随所に見られる(隠された)構成や展開の巧さ

 Kindle版の方で発見して読了。「こういう作品ないかな?」と思っている中、まさに探しているものと出会えた感じ。

 Kindle storeのレビューで言われていた「アラサーのための少女マンガ」といった喩えが言い得て妙というか、まさに本作を一言で表すとそのような作品だった。

 どうしても私自身が書き手なので作り手としての視点が入ってしまうのだけど、良くも悪くも飽きっぽく、早く物語を展開していかないと読者が離れていってしまうネット小説の世界で、物語をいかにハイテンポで進めていくかの計算と工夫が随所に見られる。

 代表的なものは序盤で主人公の美咲が処女をこじらせると物語の展開に時間がかかるので、あえて最初に「呑んだ勢いでヤってしまいました」という展開を作ったところ。
とても大胆に無駄をバッサリと切ったという事だ。その視点は無かった。お見事の一言である。

 また、美咲の恋愛偏差値を中学生か小学生並みにあえて設定した事によって、彼女の視点だと大ピンチでも、読者は比較的安心して見られる(実はそこまで大ピンチでもなく、美咲が低すぎる恋愛偏差値をこじらせているだけだと分析出来るようになっている)ところもいい。巧くライトノベルならではの「都合の良さ」を使いこなしている感があった。

 最近だとマンガの「瓜を破る」が話題になってきている事もあり、こういった高齢処女を扱うアプローチの需要はどの分野であれ潜在的に結構あるのではないかと思われる。

 一番幸せであろうところで物語を終わらせたのもいい。ミロのヴィーナス効果で、読者の一人一人が思い思いの幸せな未来を思い描くに違いない。