第3話 子供の頃に憧れたこと・後編


 引き続き、子供の頃に憧れたトップ3についての思い出。


 ① 児童文学作家

 ② 漫画家

 ③ 考古学者


 小学生の頃から憧れがあったこの三つの中で、最後までこじらせたのが児童文学作家だ。


 高校時代の創作仲間たちと、楽しく小説を書いていられたのは一時のことで、仕事を始めるとそれどころではなくなった。

 毎日会社へ行って仕事をし、帰って寝るだけ。楽しみと言えば、友達と会って次の旅行計画をたて、休みを取って旅行へ行く。そんな日々が続いた。


 でもある時、本屋の児童書コーナーで思い出す。昔読んで心奪われた名作の数々を。


「ナルニア国物語」「ドリトル先生」「ゲド戦記」「闇の戦いシリーズ」などなど


 私は子供の頃、本の虫だった。読みはじめたら最後、ご飯だよと言われても読み続けて怒られるような子供だった。

 特に「ナルニア国物語」は、私にとって生まれて初めての異世界トリップ物語だった。(それ以前に「不思議の国のアリス」も読んでいたのだけど、あまりピンと来なかったので)


 衣装タンスの扉を開けて、ナルニア国へ迷い込んだ子供たちの冒険に心を奪われたことや、子供の頃、児童文学作家に憧れたことも思い出す。


 私もあんな心躍る冒険物語が書きたい。


 そう思っても、日々の生活はそう変わる訳でもなく、書いては挫折の日々が続いた。実際に投稿まで漕ぎ着けたのは、ずいぶん後のことだった。


 児童書の出版社が年一回開催する小説賞に五回ほど応募した。

 最初の四回は同じ小説賞に応募し、いずれも最終選考に残った。応募数は100作品前後。

 最後の五回目は別の出版社の小説賞に応募し、二次選考までしか行けなかった。応募数は150作品くらいだったと思う。


 カクヨムに比べ、びっくりするほど少ない応募数。だからこそ、ヘタクソな私でも残れたのだと思う。


 最終選考に残ると選考委員の方々からお言葉がもらえる。けっこう厳しいことを言われるけれど、当時、書くだけで読んでくれる相手のいなかった私には、年に一度の楽しみだった。


 すでに出版業界は苦しくなっていて、総評から何となく伝わってくる〝出版社が求めている作品〟は「身近な現代もの」のような気がした。

 ちょうど和風ファンタジーが流行っていた時期でもあり、猫も杓子も和風ファンタジーを応募してくることに、編集者側が苦言を呈してもいた。


 私も懸命に「身近な現代もの」に近づけようと頑張ったけれど、どうしてもファンタジーからは抜け出せず、作品にもかなり無理が出ていたかも知れない。

 何より、書いていて楽しくなかった。

 そんな作品が面白い訳がない。


 せっかくお言葉を貰えていたのに、この五年間、私はちっとも上達しなかった。

 文章の上手い下手以前に、私にはきっと足りないものがある。

 それが何なのか、具体的にはわからなかったけれど、漠然とした言葉を使えば、たぶん才能(笑)


 これからは書きたいものを好きなだけ書こう。そう思って投稿をやめた。

 カクヨムを知ったのはこの後のことで、好きなものを好きなだけ書けることに今は満足している。そしてたぶん、今も「足りないもの」探しは続けている気がする。


 ※カクヨム作品の中には、かなりグレードが高いものがある。もちろん書籍化されているプロもいる訳だけど、そうでなくても、拝読していて選考通りそうだと思うことがよくある。

 もちろん応募作には枚数の規定があるし、児童文学には「子供に読ませて良いもの」という縛りがあるし、主人公の年齢設定は基本低い。好きな人でないと難しいかも知れないけど、投稿してみたらいいのにと思ったりする。(蛇足)


  

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