第12話 葬儀の打ち合せばたばた
実家に帰ったら母が倒れていました。
救急搬送してから、4日目に亡くなりました。
一度自宅に帰った私ですが、一日置いて実家に戻ることになりました。
仕事を繰り上げ、飛行場に向かいました。
飛行機は羽田についたらとりあえず乗れる一番早い便を取ることにしました。
飛行機の待ち時間の間に翌日から一週間の間の仕事のキャンセルの連絡をつながる分だけ目いっぱいしました。
その間、母は病院の霊安室から会場へ移動。
結局弟が新しい葬儀会社の話を聞いて会員登録した日の翌日に母が亡くなりました。
こんなにバタバタしないで、もう少ししゆっくりといろいろ選びたかったという思いと、登録が間に合ったという思いが交差しました。
生前母は近所に住む叔母に
「長患いで子供たちに迷惑をかけたくない」と言っていたそうです。
私にも
「死ぬときはあっさりと、さっと逝きたいわ」と真顔で言っていました。
看護職をやっていて、人の死は本人の思う通りには中々ならない事をたくさん見てきました。早々あっさりは無理だと思っていました。
倒れてからたった4日。母は、本当にあっさりとこの世に別れを告げて父のもとに逝ってしまいました。
飛行場についてLINEを開けると
弟夫婦と葬儀会社とで話し合い中でした。
決めてしまっていいと何度か念押しをしましたが、
到着を待つということになりました。
父の時は、弟と母とで決めました。
ずいぶんと遅くなりましたが到着してから翌日の葬儀の打ち合せが始まりました。
その父の葬儀が終わってから、それまでも葬儀についていろいろ書いたり語っていた母。もっと具体的に自分の葬儀の時は、と、折に触れて話すようになりました。
母の葬儀は、個人の生前の意思を最大限汲んで行おうと弟と決めていました。
まさか母自身も、それから3カ月たたないうちに自身の葬儀があるとは思っていなかったと思います。
参列は子供たちの家族だけで。
お香典も辞退する。
父の時もそう決めていたのに、父と同じ苗字を持つ親族の従弟がやってきて
お通夜も告別式も全く落ち着かなかった母。
何でと怒っていました。
今回親戚には葬儀が終わるまでお知らせしないことに決めました。
地元に住む弟は、のちのちクレームが来ることもあるでしょうが、断固として家族葬にこだわりました。
院号もいらないと母は言っていました。
父の時は50年も働いてきたんだからちゃんとしたものとこだわった母でした。
ついた院号の意味、講話、字、全部が空虚に思えたのでしょう。
院号とか戒名はいらないが通るのかわからなかったけれど、希望を出したら院号なしで決まりました。
のちにお寺さんから、父の院号を教えてください、夫婦でつがいになる法名を考えますと連絡を頂きました。
弟と決めていたことは一つだけ。
特に檀家ではないので決まったお寺さんがあるわけではないので会社にお任せしますが、ここだけは頼まないで下さい、と、父の葬儀のお寺さんを外すことでした。
あそこ以外ならどこでもいい。
よくテレビのCMで流れる一日葬は、身寄りのない人、行き倒れの人、身元がわからない人の葬儀であって、家族葬をするなら一般的ではないと説明されました。
亡くなってから一日たたないと火葬もできないので、
お通夜は行うことにしました。
翌日告別式、火葬の流れも同様に。
お通夜の後の会食は弟からの希望で、とにかく温かいものを。
父の葬儀のあまりな食事にげんなりしていた弟はくりかえし同じことを言いました。
こうして遅い時間に打ち合せが終わりました。
打ち合せが終わった後、実家に喪服を取りに行き、
戻って改めて母の顔を見ました。
呼吸器をつけていたので、口が少し開いているのと
口の中の出血痕が気になりました。
痛かったかな。
今夜はろうそくとお線香を絶やさないように母の隣で過ごします。
弟夫婦は帰宅しました。
母の経歴や歴史を書いてと渡されたシートに色々思い出しながら目いっぱい書き込みました。明日のお通夜には家族も来ます。
Wi-Fiがあるので、スマホを見ながらゆるゆる一晩過ごしました。
亡骸になった母は冷たくて、体には四日間戦った跡があちこちに。
それから通夜までの時間、会場の小さな部屋で母と過ごし、母のことを思い返していました。
もし、亡くなった後にも魂が残っているなら、もう一度話がしたいから来てくれない?話せないなら、私にだけわかる合図を送ってほしいな。
夢の中でもいい、気配でもいいよ。
心の中で母が来てくれないかなと願っていました。
死後の世界があるのかないのかわかりません。
魂があるのかないのかわかりません。
霊感とか、全く無縁で過ごしてきました。
母は来てくれませんでした。
もう、父のところに早々と行っちゃったの?
遠くに住む長男は夫と長女に羽田で合流して一緒の飛行機でこちらに向かうそうです。お通夜には少し遅刻になる時間に到着するとラインが入っていました。
朝を迎えて当日打ち合せ。
午後部屋移動。
湯灌。一緒に体を洗って身支度整える。
棺に収まった母は、口の開きや顔もきれいにしてもらいました。
お通夜に来る前に弟に母の着物を頼んで、一緒にお棺に入れることにしました。
父が撮ってこれを使ってと言っていた遺影もきれいに収まりました。
終わった頃に弟一家が来ました。
姉弟がいなかったら、一人で見送るのかと思うと
一人っ子じゃなくてよかったと思いました。
こうして、親族友人などには一切知らせずに
子どもたち家族だけで家族葬を行います。
父の葬儀の時に体調が悪そうにしていた母でしたが、
涙を見せずに気丈に振舞っていると思っていました。
当事者になってわかったことがあります。
次から次へ、決め事がたくさんあり、打ち合わせや準備でゆっくり悲しんでる間もないのでした。
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