第4話 アルハンブラの思い出(旅行)


 「初めての海外旅行先(国)には、大抵ハマる」という話はよく聞いていたけれど、私もご多分に漏れず、スペインにハマった。


 もともと遺跡好きな関係で、地中海沿岸の国々には興味があったのだけど、スペインはそれほどでも無かった。

 それなのに、どっぷりとハマってしまったのだ(笑)


 初めての海外は姉と二人で参加した「スペイン8日間」というツアーだった。

 マドリードから入り、トレドを観光した後にバルセロナへ行くもので、それぞれの町で自由行動がある、初心者には丁度良いツアーだった。


 二度目のスペインは、友人との三人旅。スペインから、スイスを通ってイタリアのローマまで行く自由旅行だ。

 なので、当然ホテルの予約はない。到着したその日から、まずやらなければいけないのはその日の宿を確保すること。

 自由旅行初心者にはこれが一番ハードルが高かった。


 この旅行で利用したのは主に家族経営の安宿オスタル。日本でいうところの民宿やペンションのような宿だ。都会だとひとつの建物にいくつかのオスタルが入っていることもあり、下から総なめにしてやっと初日の宿を確保した記憶がある。


 マドリードから入り、南のアンダルシア地方の観光地グラナダへ行き、東のバルセロナへ出てスイスへ抜ける、という予定を組んでいた。

 私たちはマドリード市内や古都トレドを観光したのち、夜行列車でグラナダを目指した。


 貧乏旅行をする私たちの旅は、航空券が安い冬場が多い。この旅も初冬の頃で、グラナダに着いた午前8時頃はまだ夜も明けきっていなかったが、さすがは観光地。ホテルの客引きおじさんがいて、この日の宿はすんなりと決まった。


 安宿に荷物を置いて向かったのは、グラナダで一番有名なアルハンブラ宮殿。

「ライオンの中庭」で有名なアラブ風の王城アルカサルだ。

 大通りからけっこうな坂道を上ってゆくと入口がある。


 外側からは、武骨な石造りの四角い城に見えるが、中に入ると印象はガラリと変わる。

 増築を重ねたような建物の内部を歩けば、壁や天井に緻密な彫刻が施された部屋や、四角や円形の中庭などが次々と現れるのだ。

 中庭には噴水や池といった水辺があり、アーチ状の柱がとりまいていたりする。


 少し離れた場所にフェネラリーフェ庭園があるが、そこも建物はほんの一部で、長方形の池とそれを取り巻く緑の庭が素晴らしくきれいだった。

 アルハンブラ宮殿はどこを見てもアラブの様式が色濃くて、長くアラブの国として栄えていたアンダルシアという土地の歴史を感じることが出来る。



 この数年後に、友人の一人とスペインだけを巡る旅をした。アンダルシア地方のセビーリャやコルドバ、地中海沿いのマラガまで旅したが、グラナダにも再び訪れてアルハンブラ宮殿を見学した。


 私はスペインが好きだ。中でもアンダルシア地方がとても好きだ。

 フラメンコ。あの大地を踏み鳴らすサパテアードのリズムには、心を揺さぶられる。

 西洋とアラブの文化が入り混じった土地は、どこか郷愁をそそるのだ。


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