第27話 子供の留学備忘録④ プール付きのタワマン
それは今年の二月初め、ハンガリー政府奨学金の申し込みを済ませ、結果が届く前のことだった。
「ちょっとフィリピン行ってくるわ」
突然、息子がそういった。
高校は登校日以外はお休みで、中学の友達と行く約束をしているとのこと。
資金はバイト代。航空券やホテルの予約はアプリで全部自分で出来ると言う。
もともと、ハンガリーに留学したら長期休暇は日本に帰らず、ヨーロッパを旅行すると言っていた。
それなら自分ですべての手配が出来ないといけない。
練習するには良い機会かも知れないと思い許可した。
決まっているのは行く場所のみの、ほぼ無計画の旅行だったみたいだけれど、それなりに楽しめたらしい。
帰って来るなり「東南アジアも良いなぁ」と言い出した。
彼はまだ、白川寧々チャンネルを初めとする海外大学系の動画を見ていて、その中で紹介されていたマレーシアの大学に興味を持っていた。
大学の授業料や生活費の安さ。ヨーロッパやオーストラリアの大学の分校もあり、安くいける。中には半分マレーシアで勉強し、後半を海外の大学で勉強し卒業するというシステムもあるというのだ。
時期的に九月から始まる大学の申し込みがそろそろ開始される時だったこともあり、各地で「留学フェア」も開かれていた。
ハンガリー政府奨学金は他の国より受け入れ人数が多いけれど、それでも10%しか合格しない狭き門だ。滑り止めとしてハンガリーの希望大学のファウンデーションに申し込むことも考えていたけれど、今の気分はどうやら東南アジアらしい。
「プール付きのタワマンに住めるらしいよ!」
息子の鼻先には「南の国のプール付きタワマン」がぶら下がっていたのだった。
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