第14話 花火と恋のはじまり
狭間も日が暮れ、夕闇が辺りをつつむ。すると付喪神つき家具が売り切れるのを見計らったように、シャルルが戻ってきた。
「僕も花火みる~」
台車や荷物も片付けて、花火がきれいに見える場所まで歩くことにした。
「
不思議そうに
「細かいことは聞かないニャー」
「花火まで時間あるから、屋台で食べ歩きしようか。福利厚生だ、金なら出す」
「ごちそうになります!」
近くの屋台でたこ焼き、焼きとうもろこしを近くの公園でベンチ座って食べる。
「これ美味しい。人間界のお祭りと変わらないのね。でもわたし半獣さんは見たことあったけど、今回、初めて鬼を見たわ。意外と角があるだけで普通なのね」
「左様、大陸人と変わらないだろう。実は鬼は大陸から来たって話だぞ~モグモグ」
九十九はミニカステラを頬張る。
「へぇー」
「一樺は夏休み中、毎日バイトばかりでつまらなくないのか?」
シャルルが甘栗を食べながら聞く。
「全然! すごく楽しいよ。ここでインテリアのことを考えているだけで一日がすぐ終わっちゃう。家にいても、母はお見合い話を進めるだけだから~。ほら
「!」
「え? な……九十九さん⁉」
「コンコン、なんだ?」
「いや、だって、九十九さん、びっくりした顔していたから……。
「いや俺、妖狐。――なんでもない、気にするな」
「?」
ヒュゥゥゥゥ……ド―――ン
パ―――ン
「あっ花火」
「きれいだニャ!」
「……」
うちわを持って「たまやー」と叫ぶ九十九。
「なにそれ?」不思議そうに一樺は聞いた。
「最近は言わないのか……」
(わたしって今、妖狐さまと、化け猫と三人(?)で花火を観ているのね。今年の夏はなんだかんだ、楽しい夏休みだったな……)
狭間で花火を観た後、一樺は九十九と三毛猫シャルルに港町の家の前まで送ってもらった。
「家までありがとうございます。じゃあ、また明日」
「一樺……」
九十九が声をかける。
「え?」
「もし、一樺さえよければ、ここに就職してくれ。――きみは大事な戦力だ」
低く落ち着いているが、すがるような、いつもと違う声音だった。薄暗い街灯の下に立つ九十九は、狐のお面を斜めにかぶったまま、口元だけが見えるが、表情はわからない。
夏の終わりの気配、生温い風が吹く。高校最後の夏休み。これから、一樺の進路が、将来が決まっていくのだ。
「……分かりました。考えておきます」
***
「俺、はじめてだ。こんな気持ち」
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