真夜中2時にトイレへいく

野林緑里

第1話

 目が覚めて時計をみると、針が2時をさそうとしていた。


 まだこんな時間か。眠いし、寒い。


 けれど、トイレに行かないといけない。


 そう思い、男はベッドからでるとトイレへ向かう。


 トイレは部屋を出て廊下をしばらく歩いていくと突き当たりにあった。


 ドアは古びているために動かすたびにギギッと奇妙な音を立てている。


 いつものことであったために気にすることもなく、男はそのドアをしめて鍵をかける。


 便器に座り、大きいほうを出し終えて、パンツをあげる。


 それからドアノブに手をのばして外へと出ようとした。しかし、ドアノブから突然男の手が離れていき、ドスンという音を立てながらそのまま便器に座り込んでしまった。


 それから男は動かない。


 ジャーっと水が流れる音がしばらく続いたかと思うと静まり返る。


 そのためにトイレのすぐ隣にある居間に立て掛けられた古びた掛け時計がボーンボーンとなりはじめる。


 その時計の針はちょうど2時を指していた。


 翌日の昼頃、男の家の前には警察車両がとまっている。


 何事かと近所の野次馬たちが集まっていた。


 そのことにも気に止めずに警察たちは昔ながらの日本家屋の建物へと入っていく。


 そこには動揺を隠せないでいる女性がおり、背後にはトイレがあった。


「朝おきたら、主人がいなくてトイレをみたら……」


 そこまでいって女性は泣きはじめる。


 さきほど駆けつけた刑事がトイレのなかに除くとこの家の主らしき男が額から血を流して息絶えている姿がたった。


 その額には指らしきものがのめりこんでいたのであった。


「あれほどいったのに!」


 女性が呟く。


「真夜中の2時にトイレへいってはならないとあれほどいったのに」


 そういって女性は嗚咽する。


「ああ、そういうわけですね」


 女性のことばに刑事は納得した。


 真夜中の2時にトイレへいってはならない。


 トイレへいったら、2時ちょうどに人差し指が飛んできて死ぬ。


 そんな呪いがこの村にあったからだ。


 だから、どんなに尿意を感じても村人は2時にトイレへいくことはなかった。



 されど、他所からやってきた女性のご主人はそのことを知りながらも行ってしまったのだ。


 なんと哀れなことかと刑事は思った。


「これは徹底しないといけないようですね。真夜中の2時にトイレへいかないように村全体に通達するように」


 刑事はそう命令した。


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真夜中2時にトイレへいく 野林緑里 @gswolf0718

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