第六話 飯

「何これ!めっちゃ美味いじゃん!」

腹が減っていたのもあるが、青鬼の作った飯はめちゃくちゃ美味かった。

 いや、オニ美味い!


「青鬼風きのこリゾット、気に入ってくれたのなら良かった。」

 そう青鬼は言うと、うれしそうにフレーバーティーをすすった。鬼の食事はどちらかと言うと洋風なのかもしれない。

 

 「お前、名前は何と言うんだ?」

 「桃太郎!」

俺は、木の匙でリゾットを口に運びながら答えた。

 「尻、丸出しだからか?」

 「桃尻から名前とった訳じゃねぇから。」

 「そんな格好で恥ずかしくないのか?」

 「いや、お前だって、虎のパンツ一丁じゃん!あ、そうそう、下の村にいる鬼ってのが赤鬼なの?」

 「あぁ、そうだ。俺の親友の赤鬼だ。元親友になるかな。」

 「あのー、あれだっけ?赤鬼が人間と仲良くなりたいからって青鬼が悪役演じて、赤鬼が村人を救って、人間に迎え入れられる、みたいな話だっけ?」

 「なぜだ、なぜそれを知ってる!」

青鬼は驚いて紅茶をこぼした。ピーチフレーバーの甘い香りが部屋の中を漂った。


 「いや、あれ?なんかどっかで聞いたのかな。寺子屋とかで。」

 俺は慌てて嘘をついた。

「誰にも知られないように、私はこっそりと赤鬼の元から離れた。それが、赤鬼の幸せになるなら。」

 なんだか、ここからBL展開しそうな話だがそれは、別の世界線にお任せしよう。


 「でも、鬼にでもいいヤツがいるんだな。」

俺は、リゾットのつがれた器を飲み干しながら聞いた。

 「そりゃそうさ。人間だって、いい人間もいれば悪い人間もいるだろ?」

 うーん。深い。偏見は良くない。

 「ホントに赤鬼はいいヤツさ。」

そう青鬼は言うと少し悲しそうな表情になった。


 「いや、赤鬼じゃなくて、お前もいいヤツじゃん!赤鬼助けて、俺に飯食わせてくれて。」

 俺は青鬼に元気になってもらいたくて、励ますように大きめの声で言った。

 「ありがとう。少し楽になったよ。さぁ、リゾットはまだ残ってるから、沢山食え。」

 「もう、腹一杯で食えないよ。でも、もう、す、こ〜しだけ、くうかぁ、むにゃむにゃ…。」

 ん、なんだこの異常な眠気は。瞼が重くてあけられない。

 俺はその場で横になってしまった。

知らない間に疲れてたんだな。鉛のように体が重い。

 薄れいく意識の中で、青鬼の声が途切れ途切れに聞こえた。

 

 「…本人が桃太郎と言っています。…様の言われた通り、捕まえ…。睡眠きのこを食べさせた…は起きれない…。これで本当に、…してもらえるのでしょうか?」

 あぁ、マジで鬼だわ。

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