第2話 父
等身大とは何だろうか。父は虚栄の巣。
まず身長である。彼の身長は154cm。会社の健康診断の結果をちらっと見た母が確認したらしい。嘘1つである。
付随したエピソードもある。彼は、母との結婚式、衣装合わせの際、当初、身長を158cmと嘘をついていたらしい。母方の母が158cmとは知らず。どう考えてもおかしいのである。母は見ていた。父と自分の母が並んだ姿を。どう見ても小さい父を。
しかし、相手はプロである。スタッフの方は一瞬で父に配慮した上で、154cmにあった衣装を用意したのである。まさに感服だ。プロフェッショナルとはこのことだと母も感じたらしい。
あとは、たばこが臭い。とにかく、理不尽でもある。とても。
幼少の頃、よくビンタをされた。ご飯を食べるのが遅い。食べる手が止まっている。フォークに刺さったたこ焼きを投げられたこともあった。あれは、いただけない。
そう。父は別に虚栄の巣とかよくわからない表題をつけてあらわすような人ではなかった。嘘は誰でもつくし、欠点はあるものだ。私が父を毛嫌いしているのだ。幼少の頃からずっと。
母のことが好きかと言われれば困る。好きではない。嫌いでもない。僕は男性であるが、女の子がお父さんの洗濯物と一緒に洗濯して欲しくないといっていたあれに近いのかも知れない。生理的に無理。
公務員として働く父は、夕方6時頃に自宅に着く。ガラガラとドアが開き「ただいま」と言う。私は反応しない。というか今更急に反応することもおかしいのである。後には引けない。まさにそれだ。
お得意の肌着とパンツになり、麦焼酎を温めて、おつまみを食べる。テレビはここから彼の独占状態に入る。何回も観古した韓国ドラマの視聴。彼は、携帯をいじり、人より数年遅れて始めたパズルゲームをやっている。私は人昔前に流行ったそのパズルゲームを今でもやっている人を彼しか知らない。
さらに、彼は韓国語のネイティブリスナーだ。携帯をいじり、テレビを全くみていないのにも関わらず、翻訳されていない韓国語を聞き、内容理解、ゲームに勤しんでいる。考えたら分かりそうだが、もちろんしゃべれるわけではない。というかただの皮肉である。
1度思考してみたことがある。彼のいったい何がいけなかったのか。何が問題であったのか。結論、問題はないのである。
人間誰しも嫌なところもあれば、欠点もある。完全無欠、完璧な人間など、この世界に存在しないのだ。ただただ嫌い。まさに生理的に無理である。この言葉に尽きる。
生理的に無理な人間は、今までで3人ほど出会った。1人目は、いわずもがな父、2人目は高校の同級生の男。3人目ははじめてのバイト先の1個下の女の子。共通項はないが、他の子に対して許せることが、その人にされるとイラつき、ムカつく。そんな事象。
今更仲良くしたいわけではない。むしろ、急に積極的に話しかけてこられたら困るし。
母 一世 @issei_kuramoto_
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