推しキャラのために三千時間を費やしたら意識を失ってしまい気がつくと乙女ゲームの中に入っていたのだが、悪役令嬢に転生してしまったので死亡フラグを回避しながら推しキャラの攻略を目指す
夜炎 伯空
前編
「グヒヒ、ランクロード王子、今日も最高!!」
乙女ゲームの推しキャラ、ランクロード王子と会話をしながら、私はニヤニヤが止まらなかった。
ランクロード王子のための総プレイ時間は既に三千時間を超えている。
お父さん、お母さん、私は今日もランクロード王子と楽しく幸せな日々を送っております。
私を生んでくれてありがとう!!
「でも、さすがに、そろそろ限界かも」
金曜日の夜から日曜日の昼まで不眠不休でランクロード王子と時間を過ごしていたので、想いとは裏腹に身体は限界を迎えようとしていた。
「く、くそ。私は寝たくないのに、身体が言うことを、き、きかない……」
ランクロード王子が映っているスマホを抱きしめながら、いつの間にか私は深い眠りについていた。
◇
「大丈夫ですか?」
あれ、誰かが私に声をかけてくれてる?
アパートで一人暮らしをしているので、私に声をかけてくれる人なんていないはずなのに。
それに、この声どこかで聞いたことが。
「ラ、ランクロード様?!」
「あ、目覚めたようですね。よかった」
愛しのランクロード様のお顔が目の前に!!
「ど、ど、ど、どうして、ランクロード様が目の前にいらっしゃるんですか!?」
もしかして、スマホゲームのし過ぎで、乙女ゲームの中に入ってしまったとか?
「少し混乱しているようですね。私のパートナーとしてパーティに参加していたのですが、体調が優れない様子でしたので、しばらくベッドで休息されていたんですよ」
ランクロード王子のパートナーということは、もしかして私、ヒロインのミリアスに転生したの?
だったら、なんてラッキーな。
乙女ゲームの神様、ありがとうございます!!
「ふふ、元気になられたようですね。シヴィリア」
「はい、ランクロード王子。って、シヴィリア?!」
「どうかしましたか?」
「私の名前はシヴィリアなんですか?」
「これは、相当、気が動転してしまっているようですね。ご自分の名前も思い出せないなんて」
ぐはっ!
私、ヒロインのミリアスじゃなくて、そのヒロインを苦しめていた悪役令嬢の方に転生しちゃったの!?
「ランクロード王子、シヴィリア様は大丈夫でしたか?」
あ、ヒロインのミリアスがキターーーーーーーーー!!
「ミリアス、心配して見に来てくれたんだね」
やっぱり、この二人のカップリングは最高だわ。
ゲーム画面でしか見られなかった二人の会話を目の前で見ることができて、思わず鼻血が出そうになる。
ランクロード様のことは当然大好きなのだが、ミリアスとしてずっとプレイをしてきたので、ミリアスのことも大好きなのだ。
それなのに、どうしてだろう。
何故か、心がモヤモヤする。
これはまずい。
この思いは、きっとシヴィリアのランクロード王子への思いが、そうさせているのよね。
このままだと、きっと、私はミリアスのことを邪魔する悪役令嬢となって、死の運命をたどることになってしまう。
それだけは何としても避けなくては。
でも、もし死亡フラグを回避できるのなら。
大好きだったランクロード王子とも結ばれたいなぁ。
私は心の中でそんな淡い期待を抱いた。
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