第14話 転生術。

リブートストーリーに着いたコーラル達。

ヘマタイトは剣を抜くとその剣はサルバンでスカロがミチトに作ってもらっていた軽神鉄のロングソードだった。


「スカロ様の剣ね」

「ええ、大叔母様こそ、トウテまで行って「愛の証」ですか?良くやります。手記に残されていました。大叔母様はアクィ様に憧れて徹底的にアクィ様の剣に合わせた訓練をしたと…」


そう言いながら距離を測る2人はゾルアの「始め!」の掛け声で動く。

コーラルは前に出ると素早い突きを放つ。

ヘマタイトはそれを回避するが直後に振り抜かれたハイキックが頭部に炸裂をする。


ヘマタイトは「がっ!?」と言いながら何とか体勢を整えようとするがコーラルは「甘いわ!」と言い、そのまま繰り出されるラッシュにヘマタイトは劣勢を強いられ、苦し紛れに出したファイヤーボールなども斬り伏せられた。

そして再び蹴り飛ばされたヘマタイトにコーラルが「もう終わり?」と聞く。

ヘマタイトは「くっ…強い…。まだです!」と言いながら取り出したのは青と黒のネックレスで黒を選んで首にかけた。


「まさか…!?」

「そのまさかですよ!転生術!!」


ヘマタイトの身体が光ると次の瞬間、ヘマタイトの髪は赤から黒になりやや長身の男になった。その男はコーラルには見覚えがあった。


「オブシダン…」

「やあ、姉様」

ヘマタイトの変身した姿は弟オブシダンだった。

そのオブシダンはコーラルを見て姉だと認識をした。


「あなた記憶があるの?」

「ええ、その為に遺髪でネックレスを作っておいたからね。姉様だってイブ様の遺髪で転生術をしたからラージポットまでイブとして旅ができましたよね?それに後発の転生術で姉様が使ってもらったものより優秀です」


コーラルは相手がオブシダンならば聞きたいことがあった。


「何故スティエットの教えやサルバンの教えを忘れて力こそ正義なんて事を子孫に教えたの!」

「それは…すべて姉様やグラスが悪いんだよぉ!」


そう言ってオブシダン・ヘマタイトは斬り込んでくる。

コーラルはその全てを回避しながら「私とグラスが!?何故!?」と聞く。


「生まれながら真式だった姉様やグラスにはわからないさ!無能の長男がどれだけ恥ずかしかったかわかるか!魔術を教わっても、剣術を教わっても一度で覚えられない、新たな術の開発もままならない!そんな普通の人間の苦悩が姉様にはわからないさ!フレイムウェイブ!」

「私達はあなたを差別した事なんてない!真式ではないなどと思ったこともない!アイスウェイブ!」


強大なフレイムウェイブをコーラルはアイスウェイブで相殺する。


「それだ!アイスウェイブだって後年ミチトお爺様が作られた術で僕は真式になるまで使えなかった!」

「それでもあなたは真式になれた!何がいけないの?私のお葬式をしてくれたオブシダン・サルバンは何だったの?あの優しい眼差しは?泣いてくれた涙は!?」


コーラルは自身の葬儀、お別れ会の事を思い出していた。

家族・親族、使用人、オルドスとゴルディナでご馳走を囲み、沢山泣いて沢山話した。

オブシダンも他の者と同様にコーラルと沢山話をして沢山泣いてくれていた。


「全部本物さ!でもそれでも僕は姉様が羨ましかった!無限術人間真式として将来の可能性に満ちていた姉様が羨ましかった!スティエットを名乗れる栄光が眩しかったんだ!」

「オブシダン!何故その心の闇を私に向けてくれなかったの?生前打ち明けてくれなかったの!」


コーラルの凛とした力強い声。

言葉を聞くたびにオブシダンの動きが悪くなっていく。


「ぐっ…!?揺らぐ?…ダメだ。お爺様では」

そう言ったオブシダン・ヘマタイトは姿をヘマタイトに戻すと、今度は青いネックレスで転生術を行う。


光と共に現れたのは青い髪色の男だった。

「ふむ…、ここはどこだ?とりあえず目の前のお前が敵だと言うことは理解した」

そう言って剣を向けた男を見てコーラルは「まさか…スカロ・サルバン様?」と言った。


「その通り、俺はスカロ・サルバンだ。ここはなんだ?とりあえずアクィに似た佇まいの娘よ、覚悟するが良い!」

スカロの斬撃は鋭く、コーラルは必死になってかわす。

回避できたコーラルを見て驚くスカロは「ほう、アクィを彷彿させる身のこなしと立ち回りだな。悪くない」と言いながら更に斬撃を放ち「だが甘い!」と言う。


「くっ!スカロ様!私の名はコーラル・サルバン!アクィひいひいお婆さまの玄孫です!」

「それがどうした!だとすればそんな貧相な剣でアクィが喜ぶと思うな!」

スカロの攻撃は容赦がない。

そもそもスカロは天才剣士だったが、体力面の問題、若くして領主にならねばならなかった事、そして身の丈に合わない剣を持った事で剣の道からは遠のいていた。


「強い…どうすれば…、きっと話してわからないのはヘマタイトの意識が強いから、なんとかスカロ様の意識を強くしないと…」

ここでコーラルは自分がイブだった時、どうやって自分が出てきたかを考えた。


「これなら!」

コーラルは突きを放ちながら「クッキー!ババロア!プリン!」と叫ぶ。


突然スイーツの名を言いながら斬りかかるコーラルにスカロは「何?な…何を…」と驚くがコーラルは止まらない。今も「マドレーヌ!フィナンシェ!」と言いながら突きを放った。

ここでスカロが「フォンダンショコラ!ゼリー!」と言いながら剣を振るう。コーラルも「ビスケット!パフェ!」と言って切り返す。


「パンケーキ!」

「ホットケーキ!」


力いっぱい振るいあった剣。

一瞬の間の後でスカロが「…こ…ここはどこだ?」と言った。


「スカロ様!良かった!私の名はコーラル・サルバン!アクィひいひいお婆さまの玄孫です!」

「何?確かに身のこなしがアクィに似ているな」

コーラルは今がチャンスと「今のスカロ様は転生術でかりそめに蘇っただけです」と事情を説明する。


「敵対しているのか?」

「はい!一時的にスカロ様の意識が勝つようにスイーツの名前を連呼してみました」


「うむ!我がスイーツ愛は最愛の伴侶ヒノと拮抗する程だ!」

「良かった…、なら剣を下ろして…」


「断る!」

「え!?」


「まだコーラルの剣は未熟!今しばしの時間で稽古をつけてやる!来い!」

構えを取って殺気を放つスカロにコーラルは一礼をすると「…我が名はコーラル・スティエット!全力で胸をお借りします!」と言って斬りかかり、そのまま始まる訓練。

途中でヘマタイトが出てきそうになると2人でスイーツの名前を連呼して時間稼ぎをしながら剣を振るう。


突きを放てば「踏み込みが甘い!アクィならもう半歩前に出る!」と教えられコーラルは紅潮した顔で「はい!」と答える。


「なぎ払い時に剣に振られている!腰を入れろ!」

「はい!」

暫く斬り合うとスカロが「何故身の丈に合わない剣を使う?」と聞く。本来なら手足が伸びきっていないコーラルに「愛の証」は重く長い。


「これはミチトお爺さまがアクィお婆さまに贈った愛の証です!私はアクィお婆さまに憧れて剣を学びました!」

「…そうか、アクィは恵まれたな。ならばかつてナイライ・カラーガがスティエットを頼り剣に想いを遺したようにその剣にもアクィが居るやも知れないな!剣に相応しい剣士になれ!基礎動作は教えた!後は反復練習だ!さあ!残り少ない時間で俺を倒して見せろ!今ならわかる、もうスイーツ作戦も効果がない。この身体の支配権を奪われるまでは本気の対決だ!

我が名はスカロ・サルバン!全力でお相手致す!」


コーラルとスカロの戦いは続く。

今までは真剣勝負と言っても格下かサルバンとスティエットの名に遠慮をした連中との訓練だったのだろう。

ヒリヒリする感覚での剣撃はコーラルを育てていく。


スカロは剣をおろすと「よくやった。見事だ。かつてスティエットがウシローノ・モブロンに言った言葉だ「ならその剣だけで魔物と三日三晩戦い抜いて見せろ!」。まあ平和な世には無理難題。そう思えばその強さもありがたい事なのかもな」と言った。


「スカロ様?」

「ここまでだ、貴い心は見事だ…サルバンの心とスティエットの心を見失うなよ」


ここで強制的にスカロからヘマタイトに戻ったヘマタイトは「くぁっ!?はぁっはぁっ…なんだ今のは?」と肩で息をしながらゾルアを連れて安全圏に退くと「四つ腕魔神!聞こえるか!?今すぐにリブートストーリーをオーバーフローさせろ!大丈夫だ!周りへの被害は僕が食い止める!今はモンスター達を使ってでも僕が勝つ必要があるんだ!」と叫ぶ。


その言葉が聞こえていたコーラルは自身の耳を疑ったが同時にスカロの言葉を思い出していた。


「その剣だけで魔物と三日三晩戦い抜いて見せろ」


「やりますわ」

そうこうしていると四つ腕魔人や他の魔物達がわらわらと現れた。

コーラルは剣を握り直して次々に切り裂いていく。


コーラルはきちんと師事は受けていたので身体に疲労回復を目的としたヒールをかける事で長時間の戦いもこなせていた。


だが強大な術もなく2000の魔物を狩り続ける事は至難の技でここで初めて氷結結界、サンダーデストラクション、インフェルノフレイムなどのミチト謹製の大量破壊の術が必要な事に気づく。

だが自身はそれを覚える頃には欠術病で学べなかった事を恨む。

アースランスですらイブの記憶で放ったもので、今は再現が難しい。


「悔やまれる!でも!フレイムウェイブ!」

コーラルのフレイムウェイブで目の前の人喰い鬼はケシズミになっていく。


だがどうしても数で迫られると押し負ける。


「引けない!私はコーラル・スティエット!ミチトお爺さまはこの状況よりもっと大変なラージポットのオーバーフローも生き延びた!私だって!」

そうは言っても手数が足りないコーラルは遂に人喰い鬼の拳で防御越しに殴り飛ばされた。



一瞬の間に「スカロ様…折角訓練をしてくださったのにごめんなさい。アクィお婆さま…折角の愛の証なのに…グラスはこんな使い方はしなかったわね…。グラスがどう使ったか見たかったな…」とコーラルは思う。


そう思った所でコーラルはかつてナイライ・カラーガが剣に想いを込めた話を思い出す。

コーラルは吹き飛ばされながら「アクィお婆さまなら!読心術!」と言った。

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