ねこ~ねこ~にゃーにゃー ねこにゃーにゃー

暗黒騎士ハイダークネス

第1話



 猫の手を借りた結果。


 思いっきり引っかかれた。痛い・・・


 野良猫の手をいきなり掴んだのがいけなかったのだろうか?




 まずは見ず知らずの人が仲良くしようとする行為・・・そう、賄賂を贈ろう。

 298円で近くのコンビニで買ってきた猫缶だ。

 初めのうちは寄ってこなかった。

 ここは量で攻めようと3つ置いてみた。

 ドンッと置いたのがいけなかったのか、警戒して距離が離れた。


「・・・」「・・・」


 両者無言のにらみ合い。


「ニャァー」


 猫の鳴き真似をしたら、逃げられた・・・ちょっと悲しい、いや、だいぶ悲しい。

 今日はもう無理そうな気がした。

 せっかく封を切ったんだ・・・俺がいなくなれば、きっと、食べるよな??





 朝、様子を見に行ったら、そこに猫はいて、こちらに気づくと。

 お辞儀をしたように頭を下げ「にゃ」とひと鳴きした後にどこかへと走り去っていった。

 かわいかったな・・・ゴミはちゃんとうちに持って帰るか。




「お前は自由でいいよな」


 最近は近くによって、ご飯を食べてくれるようになった。


「にゃ」


「・・・お前、うちにくるか?」


 もう野良猫というより、この猫1匹を見ていた。

 でも、猫からの返答はいつも変わらなかった。

 「にゃ」と短い鳴き声をひと鳴きして、どこかへと消えていった。


「またフラれたか・・・さ~て、俺も飯作るか」




 ある日の夜、いつもとは違うことが起こった。


「ニャーニャー」


 いつもこんな時間に飯をくれなんて鳴き声をしなかったんだが、玄関を開けるとそこに血まみれのあいつが倒れていた。


「おい?!どうしたんだよ・・・」


「ニャー」


 そうひと鳴きして、前足で小さな子猫をこちらに差し出し、倒れた。


 一瞬その子猫を見た後に、車のカギと、タオルで包んだ子猫と親猫を連れて、車に乗り込んだ。





 動物病院に着いたときにはその猫の体温は低くなっていた。


 獣医からは一言「お亡くなりになっています」




 獣医さんに子猫の育て方を聞いて、帰宅した。


「あいつは自分の家族がいたから、俺のところには来なかったんだな・・・」


「みゃーみゃー」


 獣医さんからおすすめされたミルクの用意をして、子猫に飲ませる。


 託されたら、そりゃ育てないわけないだろう。






 獣医さんにおすすめされたとおりに処置したり、予防接種したりしてよかったと、この数年思わない日はない。


「ニャァー」


 俺の家のドアの前でまたこの前と違う雌猫が鳴いていた。


「ニャー!」


 逞しく育ったうちの猫が鳴き返す。


「お前、すごいわ」


 玄関を開けてやると、その雌猫と一緒にどっか走り去っていく。


「夜までには帰って来いよ~」


 お前の息子は・・・立派に成長したよ・・・いや、俺だってまだ結婚してないのにあいつやばいわ。


 玄関に立て掛けてあるあいつの写真に猫缶を置いて、また今日も仕事に行くのであった。

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