真夜中の愛し合い

Ab

妹との夜

 午前0時。

 この真夜中の中の真夜中という時間に、俺の部屋のドアは決まってきぃぃ……と音を立てて開く。

 ゆっくりと、しかし遠慮の気配無しに。

 ドアの隙間から光が差し込み、瞼の奥が眩しく光るが、俺はいつも通り寝たふりを続ける。



「ふふ、お兄ちゃん。今日も遊びに来ちゃいました」



 静かな部屋に小さな声。

 同時にパタンとドアが閉まり、光が消えた。



「今日もぐっすりですね。学校で疲れているのでしょうか? 大好きですよお兄ちゃん……なんて、ああっ、お兄ちゃんの前で言うとすごい興奮しますっ」



 きっと目にハートを浮かべているのだろう。

 ひた、ひた、と素足で近づいてくる音がする。


 もともと妹はこんなことをする子じゃなかった。しかし、中学に上がってからどんな知識を得てしまったのか、人が変わったように毎晩襲いにくるようになってしまった。夜這いというやつだ。

 でも、俺は彼女を止めたことがない。

 彼女が小学3年生の時に初めて出会い、それから義理の妹となった年下の美少女。俺だって年頃の高校生なのだから、止めれるはずがなかった。




「……お兄ちゃん。可愛い、カッコいい、私のお兄ちゃん。今日は私、最後までしちゃうからね。もう、我慢なんてできないからねっ」




 艶のある甘い声。

 ぼふっ。ベッドが緩やかに沈み込む。

 空気や風、香りから、すでに俺を跨いだ四つん這いなのだと理解する。



「……いただきます」



 そう聞こえ、多めの吐息を浴びたかと思いきや、躊躇なく俺の口が塞がれる。激しく貪られ意識が快楽に溺れそうになるが、どうにか堪えて自分からは動かない。

 瑞々しい甘味が絡み合い、圧倒的な柔らかさに包まれる。



「んんっ……いい、良いよお兄ちゃん。もっとしよう?」



 囁いた妹が、さらに激しく貪ってくる。

 俺も流石に我慢ならず、寝返りを打つふりをして妹の体に触れる。唇よりも柔らかい妹の脇腹を、指先の神経全てで感じ取る。



「んぁぅ、だめだよお兄ちゃんッ。そんなところ触ったら」



 くすぐりに弱い妹にとって脇腹は急所。

 かなり敏感な部分である。



「だめぇ……だめだよ、お兄ちゃんっ」



 そう言いながらも声の色気は増すばかり。


 もう、目を開けて、好きなだけ妹を愛したい。


 普段の制服姿、家事をする時のエプロン、おやすみ前のパジャマ姿に、今のありのままの妹。その全てを俺のものにしたい。


 でも、いくら愛を向けられても、愛を向けるのは怖い。

 だからまだ目は閉じたまま。


 いつかの真夜中に、開けられる日が来ると信じて。

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真夜中の愛し合い Ab @shadow-night

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