日常空間

礫 素音

どれくらい昔のことだろうか。


そう、あれは遠い夏の日のこと。


今日のような、蒸し暑い日だった。


賑やかな縁側、真っ赤なベンチ、君の顔。


蝉の声がうるさくて、僕の言葉は届かない。


道を抜け、上へ。うえへ


森を抜け、空へ。そらへ


天と地の間についた時


僕たちは、新たな世界へ行ける気がした。


見上げれば、巨大な水滴の塊が。


見下ろせば、小さな人々の街並みが。


君は、新たな世界へ踏み出した。


君と心の間は果てしなく


柵が抜け、下へ。したへ


君を抜け、上へ。うえへ


人の声がうるさくて、君の声は聞こえない。


雑草ばかりの縁側、古びたベンチ、   。


今日のような、夏の日には


昔のことを思い出す。


だから、またくるよ


天と人の間、


の間へ

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日常空間 礫 素音 @ishi_motone

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