後編
「どうして、シヴィリアは私のことをそんなに愛してくれるのですか?」
死亡フラグを回避するため、必死にミリアスに善行をつくしていたら、いつの間にかミリアスだけでなく、ランクロード王子も私に好意を寄せてくれるようになっていた。
「ど、どうしてって」
それは、きっとあなたのために三千時間を費やしてきたから。
そこから、転生して来てからの時間も加えると、どれくらいの時間を投入したのか、もう私にも分からない。
その投入し過ぎた時間によって、私の想いは、好きという気持ちを通り越していつの間にか愛へと変わっていた。
「私、後ろ向きな性格で、なかなか気持ちが前向きになれなかったんです。でも、ランクロード王子に出逢って、ランクロード王子から私が聞きたい言葉をたくさん言ってもらえて、気がついたら前向きな気持ちで過ごせるようになっていました」
「そ、そんな真っ直ぐに気持ちをぶつけられると、なんだか照れますね」
ランクロード王子の生照れいただきましたーーーーー!!
つい、前世の癖で、心の中で叫んでしまった。
いかん、いかん、今は真面目な話を。
「とにかく、ランクロード王子の全てが好きなんです」
「……そうですか、でしたら、これを受け取ってもらえますか?」
「え、これって!?」
ランクロード王子が取り出したのは婚約指輪の入った箱だった。
「そ、そんな、私なんかが、こ、こんな貴重な物もらえません」
混乱してしまって、上手くしゃべれない。
「い、いやでしたか……」
ランクロード王子が寂しそうな表情をしている。
「い、いえ、そんな、嫌なわけありません」
「それとも、好きな気持ちと結婚は別なのですか?」
「別ではありません!! もう、大好きなので、もちろん結婚したいに決まっています!! あっ……」
「フフ、ありがとうございます」
ランクロード王子は笑顔でそう言った。
……はめられたような気がするのは気のせいだろうか。
私が観念した様子を見せると、ランクロード王子は地面に片膝をついた。
そして、ランクロード王子は私の目をじっと見つめながら、
「シヴィリアのことを心から愛してしまいました。どうか私と結婚してください」
と私にプロポーズをした。
私はあまりの嬉しさに顔がにやけそうになったが、必死に堪えて、
「はい、喜んで」
と返事をした。
こうして、何故かヒロインではなく悪役令嬢に転生してしまった私が、死亡フラグを回避して推しキャラと結婚するという幸せな異世界生活が始まった。
推しキャラのために三千時間を費やしたら意識を失ってしまい気がつくと乙女ゲームの中に入っていたのだが、悪役令嬢に転生してしまったので死亡フラグを回避しながら推しキャラの攻略を目指す 夜炎 伯空 @YaenHaku
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