第15話 恋する九尾の妖狐
「俺、はじめてだ。こんな気持ち……」
三毛猫シャルルがコタツでごろごろしながらいう。
「おぬし、とうとう白状する気になったかニャー?」
「今まで、俺に群がる女を数多みてきたが、
『恋バナですね~ボクも混ぜてほしい』
ふわっとハンガーをすり抜けコタツに舞い降りた。
「着物くん、聞いていたのか……。まあ、良いだろう」
『それじゃあ、わたくしも~微力ながらアドバイスできますわョ』
サラ人形も参戦しようとしたら
「あ、いま男子会なので……」とやんわり断られた。
「……」
「だから、妖狐の力でゲットすればいいニャー。一樺もまんざらでもなさそうだぞ。メンクイっぽいし」
煮干しを食べ、手をペロペロなめながらシャルルはいう。
「そんな力を使ってまで落としたくない。でも、わからないんだ。俺、異常にモテるから口説いたことない、どうやって女子を口説くのだ⁉ どうしたら振り向いてくれる? 教えてくれっ」
金髪イケメン碧眼狐男は情けない顔でシャルルに懇願する。
『若いですな……フッ』
「コンコン、べしゃり着物くんよりは若くないぞ、俺」
「僕は元・猫だから、猫時代からメス猫にモテモテ。口説いたことない。でも早くしないと一樺は他の奴と結婚しちゃうよ、ごくごく普通の人間とね」
猫目で意地悪そうに笑う。
「!」
「そ、そうか、普通の人間……。俺、普通の人間じゃないな。
『なにを恐れているのですか? 社はなくとも
着物くんは着物を大きく振って話す。
「だって、俺は……おおむかし、大罪を犯してしまった。一樺を好きになる資格なんてないのかもしれない……」
九十九は少し翳のある顔をした。
「……」
すると、シャルルは今まで見たことのないような目つきで言う。
「―でも、僕は、九十九さんが全盛期の
『なんと! 九十九さまに
着物くんは驚く。遮るようにシャルルはいう。
「あのころの九十九さんて、大妖怪で、モテて、目がギラギラして、俺様で、強くて、傲慢で、大っ嫌いだった」
「……」
聞きたくないのか九十九の顔が引きつる。
「でも……今の九十九さんの方が好きだニャー」
俯いていた九十九は顔を上げ少し表情が和らいだ。
「シャルル……ありがとう」
「それに、聖獣村の
「ああ、そうなんだが……でも……自信ないな。俺って一樺にとっては、顔だけの金髪妖狐男だ。」
『九十九さま、当たって砕けろ、ですぞ。その上でどのような道を選ぶかは一樺さん次第じゃないですかな?』
「着物くんもいいこと言う」
「九十九さんは恋愛初心者なの? 着物くんの言葉はフツーの内容だニャー」
シャルルは深いため息をつく。
「それでも心に響いたよ。アドバイスありがとう。コンコン、お礼に着てあげる」
『!』
九十九は着物くんを羽織った。
「驚いた、意外といいな。この着物しっくりくる」
『うう……本当に身に余る光栄でございます。恐悦至極の思いです。亡くなった職人さんもさぞ喜んでいることでしょう。くぅ~』
「質の良い
『今度こそ、売れたら本望でございます。お世話になりました!』
さて、妖狐がとうとう告白しましたね。次の依頼は誰かな。
Case4 おしゃべりな着物くん
……つづく。
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