第2話 開始国家


 それから数分が経ち。

 近年の優秀なAI様であるエルルは、あの後すぐさま私がろくに話を聞いていないことを察すると、「何かあったら呼んでくださいね!」なんて言い残して去っていった…………のだが、今は再び私の前へとやってきていた。


「それで、エルルのおすすめはないの?」

「おすすめですか!?そうは言われましても……私はあくまで皆様をサポートするだけの存在ですし……」


『無茶振るな』

『シュカ、エルル好きすぎるだろ』


 いやいや、まあ割と好きだけど…………なんて話は置いておいて、今は所属する国とやらを選んでいる最中。文章による軽い説明があったが、それだけでは判断がどうにも……ってことで、エルルを召喚したというわけだ。


 初期に選べる国は、七つ。といってもVWMOには全部で七つの国しかないというわけではなく、色々やると国籍を変更したり、なんなら多くのプレイヤーで集まれば自らの国を発起することも可能らしいが。

 そしてその七つの国だが、辺境の小国なんかは含まれていない。どれも大陸の大部分を支配する大国で、今ではプレイヤーにより格差がもたらされているものの、サービス開始当初はほとんど差のないものだったそうだ。


「んー。じゃあ、どの国がどうとかは?」

「それなら詳しく説明…………もできますが、軽くにしておきますか?」


『馬鹿にされてら』

『AIは賢いなあ』


 む。むむむ。

 いや、さっき私が話聞いてなかったのが原因だから何も言い返せないんだけど…………


「軽くでお願いします…………」


『www』

『えらい』


 まあ、しょうがないよね。


「わかりましたっ!ええと、それじゃあ一番栄えてる国から紹介していきますね。

 一つ目は、レイムギル王国。大陸の中央に位置する国で、プレイヤーによる活動ももっとも盛んな国です。

 二つ目は、シャーマル帝国。どの国よりも領土が一番大きくて、資源が潤沢にある国ですね。

 三つめは──────」

「待った待った!」


 エルルの解説に慌ててストップをかける私。

 私が知りたいのはそんな情報ではなくて、もっと内情の話なのだ。


「んーと…………そうじゃなくて…………なんかまったりプレイできそうな国はない?」

「まったりですか?それなら…………候補は二つありますね」

「ほー?」

「一つ目はシャーマル帝国です。とにかく国土が広く、しかもそのほとんどがビギナー向けなんですよ。ただそれが理由で新規の方がとにかく多いのと、将来性は低めなので特にやり込むような方は少ないです。なので、技術や文化はそこまで尖るものはないですね。

 そして二つ目が…………レヴィタン神国です」

「神国?」

「はい。レヴィタンという神様を信仰している宗教がそのまま国にまで発展したという背景の国なんですけど、どうやらその設定がウケなかったようで、シンプルにプレイヤーがあまりいませんね。なので、緩く自分のペースでという意味なら候補にあがるかと思います!」

「なるほど…………」


『神国はマジで過疎ってるらしい』

『帝国でいいんじゃね』


 帝国か神国か。

 その二択ならば、私は…………


「よし、神国にしよ」


『は?』

『逆張り』

『王国は?』


 いやいや、せっかくやるなら奇抜な方が面白そうじゃない?

 というか、素直にMMOにあんま興味ないからそういうとこに面白さを求めていきたい…………


「レヴィタン神国でいいんですね?」

「おっけー」

「それじゃあ、良きVWMOライフをっ!」


『待て』

『マジでやめとけ』

『おい』


 未だにグチグチ言うリスナーを置き去りに、私はレヴィタン神国へとその身を転送されたのだった。

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Virtual World Magical Origin @YA07

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