修学旅行で彼女とヤろうという約束をしてしまい、ドキドキが止まらないんだが⁉

さばりん

修学旅行での思い出

『先生の点呼終わったら、私の部屋に来て』


 修学旅行三日目の夜。

 俺、高橋光世たかはしこうせいは、彼女である三島篤子みしまあつこからラインのメッセージで呼び出された。

 ついに来たかと、俺は息を呑む。


 遡ること一週間前、俺と篤子は、明後日に控えた修学旅行の話で盛り上がっていた。


「それで、それで! 最後は夕日の沈むオーシャンブルーの海を眺めながら写真撮りたいの!」

「いいなそれ! 南の島でしか味わえない特別感みたいなのがあって!」

「でしょ⁉ それで最後の夜は、二人で一緒に寝るの」

「えっ⁉ で、出来るかな……」

「光世は私と一緒に寝たくないの?」

「そりゃ一緒に寝たいよ。何なら、毎晩一緒に寝たいと思ってるぐらいだ」

「もう……それは流石に欲張り過ぎ」


 そう言いつつも、毎晩一緒に寝たいと言ってくれたのが嬉かったのか、篤子は満更でもない様子でニヤついている。


「三泊するわけだし、一日目と二日目の夜は友達と遊んで、最終日に一緒に寝るって言うのはどう?」

「うん、それなら俺も合わせられると思うよ」

「じゃあ決定! 同じ部屋の子には遠回しに伝えておいて、事前に別の部屋に移動してもらっておくから、三日目の夜は……楽しもうね?」

「たっ……楽しむって言ったって、添い寝するだけだろ?」

「本当に添い寝だけでいいの?」

「……えっ?」


 篤子の少々寂しそうな表情を見て、俺は唖然としてしまう。


「えと……いいのか?」


 言葉足らずに俺が尋ねると、篤子はコクリと頷いた。


「うん、光世なら、いいよ……」


 とまあ、そんな感じで、俺は篤子とそう言う行為を行うかもしれないという曖昧な口約束をしてしまったのだ。

 緊張で胸の鼓動がドクン、ドクンと鳴り響く。

 とはいえ、まずは篤子の部屋まで行かない事には何も始まらない。

 俺は勇気を振り絞って自分の部屋を後にして、廊下へと出る。

 見張りの教師の姿はなく、そのまま廊下を歩いて行き、目立たぬよう室内の階段ではなく外にある非常階段を使って篤子の部屋がある女子達の階層へと向かって行く。

 非常階段の扉を開けると、廊下は静寂に包まれていて、物音ひとつ聞こえない。

 俺は忍び足で歩いて行き、篤子が泊っている部屋の前へとたどり着く。

 事前の取り決め通り、扉を軽くコンコンっと二回ノックすると、間もなくしてガチャリと扉の施錠が開き、篤子が顔を表した。


「ごめん、お待たせ」

「入って」

「うん」


 篤子に引っ張られるようにして、急ぎ足で部屋へと入り、扉を閉めると、ようやく第一ミッションをクリアして、ほっと胸を撫で下ろす。


「ふぅっ……心臓バクバクだったわ」

「お疲れさま。来てくれてありがとうね」

「どういたしまして。篤子の為から、これぐらいのリスクは当然だよ」

「あ、ありがとう……」


 篤子は持参したモコモコした寝間着姿に身を包んでおり、緊張しているのか挙動不審だ。


「とりあえず、座っていいか?」

「あっ、うん。どうぞ」


 俺が奥のベッドに腰かけると、篤子もそのままこちらへと向かってきて、隣へと腰かけた。

 緊張感のある沈黙が室内を支配する。

 どう切り出そうか悩んでいると、俺の右肩に重みを感じた。

 見れば、篤子が身体を倒し、俺の肩に頭をくっつけてきている。

 俺はドキっとしつつも、勇気を振り絞って、篤子の肩に手を回して、さらにこちらへ抱き寄せた。


「っ……!!」


 声にならない声を上げる篤子。

 彼女の身体は温かいものの、緊張からか強張っているように見えた。

 俺は彼女の力を抜くため、必死に別の話題を口にする。


「修学旅行、今日まですっげぇ楽しかったな!」

「う、うん……そうだね」

「篤子はどこが一番良かった?」

「えっと……やっぱり水族館かな」

「水族館凄かった。特に、あの大パノラマの水槽は優雅に魚たちが泳いでて、圧倒されたよね」

「そうだね。本当におっきかった」

「イルカショーも迫力満点だったし」

「……うん、凄かった」

「……」

「……」


 作戦は失敗に終わり、二人の間にまたもや無音の時間が訪れてしまう。

 どうやら、篤子は相当神経質になっているようだ。

 俺は彼女を落ち着かせるため、優しい声で尋ねる。


「怖いなら、別に一緒に寝るだけでいいんだぞ?」


 俺がそう言うと、篤子はびくっと体を震わせた。


「だ、大丈夫……ちゃんと覚悟は決めてきたから」

「別にそこまで無理する必要ないよ。確かに俺は、篤子とそう言う行為をしたいとは思ってる。でも、今日の機会を逃したら、一生できないってわけでもないんだし、俺たちは俺たちなりにゆっくり行けばいいと思ってるよ」

「……ありがと光世。でも、本当に平気だから。だから……ね?」


 そう言って、俺の手を握ってきた篤子は、そのまま上目遣いで俺を見上げてくる。

 篤子のとろんとした表情に当てられ、俺は思わず生唾を飲み込んでしまう。

 お互いに見つめ合い、どちらからともなく目を閉じて、ゆっくりと顔を近づけていき、唇を重ねた。

 最初はついばむ程度の優しいキス。

 だが、優子が手を俺の背中に回してさらに押し付ける力を強めてきた途端、俺も我慢できなくなってしまう。

 愛を確かめ合うように、キスは段々とエスカレートしていき、気づけば求めあうようにして舌を絡め合いながら、俺は篤子をベッドの上に押し倒して、抱きしめ合いながらぬくもりを感じ合っていく。

 それから俺たちは、真夜中の初めての夜を、修学旅行という特別な日に、生涯忘れないであろう濃密な記憶を刻み込んでいくのであった。

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修学旅行で彼女とヤろうという約束をしてしまい、ドキドキが止まらないんだが⁉ さばりん @c_sabarin

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