うっちゃい

白川津 中々

うるさいうるさいみたいな事言ってる歌が流行った。

内容はともかくとして、まぁこういうアナーキーというか、排他的なものは定期的に話題にはなるなーなんて何となく思っていたら、ある日が子供「うるちゃいうるちゃい〜♪」と口ずさんでいて背筋が凍った。これまでPTAだの日教組だのが「子供に悪影響がありまぁす!」なんて言ってるのを鼻で笑っていたのだが、いざ我が子の事になると途端に心配が増す。しかし、さりとて楽しげに歌う子供に対して「いけませんよバカ!」などといえぬ。さて、どうしたものかと思案していると、名案が閃いた。



「うるちゃくな〜いうるちゃくな〜い♪」



そう、真逆の言葉をエイトビートに乗せて上書きしてやればいいのだ。これにより子供はうるちゃいからうるちゃくないへと進化し、清く正しく大人になっていくに違いないと俺は確信したのであった(大人はみんな汚いんだけどね)。




「うるちゃいうるちゃい〜♪ 」


「うるちゃくな〜いうるちゃくな〜い♪」


「うるちゃいうるちゃい〜♪ 」


「うるちゃくな〜いうるちゃくな〜い♪」




まるでビーフのように連なるうるちゃい&うるちゃくない。なんだこれ。ちょっと楽しいなんて思っていた矢先、最強のバランサーが動く。




「あ〜〜もううっさいからやめてくんないそれぇ!?」


「……はい。すみませんでした」



妻だ。妻が怒り、俺と子の間に介入してきたのだ。これはしょげざるを得なく、今日はもう、風呂入って寝ようと思った。


だが、その時の事である。



「あ〜〜もっさっいからやめてんんないそれ!?」


「……」



父親としての威厳が、音を立てて崩れ去っていく瞬間であった。

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