猫の手を借りたら労働基準監督署が来た
鈴木怜
猫の手を借りたら労働基準監督署が来た
「すいませーん、労働基準監督署の者ですー」
「はい、なぁんでございましょ」
こちとらただの魚屋である。昔ながらの家と店が一つになっている魚屋だ。何も悪いことはしていないはずだが。
「いやー、あのですねー、猫を働かせたとのことで給料を要求する猫さんから電話がありまして」
「待っとくれ、いろいろ待っとくれ!」
何のことやらさっぱりだった。猫にはそんなことをさせたつもりもない。そもそも人間は猫と会話もできないのだ。
……実際のところ、飼い猫はいる。いるのだが、働かせたことなどなかった。むしろ店先に出てきて困ってるくらいなのだから。
「ではではー、順を追ってー、説明しますねー」
といって、その労働基準監督署の人間は書類を取り出した。
「おたくの看板猫さんからのタレコミですー。『
「……言われてみれば確かにそうですけっども」
「えーつまりー、それは我輩の手を借りたからであって、我輩の存在によるところも大きいのは明らかなので給料をくれと、そう言いたいらしいですー、具体的にはもっと飯寄越せ、だとかなんとかー」
思い浮かぶのは飼い猫の顔ばかり。
「お前、話せたんか……」
結局のところ一番衝撃だったのはそこである。
「要約するとー、ネコと和解せよ、というやつですー」
「ハナから猫と敵対しとりゃせんですがね!?」
とにかく、今夜はいつもよりご飯を多めにしてやろう。そう思わずにはいられなかった。
猫の手を借りたら労働基準監督署が来た 鈴木怜 @Day_of_Pleasure
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