第五話 遭遇
暗くて分からなかったが、そこは寺子屋ではなかった。恐ろしいことに鬼の家だったのだ。
「あ、いや、ちょっと、待って。あー、ワープッ!」
俺はテンパって使えもしない呪文を唱えていた。
だがワープするどころか、青鬼はより一層、目の前にいる気がする。
「あぁ、人間の子供か。安心しなさい、とって食ったりしないから。」
青鬼は笑みをこぼしながら言った。
これは、鬼ジョークなのか?
笑えない。
俺はとって食われる。
青ざめた俺の顔は、青鬼のそれを越えている自信があった。
「とにかく、中に入りなさい。」
これは、逃げれない。
逃げてもどうせ、回り込まれる。
「痛くしないでね。」
まるで、ウブな女のようにそう呟いて俺は敷居をまたいだ。
鬼の家の中は、人間のものと同じだった。
部屋の真ん中に囲炉裏があり、鍋がかかっている。
グツグツと何かを煮ているようで、たまらなく良い香りが立ち込めている。
あぁ、今から鬼に食べられるというのに、こんな状況でも俺は腹が減っている。
食べられるより食べたい。
まるで、愛されるより愛したい、のような事が頭をよぎった時、俺の腹の虫が鳴った。
「なんだ、腹をすかしているのか、その鍋でも食べるかい。」
これは罠か。
「まぁ、それを食べたら共喰いになってしまうか。」
ぎゃーっ!俺の腹の虫が絶叫した。
「ガハハ。鬼ジョークだよ。」
これが鬼ジョークか!?
「怖がらせたようだね。すまんすまん。笑わせるつもりだったんだがね。」
「笑えねぇから。」
俺は勇気を振り絞って強がってそう言った。
だが、少し泣いてた。
「あぁ、まただ。」
「なんだよ。」
グズった声で俺が言った。
「私には親友がいてね。笑ってもらおうと頑張ったんだが、返って泣かせてしまってね。」
「親友?」
「親友の赤鬼だよ。」
「えっ?泣いた赤鬼?」
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