第8話 ある貴族の嘆き《???視点》
くそっ、なんなんだアレは!
薔薇? 薔薇だと? 頭おかしいのか?
それはいいとして、あんな傲慢な態度でいきなり婚姻を迫ったら、アゼリア嬢に拒まれるのも無理はない!!
しかし、もう少し粘って押してもいいはずなのに……効きが悪いのか?
それにしても、傑作だ。自分の息子の豹変に気づかぬ父親だったとは。
親として息子の願いを叶えたい、だと? 笑わせる。今まで感心などなにひとつ向けたことはないくせに。
息子の言動が普段と違うというのに、なにを喜んでいるのだか。
これが王か? 王族なのか?
まるで理解できんな。
それにしても……応接室の人選は運がよかった。
誰も彼もが王子殿下に興味がない。
モルガン公爵家はそもそも社交界にも貴族議会にも顔を出すだけ。王城にもそれほど頻繁に登城しないから、王子殿下の普段の様子を知らないとみえる。
それ以外にも……自分の仕事にしか興味のない奴らばかりで助かった。
王子殿下と親しくしているものなど、あの場にはいなかったのだからな!
だが、王子殿下が予算の話なんかをするから……!
絶対に口にしてらならない、と、あんなに言い聞かせておいたのに!
あいつを引き摺りだすことになるから、話すな、と、あれほど……!
くそっ、忌まわしい。忌まわしい男め。なにかにつけて、邪魔をする。
あいつの補佐官とかいう男も邪魔だ。余計な口だしをしおって!!
せっかくモルガン公爵家を巻きこむことに成功したというのに!
三盟約だかなんだか知らんが、破っただけで国が滅びる? そんな盟約があってたまるか! そんな魔術など、知らん!
いくらあの娘が魔術の天才だからといって……そうか。すべてはあの娘の虚言だな? 冷や冷やさせおって……。そんなに王家との婚姻が嫌なのか?
試しに、娘を襲わせてみればいいか? そこを王子が助けたとしたら……少しはその気になるだろう。いや、捕らえた娘を王子に襲わせればよいのだ。既成事実を作ってしまえば、もう、逃げられない。
まったく、手のかかる。名ばかり公爵は大人しく利用されていればいいものを。王家に娘を嫁がせる、だなんて。国中の貴族が羨むような打診を、なぜ、あの家門は拒むのだ? まるで理解ができん。
くそっ、くそっ! なにもかもがめちゃくちゃだ!!
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