第13話 母の葬儀
救急搬送から4日で母は父のもとに旅立ちました。
父の葬儀では、経歴も生涯もなにも触れられず、
きっと父は自分の葬儀に合わせて作ったいたはずの、
まだ元気だった頃何回も書き足したり直していた自分の経歴は使われることはありませんでした。
弟や私の子どもたちは、じいじのことをあまり知らないだろうなと思うと残念です。
母の葬儀では、お寺さんに出す経歴のレポートを細かくびっしり書きました。
自分の心の整理と、そうやって昔の母のことを思い出しながら偲ぶことが出来ました。
お通夜が始まりました。
シンプルな葬儀を希望していたので、お寺さんは湯灌、納棺には立ち会わず、
お通夜が初対面でした。
後ろ姿ではわかりませんでしたが、通るお経の声で、女のお坊さんなのだと思いました。読経の後、母を偲ぶお話は、私がほとんど自分のためだけに書いた母の思い出を全部語ってくださり、その話を聞きながら、また改めて母の若いころを思い出しました。
こんなに違うんだ!
普段、宗教とは無縁の生活をしている私ですが、
葬儀というものが、送る人、生きている人のためにあるのなら、
故人を偲び、思い出を語り、天に送り出すための儀式なのかなと思います。
弟一家は家に戻り、私たち家族は会場に泊まりました。
遠方から急いできた長男は疲れ気味です。
週明けに仕事があるから告別式が終わったらすぐに戻ると言っています。
シンプルにを一番にしましたが、
花が好きだった母にもう少しお花いっぱいにしてあげたかったかな。
写真を入れたDVD作ってもよかったかな。
これが一番という正解はどこにもないので、心も揺れます。
母の遺体と一緒、一人で部屋で待機している時は、
お腹もすかず、お茶も飲む気も起きず、
気が付いたら、声を発声することもなく、ぼーっと時間がたっていました。
家族が来て、話をして、食べたり、飲んだり、
ちょっと落ち着きました。
母は、毎日一人で過ごしていたんだなと。
世話好き、話好きの母が一人で生活して一人でご飯を食べるのは、ちっとも似合いません。常にがやがやにぎやかの中にいた人です。
改めて、一人で生きる覚悟と孤独の中にいた母を思います。
夜が明け、告別式が始まりました。
弟は、どこからか情報が洩れていきなり親族がやってきたりしないか、
やきもきしていましたが、無事に家族だけで見送ることが出来ました。
火葬された母の骨は薄くてほとんど形が残らず、
小さく小さくなっていました。
骨粗鬆症の薬も飲んでいたし、脊柱管狭窄症もあったし、
ここ数年みるみる体重が減って体が小さくなっていました。
お坊さんには感謝を。
葬儀の会社にも感謝を。
今回いろいろな注文をたくさん実現してくれたことに。
葬儀の費用は現金決済。
「お葬式には現金が必要だから、いちいち降ろさなくて済むように
これがお葬式代だから。」
もう、ずいぶん前から何度も聞かされていたところに
用意されていた葬儀代。
ばあば、ちゃんと使わせていただきました。
私たちの負担にならないようにしてくれてありがとう。
父母を同じ年に送りました。
私はまだ、これがお葬式代というものを用意していません。
以前よりは、自分が亡くなった時にどんな形がいいのか真剣に考えるようになりました。
私もまた、子供たちの負担にはなりたくないと思います。
弟と話しました。
49日とか一周忌は特にしない。
納骨は時機を見て適当にやっておく。
しばらくは二人の遺骨を実家に置いておく。
そのうち自分(弟)が二人とも引き取ると決まりました。
コロナでなくなっていたら、葬儀もなかったことを考えたら、
家族葬が出来て良かった。
ぎりぎりだったけど、葬儀会社を変えることが出来て良かった。
この後もしばらくはお知らせはしない。
地元にいない私は、きっと今後も弟にいろいろやってもらうことがあるはずで、
全て了承しました。
ありがとう。
遺骨になった母が帰ってきた実家に、長女と夫が一緒に泊まりまり、翌日帰る手配をしました。長男は告別式から直接帰宅。
私は片付けや手続きで数日残ることにしました。
父の祭壇に母の遺影と遺骨が並び、
夫婦二人が並びました。
ずっとおしどり夫婦だったけど、
こんなに早く母が亡くなったのは、やっぱり淋しがった父が連れて行っちゃったのかなと思います。
東京と札幌、遠いとはいえ、飛行機は一時間半で着くのだし、
なぜもっと頻回にここに来なかったかな、来れたよね。
同じことばかり考えてしまいます。
家族がいる間に、出来るだけ冷凍庫いっぱいの食材を食べようと
解凍したり焼いたり煮たり。
お弁当箱に入れるくらいの小さい魚や肉が出てきます。
ばあば、いただきます。
みんな食べちゃうね。
やがて長女と夫が帰ると、マンションはとっても静かで
何かしていないと気持ちが凍ってしまいそうでした。
なにかしないと。
なにかしないと。
思い出の品々、片づけをしよう。
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