潰す

大谷義一

ありがあるいてました

アリを潰しました。すみません。かくいう僕は反省してません。でも謝ります。誤ったことを謝ります。誤ったことを誤ってないと思ってることについても、誤ってると思うので謝りたい。でも、僕はそれを誤ってることだと思ってないんです。それについても……




 僕は習い事から帰ってきました。大体21時後半くらい。お母さんはおかずの中華料理と魚を用意してくれていて、茶の間に座ってそれを食べました。いい感じの塩加減でパクっと食べれました。

 ちょっと足りなかったんで、買ってきてあったマルタイの棒ラーメンを茹でて食べようと思ったんですけど、その前にお風呂入れって言われて、まぁその後で食べればいいかなと思って風呂場に行ったんです。

 風呂場に行く最中、お母さんに「風呂場にちっちゃいありさんいるよ」って言われて。どうやら外から迷い込んだらしく、水を怖がってタイルの上でぐるぐる周ってるちっちゃいありさんがいるらしいのです。


 僕はお風呂場に入り、ありさんを探しました。幸いすぐに見つかりました。確かにかわいいと思わせるような、2mmほどの体でした。ちょこちょこと触覚を伸ばしては、周りの色々な事に興味を示していました。

 それを見て、僕にある衝動が湧いてきました。このありを潰してやりたいと。実は僕、お母さんには少し不満を持っていて。誤解しないでほしいのは、お母さんには別に何の問題もないってこと。虐待とか受けてる訳でもないし、かといって甘やかされ過ぎてる訳でもない。いいお母さんの息子やらせてもらってるんです。

 僕の気に触ることが1つあると、苛立ちます。でも、僕は育ちや学校の立位置の都合上、苛立ちを隠すのが得意なんです。我慢するのがもの凄く上手。そんな自分が嫌なんです。なんでもかんでも我慢する自分が嫌。だからというのか、僕はアリを潰したくなったんです。母さんがかわいいと言ったアリを。

 この行動は、ある意味僕にとって必要な行動だったと潰した後実感しました。家に風呂好きな猫が居なくて良かったです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

潰す 大谷義一 @koogy

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ