宵待蟹岬毒草園 深川夏眠様

【タイトル】 宵待蟹岬毒草園

【作者】 深川夏眠

https://kakuyomu.jp/works/1177354054892767177


 こちら、またまた深川夏眠様の作品になります。二作も双子をありがとうございます。そして以前、短編募集した自主企画でも参加いただいていたことを今更気づきました。物覚え悪い企画主でたいへん申し訳ございません。

 短編募集した企画に関しては知っている人は知っている「一万字読書」や今回のように紹介文は書かず、応援コメントだけでしたので、こちらで一緒に紹介しておきます。


「月宮殿」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054892234807


 死んだ母親視点で見るいびつな父子の秘密のお話です。刺さる人はものすごく刺さるお話だと思いますので、興味ある方は読んでみてはいかがでしょうか。



 さて、ここで本題である双子に戻るわけですが、今作の双子は脇役です!

 陸と海という巨漢の双子で、凪という子のボディーガードを務めています。

 お話は語り手である詠が唯に送る手紙として書かれているため、詠の見たもの聞いたもの、考えたものがダイレクトに描写されています。詠にとって双子は頼れるの仲間ではありますが、それ以上でも以下でもないようで描写としてはそれほど多いとはいえません。


 最初は双子企画としてこの作品を紹介するのはどうなのかなと少し考えました。私の好みかどうかはもちろんですが、双子を語るという企画なわけで、双子語りができないなら企画の趣旨からずれるのでは? と考えたのですが、この紹介文を全部読む方がいらっしゃった場合、ずっと双子について語られてるの読み続けるのも変わり映えしないだろうなと思ったため紹介することにしました。

 ずっと同じようなものばかり読んでいても飽きますし。


 語るとすれば名前です。おそろいとか対になっている名前って双子や兄弟、姉妹ならではで良いと思います。音の響きを近づけたり、言葉の意味を関連付けたり、同じ字を使ったり。セットというのにも双子感、そして名付けた方の考えが見えて素敵です。あえて全く関連性のない名前にするのも良いですよね……。

 小説において名前って一番読者の目に触れるものなので、特別感があるのは覚えやすくて良いです。特に私みたいに人やキャラクターの名前覚えるの苦手人間には。


 結局語ってるじゃないか。ということは脇に置いておいて、作品の話に戻ります。


 こちらは手紙という形で語られるため、詠の主観に基づいて描かれています。送り主も詠の知り合いですから、当然、自分がここにいることはご存じですね。という空気で始まるわけです。

 ですが読者にとってはご存じではない。情報がまるで足りません。

 毒草園とはなに? 君たちはどうしてそこにいるの? どういう状況なの? と話が進むにつれて疑問がどんどん浮かんできます。

 それが読み進めるごとに明かされていくわけですが、そうすると今度は納得感に包まれます。物語の節々にあった疑問ポイントが回収されていく爽快感は格別です。主人公は所々で不穏な発言をしているのですが、その不穏さも良い味を出しています。


 内容は濃いですが文字数としては3万6千字ほど。

 タグにも「信用できない語り手」と付けられている通り、不穏な視点主に振り回される感覚を味わってみるのも一興だと思います。

 

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