実家に帰ったら母が倒れていた 看護師の娘の後悔

onemama

第1話 母が倒れていた

その日は、父が亡くなって一人になった母の様子見に、やっぱり高齢だし月に一回くらいは顔を見に行く予定の日だった。

羽田発千歳行きの朝一番に搭乗するため始発の電車に乗った。

2日前「行くから、よろしく」のメールに既読がつかずに気になっていた。

電話してみたが留守電になる。歯医者かなと思った。

千歳空港に着いた。到着メールにも反応がない。

日曜日で出かけないはずだけど。

最近、疲れたと言ってはソファに横になっていたから、寝てるかな。

実家のマンションに着いた。

玄関の新聞受けに北海道新聞が2つ入っている。

嫌だ。絶対何か起きている。

母は、毎日7時前には身支度を整え、朝食前にお茶を飲みながら新聞を全部飲む。

昨日は電話に出なかったのではなく、電話に出られなかったのだ。

新聞受けを見てから、頭の中でぐるぐる悪い予感しかしない。

ドアには鍵がかかっている。

早く、早く。鍵を開けるのももどかしい。

玄関を開けた。暗い。カーテンを引いたままだからだ。

玄関右手の母の寝室のドアが開いている。

次に左を見る。

リビング側の左。倒れたゴミ箱の奥に人の足が見える。

あれは、・・・・・・。

なんて脱ぎにくいブーツだ。

母が台所に仰向けに倒れていた。

「ばあば、どした!」

まぶたが腫れて顔が浮腫んでいる。

薄目を開けた。

意識はありそうだ。

転倒して骨折したせいで動けなかったか?

「痛い?どこか痛い?」

「いたくなぁい」

骨折はないみたいだ。

舌がもつれてる。

脳梗塞で倒れたか?

ゆっくり手が動く。

上体を起こしてみたが、ふにゃふにゃと力なく倒れこむ。

この台所の床に寝かせておけない。

隣の部屋のベッドか、リビングのソファまで運べるか?

支えてみた。近年痩せてきた母の体重は40キロないはずなのに何て重いんだ。

ベッドまで運ぶのを諦め、

ベッドの羽毛布団をリビングに敷き、母の脇を抱えて、布団まで引きずる。

その上からもう一枚羽毛布団を掛ける。

札幌の11月は夜間零下になる。マンションでなければ凍死だ。

でも、母はパジャマだし、ストーブは消えていたし、電気も消えていた。

体が冷え切っている。

脈が触れにくい。減弱で徐脈だ。

呼名反応はあるが、意識も弱い。


救急車を要請する電話を入れ、近所に住む弟にも電話する。

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