『山の中にある家』 下


 しかし、やましんさんは、気がついたのです。


 これは、普通の年表ではあり得ないと。


 それは、旧くなればなるほど、明白になります。


 『なんだこりゃあ。人類が最初に文字🌀を書いた日、とな? 地面に、まるまってるだけの絵だよな。しかも、写真つき。だ。いかさまだな、こりゃ。ぼくの聴いたところでは、人類最初のきちんとした文字は、ヒエログリフか、楔がた文字か、甲骨文字か、が常識で、いちぶ、氷河時代に32種類の記号が使われていたという研究などもあるらしいけど、それでも、古くて4万年前だとか。超古代文字なんていう、ちょっとオカルトか、宗教的な感じの研究も、たしかにあったけど、これは、桁が違いますな。なになに、『ネアンデルタール人が最初行ったもの。集落に同居していたホモサピエンスが、それを受け継いだのである。まだ、文字とは言えないが、その後の流れから遡ると、これが源流である。実物は、『真の都』博物館にある。地球史カテゴリーK .488。A Dur。3月2日。』モーツァルトさんか? なーんて。なんだろう。いやいや、まてまて、もし、人類の誕生を消したら、歴史がなくなるかな。そうりゃあ、なんか、刺激的。ダブルクリックしてみる?』


 やましんは、最近かなり、なげやりで、ぼけぎみです。


 その危険度は、いまや、核爆弾の比ではなくなっていました。



         🌞



 『あらあ。ひとり、はまってます。主任さん。ほら。これ。』 

  

 地球次元監理局である。


 『なになに。おあ。これは、やましん。たしか、5日前に、別の、入らずの藪にはまって、『かくれ世界』に転位したばかり。ボスから、しばらく、ほっとけ、と指示が出た。なんと、また、はまったか。』


 『あるいみ、天才的です。』 


 『こやつ、ヒストリー管理端末を見てるぞ、なんで、そんなもんが、稼働した?』


 『いやあ。たしか、メンテナンス中でしたが、なんでだろ。なにかの間違いですね。超能力かも。』


 『ばか。間違いですむか。こやつ、人類の誕生を消そうとしてるぞ。止めろ、停止。緊急停止。』


        🍈



 『ふうん。やっちゃおうかな。どうせ、ゲームに違いない。オカルト的思考を無視したら、他に可能性はないな。なら、どっちにしようかな。

 


 『ホモサピエンスが、種として確立したと判断された。』



 これにしようか。


 いやあ、あいまいだね。


 『地球の誕生』


 こいつを、消去しますか。ふふふ。楽しいなあ。』




  ぶち。



 『あら? 消えた❗』



 そこには、抜いた、コンセントをぐるぐる振り回す、誰かが立っていた。


 頭は、黒子スタイルである。



 『おいたは、だめです。』



 『あら、その声は……』



 『こほん。もう、オウチに帰りなさい。あなたは、お外に出すのは、やはり、危険すぎる。』



 そう、聞いた覚えのある声がしたとたん、やましんは、空間をまた越えたのです。



        🍏



 そこは、大川の流れから外れた、昔の河川じきでした。


 お空は、いつもより、暗いようで、お星さまが沢山見えています。


 市街地の明かりが、ちょっと少ないようでした。


 『ああ、たしか、この藪の中に入ったら、足をとられたような。』


 面積はちょっとしかないが、こんもりと盛り上がった、小さな森があるのです。


 地元では、古くから、禁足地とされていたのですが、最近は、あまり気にされなくなっていて、まして、他所の地域から来たやましんは、まったく知らなかったのです。



 『あらら、せっかく、故郷に帰っていたのに。いくらか、歴史が変だったけどなあ。やれやれ、帰ってきたのか。なんだあ。』



 あの城下町や、その人々が、その後、どうなったのか、さっぱりわからない。


 やましんは、無料駐車場に止めていた、自家用車で、自宅に帰ったのです。


 やたら、あちこち、何時もにまして、ほこりだらけになっているのが、気になりました。


 でも、電気や水道は、いつものように来ていたのです。


 壁の電波時計を見ると、なんだか、三ヶ月くらい、ずれています。


 で、テレビをつけたら、丁度、ニュースをやっていたのです。


 『みなさん。我が国は、現在、ミサイル攻撃を受けています。落ち着いて、出来るだけ、頑丈なところに、避難するか、建物の、ガラス窓などない場所に隠れて身を伏せてください。ミサイルは、五分足らずで、着弾します。』


 やましんは、つぶやきました。


 『あらま? 帰らないほうが、よかったかな。やはり、人類は、消去しとくべきでしたか。あれは、たんに、他所の世界なのか?』



        🍑


            おしまい

 





 

 


 


 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『山の中にある家』 やましん(テンパー) @yamashin-2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る