


①[日野ひの あずさ] 女詐欺師、霊感絡みが得意。20代後半、『祈祷屋きとうや

②[源本みなもと あおい] 怨霊にかれた女。③と結婚し懐妊かいにん。出産寸前

③[源本みなもと ひかる] ②の伴侶はんりょ御曹司ボンボン、下半身で生きる男、結婚までに色々な女と性交渉を持つ

④[車谷くるまたに 六花りっか]女性の怨霊おんりょう(生霊いきりょう)、②に取りき、殺害をこころみる、③とは若い頃からの付き合い、当然のごとく性交渉があった。最近は縁遠くなっている。既婚者


扮装ふんそう


① パンツスーツ、フレームレスの眼鏡、フェミニンさは無い

② ワンピース調の入院着、フェミニンさを押し出す

③ ダーク調のスリーピーススーツ。要するに胡散うさん臭くて、軽薄けいはく

④ 白装束しろしょうぞく、幽霊っぽさをだしたい



【開始状況】


③源本、出産にともない入院中の②葵が深夜にうなされているのをほうぼうに相談するが、取り付く島がないので、①日野のもとに『祈祷』の依頼を入れる。


【舞台】


大きな総合病院の産婦人科の入院病棟の個室。中央にベッド。そこに②が眠っている。かたわらに③が居る。そこに①日野がたずねて来る。


【1 @病室前】


        《①日野はうつむきがちに歩いている。》


①梓(モノローグ) 「さて。今日の仕事だが―『祈祷きとう』だ」 ト病室に向かいながら

①梓(モノローグ) 「こういうのは雰囲気ふんいきで押したもん勝ちだが…」

①梓(モノローグ) 「生憎あいにく、私は若造だ…雰囲気もへったくれもない」

①梓(モノローグ) 「ったく、面倒メンドーな仕事をけ負っちまった」

①梓(モノローグ) 「一応、下調べは済んでる。今回の件はクライアント、即ち、源本光みなもとひかるに問題が有るのは明白だ」

①梓(モノローグ) 「夫人あおいは―ひかるの気をきたくて、『かれてる』なんて『狂言きょうげん』を打っている。これで決まり…だと思う」

①梓(モノローグ) 「と、なると―私がすべき事はあまり多くない…だろう。取りえず、ひと『芝居』打ってクライアントを言いくるめ…クライアントを追っ払った段階で夫人に『交渉』するだけだ」

①梓 「言葉にするのは容易たやすいが…すのは大変だ」

①梓(モノローグ)「だから、私のような『祈祷屋』がメシを食えるって寸法だ」


 《ここで舞台右袖の病室のドアが開く、そこから③[源本 光]が登場。》


③光 「あなたが―今回の?」

①梓 「…ん?」 ト顔を上げる

③光 「頼んでいた『祈祷師』の方ですよね?」 ト微笑みながら①に問う

①梓 「…始めまして。ひだりさんの紹介で参りました、日野です」    ト③に頭を下げる

③光 「随分、お若い…美人だ」   ト嫌らしい流し目を送る

①梓 「お世辞をどうも。一応、10代後半から『祈祷師』をやらせて頂いてます。キャリアは十分ございますのでご安心ください」   ト③の目線を受け流す

③光 「お願いしますよお…大事な嫁の事ですので」

①梓 「お任せ下さい、頂いた分は仕事しますので」


 《①と③、病室へ。②[源本 葵]はベッドで寝息を立てている》


①梓 「ええと…こちらが今回のお相手の―葵さんですね?」

③光 「ええ…出産間近でね…今回の件、非常に気をんでいる」

①梓 「大事な時期です。メンタルは肉体の健康に大きな影響を与えますし」

③光 「ああ。源本の家の世継よつぎ、というヤツだからな」

①梓 「あなたの家は―政治の家でしたね?」

③光 「ああ。一応、だが」

①梓 「一応、とおっしゃいますと?」

③光 「あくまで政治はついで、というのがスタンスなんだ」

①梓 「先代は議員さんですし、あなたも近々ちかぢか国政にうって出るとうかがってますが?」

③光 「僕はどうにも―政治、というヤツに興味が持てない…」

①梓 「ならば―祖業そぎょうの方に邁進まいしんされては?事業をなされているでしょう?」

③光 「…ビジネスも結局は『政治』だ」

①梓 「そう仰られると―こちらとしては何も言いようがありません」

③光 「まあ、そんな訳で、産まれて来る子には期待をしている」

①梓 「源本の家を負って立つ大事なお子様…という訳ですか」

③光 「そういう訳だ、僕の隠居いんきょがかかってる」

①梓(モノローグ)「評判通りのボンクラだ。まったく」

①梓「とりあえず―始めてしまいましょう…」

③光「頼む」


[2 @病室]


《①祈祷の準備を始める、ベッドの周りに『注連縄しめなわ』を張りめぐらせ、四方しほうに盛り塩を置く、弓を用意する。》


③光 「注連縄しめなわ、盛り塩は分かるが―弓?」

①梓 「コイツで―」 ト弓を③の顔の前に出す

①梓 「霊を呼び寄せます、ウチの流派の独特の方法ですが」

③光 「…大丈夫かい?」

①梓 「どうにかしますよ…」


①梓(モノローグ)「さぁーて…適当な祝詞のりとでもつぶやくか…」

①梓「てん清浄せいじょう清浄せいじょう内外ないがい清浄せいじょう六恨ろっこん清浄せいじょう…」

①梓「り人は、いまぞりくる長浜ながはまの、葦毛あしげこまに、手綱たずなりかけ…」   トうつむいてとなえつつ、弓のつるを鳴らす

③光「さぁ…どうなる」


《④[車谷 六花]の登場。ベッドの傍らにふっと現れる。しかし、③には見えていない》


①梓(モノローグ)「さて、適当に源本の御曹司おんぞうしを追い払わにゃいかんのだが―」   ト顔を上げると、④がすぐ側に。まだ見えていないてい

④六 「呼ばれたから来ましたよ?」

①梓 「源本の奥様―?」

①梓(モノローグ)「じゃない!!誰だ、このマダムは!!」   トここで④の存在に気づく、見える

④六 「あなたが呼んだんじゃない?」   ト①に呼びかけ

③光 「どうかしたか?日野じょう?」   ト①に呼びかけ、以後、④には気づかないてい

①梓 「ああ―いえ、お気になさらず…」

①梓(モノローグ)「なんてこった―詐欺師の私が…マジもん呼んじまったか?」

④六 「ねえ、あなた、そこの万年まんねん発情期に雇われたんでしょう?」                             ト①に問いかけ

①梓 「ええ…まあ…」

①梓(モノローグ)「どうする?このまま進めても良いが―ボロ出しかねん」

④六「無視しないでよぉ〜」   ト①に絡む

①梓(モノローグ)「いや、この状況で相手できるか、馬鹿野郎!!」

③光「どうした、日野嬢、顔色が悪いぞ?」

④六「恨めしや〜って聞こえてないかぁ〜」   ト③に絡む

①梓(モノローグ)「このままじゃ収拾つかん!!取りあえず源本のボンボンを追い払うか…」

①梓「えーっと…」

③光「どうされました?」

①梓「この儀式、男性厳禁げんきんでしたわ」

③光「急に言うねえ…」

①梓(モノローグ)「そら、思いつきだからな」

①梓「そんな訳で少し席を外して頂いても?」

①梓(モノローグ)「じゃないと、場がたん!!」

③光「…まあ良い、僕は時間を潰してこよう…ちょうどタバコ吸いたいし」


《③[源本 光]病室から退出》 


[3 @病室]


①梓(モノローグ)「源本のボンボンが阿呆あほうで良かった…なんとか追い払えた」   トベッドのかたわらで考えこむ

①梓(モノローグ)「しかし―どうしたものか?マジモンを呼び寄せちまった、として。交渉でどうにかできるモノなのか?」 

①梓(モノローグ)「あの業のかたまりのボンボンの事だ―かの亡霊ぼうれいにも『お手』はついてるだろうな…」

④六「無視しないでくださいます?」   ト①の肩に後ろから手を置く

①梓「あのなあ、私、ユーレイの相手なんか初めてなんだよ!!」   ト振り返りながらツッコミ

④六「あら?プロの方じゃないの?」

①梓「ド、素人だよ…」

④六「あらあら…タイミングが悪かったのかしら?」

①梓「仕事的にはナイスタイミング、個人的にはバッドタイミングだよ」

④六「ご愁傷しゅうしょうさま」

①梓「全くだ」

①梓「で?あなたは―源本の奥さんに用があるんだな?」

④六「そ、今日も今日とてたたりにきた訳、う〜ら〜め〜しぃ〜やぁ」

①梓「あのボンボンの下半身だけが理由ではない、と?」

④六「そ。私はこの女『も』嫌いなの」   トあごでベッドに眠る②を指す

①梓「私の調査では―良い家のご令嬢れいじょう、って事になってるが?」

④六「良家りょうけのご令嬢が人畜無害じんちくむがい、っていうのはステロタイプな見方じゃない?」

①梓「それはそうかも知れん」   ト顎に手をやる

④六「この女は―とんだ糞女くそおんなな訳、だから、毎晩祟っているのよ」

①梓「理由を聞いても?仕事なんでね」

④六「良いわよ?」

①梓「あっさり話すな?」

④六「話したかったのよ…で、私がこの女を祟る理由は―」

①梓「は?」

④六「この女が私の●ンスタのアカウントにしつこい荒らしをするからよ!!」

①梓「うっわ、くだらねぇ!!」

④六「下らないとは何よ!!私の自己肯定感のみなもとに!!」

①梓「なら、ネット上で争ってろ、バカ!!」

④六「もうやったわ!!」

①梓「それで溜飲りゅういんさげげろよな…」

④六「下がるもんですか!!仕返しにコイツの個人情報をネットにばらいた結果―裁判で負けて、罰金課されたもの!!」

①梓「阿呆アホの極みだな…」

④六「なんとでもおっしゃいな!!コイツの荒らし行為は不問にされたのも気に食わない!!」   ト②をにらみつける

①梓「しゃーない、相手が悪いんだよ…あの源本の家が後ろに居るんだぞ?」

④六「源本、ねえ…」

①梓「当然、あの阿呆ボンボンとも因縁いんねんがあるんだろ?」

④六「光の性の師匠は私よ!!」

①梓「あのボケを性的に育てたのはアンタかい…ったく、ロクな事しないね、アンタ」

④六「しょーがないじゃない!!先代に『副臥そいぶし』頼まれたんだから!!」

①梓「このご時世に『副臥』ときたか…児童虐待だぞ、それ?懲役らいかねない」

④六「児童相談所にぎつけられなければ―バレない。それに本人がノリノリだったから」

①梓「リアル『お姉さんが教えてあげる』かよ…業がふけぇ…胃もたれしそう」

④六「いたいけな子どもをしつけるのは楽しいわよ?」

①梓「狂ってやがる…さっさと金もらってトンズラこくか」

④六「そう問屋がおろすかしらね?」

①梓「アンタ次第だね…ま、一筋縄でいかんのはよ〜く分かったが」


[4 @病室]


④六『そでぬるるこひぢとかつは知りながらおりたつ田子たごのみづからぞき』

①梓「いきなり何だ?短歌か?」

④六「そ。平安貴族よろしく、私もあのボンボンも短歌をたしなむ訳」

①梓「ほう?じゃ、さっきのはアンタの歌か?…対するボンボンの返歌へんかは?」

④六『あさみにや人はおり立つかたは身もそぼつまで深きこひぢを』

①梓「言わせておいて何だが―私は短歌はからきしだ、どういう意味な訳さ?」

④六「かいつまんで言えば、お互い『恋路こいじ』という『小泥こひぢ』にどっぷりって事ね」

④六「ただし…光―余裕が有るんじゃない?」

④六「私の歌に―『あなたは袖がれる程度ですが、私はびしょ濡れだ』なんて返歌をするんだから」

①梓「まあ、稀代きだいのプレイボーイだ、その程度、造作ぞうさないよなあ…」

④六「そこが彼の恨めしいトコロであり、可愛らしいトコロでもある…」

①梓「アンタも大概たいがいれこんでる訳だ…」

①梓(モノローグ)「こりゃあ…私の舌先三寸したさきさんずん誤魔化ごまかせんかも知れん…」

①梓(モノローグ)「この場をしのぐのも、状況をしのぐのも一苦労だ…」

①梓(モノローグ)「どうする?気をしたトコロで―解決の糸口いとぐちがない。謝礼分は働かにゃならんのに!!」


④六「あなたに色々話していたら―腹が立って来ました…」   ト②に

①梓(モノローグ)「南無三なむさん!!止めるっきゃ無いが―どうしろと?」

①梓(モノローグ)「手持ちのモノで―なんかないのか?塩でもぶっかけるか?」

④六「ああ―恨めしい…恨めしい…」   ト②のパジャマの襟口えりぐちを『左手』でつか

④六「アンタが―身ごもらなければ―私への愛は薄れなかった!!」   ト空いた『右手』で②を打擲ビンタする、ほほを打つ音(『パァン』)が鳴り響く

④六「私が―お世継ぎを『先に』産めてさえいれば―」   ト②の頬を打つ

④六「その上アンタも糞女―恨めしい!!」   トまだまだ②の頬を打つ


《ここで②の頬を打つ音に重なって、別の『パァンパァン』という音がカブってくる》

《段々と頬を打つ音より、別の『パァンパァン』という音の方がうるさくなってくる》

《ココで舞台上の人間『以外』の『嬌声きょうせい』がれ聞こえてくる》


①梓「なんか―葵夫人を打つ以外の音がするんだが―」

④六「憎たらしい、憎たらしい…」   ト②の頬を打ち続けている、『嬌声』は聞こえてない模様

①梓「もしかして、だが―」

①梓「あのクソ馬鹿ボンボン―この短時間で看護師とヤッてんのか!?」


嬌声「ああ〜止めてください!源本さん!!」   ト漏れ聞こえてくる。④は気が付かない

③光「良いではないか〜君もまんざらでも無いんだろう?ほれほれ〜」 ト別の『パァンパァン』の音が高まる


①梓「やっぱしかよ!!あの糞ボケ!!嫁が妊娠してるからってやりたい放題かよ!!」

①梓(モノローグ)「なんか馬鹿らしくなってきた…」

①梓(モノローグ)「コレ―亡霊マダムに知らせたらどうなる?今は気がついて無いみたいだが…」

①梓「…取りあえず。仕事すっか…おーい?マダム?」   ト④に呼びかけ

④六「何よ!!」   ト②を打擲ビンタする音が止む、①を見る

①梓「…アンタが葵夫人をビンタしている間に、あのボケはヤッてるらしい…しかもスグ近くときた」


      《微かに聞こえてくる『パァンパァン』》


④六「いつもの事よ!!」

①梓「コレがいつもかよ!?」

④六「英雄えいゆういろを好む―大いに結構!!」

①梓「アイツは英雄じゃねえ!!ただのカサノヴァ気取りの阿呆だ!!」

④六「いいの。あの人が種をばら撒くのは今に始まった事じゃない―私がありながら、いくらでもヤッてた!!雄ウサギとさして変わらない!!」

④六「だから―あの小娘ゆうがおだって―殺したのに!!今度はコイツ!!政略結婚だかなんだか知らないけど子をしやがって!!憎ったらしい!!」

①梓「―あの小娘ゆうがおを殺した?何を言ってる…?」

④六「光がしょうもない家のしょうもない娘に入れあげた…だから私は今みたいに―『出て』、『取り殺した』…」

①梓「おいおいおい…冗談はよせよ―って眼の前に『在る』かあらなあ…マジかも知れん」

①梓(モノローグ)「どうする?このままじゃ―殺されちまうかも知れんぞ、葵夫人…」

①梓(モノローグ)「正直―葵夫人と光氏の事など知った事ではない、身から出たさびだ…」

①梓(モノローグ)「だが―お腹の子には罪はない…この状況を放っておくのは…」

①梓(モノローグ)「私のなけなしの良心が痛む」

①梓「でもでも…でも!!どうしたら良い?私の脳みそ、動け!!なんか思いつけ!!」


[5 @病室]


①梓「…こういう場合は、だ」

①梓「考えてもロクな事思いつかん…だから、基本に立ちかえる」

①梓「ユーレイ退治の基本…そんなもん素人の私は知らん。なら、とりあえず塩、塩を撒こう…」   ト設置した盛り塩を取りにいく

④六「憎たらしい、憎たらしい…」   ト夢中で②を打擲ビンタしている

①梓「悪霊退散!!」   ト④に向かって塩を撒く


《今まで微かに聞こえていた『パァンパァン』は音の間隔が狭くなってくる、即ちスパートしている》


③光「おっと…君ィ…いくら良いからって『しお』はよしたまえ、スーツが濡れたじゃないか…」   トくぐもった声が近くから聞こえる

③光「何?もう一度して欲しい?君も好きだなあ…」 


①梓「タイミング考えろ!!あの糞うさぎ!!こっちは必死なんだっつの!!」

④六「さっきから―ごちゃごちゃうるさいわね…」

①梓「しかも効いてねえし!!」

④六「塩で霊が退散する訳無いでしょう?ナメクジじゃないんだから」

①梓「ごもっとも!!」

①梓「でも―アンタの頭の上には塩…のってるな?」

④六「なんでかしらね?」

①梓「私に聞くな!!」

①梓「あーもう、面倒くせぇなあ、もう!!」

④六「あきめたら、そこで除霊じょれい終了よ?」

①梓「名作バスケ漫画みたいな事言うな!!そんだけ物分り良いなら帰ってくれよ…もうアンタらに付き合うの疲れたもん」

④六「と、言われましても…憎たらしいのは事実だから」

①梓「いっその事、隣にいって本人とやりあえよ、私は疲れた!!」

④六「それは―恥ずかしいじゃない?」

①梓「今更かよ!?」

④六「それに―彼とおファックできなくなるのはちょっと…」

①梓「『お』つけりゃ良いってモンでもねーから!!現代人のくせに性行為にご執心かよ!?」

④六「女性の性欲のピークは40代と言われてるから…」

①梓「データをかさに正当化すな…つうか、アンタも旦那居るんだろ?」

④六「居るわね…」

①梓「レスだか知らんが、旦那とやってくれ…もしくは阿呆ウサギ以外に『あいじん』でも囲え…今のご時世、探す方法はいくらでもあるだろ」

④六「彼の『モノ』じゃないとちょっと」

①梓「そんなに良いのか?」   トあきれ顔


③光「何ぃ?僕の『モノ』が凄い?ハハハ…まあ、色々改造したからね…男のたしなみさ」 トくぐもった声


①梓「ご回答どうも!!」   ト③光の声がする方に叫ぶ

④六「凄いのよ?」   ト①に絡む

①梓「バイブレーション機能でも付いてんのか?」

④六「あなたはソト派なのね…」

①梓「やかましい!!」

④六「バイブレーションは無いけど―もうゴツゴツで固くて太いくて長いの」

①梓「人類の話してるはずだが?」

④六「人類のオスの最高傑作ね、光は」

①梓「それって…『生きてるディルド』としての評価じゃね?」

④六「彼の人格なんかー評価に値しない、というか人間性があるか疑わしい」

①梓「散々なご評価で。あの雄ウサギは…『人』じゃなくて『モノ』なんだな」

④六「異性を性的な『モノ』として消費する―コレは人類のさがよ。男だ女だは関係ない」

①梓「もっともな言い方で逃げてるが―アンタもまた、糞女だ」

④六「糞じゃない人間って居るかしら?」

①梓「居ないね…人類はみーんな糞だよ」

④六「あなたは若いのね…そうやって自分以外を見下している」

①梓「いんや、私もまた金銭欲に塗れた糞だ…否定はせん」

①梓(モノローグ)「しかし!糞なりに良心はある…さあ、どう言いくるめる?」


[6 @病室]


①梓(モノローグ)「かのマダムは―光氏の『イチモツ』にご執心しゅうしん…」

①梓(モノローグ)「だが、最近はご無沙汰ぶさた…葵夫人に子が出来たから」

①梓(モノローグ)「しばらくしたら、またマダムのもとにも顔を出すだろうが―喫緊きっきんの課題は葵夫人を『取り殺そう』としてるのを止めること…」

①梓「ううむ。『今』、説得するネタがない…」

④六「何を考えているのかしら?」

①梓「ああん?『一休さん』ばりのトンチさ」

①梓「ううーん…」   トここでまた、『パァンパァン』の音が鳴り響き始める


      《『パァンパァンパァンパァン…ああぁん!!』》


①梓「クソみたいなSE付けてくれてありがとよ!!おかげで思いついた!!」

①梓「おい、そこのマダム!!」   ト④に呼びかける

④六「何よ?」   ト②を打擲ビンタしていた手を止める

①梓「いいか?葵夫人憎しで殺すのは―分からんでもない」

④六「あら?止めたいのでしょう?それがあなたの仕事…」

①梓「そう。私の仕事はアンタを『言いくるめる』事だ…」

①梓「葵夫人が身ごもっているのは、光氏の子ども…性別知ってるか?」

④六「いえ?付き合いが薄くなったから」

①梓「男の子だ」

④六「…!!」   ト驚く

①梓「葵夫人が不貞行為ふていこういをしてない限り―光氏のDNAを半分継いだ子が産まれるだろう…

①梓「残念ながら―顔は夫人に似るだろうが…『イチモツ』はどうかな?」

①梓「光氏はこれから老いていく身だ、『イチモツ』もまた老いを避けられない」

①梓「そこで光ジュニアの登場だ…10年少し我慢するハメになるが―」

①梓「フレッシュな光氏似の『イチモツ』…ワクワクしないか?」

④六「ゴクリ…」 トツバを飲む。

①梓「それに、だ。アンタがなんとか子どもに接触できりゃあ…幼少期から色々仕込めるぞ?」

④六「エロス英才教育ひかるげんじけいかく!!」

①梓「そうだ…もうやりたい放題できるぞ?だから―今日は帰れ」

④六「…」   ト考え込む

④六「あなた―子どもが産まれた『後』、私がこの女を殺す事、想定してないの?」

①梓「それは今回の仕事の範囲外。私が知った事じゃない」

④六「…いいでしょう。『今回』は身を引いてあげる」

①梓「契約成立。そして仕事終了だな、じゃ、さようなら」

④六「さようなら」   トすうっと姿を消す


[7 @病室]


①梓「ふぅ…なんとかなった…」

①梓「さっさと片付けてトンズラするか」   ト注連縄しめなわや盛り塩や弓を片付け始める

③光「いやあ…久々に5発もやったなあ。葵が入院してからご無沙汰だったから、タマってたなあ…」   ト声が近づいてくる

①梓「ったく…あのクソ御曹司ボンボンめ」


       《ここで病室に③光登場、スーツは濡れて乱れている》


③光「やあ、日野嬢?どうにかなったかね?」   トテカった笑顔を向けてくる

①梓「…おかげさまで」

③光「そうかそうか…助かったよ」

①梓「クライアントに言うことでは無いですが―今後もお気をつけを。『今回』はなんとかしましたが、今後の安全は保証しません」

③光「どういう事かね?」

①梓「因果応報」

③光「行った事には結果が伴う」

①梓「そう、あなたが行った事、夫人が行った事…それは誰かに影響を与える…」

③光「…心しておく」

①梓(モノローグ)「ま、分かっちゃないだろうが―私の知った事か」

③光「ところで―日野嬢?」

①梓「何でしょう?」

③光「この後、少し私に付き合ってくれまいか?」

①梓「5発ヤってまだやんの!?」


                 【終劇】


 ※本作の執筆にあたり、以下の文献、サイトを参考に致しました。


紫式部・谷崎潤一郎 『潤一郎訳 源氏物語 巻一』『桐壷』〜『葵』 中央公論新社 1973

天野文雄 「能楽名作選 上」―「葵上」 株式会社KADOKAWA 2018


the能.com 演目辞典:葵上

https://the-noh.com/jp/plays/data/program_006.html


the能.com 演目STORY PAPER:葵上

https://www.the-noh.com/download/download.cgi?name=006.pdf


コトバンク 『添(副)臥(読み)そいぶし』

https://kotobank.jp/word/%E6%B7%BB%28%E5%89%AF%29%E8%87%A5-1354788


IT弁護ナビ 『ネット誹謗中傷の判例まとめ|名誉毀損で損害賠償が請求できるケース

https://itbengo-pro.com/columns/192/


e-Gov法令検索 『刑法 第三十四章 名誉に対する罪』

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=140AC0000000045


e-Gov法令検索 『児童福祉法』

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000164

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下ネタ寸劇『葵上Remix』 小田舵木 @odakajiki

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