第2話 「娘さん、看護師さんとかですかね?」
実家に帰ると、母が倒れていました。
トイレのドアが開き、ゴミ箱がひっくり返っています。
夜にトイレに出だ後倒れたのかも。
少し血がついたパジャマが寝室に落ちてました。
転んで取り替えるか、洗うために台所に来たのか。
声をかけたら意識はあり、応えているけど私がわからない状態です。
ろれつが回らない。声が変。
脳梗塞かな。血栓飛んじゃったかな。
身体が冷え切っていて明らかな低体温です。
布団をかけて保温しながら、救急車の要請しました。
119。
「火事ですか?救急ですか?」
「救急車の要請です。お願いします。」
名前、生年月日、住所、連絡先と今の状態。
脈も弱い。
徐脈、低体温、低血圧、四肢の脱力。
呼名反応はあるけど、ろれつ回りません。
持病ありません、かかりつけ医も特にないです。
母はだるそうに眼を開けたり閉じたり。
救急隊より近所に住んでいる弟の方が早く着きました。
保険証や後期高齢者医療証を探します。
いつもの場所にない。いつものバックがない。
離れて一人で暮らす高齢者って、こんな感じでしょうか。
救急隊が到着しました。さすがプロ。
低体温、徐脈でAEDも用意しています。
使わずに搬送することになりました。
テキパキ移送。
「この布団、借りますね。」「どうぞ。」
特別な持病がない母。
認知症もなく、歩くのがフラフラでも介護保険の認定なんかまっぴらと言っていました。押し切られて介護認定の申請もしていませんでした。
2日くらいパジャマのままで台所に倒れていた様子です。
ああ、だから、独居高齢者の安否確認はいるのだと改めて思います。
弟が最後に会ったのは木曜日夜。
金曜日は忙しく遅くなったから寝てるかと寄らなかったと悔やんでいます。
失禁はしていません。むしろ脱水かもしれない。
札幌介護帰省なんて記事をアップしながら帰省しました。
母が倒れて、「娘の私」はぶっ飛んでどこかに行っちゃいました。
娘ではなく医療者になってる。
動揺もない、涙もない、我ながら痛いほど冷静でした。
弟の方が、しゅんとしています。
救急隊の人が、「娘さん、看護師さんとかですかね」、「はい、助産師です。」
不安になってシクシクした方が可愛げあるかもしれません。
一緒に救急車に乗って
「点滴入れたいですが、いいですか?」
「お願いします」
「あー、入らないな。」
(ショック状態だから血管出ないだろうな)
そんなことを考えました。
救急隊の方から、わかる範囲で書き込みお願いしますと渡されたシートに書き込んでいました。薬はどうしよう。
弟にお薬手帳の写メを送ってもらって、眼圧の点眼と骨粗しょう症の内服、眠剤を頓服で使っていることを書き込んでいました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます