市街戦が終わって
第16話
目が覚めた時、俺は鉄パイプの上にマットを置いただけの粗末なベットの上に寝ていた。
全身が痛い。だが、その痛みがあるという事実は、生の証明にもなる。
俺は自分がどこにいるのか確認するために、痛みをこらえて首を回した。ベッドが縦横にずらりと並べられ、怪我人で満員だ。
衛生兵がその間を、退役代用の点滴や、手術用の道具などをもって走り回っている。
ここは野戦病院か。周囲のけが人の軍服は、わが軍のものだ。どうやらあの後、味方に回収されたらしい。
巨大なテントを張ってそこを野戦病院にする。わが軍は野戦病院用のテントが全ての前線に配備されていて、余裕が出たらそれを組み立てて、怪我人を収容することになっている。俺も普通科にいたころは、テントを張るのをよく手伝った。
怪我人を野ざらしにしておくよりよほど衛生的だし、緊急の手術を雨で妨害されるようなこともない。それに、怪我人を塹壕内に並べると場所を食う。
野戦病院を用意するメリットは、大きい。
まあ、そこに怪我人として入ったのは初めてだが。
俺の枕元には、奇跡的に故障しなかった狙撃銃『朧』が置いてあった。だが、艶消しの黒はコンクリートの塵をかぶり、少し煤けている。
何故銃が無傷であるのか、俺が生きているのかを思い出そうと、少し痛む頭を押さえつつ、記憶の紐をたぐる。
「ひむ・・ろ」
そうだ。氷室は無事か!?
俺が首を動かすと、俺の隣のベッドに満身創痍の氷室が寝ていた。戦闘服はボロボロで、そこら中に包帯が巻かれ、かなり痛ましいことになっている。
だが、スー、スーと落ち着いた呼吸音が聞こえる。息がある。どうやら無事だったらしい。良かった。
俺は緊張がするする解けるのを感じた。そのまま今度はゆっくりと穏やかに、意識を手放した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます