学生トーク「猫の手を借りた結果編」

山田 武

学生トーク「猫の手を借りた結果編」



「猫の手を借りた結果……」


「何もなかったと」


「早い! 待って、もう少し話を聞いてからにしてくれよ!」


「いつにもましてバカなことを言ったからつい……いやまあ、比喩だったとしてもなかなか無いだろう」


 猫の手も借りたい、それは誰でもいいから手伝ってほしいと思えるほどに忙しいという状況を意味する言葉だ。


 そのことから、友人の話すそれが誰かに協力を求めた話の顛末についてだと分かった。

 ──だからこそ、彼は何もない……そう告げたのだ。


「お前にそんな、急を要するような状況あり得ないだろう。せいぜい、宿題をやり忘れて困るぐらいだが──」


「失礼な、俺が宿題を貰った直後にやり始める男だと知っての狼藉か?」


「狼藉って……いや、だから言ってるんだろう? お前が困ることなんてないって」


「お前……!」


「人のことを狼藉者呼ばわりしておいて、その反応をされてもな……全然嬉しくない」


 冷めた目を友人へ向ける。

 すると慌てた様子で、会話を戻そうとしてきた。


「そ、それよりほら! 俺がどうしてこの話題を振ってきたか、その本当の理由が知りたいんじゃ──」


「興味ない」


「辛辣! いや、もう少しぐらい……ああもう、じゃあ勝手に言うからな!」


「…………」


「スマホ見てても言うからな! 昨日、スマホで動画を見てたら、猫の肉球が──」


「……マジでどうでもいいな」


 猫の手を借りて、ぷにぷにの肉球を触りたい……そう熱く語る友人に対し、なんとも言えない感情を覚えてしまう。


 こんな状況にこそ、ある意味猫の手も借りたくなるのではと思うのだった。


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