第七話 目が覚めて
「あぁ、もう食えねぇ、リゾット、タッパーに入れといてー。」
夢うつつ、俺は自分の発した声で目が覚めた。
「ん、どこだ、ここ。」
そこは薄暗い、ほこらの様な洞窟の中で、真ん中でメラメラと火が焚かれている。まだ夜だと見えて、この火がなければ一寸先も見えないだろう。
その炎に映し出されるように、筋肉隆々の赤鬼がいた。赤鬼は、あぐらを描き腕組みをし目を瞑っている。その姿が目に入った途端、俺は恐ろしくて目を閉じた。
あれ、確か、俺、青鬼の家に泊めてらう流れで、リゾット食わせてもらってたら眠くなっちゃって…。いや、なんか睡眠キノコとか言ってたな。俺は眠らされたのか。
いやでも、赤鬼はいいやつだったよなと思い、起きあがろうとした時、両手首と足首を縄で縛られてることに気がついた。
やべっ、殺されるのか!?いや、そうならとっくにやってるだろうし、一体何が目的なんだ?
分からない…。
しかし、この状況、ただで済むわけがない。
薄目で赤鬼を見ると、寝てるようにも見える。そっと逃げればバレないか。いや、逃げるしか選択肢はねぇ。
俺は赤鬼が起きないよう、細心の注意を払って手と足を縛っている縄を解こうとした。
痛ぇ。解こうとすると、余計に肌に食い込む。また、それ用のやつじゃないから、縄が毛羽立っててチクチクと突き刺さって痛い。
いや、それ用のやつって何か知らないけどね。
解くことは諦めて、うさぎ飛びで出口まで行くか。いや、流石に起きるよな。でも、やるっきゃない。
俺はなるべく音を立てないよう、ジリジリと起き上がり、しゃがんだ状態で小さくジャンプしながら、洞窟の出口である方向へと移動を開始した。
赤鬼の様子を確認しながら少しずつ…。
あれ、なんか、全く起きそうにないな。
よく見ると、徳利が足元にひっくり返っている。酒を飲んで、かなり熟睡モードになってんのかな。
俺は早く脱出したくなり、割と大胆にジャンプを繰り返し、ようやく出口についた。
「なにもないじゃん、このイベントなんだったんだ。」
青鬼にリゾットで眠らされて、赤鬼からの拘束。でも、割と簡単に脱出。マジでイミフ。
もう、危ないから夜が明けたら一旦家帰ろ。俺は近くにあった切り立った岩で縛られてた縄を切った。
「あれっ、竹どこやったっけ?」
その時、じいちゃんにもらった唯一の武器、竹槍がないことに気がついた。
「別に、あんなもん、なくてもいいんだけど、どこだろ。」
「探し物はこれかな?」
見るとそこにじいちゃんの竹槍が。
「あっ、これこれ、サンキュー。」
そう言って、振り返ればヤツがいた。
「ヤツ!」
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