第10話 瓶の中の手紙
「おはようございます。九十九さん。今、お掃除中ですか?」
「おはよう。一樺さん。今度、
「狭間で夏祭り……本当ですか? 素敵ですね」
一樺はパッと目を輝かせた。
「じゃあ、わたし看板作りますね! 今度こそ大きく目立って、お洒落な化け猫と
すると九十九は顔を曇らせる。
「たしかに目立つけど、別の意味で……。ええい、俺が傷つくじゃないかっ」
「?」
「――ところで、
一樺はあれから気になっていた。九十九は小さなキッチンで優雅に紅茶を入れながらいう。
「……ああ、あれね。大した霊じゃなかったから、手紙は燃やしたぞ」
「ええっ。手紙を燃やして大丈夫だったの? 呪いとか、悪霊とかだったら大変じゃないですか」
一樺は心配そうにいう。
「何を言う、俺、狭間に引きこもってはいるが、半妖にして、九尾もある大妖怪だぞ。ああ……ほら、海坊主の海人さんに調査報告書はもうすでに書いておいた。だから一樺は
九十九は店内の奥の部屋に置いてあった巻物を一樺に渡す。
「はい。行ってきます」
一樺は巻物をしっかり握ってから、店をあとにした。
美少年シャルルが一樺の後ろ姿を見送りながら、九十九を猫目でチラリと見ていう。
「瓶に入った手紙のこと、言わなくていいの? あの手紙の持ち主は……」
「ああ……」
「一樺さんに甘いな。やっぱり九十九さんは―」
「あーコンコン、さあシャルル、紅茶と、どら焼きどうぞ」
―――手紙に書かれた内容は
『警告! 港に住む女子たち。騙されないで! 船乗り男に気を付けて! 大ぼら吹き男! 詐欺師! 女の敵! 許すまじ! 見つけたら賞金差し上げます!』
「百年前なのに、凄まじい怨念のこもった悪霊手紙だったから、俺が苦労してやっとのことで燃やしたら瓶は割れてしまった。こわい、こわい、慌てて別の瓶に悪霊を封じ込めた。取り憑かれないうちに一樺さんに内緒で早く
九十九は思い出すだけで顔が蒼くなりブルブル震えた。
「
美少年シャルルは呆れた。
さてさて、次はどんな依頼がくるかな。
Case2 大ほら貝
Case3 瓶の中の手紙
……つづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます